転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
モビルスーツ格納デッキから
と、次の瞬間異常なほどの加速があたしの体を襲う。
「なに? この出力!? スラスター推力だけでザクの倍以上ある……」
呟いたあたしにザンジバルのブリッジからモニターしていたレーヴ副長が
「姫様!? 大丈夫ですか?」
と、不安げに伺うような声色で尋ねてくる。
あたしを気を取り直すと
「……大丈夫……あんまりの出力にびっくりしただけ。この機体相当なじゃじゃ馬だね。あたしみたいだよ」
苦笑いして安心させるようそう答える。
5倍のエネルギーゲインとは聞いていたが、出力だけでなくスラスター推力もザクとは比較にならないので、今まで機体を扱っていた感覚で操縦すると大事故を起こしかねない。
こんなじゃじゃ馬というか暴れ馬な機体を初見でマニュアル読みながら扱って、ベテランの操るザクを倒したアムロは天才と称するのも生ぬるい異才の持ち主なのではないのか?
1stガンダムでブライトさんから異常に評価が低かった初期は人間性に関してのものだったのか?
そう思わざるを得ないほど、
いや、逆にザクを操縦する癖がついてるから適応が難しいのか?
どちらにせよ、ちょっとうちの部下に勧誘して育成したいほど高いパイロット適正持った少年であることは間違いないと思う。
しばらく単純な軌道で操縦し、その暴れ狂うような出力に慣れたと思った頃、デブリの散在する空間に突っ込み、シャア先輩直伝のザクを三倍の速度で機動させる操縦術を使って、デプリを足場にしてガンダムを加速させる。
「うわぁっ!」
高機動の推力に慣れ始めたとはいえ、いきなり3倍の速度は流石にヤバかった。
想定以上の加速によりデブリにぶつかりかけて緊急回避をかけ、機体に振り回される
「通常のザクを三倍で起動させる操縦術で、倍の推力扱えば、単純に言って六倍の機動力を発揮することになるよね……」
自嘲気味にそう独り言ちる。
「姫様、あんまり無茶をせんでくださいよ……姫様で扱いかねる機体なら誰が乗っても扱いにくい機体だという事なんですから……」
モニターに映るレーヴ中尉がそう苦言を呈してくる。
「そういう訳にもっ! いかないでしょっ!? 味方と合流する前にっ! 敵の反撃があるかもっ! しれないんだからっ!」
細かく加速させながら機体の癖を把握すべく
三倍の機動術を倍程度に加減して加速させ、ガンダムを機動させる。
それでも通常のザクの四倍の速度で機動している実感はある。
この速度帯ならヨチヨチしなくても扱えるが、この機体の真価を発揮しているとは言い難い。
なるほど、ガンダムの開発以降実戦投入されたジオンの新型モビルスーツが何故簡単にやられたか?
多くが学徒を投入した未熟なパイロットだったという理由の他に、ザクとは隔絶したその機体性能に慣熟する前に大きな戦闘に駆り出されたというのも理由としては大きいと思う。
「レーヴ中尉! この機体を奪取した功績は! ジオン一等十字勲章物の! 価値はあるよね!?」
余裕でザクの四倍の機動を安定して出来るようになったあたしは、ブリッジでハラハラしながらこちらを注視する副官にそう軽口を叩く。
「どういう意味でありますか?」
訝しげにレーヴ中尉が問い返してくる。
「なぁに。この機体の登場で、モビルスーツの戦術思想が、大きく、変化せざるを得なくなる、ということよ」
わずかずつ加速度を上げながらガンダムを駆りながら、近い未来に起こりうる閃光の変化を口にする。
「この機体は試作機なのでしょう? それを失った連邦より、我らがジオンが、この機体を参考にして、新たな戦術思想の元に、開発した新型を投入し、新型機に、前線のパイロットが、慣熟してから、大きな作戦を実施すれば、物量で勝る、連邦と言えど、勝ち切れるという物でも、ないとは思わない?」
徐々にガンダムの真価を発揮させることが出来るようになったあたしは満足げにそういって、ヘルメットのバイザーをあげて汗をぬぐい機体を停止させる。
「そこまで戦況を変化できるものでありましょうか?」
慎重論者を自称するレーヴ中尉が懐疑的に問い返してくる。
「使い方次第では、という事よ中尉。上の方が現場の状況を鑑みた上で作戦を立ててくれるなら、ジオンの優位を維持できる材料になりうる。ミノフスキー博士も逮捕出来ているのでしょう?」
ある種の理想を説くようにそう言葉を返すと、ジオンから連邦へ亡命したかつてのジオンの重要人物の様子を尋ねる。
「はっ! 現在は我が艦の独房にて勾留中であります」
中尉がそう返答する。
「ヒメさま~っ! あーしと模擬戦やりゃあ~しょうよぉ~」
ザンジバルからこちらに向かって飛んでくる機体から、愛嬌たっぷりの間の抜けた声がモニター越しに届く。
「サーシャ? ちょっと待ってこの機体のシミュレーションモードが……あった、そっちも切り替えてね」
サーシャ、アレクサンドラ・ニコライエワ中尉……あたしと同期の士官学校生で、座学を断トツの最下位で、実技をあたしとトップ争いをして卒業した士官学校空前絶後の問題児であり、あたしの愛人の一人……
背中にかかるほどの長さの艶やかな黒髪に、ヘイゼルの瞳。
G60の巨乳で軍服をフェミニンにカスタマイズして着こなす同性愛者。
タチなのに、セックスの時以外はとても甘えてくるかわいい子……でも男性に対しては暴力的。
そしてあたしたちはデブリが散在する宙域で模擬戦を行う。
元より実力はあたしに抗し得るものがあったサーシャだが、ガンダムの操縦に慣れてきだしたあたしに対してはほぼ手が出ず。ほぼ有効打を与えることなく撃墜判定を食らいまくっていた。
「ひ゛め゛ざま゛ぁ~!!」
撃墜されまくって悔しさを爆発させたサーシャが泣き始めたところで、模擬戦を終わらせ帰投する。
「いい子だから泣かないの、部屋に戻ったら甘えさせてあげるから……」
モビルスーツ同士のお肌のふれあい会話でそう囁いてサーシャを宥める。
「ぜったいのぜったいでっスよぉ♡」
もじもじしながら俯き加減で念を押すサーシャに
「あたしが嘘ついたことあるかしら?」
と囁くように問うと、
「何回もあるっスよぉ~」
泣き出しながらそう抗議してくる。
「いい女はそういうことを言わないものよ?」
あたしがそう言って誤魔化しながらあやしていると
「姫様っ! 前方に艦影、恐らく味方ですっ!」
レーヴ副長から通信が入る。
「ごめんねサーシャ……この埋め合わせは必ずするわ……
不機嫌な子猫をあやすようにサーシャをなだめる。
「ヒメさまはあーしの物だって、
どうも次に愛し合う時は相当ハードな事をされそうではあるが、とりあえず許してくれるらしい。
ザンジバル級機動巡洋艦ズワメル、月に戻れば別の艦名を付ける予定のあたしの指揮下の艦に着艦すると、
「久しぶりだな、サラ大尉。ルウム戦役以来かね?」
赤い軍服に特徴的なヘルメット、何より甘い素顔をマスクで隠したジオンの誇るエースオブエース、シャア・アズナブル少佐から通信が入ったのだった。
早ければ2~3日に1回くらいの更新頻度でやっていけたらと思っています。
本格的にプロット考える時間取らないとどっこかで詰まりそう…
応援よろしくお願いいたします。