ところでその資格はない、おぉその資格はない。
あれは、何時の夜だったろうか。
星の流れぬ空、砕かれた教会。暗月の夜に、師の遺品である霊馬の持ち主を探していた私は、とある褪せ人と出会った。
みすぼらしい男だった。剣もなく、衣服も持たず、あるのは無骨な棍棒ひとつ。言ってしまえば素寒貧の出で立ちで、初めから奇妙な男であった。
その男に私はレナと名乗り、師より頼まれた預かりものを渡して、二度と会わぬであろう褪せ人との邂逅を終えた。
まさか二度目があろうとは思わなかった。招待状を出した覚えはなかったが、その褪せ人はカーリアの城館に居を構える私の前に再び現れた。
相変わらず、服を着ない男だった。何かしらのこだわりがあるのだろうか、男は棍棒のみを頼り、しかし門番であるローレッタの幻影を――そして破片の君主たる黄金のゴドリックを倒してきたのだ。
奇妙である。奇矯である。狂人と言っても間違いではないだろう。事実として、男の目は乾いていた。
飢え、乾いた瞳だ。男は何かを求めていた。それが何なのか推し量ることはできなかったが、私は特に用もなく二度目の邂逅を果たした男に運命を感じた。
黄金律に縛られた、私の運命。止められた星の流れを、男との出会いが動かすように見えたのだ。
こうして、奇妙な褪せ人は私の家臣となった。願わくば次の目覚めが、吉報であらんことを。
私はラニ。月の王女、二本指の敵対者。いつかすべてを裏切り、全てを棄て、暗い路をただ一人行かんとする者。
……ああ。この時はまだ、想像すらできなかったのだ。
この奇妙な褪せ人が、私の王となる未来など。
狭間の地を離れ、幾星霜が流れたろうか。
私の律。暗い月、星、運命の孤独。冷たく、迷い、決して触れられぬ、遥か彼方にすら見えぬ律。
黄金律は間違っていた。律は、何人にも触れられぬものであるべきなのだ。夜空に浮かぶ月のように、それすらも曖昧な光であるように。
けれど、孤独であったはずの私の旅には、王がいる。永遠なる私の王――唯一にして無二の伴侶が。
男は何時からか、布一枚であることをやめた。狼を模した戦鬼の諸相を取り、その背にはブライヴの誓いの証たるグレートソードが掛けられている。
……余計な詮索はすまい。私はそう、定めている。男は何も語らない。だが忠実であったブライヴのように、言葉なく私に従っている。
やはり奇態だ。男は何時だって奇妙で、面白く、優しい側面もある――無慈悲なまでの公正さを持つ、褪せ人であった。
……だから、だろうか。私はいささか驚いている。
まさか男が、肉持たぬ人形の身でしかない私と、褥を共にしたいなどと願ったことを――
「ん……」
罅割れた私の顔に、男が唇を重ねてくる。
硬く、優しい口付けであった。数秒か、数十秒か。時間の感覚を忘れてしまうほど、初めてのそれは存外に心地良かった。
「……終わりか?」
男の顔が離れる。見つめ合う。思わず唇から零れてしまった言葉は、まるで催促のようだった。内心の恥を気取られぬよう、努めて顔を固めていた私は、再び口付けする男の体温にゆっくりと解されていく。
「……まったく。お前は本当に呆れた奴だ。まさか人形である私に欲情するなど、以前人形に話しかける趣味があるのかと言ったのは正しかったか」
バツが悪そうにする男に、くすりと笑う。やはり、こうでなくては。私が上で、男が下。如何に神人たるを棄て、故郷をも棄てようと、矜持までは棄てていない。
男は私の王で、私のものだ。他の誰にも渡すつもりはない。永遠に、私の側にあってくれなくては。そう思い、微笑んでいると――不意に、とさりと。私は男に押し倒される。
男は私の頬を撫で、ついばむように唇を落とした。何度も、何度も、飽きもせず。飢え乾く獣のように、執拗に私を求めてくる。
やがて、ひっそりと開かれた男の口から舌が這い出し、私の口内に侵入する。熱くぬめる、大きな触覚。不本意ながらも私はそれを迎え入れ、しばらく男の好きにさせた。
煽り過ぎただろうか。それとも我慢が効かなくなったか。どちらにせよ、男は半ば獣だった。今は言葉も届くまい。貪られるのは趣味じゃないが、頬を撫でられる感触は悪くない。されるがままに受け入れていると、やがて男は満足したのか、ゆっくりと私から離れていった。
私の唇と、男の舌。唾液の橋が、それを繋ぐ。
「満足したか? 私を押し倒し、思う存分舐るなど、さぞかし心地良かったろうな。
……いや、まだまだこれからと言ったところか。そうだろうな、お前のここはこんなにも、熱く滾っているのだから」
私は四本の腕を動かし、雄の象徴たる場所に触れる。途端、びくりと震える男。それがどこかおかしくて、からかうように私は身を寄せた。
「どうした? これからこの、お前の雄の象徴で、私を貫きたいのだろう?
そんなに震えてどうする。仮にも女である私から誘わせるなど、恥だぞ、お前」
男の太い首に腕を絡め、残った二本で体を撫ぜる。男の無骨な肉体は、数々の戦いを潜り抜けた証だった。私も一度、見たことがある。災いの影を打ち倒せし、男の英雄的所業。男は、褪せ人は、本質的に戦いを求めている。
乾いているのだ、この男は。未知に、戦いに、そして勝利に。幾億の敗北を経て、ただ一つの価値ある勝利を掴むため、男は戦いに身を投じる。飽きもせず、飽きてなお、そうせずにはいられない。
だからこそその乾きが、私に向くとは意外だった。純粋な、幼ささえ見えた男の乾きが、こんなにも熱くたくましい欲望となって私を襲うなど、考えもしなかったのだから。
けれど、それも仕方のないことであるかも知れない。男は王で、私の伴侶。たった二人の孤独な旅が、男の獣性を目覚めさせたのは、きっと必然であったのだろう。
「そら、閨の作法を教えてやろう。こういう時は、お前が私を導くのだ。
くたびれた人形の体とて、お前には十分のようだからな。その手で、私の糸を剥ぎ取ってくれ。一糸まとわず抱き合うことを、お前は望んでいるのだろう?」
首元に顔を寄せ、吐息を吹きかけるように囁いてやると、男はぎこちなく動き出す。私を脱がそうとする手付きはひどいものだったが、そうであることが少し、嬉しかった。
私がそうであるように、きっと男にとっても、これが初めて。ならば多少の無礼は見逃そう。きっと私にまだ肉体があれば、男のように、弾けそうなほど鼓動が高鳴っていただろうから。
苦闘する男の表情を楽しむこと十分、ようやく私の衣服が脱がされる。かつての師の衣装を象った布はそっと側に置かれ、私も、男も、肌のすべてをさらけ出していた。
「…………何だ、そんなに見つめるな。存外に、恥ずかしいだろうが」
充血した目つきで私の肢体を眺める男に、思わず体を抱きしめてしまう。こんな人形の体だというのに、どうしてこうも興奮しているのか。星明かりの下、暗い影に屹立する男の象徴が視界をかすめるたび、私は視線をそらしてしまう。
……ああ、そうだとも。こんな事態は予想だにしていなかったが、人形たる私の体は徐々に肉を持ち始めている。私の律たる月の律を宿したために、律が私をふさわしい形へと変えようとしている。
月の神性、女性の面。少女人形である私の外面は、女を強調するように胸を、秘部を、形作っている。私の律ゆえに子を成す機能までは備わってないが、男の欲望を受け止めるに十分な姿であることに違いはなかった。
「……優しく、だぞ? 優しくだからな。触れても良いが、乱暴に扱ってくれるな。私とて……初めて、なんだ」
頬を染めて、か細く言うと、男の欲が膨れ上がったのを感じた。手のひらで触れる、熱く、硬く、大きなそれが、私を求めているのが分かる。
きっと男は、それを必死に押さえつけているのだろう。震える角張った手が、私の胸にそっと触れる。瞬間、甘く吐き出される私の吐息。まったく、私の律は、敏感に体を形作っているらしい。
「んっ……んう……んっ……」
自分の意志ではない嬌声が、強く結ばれた唇から零れる。男が触れ、なぞり、指を沈み込ませるたび、ぴりぴりとした快楽が胸から全身へと流れていく。
「んっ……あっ!」
控えめな乳房の、頂点に触れられた時のそれは顕著だった。とっさに口元を手で覆ってしまうほど私の声は大きくて、ちらりと見た男の顔は、もはや獣のそれであった。
フーフーと、熱い息が吹き上がっている。歯を噛み締めているのは、まだ我慢しているからだろうか。けれどそれも、ほどなくして断ち切られた。男は私に覆い被さり、赤子のように乳を求める。
「お、おい!? それは、まだ……! ああっ!?」
男の暴走を止めようとした私の抵抗は無意味だった。四本の腕は二本ずつ手首を掴まれ強引に開かれ、男の舌が、唇が、私の胸を蹂躙する。
「あっ!? ああっ! あっ、んあっ、ああっ!」
迸る強烈な快楽に、私ははしたなく声を上げるしかなかった。生身であった神人の時ですら、感じたことのない未知の快感。それは男が欲のままに乱暴するごとに、私の体を跳ね上げさせる。
貪られる。生娘のように。事実としてそうであるが、不思議と恐怖はなく、快楽と心地良さだけが突き抜けていく。強く閉じられた私の太ももに、熱い何かを感じる。へこへこと腰を動かす男の膨張が、しきりに私の秘部を擦ろうとしてた。
まずい。これは、まずい。自分の制御が効かない、快楽に飲み込まれそうになる。どうにか抵抗しようにも、神をも殺した男の力はすでに私を超えていた。どうにもならず、吸われ、揉まれ――ついに、私の限界が訪れる。
「あっ! ああっ! ああ――――っ!!!」
びくりと、一際大きく私の体が跳ね上がった。快楽が全身に広がり、星の光が頭に弾ける。ぱちぱちと、バチバチと、それは私に襲いかかり、私は甘く、甘く、長い嬌声を、吐き出すことしかできなかった。
「はあ、はあ、はあ……」
しばらくの間、私は力なく横たわっていた。快楽の波に流されるまま、全身でそれを受け入れている。ぼおっとした視界に、私を見つめる男の顔。それを眺め、近づいて、どちらともなく口付けを交わす。
長く、長く、溶け合うように。私から、男から、舌を伸ばし、絡め合う。何度も、何度も、溢れ出る熱を交わし合うように、私は男と唇を重ね、貪りあった。
「……やってくれたな、下郎」
やがて、体を苛む快楽の余韻も治まった頃。惜しむように男との口付けを終えた私は、キッと眉を上げて、男の象徴を握り潰さんばかりに掴んだ。
途端、慌てる男を黙らせるように、私はぎゅうっと力を込める。
「優しくと、私は言ったはずだぞ。なのにお前は、随分と好き放題してくれたな。私の抵抗を物ともせず、満足そうに……そんなに私を辱めるのは楽しかったか?」
男が腰を引こうとすると、力を強めてそれを制する。私を押し倒す男を体を寄せて起き上がらせ、座る男の股の間に、私は腕と、顔を寄せる。
「今度は私の番だ。ああ、抵抗は無駄だと思えよ。お前は褪せ人なのだから、一物を引き抜いてやっても構わんのだぞ」
私が冷たくそう言うと、男は石のように硬直した。その姿に少しだけ、満足感を覚えて、私は男の一物に頬を擦り寄せる。
「まったく……こんなにも熱く、猛々しくして……今にも暴発しそうだな? だが、我慢してもらおう。僅かだろうとやり返さねば、私の気が収まらん」
すりすりと雄々しく硬い一物を頬でこする。我慢を強いられ、苦しそうに呻く男を見上げながら、フゥーと息を吹きかける。それに一々反応する男に、私は深い優越感を抱いていた。
私はこの路に至るまで、多くの書物を読み漁った。中には房中術に関するものもあり、この行為もそこから得た知識だ。
勿論、そんなことをこの男に言うつもりはない。耳年増と思われるのは心外であるし、何より私は男に多くの恥をさらし過ぎている。これ以上の恥の上塗りは、私とて御免だ。今この状況が恥の極致と言われたら、その通りではあるのだが。
ともあれ、今は本の知識に従おう。まずは丁寧に、焦らすように、口付けの雨を肉棒に降らせる。幹、先端、暈と裏側。ところどころ舌を這わせてやれば、男の苦悶は大きくなる。
それを楽しみながら、私は男から視線を逸らさない。常に上目遣いで見上げることで、男の欲を掻き立たせる。そういうものであるらしいが、男の反応を見ればあながち間違いでもないのだろう。
「ふぅん……こんな臭いと味なのだな。普段であれば口にもしたくないが、お前のものであるのなら、まあ、悪くない」
言葉に少しばかり甘さを乗せて言ってやると、男の欲がはっきりと膨らんだのを感じた。怒張、といっても過言ではないくらい、私の握るそれは張り詰めている。
手に伝う脈動、その速さ。そろそろ限界も近いだろう。ならばと私は知識通り――一息に肉棒を飲み込んだ。
男の驚きが伝わってくる。震える肉棒が快感であると訴える。裏筋を舌で扱いてやれば、その震えはいや増した。
なるほど、これは覿面のようだ。私はそのまま吸い上げながら頭を動かす。肉棒を啜り立てる下品な音が響くが、構わない。
ここには私と、私の王しかいないのだ。一時の恥であろうとも、男が喜ぶならそれでいい。事実として、私の所業に男はもう限界のようだった。
ビクビクと口内で肉棒が跳ね上がる。喉奥を貫く熱い剛直が、限界だと言わんばかりに張り詰めた。
それに応えるように、私が根元まで飲み込んで一際強く吸い上げた瞬間――ドクンと、私の体内に熱い奔流が迸る。
「んっ!? んっ……」
それが放たれると同時に、男は私の頭を掴み、腰を押し付けた。少しばかり驚くも、私と同じように自分を制御できなくなっているのだろうと判断する。
私は男の好きにさせるまま、吐き出される欲望を嚥下した。それは熱く、どろりとして、しつこく粘つく。ほんの少しの量でも飲み切るのに苦労するのに、男は遠慮など知らず、思う存分に精を吐く。
数十秒か、数分か。それなりの時間が経った頃、男の吐精はようやく終わった。私の腹を張り裂けようとせんばかりの量を吐き出した男は、私の頭を掴んだまま余韻に浸っている。
「……んう……」
いい加減にしろ、と言わんばかりに私は少し柔らかくなった肉棒に噛みつき、ぺしぺしと男の太ももを叩いた。すると男はびくりとして、自分が何をしているのかに気づいたのか、慌てて私の口から肉棒を引きずり出す。
ずるずると、長い男のそれが抜かれる。飲み込みきれなかった子種が口内でこそがれ、引き抜かれると同時に私の口からどっぷりと零れ落ちた。
「……気を使う余裕もなかったようだな。好き勝手にするのは構わないが、次からは気をつけろよ。まったく、こんなに零れてしまって……もったいないだろう……」
やや呆れるように言いつつ、私は首や胸に零れたそれを手のひらで掬い、ついばむように口にする。味はひどいし、臭いも最悪だ。けれど男の欲望そのものだと思うと、なぜだか嫌いになれない。
「……ん? どうした、何をそんなに見ている。この程度の作法を私が知らないとでも思ったのか?
見くびってくれるな、お前は。私とて、王族の生まれだ。夜伽のしきたりなど知っているとも。いいか、お前の精は、
自分の唇と胎をなぞりながら、自信満々に私が言うと、男は形容しがたい表情になる。そしてとても、とても言いにくそうに……それは間違いだと指摘した。
「何だと? そんなはずはない、私が読んだ本には確かに……」
言いかけて、はっと気づく。これでは私がどこから知識を得たのか自白したも同然ではないか。いや、途中で言葉はすぼんでしまった。よもや聞こえてるはずもあるまい……そう願う私の願望は無意味で、男は何か微笑ましいものを見るかのように温かい目をしていた。
かあっと、私の顔が熱くなる。
「……見るな。いいか、見るんじゃない。忘れるんだ。今のはただの……お、おい!? 手をどかすな!? 何を覗き込んでいる! それ以上はお前とて……んっ!?」
熱くなった顔をそむけて、四本の腕で隠す私を、男は許してくれなかった。縮こまる私を優しく開いて、愛おしそうに頬を撫でられる。
次いで押し付けられる、慈しむような口付け。欲を感じさせない、触れ合うだけの接吻。
少しして、離れて、また唇を落とされる。そうされている内に、段々と、私の手から力が抜けていった。
「……ああ、情けないな……こんなことで、この私が絆されるなど……いいか、気安いと思うなよ。
お前、だからだ。お前だけが、私をこんなにも好きにできる。他の男など、論外だ。だから、私を……お前だけのものにしてくれ」
男の肩を掴んで、寄せるように後ろへ倒れる。小さな私に、覆いかぶさる男。その股ぐらで再び張り詰めるものに手を伸ばして、導くように――私は大きく足を開いた。
「……っ……」
男の視線が集中するのを感じる。見られている、たかだか胸を弄られ、男のものを舐っただけで、濡れそぼっている私の秘部を。
ああ、そうだ。私とて、興奮、していたのだ。男に求められること、男を求めること、どちらにも昂らずにはいられなかった。それを、見せるのは……見せつけるのは、本当に勇気がいることで。
ああ、これが本物の辱めか。今のこれに比べれば、小さな人形になった姿を見られたことなど、何でもない。それくらい、私は心底の恥辱を味わっていて。
……私は心底、男のギラついた目つきに、胎の奥底が疼くのを止められなかった。
「……もう一度言ってやる。優しく、だぞ。今度こそ、守れよ、お前。最初の契りが、忘れられぬ悪夢であるなど、許さんからな」
念を押すように私が言うと、男は重く頷いた。不思議と信を置ける、力強い顔だった。
それを信じ、私は恥を取り払い、男にすべてを委ねる。星の帳、冷たい月明かりに照らされる私たちは、やがて一つの影となった。
「んっ……くっ! んんっ……」
秘部に男の雄があてがわれ、ゆっくりと侵入する。一度も開いたことのないそこを掻き開くように、それはいっそ無慈悲なまでに、私の体内に入ってくる。
ミチミチと、秘部が広がっていく痛みが走る。ずっと前から思っていたが、男のものは大きすぎる。私が受け入れるにはあまりにも暴力的で、それでもこの体は、どうにか包み込もうとしている。
入らないだろうとどこかで思っていたそれを、私の体は不思議と飲み込んでいく。男のものに合わせるように形を変え、覚えるように――秘部の感覚は鋭敏に、男を感じ取っていた。
「っ……」
やがて、男の剛直は秘部の拒絶に辿り着く。一度たりとも体を許したことのない、純潔の証。それを感じ取ったのか、男は私を優しく抱きしめ――一息に、拒絶の膜を貫いた。
「つうっっっ……!!!」
文字通り、身を裂かれる痛みが私に走る。ゆっくりとそれを行うなど、拷問に等しいと男は思ったのだろう。それは真心の慈悲であり、しかし公正な無慈悲であった。
必死に痛みを堪える私は、抱きしめる男にすがりつく。四本の腕を、時に爪を立てながら、耐え難きを耐えるために玉のような汗を流す。
そんな私に、男はどこまでも優しかった。私の爪など通じぬだろうに、剥がれぬように肉体を弱め、わざと傷を受け入れる。痛みに震える私の髪を撫で、絶対に離さないと言わんばかりに、絹を抱くように私を抱きしめる。
それが、嬉しかった。お前がやったくせにと、恨めしかった。永遠に離さないでくれと、心底願った。
色々な感情が寄せては返る。その中でも一際強く、綺羅星のように心を満たすほど――どうしようもないくらい、幸せだった。
ああ、ああ……これが、そうなのだな。かつて母が、安寧の眠りに身を委ねる前に得ていたもの。私にはきっと、永遠に訪れないだろうと諦めていたそれ。
男女の契り、永遠の誓い。私はやっと、私の王の――この世界でただ一人の、愛する男の、女になれたのだ。
「――愛している」
やがて、破瓜の痛みも引いた頃。その言葉は驚くほど、滑らかに私の唇から落ちた。恥辱、恐怖、期待、様々な感情が瞬時によぎり、愛していると返す男に、一気に多幸感が溢れる。
「愛している、愛している。愛している――私の王よ」
男の体を抱きしめながら、私は何度でも言葉にする。小さくも、叫びに似たそれに、男は律儀に返答する。
好きだ、と男が頬を撫でる。愛している、と優しく微笑む。ラニ、と愛おしそうに私の名前を呼ぶ。
ああ、それだけで、こんなにも、私の心は揺り動かされている。男の一挙一動に、心が弾んでたまらない。
どちらともなく見つめ合い、お互いに求め、口付けをする。そんな小さな接触でさえ、温かく心を満たしてくれる。
ああ――これは、駄目だ。踏み入ってはいけない場所だ。裏切られたら最後、母のように心を壊してしまう。
それでも私は、一切の躊躇なく飛び込み、男に身を委ねた。この幸せを、このぬくもりを、手放すなんてできなかったから。
ずっと永遠に、私を離さないでくれ。これまでも、これからも、私の側にいてくれ。
永遠なる、私の王。私はずっと、永遠に――貴方だけのものだから。
喜びを分かち合おう。悲しみに身を寄せ合おう。抗い難い嵐が来ようと、共に路を切り拓こう。
私は貴方で、貴方は私だ。二人だろうと、我々は一つ。
分かち難き我が半身よ――願わくばこの幸福が、千年の果てまで途切れんことを。
「……ん? ああ、もう大丈夫だ。痛みは引いたよ、強引な誰かのおかげでな。
よせ、そんな顔をするんじゃあない。お前には、感謝している。嬉しかったよ。お前はいつだって、私を想ってくれている。
それを理不尽に怒るものか。ありがとう、私の王よ。お前が私の王でいてくれて、本当に、よかった」
飾らない本心が、清流のように流れていく。今の私に、恥も何もない。当然だ、男は私の半身なのだから。
私の、私だけの愛おしい男に微笑んで、その温かさを抱きしめていると、男は言いにくそうに私を見る。
「ん? ……ああ、そうか。私はこれで満足だが、お前はまったく物足りないのか。
すまない、失念していたよ。男は出すものを出さなければ、収まりがつかんらしいからな。
ゆっくりなら、痛みもないと思う。けれどお前が望むなら、激しくても構わない。
私もまた、お前のものなんだ。だから、好きにしてくれていいんだぞ? 私の愛する、私の王よ」
体を満たす幸福のままに私がそう言うと、私の中の男は一気に膨らみ、硬さを増した。男の獣性が増し、目が一気に血走っている。
なるほど、今のは、殺し文句というやつらしい。これは、覚えておくとしよう。何かと不便を強いているのだ、それを取り払う魔法の言葉の一つくらい、私は知っておかねばな。
「さあ、どうした? 動かないのか? よもや、私に動いてほしいとは言うまいな。知識はあるが、だがお前、初夜でそれを求めるなど――んうっ!?」
くすくすと私がからかうように笑っていると、男は急に私の肩を掴み、一気に怒張を押し上げた。
ズドンッ! と全身に衝撃が走り、胎の奥底を征服されたような感覚が襲う。驚き、圧迫、何よりも怒涛のように押し寄せる快楽の波。
突然の事態に、私はまったく対処できなかった。ぎゅうっと男の体を掴み、ぱくぱくと言葉なき悲鳴を口から上げる。
何が起こったのかさえ、私には把握できない。けれど男は、構うことなく――私の体を蹂躙し始める。
「あっ!? ああ~~~っ……あんっ!! あ゛~~~っ……あんんっ!!」
ゆっくりと、長いストローク。ゴツゴツと膨らんだ暈で私の秘部をえぐりながら、ゆっくりと、ゆっくりと、男は引き抜く。
それは形容し難い未知だった。知らない、こんなの知らない。ゴリゴリと秘部の壁を掻きほじられているだけなのに、ぞくぞくとした快楽が嬌声と共に駆け巡っていく。
そして、入り口まで引き抜かれると、男は一旦止まる。それが嫌だ、今まで満たされていたものにぽっかりと穴が空いたようで、下半身が切なく疼く。
その切なさに乱暴するように、今度は最奥まで一気に貫かれる。優しくされて敏感になった秘部が、それに受け止めきれないほどの快楽を発する。
更には、奥底を強く、力強く征服される快感。私の一番大切なところを無慈悲に蹂躙されて、ぐりぐりと押し付けられ、それがまた信じられない快楽を生む。
「あ~~~っ……あうっ!! あ゛~~~っ……んあっ!! あ゛あ゛~~~っ……ああんっ!!」
一度、二度。三度四度五度。変わらない、一定の間隔で、それは何度も繰り返された。
引き抜かれる。切なくなる。押し広げられる。幸せになる。何度も何度も、繰り返し、刻み込むようにそれは行われる。
「ま、待て! 待ってくれ! これは、駄目だ! 戻れなくなる! こんなのを知ってしまったら、私は……ああっ!!」
思わず静止を願うも、男は一瞬だけしか止まらなかった。私の泣き言を、聞く耳持たず、わからせるように蹂躙を再開する。
それに私は、抵抗できない。必死に、懇願するように男にすがりつきながら、与えられる快楽に身を委ねるしかなかった。
「あ~~~っ! あんっ!! あ゛~~~っ! んあっ!! あ゛あ~~~っ! あんんっ!! あ゛あ゛~~~っ! あ゛ん゛っ!!」
徐々に私の嬌声が、獣のような響きになる。私の口から、まさかこんな声が出るなんて、聞きたくないし、知りたくもなかった。
しかもそれを、私の王に聞かれているのだ。いくら恥などないとはいえ、こんなこと、恥辱を感じずにはいられない。
私は自分の口を塞ごうとした。けれどそれは無意味だった。声を抑えようとしても、男に阻まれ、さらに力強く腰を打ち付けられる。
勝手も、逃げも、許さない。そう言外に叫ぶように、男の動きはどんどん熾烈になっていった。間隔が短くなり、奥底を蹂躙する力も強くなっていく。
私は、何もできなかった。ただ男を受け入れ、快楽にとろけた顔を見られ、それに愉悦の笑みを浮かべる男を見上げながら――どうしようもなく、幸せになっていて。
やがて、限界は訪れる。獣の嬌声しか上げられない私に、止めを刺すように男は一際強く突き入れ。
胸を弄られた時とは比べ物にならない快楽と、星の瞬きが、私の思考に弾けた。
「あ゛あ゛~~~~~~っっっ!!!」
絶叫する。私のすべてを絞り出すように、胎の奥底から甘くとろけきった嬌声が溢れ出る。
チカチカと星が瞬く。意識が飛びそうになり、すべてが快楽と幸福で埋め尽くされる。何もかもが分からなくなって、全身で感じる男のすべてが愛おしい。
後で聞けば、私は無我夢中に男の唇を貪っていたそうだ。好きだと、愛していると、駄々をこねるように叫びながら、必死に舌を絡めていたらしい。
それを嬉しそうな様子でしゃべる男に、その時ほど殺意と羞恥が湧いたことはない。だが、今は無意味な未来の話。
ああ、そうだ。まだ何も終わっていない。男はまだ、その溜まりに溜まった欲望を解放していないのだから。
「はあっ……はあっ……ああっ……あっ!?」
いまだ体内をめぐる快楽の残響に酔いしれていると、男が急に奥底をえぐる。
「あうっ……や、やめろ……今は、やめろ……まだ、余韻が……これ以上は、おかしくなってしまう……」
男のギラついた目から顔を背け、なんとかそれだけを口にする。しかし男は、まだ満足していないと、急かすように私に言う。
「本当に、頼む……少しだけ、休ませてくれ……本当に、少しだけ……そうしたら、受け入れるから……」
息も絶え絶えな私に、男は無理だと言った。これ以上は我慢できない、今すぐに、すべてを
「駄目だ、無理だ……本当に、おかしくなってしまいそうなんだ……このままでは、私は、お前に狂ってしまう……」
おかしくなっていいと男は言う。狂っていいんだと、そうしてくれと私を抱きしめる。いやいやと私は首を振るも、その抱擁を拒めない。
「……ああ……本気、なのだな……本気で私を……お前で染め上げてしまう、つもり、なのだな……」
ここにきてやっと、私は男を拒めないのだと悟った。男の欲の赴くがままに、鳴かされ、躙られ、受け入れるしかないのだと。
「……まったく……お前というやつは、本当に……仕方ないな……」
真実、男のものになるしかないのだと理解した私は、せめて離れぬよう、男を抱きしめる。
「いいぞ……私を、お前だけのものにするがいい……――永遠なる、私の王よ――」
それが契機だと言わんばかりに。男は存分に私を貪り始めた。
「あっ! ああっ! あんっ! あううっ! あっ、ああっ! あんっ!」
泣かされる、鳴かされる。瞳から涙を零しながら、私は男を受け入れる。
とても、とても、激しかった。これまでは私を気遣ってくれていたのだと理解させられるその動きは、神殺したる男の情動そのものだった。
ぞりぞりと怒張が引き抜かれるたび、堪えようのない寂しさが生まれる。秘部の奥底を押し広げられるたび、幸福が大きくなっていく。
私は呼んだ。何度も、何度も、愛しい男の名前を叫んだ。男も私を抱きしめながら、ラニと、愛していると、耳元で囁く。
嬉しかった。心地良かった。気持ち良かった。幸せだった。
果てのない夜空を見上げるような、永遠にも似た時間の中で、私はただそれを噛み締め。
男と同時に果てたその時、私は幸福に包まれたまま、意識を失ったのだった。
「…………」
やがて月が落ち、日が昇る。星の帳が消える頃、私は衣装を抱き寄せながらそっぽを向いていた。
背後では、男が土下座しているのが分かる。
「本当に容赦がなかったな、お前は。私が受け入れても、受け入れなくても、ああするつもりだったのか?
だとしたら、とんだ獣だ。ケダモノだよ、お前は」
辛辣な言葉を口にしているつもりだが、きっと男には、それは甘く聞こえるだろう。なにせ私はいまだに、男に注がれた温かさで幸福に浸っているのだから。
「……今回だけは、許してやる。次にそうした時は……いいや、言っても詮のない話だな。
どうせお前は、そうするのだろう? 私はもう、お前の私なのだから」
帽子をかぶって、振り返る。それは赤く染まっているであろう私の顔を見られたくないが故の、精一杯の強がりだった。
「だから、今だけは正直になってやろう。
……気持ち良かったよ。本当に。心の底から、幸せだった。だから、お前。また次があるのなら。
今度は、優しくしてくれよ? でないと本当に、私はお前に狂ってしまう」
土下座する男に微笑んで、私は右手の二本を差し出す。薬指に収まる、暗月の指輪。婚姻の証たるそれが光る手を、男は取って。
とうに男に狂ってしまっている私は、その幸せを微笑みに浮かべるのだった。
どうしてラニちゃんのいちゃらぶえっち二次創作小説がないんですか(血涙猫)
えっち絵はたくさんあるけど私は文章で読みたいんだ! なければ自分で書くしかねえよなぁ!?(しかしKENZENないちゃらぶは思いつかない作者)
……ラニ好きに、悪人はいねえ(ならず者)
だから君、ラニをすこりたまえよ……(そして私のために二次創作を書くのだ)