転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
ドズルって軍人としてはかなり有能だと思うんですけどね、ザビ家内部では評価が低いの何でだろう?
シャア先輩のファルメルを護衛に迎えたあたしたちの艦隊は、ルナ・ツーから進発してきたと思われる連邦の艦隊を二度ほど退けソロモン宙域に到達していた。
この防戦ではシャア少佐に張り合ってかサーシャが特に奮戦し手柄を挙げていた。
味方の、特に男性パイロット達からは『
ルウム戦役では落とせる戦艦がなかった為、エースとしての戦果を出せなかったサーシャは今回戦艦五隻を沈め見事エースの名を勝ち取った。
シャア先輩が援護に回ってくれたおかげでもあるんだけど……
あたしは連邦の新型モビルスーツを落とされないようにしつつ試験運用しただけなのだけれど……
性能がエッグい。
主兵装のビームライフルで簡単に敵戦艦に深刻なダメージを与え、敵戦闘機隊の集中砲火を受けても平然と耐えきる重装甲、その窮地を簡単に振り切れる高機動力に、サーシャとの模擬戦で適確になった学習型コンピューターのアシストにより、敵艦隊の狙いがあたしのガンダムの撃墜であっても、自力でそれを退けられる戦闘力を保有してしまえていることを証明してしまった。
ガンダムを奪取されたことにより、泡喰って集められるだけの戦力をかき集めたルナ・ツー前線基地だが、その戦力は予備も含めて使い切ったはずで、当面連邦軍の宇宙における劣勢は確実と言える状態に追い込まれたはずである。
ここで地上の支配権を確立できれば……
そうは思うもののまだただの尉官の身である、ソロモン、そしてグラナダでザビ家の面々とのやり取りで下手を打てば閑職に追いやられかねない。
まずはドズル中将か……
我々の艦隊は万が一の連邦による強襲に備え警戒しながらソロモンに向かうのであった。
「久しぶりであるなぁ、義妹殿よ」
愉快そうに巨体をゆすって笑いながら画面の向こうでドズル中将が笑っている。
「はっ! お久しぶりです閣下!」
あたしは敬礼をしながら中将にそう返答する。
「ゼナの妹である貴様であれば、我が義妹には違いあるまい? 『お兄ちゃん』とでも呼んでくれても良いのだぞ」
人情家として親しまれているドズル中将だが、ここまで相好崩して親しげに振舞う相手はそうはいない。あたしはその一人という事なのだろう。
「お戯れを……」
返答に窮して、白旗をあげるようにそううめく。
「それで鹵獲したという連邦の新型はいかほどの物なのだ?」
単刀直入にドズル中将が切り込んでくる。
「詳細はソロモンにてご報告したいと思いますが、少なくとも今後のモビルスーツを使った戦術に大幅な改革を強いられるほどには高い性能を有しております」
あたしは受け入れられる最大限の評価にアタリをつけて報告をする。
「それほどのものか!?」
ドズル中将は驚きとともにそう返答すると、
「あるいは父上と兄貴と姉上を交えて、貴様の報告を聞く機会を設けるべきなのかもしれんな……」
「ついてはラル大尉に関して、閣下のお許しを頂きたい件がございます」
ランバ・ラルの処遇に関してあらかじめ根回ししておく。
「よかろう、それらを含めてソロモンについてから話を聞こう。連邦軍の艦隊を二度撃退したとはいえ月までの移動は難事であろう、貴様の艦隊の護衛にはそのままシャアを付け、更なる援軍にラルも付けてやる、それがジオンの国難を救い得るきっかけになるのだろう?」
初期の戦略が破綻したことに辛酸を味わう表情を浮かべた軍団長の表情がそこにはあった。
「仰る通りでございます」
あたしは一礼して人情家の軍団長の言葉を肯定した。
…………
……
……
「可愛い~♡ 姉さんこの子がミネバ?」
あたしは姉が両腕に抱いている赤子を見てそう声をあげる。
「しぃっ! もう少し声を抑えて、さっきやっと眠ったのよ」
姉であるゼナがあたしをそう窘める。
「じゃあ、抱っことかはしない方が良いかな?」
強請るように姉にそう問いかける。
「そうね、あなた結構がさつだから。この子がびっくりして起きちゃうかも?」
笑いながら優しく拒絶する姉さん。
「ひっどぉ~い……でも、今はゆっくりおねむりなさいミネバ……」
あたしは優しく
「どうだ? ミネバは可愛いだろう?」
相好を崩してドズルが問うてくる。
「そうですね、
微笑んであたしはそう返す。
「先ほど身内扱いを嫌がった割には素直ではないか」
愉快気に笑いながらドズルがどう問いかける。
「兵の目もありますから……ザビ家にすり寄るハイエナと思われては示しがつきません」
居住まいを正してあたしがそう答える。
「言うようになったではないか、士官学校きってのじゃじゃ馬が今では新進気鋭の若手士官となっておるのだ、俺が一線を退くのも遠い日ではなさそうだな」
そういって心底愉快そうにドズル中将が笑う。
「それでは閣下報告の方をば。姉さん、また後で……」
あたしがそう促すと、
「こちらで報告を聞こうか」
中将が隣室へあたしを誘う。
「結論から申しますと、ジェネレーター出力、スラスター推力、装甲、火力、いずれをとっても連邦の新型モビルスーツ『ガンダム』の性能はザクを遥かに凌駕しており、これだけで今後の戦術に大幅な変更を強いられることは間違いありません。何せ主砲の一撃で軽くザクを撃破できるのですから、連邦が新型を前線に配備した折、旧態依然とした戦術で迎えては、我が軍が育成した貴重なパイロットの人命を無為に散らせる結果となりましょう。それに加えてガンダムには優秀な学習型コンピューターが搭載されており、実戦データのフィードバックにより短期間でそれなり以上の技量を持ったパイロットの育成が可能になると思われます」
あたしはホワイトベースとガンダム、ガンキャノン、ガンタンクのマニュアルとザンジバルに従軍している技術士官の解析した結果を参考に独自の見解を加えて報告を行う。
「それで? どうせよというのだ?」
ドズル中将が渋面でそう詰問してくる。
「ハッ! 我が軍が当初描いていた短期決戦にて決着をつけ、独立を勝ち取るという戦略は、レビルが連邦に帰還したことにより破綻しました。そしてこのような新型を既に他の拠点でも開発されていることが推測されます。ここは我が軍も新たな戦術思想の元に新型を開発し、我が軍のエースパイロットが慣熟訓練を完了した折に地上にて拠点を築き、徐々に支配権を確立していくべきかと愚考いたします」
あたしは表の戦略をドズル中将に進言する。
中将はしばらく熟考したのち
「貴様の言にはいくつか真摯に受け取るべき点がある。だが全軍に対する権限は俺にはない。貴様がラルの奴を寄越せというのは地上に降りた時の為か?」
極めて鋭い考察でドズル中将が問いかけてくる。
「はっ! 仰るとおりであります」
あたしは素直に肯定する。
「ガルマの支援に貴様とラルが向かえばあいつも楽が出来るだろうな……」
ドズル中将がそうつぶやく
「ラルの件は了承した、貴様の働きはジオン一等十字勲章ものだ。少なくとも佐官には昇進できるだろう。モビルスーツ隊の副官にラルをくれてやる。精々地上でガルマに楽をさせてやれ」
ドズル中将があたしの望みを受け入れてくれる。
「ありがとうございます」
だがまだ足りない。
「更に具申申し上げたき儀があります」
それを言うため声をあげる。
「なんだ? 言ってみろ?」
中将が先を促す。
「連邦のルナ・ツー駐留部隊は壊滅的な状態であり、また切り札ともいえる新型機を丸ごと強奪され、反抗作戦の切っ掛けを失っている状況かと思われます」
あたしは冷静に状況を伝える。
「だろうな」
ドズルがそれを肯定する。
「で、あるならば我が軍の新型機開発、及びパイロットの慣熟訓練期間確保の為に我が軍にも時間が欲しいのが実情であるかと。一年いえ、せめて半年の休戦期間の後に態勢が整え、それをもって地上の支配権を確立すべく戦略を見直すべきかと具申いたします」
表の方針転換をあたしが言い終える。
「それはあのモビルスーツを使った上での具申か?」
ドズル中将が確認するように問いかけてくる。
「そうであります」
力強くあたしは言い切る。
「このタイミングでならば連邦も応じざるを得んか…分かった。貴様が月の姉上の元へ帰還出来次第、父上と兄貴、そして姉上と会談を設けよう。姉上には貴様から根回しをしておいてくれ、あるいは宇宙攻撃軍だ、突撃機動軍だといがみ合っている場合ではないのかもしれんな……」
ため息をつきながら、そうこぼすドズル中将。
リアリストな軍人だからこそ彼にはこれから起きる苦境が見えているのかもしれない。
あたしは姉の夫であるドズルが生き残ることを喜びながらも、ザビ家が存続する嫌悪感という相反する気持ちが内心でせめぎ合うのを感じ、一人心中で懊悩するのであった。
先の展開を考えつくまで不定期更新が続くかと思います。
出来る限り続けて更新したいとは思いますが、もし間が空いたらごめんなさい。