BanG Dream!~happy? or Un happy~ 作:TRcrant
そっと香澄の頬に手を触れさせる。
その感覚に香澄は閉じていた目を開いてこちらを見つめる。
「香澄」
「ぁ……」
彼女の顔を見つめながら名前を呼ぶと、香澄はぱっと嬉しそうな表情を浮かべて再びその目を閉じた。
そんな彼女の顔に、俺は静かに顔を寄せていき
「……ちゅ」
「ん……ちゅ」
そっと彼女の唇に自分の唇を触れ合わせた。
「……香澄」
「茂、君」
すっと唇を話した俺たちは名前を呼び合いながら見つめ合う。
潤んだ目、仄かに赤く染まる頬、そして周りの明かりを反射しているほどの艶のある唇。
それらが、俺から理性を奪っていった。
「……ん」
「っ!?……チュッ」
香澄の柔らかい唇の感触を味わいたかった俺は、もう一度彼女にキスをした。
最初はびっくりしていた香澄だったが、すぐにそれに応じルカのように目を閉じた。
ただ触れ合わせるだけの軽いキスなのに、それでも好きだという感情が俺の中に流れ込んでくるように感じた。
それから何度も触れては離して、触れては離すを繰り返した。
だけど、何度キスをしても俺の中の欲望は止まる所を知らず、だんだんとそこから先に進みたくなる衝動に駆られる。
「香澄」
「はぁ……茂君?」
キスをやめて名前を呼ぶ俺に、香澄は不思議そうな表情で俺の名前を呼ぶ。
「いい、か?」
「………うん」
俺の言葉の意味を理解したのか、香澄の潤んだ目が一瞬揺れ動くけど、静かに頷いてくれた。
(つ、ついに、この日が……ッ)
まさか週末を前にして童貞を捨てる日が来るとは。
俺は喜びをかみしめつつ、彼女の制服に手を――――
『下校の時間となりました。校内に残っている生徒は、速やかに下校してください。繰り返します―――』
伸ばそうとした所で最終下校の時間を告げる校内放送が流れ出した。
「「……」」
勢いを失い、妙に気まずい雰囲気になる俺たちは、見つめ合った体勢のまま無言になる。
「じ、じゃあ、私外に出てるねッ」
お互いに顔を見合わせる中、最初に口を開いたのは香澄だった。
香澄は俺の返事を聞く余裕がないほどに慌てた様子で、パタパタと更衣室から去って行く。
(って、ドア開けっぱなしだったのか)
ドアを開ける様子もなく外に出て行く香澄を見た俺は、更衣室のドアが開けっぱなしであることに初めて気づいた。
(あれ以上やらなくてよかった)
この時間めったに人が来ることはないが、事に及んでいる最中に万が一にも誰かが来たらかなりやばかったので、ある意味運がよかったのかもしれない。
(とはいえ、間が悪いなぁ)
これまで何度も事に及ぼうとしたことがあった。
だが、いつもあと一歩というところで色々と邪魔が入ってしまうのだ。
(でも、それも今週末までの我慢だっ)
俺は、まだまだかなり先の週末に、思いをはせながら着替えるのであった。
夜、俺は自室で机の上に置いてある携帯を見ながら、今か今かという心境で待ち続けていた。
(きたっ)
程なくしてなり出したスマホを手にした俺は、はやる気持ちを抑えて電話に出る。
『もしもし、茂君。今大丈夫?』
「ああ、大丈夫だよ」
電話の相手は香澄だった。
ほとんど毎日、同じ時間にこうして電話で話をするのが俺と香澄の日課になっていた。
『あのね、今日有咲がね―――』
話の内容は今日あったことというありきたりなものだけど、彼女の声が聞けるのであれば、話の内容はどうでもよかった。
そういう意味では夕食にお風呂などを終えてあとは寝るだけという状態のこの時間は、俺にとってのささやかな楽しみにもなっていた。
『それにしても……今日の放課後ちょっとびっくりしちゃったね』
「ああ……そう、だな」
しばらく離した所で、ふと話題を変えたのか、ちょっとだけ照れた様子の声で口にした内容に、俺はしみじみとしながら相槌を打つ。
あの校内放送がなければ、間違いなく俺は童貞を捨てられただけに、ちょっとだけ悔しい気持ちがある。
『でも、ちょっとだけドキドキしちゃった♡』
「俺はヒヤヒヤしたけどな」
誰かに見つかるのではないかというスリルは、俺にとってはある意味心臓に悪いことこの上なかった。
『茂君、もしかしていやだった?』
「いやじゃないさ。ただ、やっぱり学校だと人目があるからな」
不安そうな声色で聞いてくる香澄に、俺は少しだけ諭すように言う。
「香澄のかわいい所を誰にも見て欲しくないんだ」
『茂君……えへへ、ありがと』
ちょっとだけ臭いこと言っちゃったかなと思ったが、香澄はどこか嬉しそうだった。
『私も……茂君のかっこいい所、他の子には見せたくないな』
「……」
俺の言葉を受け手なのだろうけど、どこか言われてむずがゆいというか、恥ずかしいというか、ナとも言えない気持ちになってしまった。
『あ、もうこんな時間。寝なくちゃ』
「っと、そうだな」
香澄の言葉に、俺も時計を見ると夜もかなり遅くなっていた。
まだ俺的には数分しか話していない感じなので、もう終わりなのかという心境だったりするが、あまり長話をしていれば明日起きるのが遅くなってくるので、そうも言ってられない。
『じゃあまた明日だね、茂君。大好きだよ♡』
「ああ、また明日。愛してるよ、香澄」
その言葉を最後に、俺たちは通話を終える。
電話の最後は、好きだと言い合うのが、俺たちの中での暗黙の了解になっていた。
最初は恥ずかしかったけど、でも言葉にしてみると寂しさというか、後ろ髪を引かれる気持ちが弱まるので最近は抵抗がなくなったりしている。
(楽しみだな。週末)
通話時間を表す画面を見つめながら、俺は今週末の香澄のお泊まりに、この日何度目かわからない思いを寄せるのであった。
「よし、お昼だ」
翌日、昼休みを迎えた俺は、チャイムが鳴るやいなやはやる気持ちを抑えきれずに席を立つと香澄に声を掛けるべく彼女の席に足を進める。
「香澄、お昼――――」
「あ、ごめんッ。ちょっと用があるから茂君先に行ってて」
一緒に行こうと誘うよりも早く、香澄は申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせながら言ってくる。
「何かあったのか?」
「心配しなくても大丈夫だよ。すぐに行くから待ってて」
香澄の慌てた様子に、俺は何かあったのかと思って聞いてみると、笑みを浮かべながら言ってきた。
そんな香澄に、俺は“わかった”と返すと、やや急いだ様子で教室を後にしていく。
(何だろう……まあ、すぐに戻ってくるみたいだし先に行ってるか)
俺はそう思うと、昼食を手にするといつものように山吹さん達が待つ中庭に向かうのであった。
中庭に移動して、すでに来ていたみんなに事情を説明したところ、先に食べて待ってようということになって先に昼食を食べ始めたのだが……
「にしても、香澄のやつ遅えな」
「うん……ねえ、さすがに遅過ぎない?」
昼休みもそろそろ折り返しになろうかというのにもかかわらず、香澄が戻ってくる様子がない事に、俺たちは不安になり始めていた。
「香澄ちゃん、何か言ってなかった?」
「用がある、としか……」
牛込さんの問いかけに、俺はそう答えるしかなかった。
(さすがにちょっと心配だな。探しに行くべきか……)
このままじっとしている手も落ち着かないので、香澄のことを探しに行こうと思う俺だったが、もし入れ違いになったら今度は香澄に心配を掛けさせてしまうかもしれない。
それはそれで最悪だという考えが、俺の動きを止めさせる。
(いっそのこと携帯に連絡してみるか?)
そうすれば、入れ違いになることもないので、こっちの方も妙案に思えてくる。
少しの間悩んだ俺は――――
最新話は、明日14日の0時に投稿いたしますので、今しばらくお待ちください