ヒーリングっど♥プリキュア! とアダムとイヴになる話 作:a-su
組み敷いた少女が苦痛で震えていた。
花寺のどかの体は、とても小さかった。一言で言えば発育不良なのだ。手足は、長いが細い。胸は膨らみかけといった程度だし、腰回りもくびれていない。お尻は小さいが、太ももは太い。骨盤が広がっていないのかもしれない。
ユーイチは、のどかを気遣うように言った。
「のどかちゃん。痛くない? 大丈夫?」
「………………」
少女は、血の気の引いた顔で固まっている。
貫かれた秘部から流れた血がシーツを汚していた。
「……大丈夫です。わたし、平気ですから。早く、気持ちよくなって下さい。本当に平気ですから……」
「無理するなよ。のどかちゃんの体は、まだ子供なんだ。俺は別にのどかちゃんのこと、無理やり犯すつもりはないし、嫌ならいつでもやめるよ。女の子を泣かせるなんて趣味じゃないんだよ」
「……大丈夫です、わたしは大丈夫ですから、だから早く、早く子供を産ませて下さい……地球の子供を……! お願いします……!」
そう言って、のどかはユーイチにしがみついた。
ヒーリングっど♡ プリキュア!
と
アダムとイヴになる話
ユーイチは、何も言わずゆっくりと腰を前後した。
「……っ」
のどかが声にならない悲鳴を上げる。大きな目から涙がこぼれ落ちた。
「うぐぅっ……ううううっ……!」
「……のどかちゃん、やっぱりもう止めよう」
「大丈夫です、大丈夫です! 続けてください!」
「いや、でも、すごく苦しそうだし……」
「お願いです! わたし、地球のために頑張りますから! 赤ちゃんを産むために、わたし、何でもやりますから! みんなのためにっ、ユーイチさんの赤ちゃんを……!」
ユーイチは、かぶりを振って体を離した。
見守っていたアスミが慌てて駆け寄り、のどかの手を取る。
「のどか、もういいのです。のどかはよく頑張ってくれました。何も心配しなくていいのです、ね?」
「でも、でも、このままじゃ、地球が復活しないのに……地球を救えるのはわたしたちだけなのに、わたしのせいで、わたしが間違えたせいで、みんな死んじゃったのに……! 何にもできないまま終わっちゃうの、そんなの、そんなのダメだよ!」
「のどか……許して下さい、あなたがこんなに傷ついていたなんて……」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ベッドの上で泣き続ける のどかをアスミが抱き寄せた。
「ユーイチ、後はわたくしに任せて下さい。のどかを寝かせておきます」
「分かった、頼んだよアスミ」
服を着て部屋を出ると、ドアの向こうで ちゆと ひなたが待っていた。
「あなた、お疲れ様。のどかはどうだった? 少しは落ち着いた?」
「ユーくん、のどかっちは大丈夫なの?」
「ああ。今はアスミがついてるよ。それより、のどかちゃんの事を教えてくれ。わたしのせいでみんな死んじゃったって、どういう事だ?」
ちゆが ひなたに目配せをした。
「場所を変えましょう。のどかに聞こえたらまずいわ。私の部屋に来てくれるかしら?」
「ああ、わかった」
◆◆◆
ちゆの部屋で、3人はちゃぶ台を挟んで座っていた。
「さっきの続きだけど……地球が滅んだのは、決してのどかのせいじゃない。あの子は何も悪くないわ。それだけは分かっておいて欲しいの」
「のどかっちは、何も悪いことはしてないよ。信じてあげて」
「ああ……でも、あの様子を見ると、のどかちゃん自身はそう思っていないみたいだぞ。一体どうしてあんなに自分を責めているんだろう?」
ちゆとひなたは、のどかについての話をしてくれた。
◆
四人の中で、のどかが最初にプリキュアになったこと。ずっと病床にあって、学校にも行けなかったこと。そのせいか人を助けたいという意志が旺盛で、チームの精神的支柱だったこと。
彼女の病魔は、寄生したビョーゲンズが原因だったこと。そして最後は、そのビョーゲンズに殺されたこと。
◆
「……ダルイゼンに殺される時も、『わたしのせいで地球が滅びちゃう』って言ってたわ」
「ダルイゼン……そいつがのどかちゃんに取り憑いていて、最後には殺してしまった……」
そこまで言って、ユーイチは矛盾に気づいた。
ずっと病床にあってビョーゲンズに殺された、プリキュアとしてビョーゲンズと雄々しく戦った、では話がつながらない。
「ちゆ、それだけじゃないな。まだ俺に話していないことがあるだろう。それはなんだ?」
ちゆとひなたが顔を見合わせた。
そして、ちゆが重い口を開いた。
「これは、私たちだけの秘密にしておいて欲しい。ヒーリングアニマルにも、話さないで欲しいの。私たちからのお願い」
「分かった。約束するよ。それで、秘密ってなんなんだ?」
ちゆが大きく息を吸い込んだ。
「のどかとダルイゼンは、一度分離したの。その後にのどかはプリキュアになり、ダルイゼンと何度も戦ってきた。ダルイゼンは、他の生命を踏みじることに、なんの躊躇もなくて……」
「悪魔みたいなやつだった。あの悪魔のことは、いつか倒さなきゃならないって、アタシたち、ずっとそう思ってた」
彼女たちとダルイゼンの戦いは長く続いたらしい。その内にダルイゼンがビョーゲンズの内輪もめで追われる身となり、戦いは自然消滅した。
しかし、ダルイゼンは生きていた。のどかに再び寄生して。
「……なぜ、そんなことに」
「私たちも驚いたわ。追い詰められた奴は、のどかに
◆
『助けて……くれ……このままじゃ……オレは、オレじゃなくなる……消えて、なくなる……頼む……キュアグレース……お前の中にオレをかくまってくれ……』
◆
目まいがした。
「それで、助けてしまったのか? また寄生されるのが分かっていて、それでも見捨てなかったっていうのか?」
「……私たちだって、そう言ったわ。でも、あの子は聞き入れようとしなかった。ダルイゼンが改心するまで、一緒にいると言って聞かなかった。あの子の決意は固かったわ。私にはどうすることもできなかった」
ちゆは悔しそうに拳を握った。
「……ダルイゼンの狙いは、のどかの体に隠れて力を蓄えることだった。私たちは、なんとか敵の親玉、キングビョーゲンを倒したけれど……」
「アイツは、弱りきったキングビョーゲンを吸収して、キングダルイゼンとかいう趣味の悪い化け物になったんだ。アタシたちは必死に戦ったけど、まるで歯が立たなくて……」
ひなたが肩を震わせている。死の記憶を思い出させてしまったようだ。
ユーイチは、ひなたの隣に座り抱きしめてやった。
ひなたが嗚咽を上げ始める。
ちゆは黙って見守っていた。
◆◆◆
「……そして三人を殺したキングダルイゼンは、わたくし……キュアアースによって倒されました」
腕の中で、十年前の戦いを生き残った最後のプリキュアが寂しげに微笑んでいる。
のどかを寝かしつけたアスミは、ユーイチを激しく貪ってから最後の戦いについて話してくれた。
「最もそのための力を蓄えるのに、わたくしは時間を消費し……地球の生命は死に絶えてしまいました」
何も言えず、アスミの髪を撫でる。
「わたくしも、最後は力尽きて荒野で死を待つばかりでした。もう生きていても仕方ない、これでみんなの所に逝ける……そう思ったのを覚えています」
そう語るアスミは、どこか遠い目をしている。
悲しみよりも懐かしさを感じさせる横顔を見つめながら、ユーイチは何も言わずに話を聞いていた。
「その時にラテ……当時のパートナーが、最後の力でわたくしをヒーリングガーデンに送ってくれたのです。わたくしは何の生きる目的もなく十年を過ごし……」
そして貴方に出会いました、とアスミは話を締めくくった。瞳をまっすぐにユーイチへ向けてくる。
「……なら、そのラテさんこそが地球を救うチャンスをくれたんだ。とてつもなく偉い人だな」
「人……ふふっ、ええ、そうですね。きっと、そうだったのだと思います」
ユーイチの言葉に、彼女は少し嬉しそうな顔をした。
少しだけ沈黙が続く。
「………………なあ、アスミはさ、のどかちゃんの行動は間違っていたと思うか?」
「言いたくありません」
はっきりとアスミが拒絶の意を示した。
「わたくしは、十年間、のどかがダルイゼンを助けなければどうなっていたか、考えてきました。一人で……」
だから、言いたくありません、ともう一度繰り返した。
「……ごめんなさい。わたくしの個人的な感情の話になってしまいますね。パートナーなら隠し事はしないで欲しいと、自分で言いましたのに……」
「いや、いいよ。話したくないことを無理矢理聞くつもりはないから」
ユーイチはそう言って笑ったが、アスミは真剣な眼差しのまま続けた。
「わたくしは、………………のどかの決断を否定したくありません。大切な仲間が自分で選んだ道です。わたくしはただ、のどかに後悔して欲しくなかっただけです。わたくしのように……」
「アスミ……」
「わたくしは、のどかに幸せになってもらいたいです。そう思って、あなたとのセックスについても教えました。でも、のどかがあんなに傷ついて、苦しんでいたなんて、思いませんでした」
アスミは、涙声を漏らして俯いてしまった。
涙を拭い力を込めて抱きしめる。
「アスミ、もう自分を責めるのはやめろ。君が責任を感じる必要はない。のどかちゃんを傷つけて泣かせたのは俺だ。あれは俺の責任だ」
「……はい、ユーイチ」
「それに、のどかちゃんはそんなに弱くないさ。自分の意志を貫く強さを持っている。そうだろ?」
「……はい。わたくしも、そう思います。ありがとうございます」
アスミは頬を赤らめて俯きがちにそう言った。
四人のプリキュアは、悲しい記憶を背負っている。
自分に抱かれてくれた女の子たちのために、自分は何ができるのか。
ユーイチの考えは
◆◆◆
翌朝。
ちゆも ひなたも アスミも見守る中、起き出してきたのどかに対しユーイチは土下座を決行した。
「のどかちゃん! おはよう! 昨日は本当にすまなかった!」
リビングの床に額を押し付けて謝罪する。
のどかが驚いたように目を見開いた。
「え? えっと、どうして謝るんですか?」
「俺はのどかちゃんの体調を無視していきなり君の中に入ってしまった! 本当にすまない! のどかちゃんが許してくれるなら、いつかもう一度俺とセックスしてくれないだろうか!?」
ユーイチは、頭を床に擦り付けたまま一息に叫んだ。
「あの、頭を上げてください。わたしは気にしてませんから……」
困ったような表情で、のどかがユーイチの肩に手を置いた。
「本当かい!?」
ユーイチは、弾かれたように顔を上げて目を輝かせる。自分でも演技過剰だと思うが、ちゆもひなたもアスミも何も言わず、成り行きを見守ってくれていた。
「そんな……はい。確かに痛かったです。でも、わたしが決めたことですから、謝ってもらう必要なんて」
「いいや、これは俺の責任だ! 男として、君の痛みは俺が引き受けなければならない! それが俺の贖罪なんだ!」
ユーイチは力強く言い放った。
アスミたちは、何やらひそひそ話をしているようだ。恐らく、ひなたの疑問に答えているのだろう。
ユーイチは羞恥心を抑えられなかったが、今はとにかく勢いが大事だと自分に言い聞かせた。
その勢いに圧倒されたか、のどかも口をつぐんでいる。少し考えてから口を開いた。
「あの、じゃあ……わたしにも何か埋め合わせをさせてくれませんか?」
「ほう、どんなことを?」
「えっと……、あっ! お料理のお手伝いとかはできます。あとは掃除と洗濯と……」
「ええっ! のどかちゃんに、そんな事はさせられないよ!」
「むっ! わたしだって家事くらいできるもん!」
「でも、君は病み上がりじゃないか。無理は良くないと思うなぁ。俺がやるから大丈夫だよ。任せといて!」
「ううん、ダメ。それだと、ユーイチさんにばっかり負担がかかるもの。だから、お互いに支え合うの。どう? ……ですか?」
「ふぅん、そういうことか……まあ、のどかちゃんがそれで納得しているなら、構わないけど……」
「決まりだね。ふふふ」
「よし、じゃあまずは朝ごはんを食べようか」
「はーい」
五人は食卓につき朝食をとった。
のどかはパンを小さくちぎって口に運びながら、ひなたと談笑していた。アスミも微笑みを浮かべて、その輪に加わっている。
(あなたって、お芝居が下手ね)
ちゆがヒソヒソと話しかけてくる。
ユーイチは、ちゆにだけ聞こえる声で返事をした。
(こういう時は、女の子に謝らせないように、男が責任を被るのが一番いいんだよ。ほら、のどかちゃんも楽しそうだろ?)
ちゆがため息をついた。
(はぁ……あなたって本当にバカよね。のどかが罪悪感を抱かないように、ピエロになるなんて。まったく……、中学生に土下座してもう一度セックスしてくれだなんて、ロリコンの犯罪者にしか見えないわよ)
ユーイチは、ちゆの言葉に苦笑いした。
(俺はただ単に、みんなに恩返しがしたいだけだよ。君たちのおかげで、今の俺があるんだ。これぐらい安いもんじゃないか)
ちゆが呆れたように肩をすくめた。
「ごちそうさまでした。美味しかったです。ありがとうございます、ユーイチさん」
のどかが両手を合わせて、にっこりと笑う。
「お粗末様でした。さあ、片付けはみんなでやろう! 俺が食器を運ぶから、のどかちゃんは洗ってくれるかな?」
「はい! 精一杯、頑張ります!」
◆◆◆
朝食の後、ユーイチはひなたとベッドに入っていた。
「ユーくん、お疲れさま。男らしくてカッコよかったよ♪」
ひなたはユーイチをしきりに褒めながら、背中に乗ってマッサージをしている。
「えへへ、気持ちいい?」
「ああ、すごく良い。上手いなぁ、ひなたは」
「でしょでしょぉ☆ ねえ、ユーくん、次はどうするの?」
次? とユーイチが聞き返すと、のどかっちのこと、とひなたは答えた。
「そうだな、とりあえず今は、ひなた達と一緒に生活することで心の傷が癒えればいいな、くらいかな。まだ何も話せてないし、焦ることはないよ。少しずつ距離を縮めていけばいい。もちろん、のどかちゃんが良ければだけどね」
「そっか。じゃあ、アタシたちは のどかっちのことを見守ってあげないとね。ユーくんの言う通り、焦らないことが大事かもね。のどかっちには、ユーくんが必要な気がする。だから、二人で助け合ってね」
「わかった。ありがとう、ひなた」
「えへへ、どういたしまして。……ねえ、アタシのこと、次はどうする? もう1回、する? それとも、もう寝ちゃう? なんなら、このまま夕方まで眠っちゃう?」
「えっと……じゃあ、もう一回しちゃおうか」
「やったぁ! ユーくん大好き♡」
ひなたはユーイチの耳元で囁くと、頬にキスしてきた。
◆◆◆
のどかは、アスミと ちゆと一緒に洗濯物を干していた。
こういった集団作業では ちゆに一日の長があり、てきぱきと指示を出してくれる。
「のどか、そのシャツはこっちに干して。アスミはそこのシーツをお願い。私はこのタオルを干してくるわ」
「うん、任せて」
「わかりました。任せてください」
三人は和気あいあいと作業をしている。
「よし、こんなところかしら。のどか、手伝ってくれてありがとね。助かったわ。アスミも。手際が良くて驚いたわ」
「はい。わたくし、一人暮らしが長いものですから家事は一通りできます」
料理以外は、と小さい声で付け足す。
のどかは何となく笑ってしまった。
(ちゆちゃんもアスミちゃんも、幸せになってほしい)
「……どうかしましたか?」
「ううん。なんでもない。いいお天気だなって思って」
「そうですね。雲一つありません。お日様がぽかぽかしています」
「本当ね。気持ちがいいわ」
雲一つない空。優しい太陽。真っ白な洗濯物と、幸せそうな仲間たち。
自然と、のどかの口癖が出てきた。
「わたし今、とっても生きてるって……」
『ああ、生きてるって感じだねぇ』
ヒッ……
この世で一番聞きたくない声が聞こえて、のどかは声も出せずに意識を失った。
◆◆◆
のどかが倒れたと聞いて、ユーイチとひなたは慌てて部屋を飛び出した。
「アスミ!」
「アスミン、のどかっちは!?」
のどかの部屋から出てきたアスミが二人を押し留めた。
「落ち着いてください、ひなた。今は眠っていますから、安静にさせてあげましょう」
「そっか……でも心配だよ。一体どうして急に……もしかしたら、またダルイゼンが……!」
「分かりません。体に異常は見られませんが、酷くうなされています。今、ちゆがテアティーヌの所に道具を取りに行っていますから、それを待ちましょう」
ユーイチはぎりりと歯を食いしばり、クソッタレのバイキン野郎め、と呟いた。しかし今ユーイチにできるのは、不安に震えるひなたを抱きしめる事だけだった。
◆◆◆
花寺のどかはうなされていた。悪夢の中に、どこまでも落ちていく。その先にあるのが地獄だと分かっていても、彼女は抗えなかった。
一つ目の地獄では、死んだ両親がいた。
血まみれで転がる両親は、うつろな目でのどかを睨みつけている。両親を殺したのは怪物ではなく、のどか自身だ。のどかは自分の手で両親の命を奪ったのだ。手についた血が罪の象徴に思えた。
二つ目の地獄では、ちゆがいた。
ちゆも両親と同じようにのどかに憎悪の目を向ける。そして二人は殺し合いを始めた。ちゆの持つ包丁がのどかの胸を貫く。
三つ目の地獄では、ひなたがいた。
彼女が楽しそうに笑っていたので、のどかは縋り付いた。ひなたは笑いながら、のどかを刺し殺した。
四つ目の地獄では、アスミがいた。悲しげにのどかを見つめると、手にしたナイフで自分の喉元を突き刺した。
五つ目の地獄では、ラビリンが現れた。地球を守るためと言って、のどかを殺そうと襲いかかってきた。
六つ目の地獄では、ユーイチが待っていた。ユーイチは ちゆとひなたを殺すと、アスミと一緒にのどかを犯した。
もう死んでしまいたかった。こんなにも苦しい思いをするくらいなら、いっそ楽になってしまいたい。
七つ目の地獄には、何もなかった。暗闇の中に、ただ閉じ込められている。
その内、目の前にダルイゼンがやってきた。優しく微笑むと、両手を広げてこう言う。
キュアグレース、ありがとう…… 君のおかげで…… 俺は救われた…… 君の愛のおかげだよ…… さぁ、こっちへおいで 一緒に生きよう この世界で ずっと二人で 永遠に 終わりのない物語を 紡いでいこう 君を愛している グレース 君は? 教えて欲しい 苦しいのかい……グレース……助けてあげるよグレース……………… ああ、やっぱり 君は素晴らしい 世界で一番美しい グレース 愛している 俺だけのグレース グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……グレース……
ダルイゼンの声が永遠に続くようで、自分の悲鳴も永遠に終わらないのでは、と思った時である。
『勝手にオレを出演させるなよ、キュアグレース』
はっ、と息を飲んだ。
ダルイゼンがもう一人いる。のどかの苦しみに何の同情もなく、ただ嘲笑うだけのダルイゼンがいる。
『ありがとうとか愛してるとか、勝手に喋らせないでくれないかな。助けてやったんだから改心したり感謝するだろうなんて、お前の妄想だよ』
もう一人のダルイゼンが手を振ると、「優しいダルイゼン」は霞のようになって消えてしまった。
しかし消えた瞬間、別の幻影が現れる。のどか自身の姿だった。彼女は別の「ダルイゼン」に犯されながら、泣いて許しを求めている。
『それもお前の妄想だ』
「のどかを犯すダルイゼン」の幻が消える。
次に現れた幻は、「改心したダルイゼン」が、泣きながら自分の罪を謝罪しているものだった。それを見て、のどかは嬉しく思う。でも、その「ダルイゼン」もすぐに消された。
次に姿を現したのも、やはり違う人格に変わった同じ姿の別人。
「のどかを殺すダルイゼン」
「のどかを生かすダルイゼン」
「のどかと結婚したダルイゼン」
「のどかと和解するダルイゼン」
「のどかを監禁するダルイゼン」
「のどかを拷問するダルイゼン」
「のどかを陵辱するダルイゼン」
「のどかに毒を盛るダルイゼン」
「のどかにキスをするダルイゼン」
「のどかにプロポーズするダルイゼン」
「のどかを殺して、自分も死ぬダルイゼン」
「のどかを殺さず、地球を滅ぼすダルイゼン」
「生まれ変わって赤ん坊になったダルイゼン」
「のどかと……
『それも全部妄想だ』
全ての幻影が消え去る。
悪夢の中に残っているのは立ちすくむのどかと、嘲笑うダルイゼンだけだ。
『少しはオレを見なよ、キュアグレース。
オレはお前に命乞いをして助けられ、地球を滅ぼしてキュアアースに殺された。
オレはお前に何1つ感謝していない。
お前に何の感情も抱いていない。
オレはいつでも、オレにとって居心地の良い世界を作るために生きている。
オレにとって大事なのはオレだけだ。
それがオレだ、キュアグレース』
自分勝手なダルイゼンは、のどかから離れて歩き出した。
のどかは待って! と叫んだ。
『待つわけないだろう? お前はここでずっと苦しんでいれば良いんだよ』
もう一度、お願いわたしを助けに来て、と叫ぶ。
『助けるだと?』
ダルイゼンが鼻で笑った。
『オレがお前を助ける理由なんか、どこにもないね。お前を救えるヤツなんかいやしない。だから、お前が救われたいと願うなら、自分で自分を救いなよ。まあ、もっとも…… 本当に助かりたいならの話だけどさ』
ダルイゼンは、最後までのどかを嘲笑いながら消え去った。
残されたのどかは、俯いたまま立ち尽くしている。しかし、やがて顔を上げると右手の拳を強く握りしめ、地面に叩きつけた。
地獄の底に、ピシピシと亀裂が入る音がした。次の瞬間、地面が崩れ落ちる。
「……わたしは!」
のどかは八つ目の地獄に放り出される。そこには見覚えのある怪物たちが待ち構えていた。
ビョーゲンズ幹部のシンドイーネに、グアイワル。数多くのメガビョーゲンに、山よりも巨大なキングビョーゲン。
のどかは、その全てを自分の拳で打ち砕きながら駆け抜けた。
「絶対に!!」
九つ目の地獄には、キュアグレースがいた。そいつは命乞いするダルイゼンに
のどかはその背に向かって飛び蹴りを放った。吹き飛ばされるキュアグレース。彼女に追いすがり馬乗りになって何度も殴りつける。
だがキュアグレースはのどかを押し返し、逆にマウントポジションを取って一方的に殴ってくる。
必死に抵抗し反撃を試みるが、キュアグレースの方が力は上だ。のどかの顔は血まみれになり、キュアグレースの方も息切れしている。
「あ……諦めない……!!!」
のどかは歯を食いしばり、力を振り絞る。そしてキュアグレースの顔面を思い切りぶん殴る。
キュアグレースは仰け反るが、すぐに体勢を立て直して襲い掛かってきた。
◆◆◆
……覚えているのは、そこまでだ。夢は終わりを告げ、のどかは目を開く。
目の前には、アスミやちゆ、ひなたが微笑んでいる。
「みんな……」
のどかは涙を流した。
(続く)