転生宇宙世紀 ―ジオンの女性士官にTS転生したので、ザビ家は気に入らないけど連邦と戦います― 作:読人不識
連邦の奇襲を退けた後、しばらく周囲を警戒しつつ各艦の艦長をホワイトベースの艦長用
目的はランバ・ラルの引き込みだ。
ダイクン派だったジンバ・ラルの息子としての誇りを持ち、またキャスバルとも面識があるはずのランバ・ラルならば、後にダイクン派とする予定の融和派―ギレンの宇宙移民優遇派、キシリア派に対抗するための、スペースノイドがアースノイドと対等の立場で独立を目指す派閥―を立ち上げる際、軍事面で重要な役割を果たしてくれるはず。
それ故早い段階でシャア先輩の正体を明かしておくべきなのだ。
アースノイドの中でも古い家系に属するイセリナと恋愛中のガルマは、幸せを掴む為にはギレンのスペースノイド優良人種論に同調するわけにはいかない。
だからキシリア寄りになりつつ、ダイクンの思想の核である、ニュータイプを兵器とみなすキシリアからは一定の距離を取りながら、友好な関係を結んでいるドズルを抱え込み、長期の戦争に耐えられる下地を作り上げた後、ダイクン派として彼等の頭にキャスバルを置く。
現状のジオンの勢力圏だけの人材で、地球の半分を征服し続ける事に無理があるのだ。
我々の目標はジオンの独立というよりも、スペースノイドの自治独立なのだから、他のサイドの協力を取り付ければいい。
名目としてはジオン独立の為に共に戦った者には、同じ権利を与えられるべきであるとでもすればいい。
これでギレンとは反目することにはなるだろうが、ザビ家独裁に楔を打ち込むならばこれでいい。
それがあたしの今考えつくプランだが、シャア先輩とは意見が合うかは分からない。
だからこそジオンの政争の荒波を泳ぎ切ってきたランバ・ラルの意見を求めたいのだ。
……だが、マ・クベの副官であるウラガンに『戦争馬鹿』と揶揄されるラルでは少し不安が残る。
政争にも長けている軍人と言えばそのマ・クベだが、奴はキシリアの腹心であり、寝返らせるのは中々に困難そうである。
我ら融和派―まだ立ち上げてもいないが―の問題点は人材の層の薄さに違いない。
ならばまず親ダイクンであったランバ・ラルの登用は試金石としても重要ではあるだろう。
そんなことを考えながらホワイトベースの艦内を移動し艦長用の個室に至る。
ドアをノックし、室内に入室すると上座に座るランバ・ラルとその傍らに寄り添うように立つクラウレ・ハモンが待っていた。
「お疲れ様ラル大尉。先ほどはお世話になりました。ハモンさんも御機嫌よう」
あたしは丁寧に挨拶をして用意された席の一つに着く。
「こちらこそ、進言を受け入れてくださって感謝いたします。これで部下やハモンに少しは良い目を見させてやれますわい」
と言って豪快に笑う。
「良い指揮官の方に見出されて、ラルも喜んでいますのよ」
ニコリと微笑んでハモンがそう口添えする。
どうやらあたしはこの二人には受け入れられてもらえそうだ。
だがシャア先輩はどうだろう?
シャア先輩自身はどう思うのだろう?
そんなことを考えながら談笑していると、赤いノーマルスーツを着込んだシャア先輩がノックと共に入室してくる。
「私が最後の様だな…」
ばつが悪そうにそういうシャア先輩。
待たせて申し訳ないと詫びつつ席に着く。
そして
「サラ大尉は我々を呼び出して何を話すつもりなのかね? 連邦軍にはもう襲撃できるほどの戦力は残っておらんだろう?」
とあたしが呼び出したことに疑念を呈する。
「ではまず、あたしは後にダイクン派とする為の派閥を、ガルマ大佐を中心に融和派として立ち上げたいと思っています。これはあたしがズムシティでお偉方を翻意させられればの話になりますが、まず我らがジオンは戦略的に破綻しており、このままでは泥沼化してゆく戦線に対応できず、消耗戦の結果敗北すると思われます、これに対して異論がある方は?」
あたしは他の三人に意見を伺うように視線を向ける。
「確かに貴官の言う通り、泥沼化は避けられんであろうな」
シャア先輩が覚悟を決めたのかあたしの言葉を肯定する。
「総動員令を出して人的消耗を拡大し、甚大な被害を出すことで延命は出来ましょうが、物量で押されては勝ち目は薄いかと」
ラル大尉も肯定してくれる。
ハモンさんも頷いてる。
「連邦軍の反攻作戦の切り札の一つであるガンダムとホワイトベースは鹵獲出来ましたが、恐らく同形機、あるいは量産機は別ラインでも生産されている可能性があります。ですが試作機の一つであるガンダムを失ったことでその開発の歩みに陰りが出てくるのは必定。そしてガンダムに搭載されている学習型コンピューターから鑑みるに、試作機で基本的なモビルスーツの機動を学習させ、量産機や汎用機に、それをフォーマットとして普及させる計画ではなかったのか? と推測いたします」
とあたしは前世の記憶を利用して、考察を述べる。
シャア先輩とラル大尉、ハモンさんが息をのむ声が聞こえる。
そう、あの高性能機での機動をフォーマットした量産機が前線に出てくるということは短期間でパイロットの育成が可能ということだ。
そうなればジオンは数ヶ月と持たず崩壊する。
原作のガンダムでは実際半年持たなかった。
それを
「ズムシティでお偉方がどう判断されるか分かりませんが、あたしはこの新型入手を契機に一年から半年の停戦期間を経て、更なる新型機を量産し各コロニーを併合もしくは協調してから、志願兵を受け入れ、軍備を充実させてから地上に降下部隊を送り込み地上の支配権を徐々に拡大していくべきと思っております」
数瞬の沈黙の後
「その中心になるのが融和派ということですな?」
と、ラル大尉が問うてくる。
「その通りです」
あたしが肯定すると
「しかしダイクンの系譜を継ぐ者もなしでダイクン派は名乗れぬかと…」
とラル大尉は言い淀む。
「ダイクンの遺児はいます!」
あたしは強くそういうと
「貴様! まさかアルテイシアを「サイド7を協調または併合させればセイラ・マス、あるいはアルテイシア・ソム・ダイクンは否応なく巻き込まれますよ? ならば、こちらで早々に保護した方が良いのでは?」
シャア先輩の言葉を遮るようにあたしが言葉を重ねる。
「それとも貴方が立ち上がりますか?」
小悪魔のような微笑みであたしはシャア少佐を挑発するように確認する。
「まさか……」
息をのみ呟くランバ・ラル大尉に目をやるシャア少佐。
彼はあたしを忌々し気に一瞥するとマスクを取り、その素顔を室内にいる者達に晒す。
「あ、あなた様は」
ラル大尉がシャア少佐の前に跪くように椅子から崩れ落ちる。
後ろに立つハモンさんがそれを支えようとかがむが、シャア少佐の顔から視線を離せない。
「キャスバル様……」
ラル大尉の呻くような声が室内に響く。
シャア先輩は不承不承と言った体で
「久しいな、ランバ・ラル」
と声をかけたのであった。
実をいうと筆者は一年戦争後のシャアに対しては良い感情持ってないんですよね…
一年戦争で復讐の鬼と化しザビ家殲滅した結果を悔いているのか? エゥーゴに参加して、結果ネオジオンでアクシズ落としとか、行き当たりばったり過ぎるかなと。
「そういうとこだぞシャア先輩」
とサラ大尉は思っていると思うんですよね。