転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
3章はすぐ終わるかもしれません。
国葬
宇宙歴 0081年 5月 中旬 キャリフォルニアベース
「シャア先輩、お気持ちはそれでよろしいのですか?」
あたしが確認するように問う。
「良いも、悪いもあるまい。私が今立たねばギレンの専横により再び連邦との戦端が切られるのだ。それは奴以外の誰にとっても不幸な事だろう?」
覚悟を決めた表情で、シャア先輩があたしを諭すようにそういう。
あたしはマレーシアからオデッサでマ・クベと落ち合い、当面はガルマ・ザビを旗頭に突撃機動軍をまとめると、ルナ・ツー駐留軍からシャア大佐を呼び寄せ今後の事を話し合った。
既にキシリア機関により、デギンとキシリアの暗殺は、ギレンの手によるものという情報を流している。
それを受けてギレンはサイド3に総動員令を出し、ア・バオア・クーに兵力を集め出した。
奴は今、デギンとキシリアの国葬の為にサイド3にいる。
これから始まる国葬の後、公王陛下とキシリアを暗殺した卑劣なる連邦を討つ、という命令がドズルの元には来ているらしい。
ギレンが父と妹を殺した可能性が高いとあたしがドズルに
今は麾下の兵力をソロモンに集結させているところだという。
そしてこれからデギンとキシリアの国葬が始まる。
あたし達はそれに対して電波ジャックし、ギレンの謀反を弾劾し、父と妹を暗殺した非道を批判するつもりである。
手筈はキシリア機関の者達が整えてくれている。
失敗の可能性は低い。
ギレンの声は公王庁広場に集まったものにしか届かず、各コロニーにも地球圏にもあたし達の声明を届ける。その為にシャア・アズナブルを呼び寄せキャスバル・レム・ダイクンに戻るつもりはあるか? と確認した。
父ジオン・ズム・ダイクンが指名した後継者であるデギン・ソド・ザビはすでに亡く、混迷する宇宙に、新たな戦乱を巻き起こそうとする簒奪者の専横を糺す為、正統な後継者が立ち上がる。
我ながら筋書きとしては悪くない。
問題はそれをシャア先輩が受け入れるかどうか? だったが、ララァが
「正面から復讐を完遂出来る好機なのよ。やらない理由があって?」
と吹き込んで、それをシャア先輩も是として受け入れた。
国葬が始まる。
二人の遺体は爆散し、炭化した細切れの肉体がいくつか残っただけだったので、棺の中は見えないようにされ、副葬品がいくつか添えられたという。
重々しい雰囲気の中、式が進行し、ついにギレンの演説が始まろうとしている。
「我々は偉大な父を失った。だがこれからは我々の手で道を切り開かねばならないのだ」
あたしはこのタイミングでチャンネルジャックをかけさせる。
キャリフォルニアベースの終戦調印式典で使った会場に立つ、マスクをつけた赤い軍服の男がジオンと連邦軍の高官を前に立つ。
「私の名はシャア・アズナブル。赤い彗星と呼ばれている男だ。今日サイド3ではジオン・ズム・ダイクンの後継者、デギン・ソド・ザビ公王と、御息女キシリア・ザビ閣下の葬儀が執り行われております。お二人を殺した、暗殺者自身の手で! ギレンは己が手で父と妹を殺し、その罪を連邦軍に擦り付け、戦争を再開し、己が独裁体制を盤石なものとせんとする為に蠢動しておるのです!」
そして彼はマスクを取り。
「これは父ジオン・ズム・ダイクンの息子、キャスバル・レム・ダイクンとして容認できぬ所業であり、ギレンの思想は父ジオンの理想からかけ離れた独善的な野心であり、誰もが不幸を味わうだけに終わるでしょう」
両手を開いて彼は聴衆に訴えかけるように
「私はここにギレン政権の正統性に疑義を呈し、彼の弾劾を宣言する。そしてここに共和制ジオンの樹立を宣言し、改めて地球連邦政府と和平の締結を行いたい。大戦はもう終わったのだ、血を流さず平和的に新体制に移行しようではないか? 皆さんのご意志やいかに?」
彼が言い終わると場にざわめきが起こり、徐々に拍手がさざ波のように起こり、割れんばかりの喝采となる。
こちらのモニタでは対比するように唖然とするギレンが映し出され、慌てた向こうにより映像が打ち切られる。
あたし達は打ち合わせ通りにゴップ大将を代表として映し、彼が前に出るのを促す。
彼はおっかなびっくり前に出るとキャスバルと握手し、友好的な笑みを浮かべて肩を叩き合い何事か囁き合う。
少々面倒な行き過ぎはあったが、大筋としてシャア先輩はいい仕事をしてくれた。
キシリア機関の手の者もだ。
あたしの中ではギレンを排除してから共和制樹立を宣言するつもりだったが、正当性のある共和国としてギレンを排除した方が連邦の干渉を受けにくくできるかもしれない。
これでギレンは父と妹殺しの嫌疑がある上で、その罪を連邦に擦り付けようとする戦争狂と認識され、ジオン内部での発言力や求心力も低下するだろう。
その上で戦端を開くのならもはや裸の王様だ。
その分ガルマやドズルから色々言われるかもしれないが、離反まではいかないだろう。
その後連邦政府はジオン共和国の樹立を認める形で調印し、和平条約の締結がなされた。
外患ということを考えなければ、連邦軍と共闘してギレンを攻めることも出来るだろう。
だがそれでは後に禍根を残しかねない。
現状、戦力的にはギレン側が6:4でこちらが不利と言ったところだろう。
シャア先輩の演説で互角かいくらか有利に持っていけるかもしれないが、ギレンにはまだソーラ・レイという切り札がある。
あれを無効化出来なければ戦力をどれだけ投入しても勝ち目は薄い。
それこそ連邦に借りを作り続けるだけで、戦況を優位に持っていくことは難しいだろう。
「どうやってソーラ・レイを無効化するべきか?」
喝采に沸く会場の中で、あたしは独り言ちる。
「後方を気にしなくて良いのなら、ラグランジュポイントを迂回して、複数ルートから侵攻するのはいかがでござるか?」
あたしの横に立ったアムロがそう進言する。
「大規模な部隊編成をせず、分散して少数で進軍し、ソーラ・レイを破壊する。あるいは…潜入して乗っ取るというのもありかな?」
茶目っ気を含んだ微笑みでそうアムロに提案する。
「サイド7でやったように?」
アムロが面白がるようにそう返す。
「そう、サイド7で連邦がやられたことを、自らがされるとは思ってもいないでしょう?」
揶揄うようにあたしがアムロにほのめかす。
「決戦は
アムロが見通すような瞳でそう訊ねる。
「そうね、決戦は
あたしは暗澹たる口調でそう答える。
一体どのくらいの人を喪うことになるのだろう? そんな思いがあたしの心を曇らせる。
「それが終われば、戦争も終結でござるな」
アムロが力強くそう言う。
そうだ、ここで戦争を終わらせるのだ。
でなければ更に無意味な血が流れ続ける。
そんな未来を選びたかった訳ではないし、実現させる訳にもいかない。
あたしはそう決意すると
「アムロ、あたしに力を貸して頂戴」
そうお願いする。
彼は
「もちろんでござるよ」
と柔らかく微笑んであたしを受け入れてくれるのだった。
書いてる内にプロットから、ずれがかなり生じてきて、思った以上に3章は早く終わるかもしれません。