BanG Dream!~happy? or Un happy~ 作:TRcrant
「ん……」
翌日、俺は眠い目をこすりながら上半身を起こす。
「すぅ……すぅ」
今日も俺が先に起きていたようで、沙綾のかわいらしい寝顔を眺めていた。
なんだかんだ言ってこれが俺の日課になりつつあった。
「んぅ……」
(沙綾……)
沙綾の寝顔を見つめていた俺の心の中は、すっきりしなかった。
それは、昨日の沙綾の表情が原因だった。
あの時の沙綾の表情は、何かに追い詰められているような……怯えているような感じで……。
『大丈夫だよ』と言っていたものの、やはり心配になる。
もし本当に悩んでいるなら、相談してほしい。
そんな俺の気持ちとは裏肌に、沙綾は何も言ってはくれない。
(どうして何も言ってくれないんだ)
そう思う反面、きっと話せない理由があるからだろうと思っていた。
だからこそ、その悩みを共有してあげたかった。
(やっぱり、沙綾が言うまで待つしかないのか?)
俺は自分の無力さを呪う。
沙綾のためを思って行動したいのに、それができない自分が歯痒くて仕方なかった。
しかし、今の自分にできることなんてたかが知れている。
(せめて、何かしてあげられたらいいんだけどなぁ……)
結局、俺はただ黙って沙綾の頭を撫でることしかできなかった。
「んぅ……、おはよう」
「ああ、おはよ」
目を覚ました沙綾は、目を擦りながらゆっくりと体を起こした。
そして、まだ少し眠そうな目で俺を見る。
「ふあ~っ……、んぅ……」
まだ半分くらい夢の中にいるであろう沙綾は、そのまま俺に向かって抱き着いた。
まるで子供のような甘え方だ。
(なんか猫みたいだな)
「よしよし……」
「んぅ……」
俺は、そのまま彼女の髪を優しく撫でると、彼女は嬉しそうに目を細める。
その様子はとても可愛らしく、思わず笑みを浮かべてしまう。
この時間が一番幸せだと感じる瞬間だった。
「ねぇ、朝のチューして」
「わかったよ」
俺はそう答えると、そっと唇を重ねる。
「ちゅ……♡」
朝一番のキスは甘く濃厚なものとなった。
お互いに舌を絡ませ合い、互いの唾液を交換し合う。
「れろぉ……♡ はぁ……♡」
「じゅる……くちゃ……ぺろ……」
俺たちはそのまましばらくの間、ディープキスを続けた。
「ぷはぁ……ここから先はまた後で、ね♡」
しばらくして、ようやく口を離すと、俺と沙綾の口の間を繋ぐように銀色の糸が伸びていた。
「あ、ああ」
沙綾の言葉を聞いて、俺は顔が真っ赤に染まるのを感じながら頷く。
そして、身支度を整えた俺達は学校へと向かうのであった。
「ねえねえ、鈴木君のこと聞いた?」
「もちろん。同じクラスだしな」
休み時間、俺の席に向かってきた戸山さんの言葉に、俺は無難な内容の受け答えをした。
「いきなり学校を辞めるなんて、どうしたんだろう……」
「……」
戸山さんに連れられるようにして来ていた沙綾が 首を傾げながらつぶやく。
(意外に早かったな)
今朝のHRで、亮が学校を辞めたことが告げられたのは、ある意味驚きであった。
明らかに盗撮事件の一件だろうが、まさか一日で処分が決まるとは、思ってもいなかったのだ。
もしかしたら、学校側のほうで犯人が見つかった時の対応をある程度決めておいたのかもしれない。
とはいえ、亮にとってはある意味幸いなことなのではと思う。
何せ、一般生徒には亮が犯人であることはおろか、事件そのものが知らされていないのだから。
亮の名誉はある程度は守られたと言っても過言ではない。
(まあ、これで沙綾に対して傷つけそうなやつはいなくなったし、良しとしよう)
あいつは沙綾のことも盗撮をしていたのだ。
いずれにせよ、こうなる運命だったのだ。
親友だと思っていただけに、裏切られたという感情は少しあるけど……。
ただ想定外だったのは、沙綾を苦しめているのが亮の起こした一件ではないこと。
もし亮が原因ならば、昨日のような様子になっていないはずなのだ。
(沙綾のことは、絶対に俺が守ってやるからな)
俺は戸山さんと楽しげに話す沙綾を見て、絶対に守ってあげるんだと改めて決意した。
だから、この先どんなことが起ころうとも彼女を幸せにしてあげるんだ。
たとえ、沙綾に嫌われてでも。
そして、時間はあっという間に流れて放課後。
「茂」
「ん?どうしたんだ?」
クラスメイト達がそれぞれ帰ったり部活に向かったりする中、沙綾が俺のところにやってきた。
「今日は部活なんだよね?」
「ああ、そうだぞ」
沙綾の問いかけに、俺は即答に近い形で答える。
「悪いんだけど、今日は一緒に帰れないから部活が終わったら、先に帰っててくれるかな」
「それは別にいいんだけどさ……。何か用事でもあるのか?」
「うん……。ちょっとね」
俺の問いかけに沙綾が言い淀む様子を見て、俺は彼女が何か隠し事をしているのではないかと思った。
「……何かあったのか?」
「大丈夫だよ。心配しないで」
沙綾はそう言って微笑んで見せるが、俺はその笑顔の裏にある”何か”を感じ取っていた。
「沙綾、俺も一緒に行こうか?」
「だ、大丈夫だってば!」
俺の提案に、沙綾は慌てて首を振る。
その慌てる姿にますます不安になる。
(やっぱり、何か隠してるような気がするんだよな……)
俺は沙綾の様子を見ながら、そんなことを考えていた。
「本当に大丈夫だから。それに、約束……部活をサボっちゃダメでしょ?」
「そりゃあそうだけど……」
確かに沙綾の言う通りだ。
部活を休めば、俺の部長になる可能性はおろか、レギュラーから外される可能性だってあるのだ。
沙綾とした約束がある手前、それを無下にすることはできない。
「それじゃ、私は行くね」
「お、おい」
そう言って、沙綾はまるで逃げるように小走りで去っていった。
「沙綾……」
彼女の後ろ姿を見て、俺は思わず声を漏らす。
そんな時だった。
「どうしたの、茂君?」
「えっ!?」
不意に声をかけられて、俺は驚いて振り向く。
そこには、牛込さんの姿があった。
「茂君、何か悩みごと?」
「ああ。実は――――」
俺は牛込さんに沙綾のことを話した。
「そっかぁ……」
話を聞いた牛込さんが、難しそうな表情を浮かべる。
「ねえ、茂君がよかったら私が沙綾ちゃんの用事を手伝おうか?」
「え?」
牛込さんの突然の申し出に、俺は驚く。
「もしかしたら力になれないかもしれないけど、そうすれば沙綾ちゃんも茂君と一緒に帰れるようになるでしょ?」
「確かに、そうだけど……」
俺はそこで考えを巡らせる。
(確かに、牛込さんの申し出はありがたい)
牛込さんの提案は、沙綾との約束を無下にすることもなく、かといって俺の不安を取り除いてくれる可能性がある最高の一手ともいえる。
(だが……)
自分の恋人のことを人任せにして大丈夫なのだろうかという疑問は残ってしまう。
ましてや、沙綾の身によからぬことが起こっているかもしれないのに、それで良いのだろうか?
好きな彼女の危機が迫っているのであれば、駆け付けるのが彼氏……男なのではないかと思うのだ。
ならば、沙綾の後を追うことこそが、俺のするべきことなのではないだろうか?
たとえ、沙綾との約束を破ってでも。
(俺は……)
悩んだ末に、俺は結論を出すのであった。
沙綾編のアンケートも、残すところあと二回です。
この二回でエンディングが確定となります。
それでは、恒例のアンケートに入らせていただきたいと思います。
今回も、主人公に取らせたい行動をお選びください。
得票数の多い行動を主人公がとります。
期限は一週間後の10月3日までとさせていただきます。
皆様の貴重な一票をお待ちしております。
主人公の選択は
-
―――りみにお願いする
-
―――沙綾の後を追いかける。