BanG Dream!~happy? or Un happy~ 作:TRcrant
(ここは俺から言った方がいいだろう)
蘭が頼みたいことがあるとするならば、たいていがバンド関連であるのは推測できる。
蘭たち五人はガールズバンドを結成しているのだ。
名前はAfterglow。
共感性の高い歌詞など、それなりに人気があるバンドらしい。
かくいう俺は数えるくらいしかライブに行けていなかったりするわけだけど。
「もしかして、バンドがらみか?」
「……っ」
「おー、よくわかったね茂君~」
そんなこともあって予測して口にしてみた俺の言葉に、蘭は肩をびくっと震わせ、感心した様子で青葉さんが口を開いた。
「べ、別に茂に頼みたいこと、なんて」
そういう蘭は頬を赤く染めていた。
それは恥ずかしさによるものだというのは、俺でも分かった。
「蘭、バンド関連で俺には力になれないかもしれないが、好きな人の役に立ちたい。できれば話してほしい」
「……」
俺の言葉に、蘭は口を閉ざしたままだが、視線がいろいろな場所に向かっているので、いろいろと考えを巡らせているのかもしれない。
いや、葛藤している……といった方が早いだろうか。
「ねー蘭。モカちゃん言った方がいいと思うな~」
「蘭ちゃん」
「……わかったから、お願いだから」
さらに続く青葉さんと羽沢さんの言葉に、観念したのか絞り出すように口を開いた。
その顔はとても赤かった。
「……バンドの練習を見てほしい」
そして口にしたのがそれだった。
「練習?」
「実は……」
首をかしげる俺に、蘭はさらに詳しく話してくれた。
なんでも、二週間後にライブがあるらしい。
もちろん、彼女たちにとってはライブなんてこれが初めてではないのだから、さして気にする必要はないのだが、知り合いのバンドに近づくべく、さらなるレベルアップを図るべくどうしようかと模索した結果が、先ほどの提案につながる。
「でも俺、音楽とかそういうのあまり詳しくないぞ?」
自分で言うのもあれだが、俺は音楽とかの才能がない。
”絶対音感? 何それ、おいしいの?”状態だ。
「それは大丈夫。あくまで、本番を想定した練習をしたいだけだから、感想も簡単なのでもいいから」
そんな俺の疑問も、上原さんが答えてくれた。
(それくらいなら俺でもできそうだ)
要は、リハーサルの延長線上のようなものだろう。
「べ、別に無理だったら断ってもいいから……」
蘭はそう言いながらも顔は受けてほしいと書いてあった。
蘭が恥ずかしがっている理由は、誰かに頼ることの恥ずかしさというよりは、演奏を彼氏の目の前ですることに対するものなのかもしれない。
ただ、恥ずかしさと期待が入り混じった目で俺を見るのは反則だ。
断るなんて選択肢はなくなってしまう。
いや、そもそも断るという選択肢すらないんだが。
「任せろ」
反射的にそう答えていた。
「……ふぇ?」
呆然とした声と共に蘭が目を見開いた。
「俺でよければ、喜んで協力する」
腕組みして精一杯強がる。
内心では役に立てるのかどうか不安もある。
それでも──。
「おー茂君。『喜んで』だってさ。蘭、良かったねー」
「別に、嬉しくなんて」
からかいの意図を込めた青葉さんのこと場に、必死になって否定するが、そういうのって逆効果なんじゃと、最近思い始めていた。
「とか言っちゃって、顔がニヤけてるよ蘭ー」
「に、にやけてなんかないからっ」
案の定ニヤニヤとしながら追撃する上原さんに慌てて否定する蘭だが、微かに緩んだ口元は隠せていない。
「じゃあ早速明日はどうかな? いつものライブハウスでする予定なんだけど」
そんな二人をよそに、羽沢さんが嬉しそうに両手を叩きながら話を進める。
「ああ、わかった」
「茂」
俺が頷いたタイミングで顔を真っ赤にして反論していた蘭が、俺の方へ振り返りながら名前を呼ぶ。
そして、目を逸らしながら小さな声で呟いた。
「……ありがと」
照れた横顔が夕日に染まって、まるで宝石のように輝いて見えた。
「お礼なんて良いさ。ライブで最高のパフォーマンスを見せてくれよ」
「当然。とことん見てもらうからね」
俺の言葉に蘭はどこか得意げに微笑む。
それからそれぞれの分かれ道に差し掛かり、俺と蘭以外は違う道に向かっていった。
残されたのは俺と蘭の二人だ。
「「……」」
夕暮れの薄明かりの中、並んで歩く俺たちの影が地面に伸びている。
周りには他に誰もいない静かな通学路だった。
「……本当にありがとう」
突然、蘭が小さくつぶやいた。
その表情が赤いのは夕日のせいではないと思う。
「当たり前だろ。彼女が困ってるのに放っておけるか?」
そう言いながら内心では不安しかない。
今夜、音楽に関することを調べようと思ってる。
……役に立つかわからないけど。
「ただ……」
蘭が足を止め、それに倣うように俺も足を止める
「私、すごく緊張してるんだ。演奏を茂に見せるの初めてだし……下手って思われたくない」
蘭の言葉に、胸がきゅっと痛んだ。
その言葉はいつもの強い蘭じゃない弱音が零れている。
「ばか。なんでそう思うんだ?」
そっと手を伸ばして、
彼女の肩に手を添える。
「だって! 私、湊さんのようにうまくないし」
その言葉を聞いて、どこか納得がいってしまった。
彼女が口にした湊さんとは、同じ学園に通う一念上の先輩の名前だ。
Roseliaというバンドを結成しており、その実力はプロ級だと有名だ。
そして、蘭が張り合ってるのも、主に湊さん相手なのだ。
「違うだろ?」
俺は蘭に言い聞かせるように続ける。
「確かに湊さんはすごいのかもしれない。でも、俺にとってAfterglowだって負けず劣らずいいバンドだと思うぞ」
俺の言葉に驚いたように目を見開く蘭。
“すごい”というのは、実にいい加減な物だと思う。
実力で見るのか、それとも別の何かで見るのか。
結局の所、それに尽きるのだ。
ならば、俺は後者の方で見たいと思う。
「……そんなこと言われたら」
蘭は顔を赤くしながら俯いた。
そして、
「茂……ズルい」
怒ったような口調なのに、その瞳は潤んでいる。
可愛いなこの人は。
「ズルくて悪かったな」
「……でも嬉しいよ」
俺が苦笑すると、蘭は柔らかい笑みを浮かべた。
そのまま蘭は俺に向き直ると、指を絡めてくる。
「ねぇ茂」
急に呼びかけられてドキリとする。
「うん?」
軽く相槌を打ちながら彼女の次の行動を見守った。
すると突然、蘭は目を閉じて身を乗り出してきた。
そして
「……ちゅ」
柔らかい感触が唇に触れると同時に甘い香りが鼻腔を擽る。
それは短いけれど濃厚なキスだった。
「っ!? 蘭……?」
「さっきの、お礼……」
悪戯っぽく笑いながら顔を離した後も余韻に浸っているようで艶めいた吐息混じりで囁くように言うと、
「じ、じゃあっ」
恥ずかしさが頂点に達したらしく、そのまま駆け出してしまう蘭。
「……」
追いかけることもできずに、ただただその背中を見送る俺。
(不意打ちは反則だろ)
走っていく後姿を見つめながら思うのであった。
どちらのストーリーモードかは記載しませんのでご容赦願います。
どちらのモードかはステータス表記に、【親密度】があるか否かなどでご判断ください。
次回以降より、本篇スタートとなります。
下記にヒロインのステータスを記載しますので、よろしければご参照ください。
【親密度】:普通
Bポイント:Lv.0