「ふう……」
星の世紀、千年の旅を歩む途中。星の帳の一室で休息していた私は、不満のない交ざった吐息を零した。
室内には、様々な本が積み上げられている。その一つを手に取り、パラパラとページをめくるも、内容が頭に入ってこない。
「……まったく、何時になったら帰ってくるんだ、私の王は……」
本を閉じ、やや乱雑に積み上げて、苛立ち混じりのひとり言。私の王、褪せ人は、今は出かけてしまっている。
道中の廃墟に蒐集癖を刺激されたらしく、私を置いて探索に行ってしまったのだ。まあ、そういう奇人らしいところは嫌いじゃないし、むしろ好ましい。それにこれが、旅の疲れをにじませていた私に対する配慮であることも理解している。
それはそれとして、伴侶をないがしろにして自分の欲を満たしに行くのはどうかと思う。私はあれから……不満が募る一方だというのに、私の王はまるで気づいてくれない。
いっそ、堂々と明かすべきか? いやしかし、そんなことは私の矜持が……だが、このままでは絶対に駄目だ。いずれ必ず、私は私らしからぬ暴走を引き起こしてしまう。
一体どうすれば――そんな風に私が思い悩んでいると、控えめに扉がノックされた。
「!」
途端、私は椅子から降りて扉の前へ向かう。ちらりと姿見を眺め、変なところはないか、見せても恥ずかしくない姿であるかを確認してから、私は鷹揚に「入っていいぞ」と声をかけた。
ガチャリと扉が開かれ、鎧姿の男が現れる。狼の戦鬼、私の王は、兜を取ってただいま、ラニ、と優しげに笑った。
「ああ、おかえり。私の王よ」
それに私も微笑みで応え、四本の腕で男の手を取り、首元に腕を伸ばした。
しゃがむ男に腕を絡め、顔を近づける。そして見つめ合い――口付けを交わす。
「ん……」
優しく、触れるような、甘い口付け。しばらくそうしていた私は、離れていく男を名残惜しく見上げた。
頬が熱く火照っている。瞳が潤んでいるのも分かるだろう。下から見上げる私の顔は、さぞ男を誘うに違いない。
そう思っていたのに、男は私の手を優しく解いた。そして、やがて月が沈む、眠りに身を委ねる時間だと、私を褥へ導いていく。
その微笑には、私をあんなにも求めていた獣のそれなど、見る影もない。
「…………」
じぃっ、と私は男を睨んだ。早く気付けと言わんばかりに。
しかし男は、困惑するだけだ。急に不機嫌になった私に、おろおろと視線を揺り動かすのみである。
「……もういい、下がれ。私は寝る」
ぐいぐいと男を押して、出ていくように仕向ける。ラニ? と戸惑いながら私の名を呼ぶ男の声すら、今は煩わしい。
「下がれと言ったぞ、さっさと出ていけ!」
最後まで訳が分からないという表情をする男に苛立ち混じりの言葉をぶつけて、私は乱暴に扉を閉めた。
そして扉に背中を預け、「はあ……」と不満いっぱいの溜息を落とす。
どうして分かってくれないのか。どうして気づいてくれないのか。以前のお前はあんなにも、私を求めてきたくせに。
扉越しの気配を感じる。いつものように、扉の外で私を警護してくれている男の気配を感じながら、私はうずくまり、昂ぶる想いを鎮めることしかできなかった。
今も焼け付くように覚えている。男の手の力強さ、飢えた瞳、獣の欲望。熱く滾った男のそれを受け入れて、私のすべてを差し出し、委ねた、甘い甘い一時の夢。
目覚めるたびに、私はその記憶を夢に見る。毎日毎日、飽きもせず、何度見ても一向に慣れることのない、それは最も大切な記憶の一つだ。
男は知っているだろうか。目覚めた私が体を起こすたびに、太ももの間を熱く濡らしていることを。
男は気づいているだろうか。それに羞恥と、寂しさを覚え、密かに始末する私が、素知らぬ顔で男に目覚めを告げていることを。
ああ、きっと、男は何も分かっていないのだろう。でなければ私が、こんな思いをしている理由がない。私がこんなにも……ひとりきりの、寒々しい体を持て余している理由がない。
「……いつになったら、気づくのだろうな……」
男のいない静かな部屋で、思わずそう口にする。それは憤懣で、けれど
はっきりと言葉にしてしまえば、私は……私は、男を求めている。どうしようもなく、淫売のように、この体を慰めてほしいと望んでいる。
ああ……何たる恥辱だろう。月の王女、神人たる魔女、律を司るこの私が、男一人に狂っているなんて。
その事実を、悪くないと思うどころか、好ましく浸っている私自身が恨めしい。伴侶に狂うということは、こんなにも心を裂いてしまうものなのか。
理の私と、女の私。双方が荒れ狂いながらぶつかり合い、ただ一人の男に受け止めてほしいと願っている。
「いっそ本当に、胸の内をさらけ出してしまえば……いいや駄目だ! あの男のことだ、そんなことをすれば嬉々として私を辱めるに違いない!」
ボフンッ! と抱えていた枕を褥に叩き付ける。思い出すのは、あの日の翌朝、ニヤニヤと私に囁いた男の横顔。
あんなに情熱的なラニを見れて嬉しかった、大好きだ、愛してる――と、私の痴態を読み上げる男に、それはもう動揺した。顔から火が吹き出そうなほど、恥ずかしかった。
二度もその辱めに遭うなど、冗談ではない! 調子に乗った男には勿論仕置きをくれてやったが、あれは奇態な褪せ人だ。諦めの悪さでいえば並ぶ者のいない王の器、それ故に同じことを繰り返すのは目に見えていた。
「……やはり、あの男からの誘いを待つしかないか……しかし、それまでは一体どうすれば……」
体を持て余す私の思考に、ふと一つの知識が過ぎる。それは房中術についての書に記されていた……か、感度や抵抗力を高めるために、自分で慰める行為だ。
「…………」
私の小さな、四つの手のひらを見つめる。細く、頼りない指だ。こんなもの、何本束ねたところで、満足などできるだろうか……男のものと比べ、ついそう考えてしまう私は、そんな自分に顔が熱くなる。
ああ、いけない。このままでは、寝ても覚めても男のことばかり考える女になってしまう。ふとした瞬間に男のものを想像し、男と顔を合わせるたびに下半身へ熱のこもった視線を送るような、下劣な女に。
それは駄目だ。それだけは、いやだ。きっと、そんな品のない私を……私の王は、決して好みはしないだろうから。
あの男にだけは、拒絶されたくない。ならばもう、私に取れる手段は、たった一つしか存在しなかった。
扉を見る。男の気配はない。少し遠出をして私の好む書物を集めてくると言っていたから、しばらくは帰ってこないだろう。
ごくりと、意味もなく喉を鳴らす。震える指で、躊躇しながらも、私は自らの布地をまくり――
男が帰るまで、押し殺した嬌声が、私の部屋から絶えることはなかった。
「はあ、はあ、はあ……」
月明かりの差す廊下を歩く。引きずるような、重たい足取りで、それは亀の歩みより遅い。
「はあ……くっ……うぅっ……」
疼く体を抱きしめる。青い肌には朱が走り、衣擦れすらも敏感に、私の奥底へ響いてしまう。
「早く……早く……」
のろのろと、それでも一歩ずつ、私は荒い息を噛み締めて前へ進んだ。時折壁に体を預けながらも、やがて私は、男の部屋へと辿り着く。
もう、限界が近い。なりふり構っていられない私は、やや強めに扉を叩く。数秒後、慌てたように出てきた男は、私の様子に驚いたようだった。
大丈夫か、と男が肩を掴む。大きくて硬い、男の手。それを感じ取るだけで、どうにかなってしまいそうだ。
「……大、丈夫だ……それより、中へ入れてくれ……」
男の手をすがりつくように取って、私は熱を帯びた吐息を繰り返す。尋常ではないと悟ったのだろう、男は私の肩を抱いて、室内へと招き入れた。
瞬間、扉を閉める私。ガチャリと鍵を回す音に、男の動きが止まるのが分かる。
その隙をついて、私は男を強く押した。私程度の力では動くはずもないが、男はただ驚き、抵抗もせず、後ろへよろける。そのまま寝台にぶつかり、座る男に――私はスカートを捲りあげ、私の体がどうなっているのか、ありのままを見せつけた。
「…………もう、駄目なんだ……」
吐き出す息が、熱く、甘い。どろどろになった股ぐらを男に見せつけるという、恥も外聞もない行為をしているのに、私は興奮、してしまっている。
「どうにか自分で、慰めようとしたんだ……けれど、何度掻きほじっても、満足できない……お前でなければ、駄目なんだ……お前でなければ、私は……」
うるうると、涙の溜まる瞳で男を見つめる。それはどう言い訳しても免れない、淫売のそれであろう。涙で男を籠絡するなど、完全に娼婦そのものではないか。
「頼む……どうか、私を抱いてくれ……お前の、大きくて逞しいもので、私を貫いてくれ……
私が――お前の女であると、証明してくれ……そうしてくれなければ、私はもう……」
頭が変になりそうだった。いや、実際にそうなっているのだろう。こんな真似をして、正気だなどと、言えるはずがない。私はとっくに狂っているのだ。
一人の男に溺れた、一人の女として。私は……私は、股ぐらをいきり立たせる男に対して、下腹部を疼かせずにはいられなかった。
「あ――」
男が立ち上がる。私に迫る。強く抱きしめられ、安堵する。
ああ、やっと、抱いてもらえる。この熱を、この寂しさを、どうしようもない情動を、男の手で拭い取ってもらえる。
そう、安心した途端、フッと腰の力が抜けた。がくりと、その猛々しい体に身を委ねる私を、男は抱き上げ、寝台へと寝かせる。
そして、衣服を脱ぐ私の王。数多の戦場を駆け抜けた肉体を、その暴力的な衝動が滾る一物を、男は私に向けている。それに今更、純情な乙女のように、私は体を抱き竦める振りをした。
「……ま、待ってくれ……まだ、心の準備が……あっ!?」
ここに来ての反故など、男の欲望を逆立てるものでしかないだろう。それを分かって、私は言葉を口にした。すると案の定、男は寝台に乗り上がり、私の服を脱がせようとする。
「待て、待つんだ、私の王よ……やはり、日を改めて……あうっ!」
いやいやと首を振るだけの弱々しい抵抗を、男は秘部に一物をこすりつけて黙らせる。ぐちゅりと、ただ熱く滾った幹を押し付けられただけなのに、私の体には絶頂にも似た快楽がビリビリと走った。
「あっ、やあっ!? 待て、待って、あんっ! あんんっ!」
強引に私の服を剥ぎ取った男は、遠慮なしに乳にしゃぶりつく。四つの腕をもってしてもそれを押し返せない私は、淫らな声を上げることしかできない。時折、強く肌を吸われ、赤い点となって私に残る。その事実が、たまらなく心地良かった。
男のものであるという証明を一つ刻みつけられるたび、全身が喜びに包まれる。初めての夜よりも、ずっと強く、私は快楽を感じていた。
「くっ、ふうっ、やっ、ああっ!? だ、駄目だ、これ以上は、もうっ……! あっ、ああっ! ああ――――っ!!」
乳房の頂点を一際強くつねられ、私はたまらず絶頂する。ビクビクと腰を動かし、男の一物に秘部を当てこすりながら、私ははしたなく、快楽の嬌声を打ち上げた。
「はあ、はあ、はあ……あっ!?」
ぐったりと力の抜けた私が、快楽の余韻に浸っていると、男は突然私の足を掴み上げる。ぐるりと体を丸められ、男の顔の前に秘部をさらす格好になった私は、一気に耳まで赤くなった。
「お、お前、一体何を!? あっ!? あ゛あ゛~~~~っ!?」
充血した目つきで私の秘部を見つめていた男は、次の瞬間、齧りつくように秘部を吸い上げる。じゅるるるっ、じゅぞぞぞっ! と音を立てて、私に聞かせるように、存分に舐り始めた。
「やっ、待って、それは!? あっ、ああっ! あ゛~~~~っ!!」
突如として行われる男の野蛮な行為に、獣の嬌声が胎の奥から一気に溢れ出た。咄嗟に制止の悲鳴を上げるも、男はまるで意に介さない。
大きな指で秘部の入り口を広げられている。それだけでも羞恥で顔を覆いたくなるのに、男は広げたそこに硬い唇を押し当て、一心不乱に愛液を啜る。それだけでは飽き足らず、大きな舌を侵入させ、内側のひだを押し広げ、乱暴に、丁寧に、清めるように舐め動かす。
「はあっ! くうっ! ふうっ、ふっ、ううぅ~~~~っ!!」
私にはどうすることもできなかった。できたのは、腕で顔を覆いながら男の頭を弱々しく押すことだけ。そんな形ばかりの抵抗は、男には私を貪るためのスパイスにしかならないだろう。事実としてそれだけしかできない私に、男の蹂躙はより一層激しくなった。
何も分からなかった。与えられる快楽に、頭が真っ白になりそうだった。いっそそうなってしまえば良かったのに、中途半端に残った理性が、自分がどのような姿で、どんな快楽を与えられているのか伝えてくる。
仰向けの姿勢で腰を大きく天に向けて、男に秘部を晒す格好。私の秘すべき場所が、たった一人許した男の眼前にあって、それがあまりにも恥ずかしい。
見られている。いつの間にか作られていた不浄の穴さえも。こんな姿勢、男以外の誰かに見られたら恥辱で憤死してしまいそうだ。それくらい、私は埒外の恥を味わっているというのに、男は更に私を辱める。
秘部を広げられる感覚は、恥よりも恐怖と、期待が上回った。男に貪られる恐怖、男に求められる期待。とくとくと湧き出す愛液が私の胎を温かく濡らす光景に、男は何を思ったのだろう。それを知る由など私にはないが、獣のように吸い付く男の顔を見るに、きっと欲望を掻き立てる、女の秘事であったに違いない。
愛液を啜られる感覚は想像を絶した。乳房よりも敏感で、けれど大味な快楽の波。ビリビリと走るのではなく、じんわりと温かく広がるように、それは重なり合いながら私の意識を強襲する。
更に、舌で内側をほじられるのは、私の独り善がりより何倍も気持ち良かった。指を三つも入れてあんなに掻きほじったのに、男の舌に比べたら、並べることさえ烏滸がましい。
熱くぬめる舌は、縦横無尽に内側を制圧する。断続的な出し引きと、ぐりぐりと押し付けられる柔い感触。無意識に寝台の布を掴み、指を噛まなければ、ひどい喘ぎ声を上げていただろう。
「うぅっ! ふうっ! ふっ、くうっ! あっ!? やだっ、ひっ、あっ、あ゛あ゛~~~~っ!!!」
秘部を貪られる快楽の嵐にどうにか耐えていた私は、途中男の腕で声を抑えることを止めさせられ、はしたない喘ぎを強制された。抵抗も試みたが、限界も近い。トドメと言わんばかりに秘部の頂点、ぷっくりと赤く膨れた核に口付けを落とされた私は、次の瞬間――絶頂する。
「あ゛~~~~っ、あ゛~~~~っ、あ゛あ゛~~~~っ!!!」
乳房での絶頂とは違う、秘部から全身へと広がるじんわりとした快楽の波。それはあまりにも心地良く、我を忘れそうで、男への愛が溢れて止まらない。
ぷしっ、ぷしぃっ! と秘部から愛液が噴き出ている。それが男の顔を汚す様が、あまりにも恥ずかしくて。私のものだとマーキングすることが、どうしようもなく気持ち良くて。
ピーンと足先を伸ばす私は、へこへこと腰を跳ね上げさせ、秘部を男の顔に押し付けた。頭を秘部に抱き寄せて、逃げられないようにして。もっと、もっととねだるような、ひどくいやらしいことをしていた。
「はあ……はあ……はあ……」
永遠にも感じた絶頂の時間も、やがては終わる。秘部を男の顔に押し付けたまま、ぐったりと力の抜けた私は、今の自分がどれほどいやらしいことをしているのか分からない。
分かるのは、背中にぐり、と押し付けられる男の剛直の感触だけ。私が快楽の余韻に酔いしれている間に男は立ち上がり、ぐちゅりと、充血して膨れた秘部に剛直を押し付ける。
「ふぅっ……!」
ガチガチに膨れ上がった暈で入り口を広げられるだけで、食い縛った歯から甘い声が漏れ出る。快楽が胎の奥底まで響いて、じゅわりと愛液が溢れるのが分かった。
「っ……早く、早く入れてくれ……!」
そのまま動かない男に、私はへこへこと腰を動かして自分から入れようとする。けれど入らず、もどかしい。太ももを押さえつけられ、秘部を大きく天へ突き上げた格好。こんな姿で、自分から欲して、それでも満足には程遠い。
寂しさと、恥ずかしさと、絶え間ない秘部の疼きにどうにかなってしまいそうだった。唇を噛んで、涙目になりながらも腰を振るのをやめられない私は、男の目にどう映っているのだろう。
今は、推し量れない。そんな余裕は私にはない。けれど、不意に頬を撫でる男の手は、とても温かくて。
その温かさに思わず浸っていると、男は秘部に狙いを定め、剛直を一気に押し込んだ。
「かっ、はっ……!」
私の体には大きすぎるそれを突き入れられ、胸の息が押し出される。ついで襲い来る、圧倒的な満足感と多幸感。
ああ、これだ。私が求めていたのは、これなのだ。私の王である男の女となる、この瞬間をずっと待っていた。
快感の吐息を漏らしながら私へもたれる男をぎゅうっと抱きしめる。ぐりぐりと腰を押し付け、剛直を奥へ奥へと誘っていく。身も心も満たされ、そこに覆いかぶさる快楽の波。
それに私は、絶頂した。
「くっ、はあっ、ああ――――――――っ!!!」
甲高く、艷やかな甘い絶叫を私は打ち上げる。玉のような汗が一気に零れ、きゅうきゅうと秘部が剛直を締め付ける。
それに苦悶の声を上げる男を気にする余裕はなかった。この時間が、ただ心地良くて。私を抱きしめる男が、ただただ愛おしくて。
この時間が、永遠に続いてしまえばいいのに。そう考えてしまうほど、私は深い、深い、満足感に酔いしれていた。
「……、……?」
そのまま満足感に浸り、激しい呼吸も緩くなった頃。一向に動かない男に、私は疑問符を浮かべる。
「どうした……? 動かないのか……?」
甘い吐息で囁いても、男は私を抱きしめるままだ。入れながら私の姿勢を変え、腰が楽になるよう寝かせた以外、ずっと秘部の最奥に剛直を押し付けている。
「……もう、動いても平気だ……だから、私の王よ……」
恥を忍んで男と見つめ合い、懇願するように唇を動かす。けれど男は黙ったまま……褪せた瞳のその奥に、嗜虐の獣を飼っていた。
「あっ……!? んっ……んう……」
ぞわりと、恐怖とも期待ともつかない感情を私が味わっていると、男はようやく動き出す。
けれどそれは、とても小さい。ぐり……ぐり……と秘部の最奥を、その猛々しい剛直でゆっくりこねるだけだ。
「んっ……ふっ……お、王よ……もっと、んっ、激しくは、してくれないのか……?」
気持ちいいことには気持ちいいが、物足りなさが先行する動きに私は催促の声を上げた。羞恥よりも快楽を求める、私のはしたなさが現れた言葉だった。
けれど男は動かない。硬く結ばれた紐を濡らして優しく解くように、ゆっくりと、ゆっくりと、最奥を刺激し続ける。
「んっ……ふうっ……んっ……くっ……」
五分。私を抱きしめ、髪を撫でる男のされるがままに、吐息のような甘い声を漏らす。
「ふっ……くっ……んっ……ふうっ……!」
十分。段々と、刺激が強くなっていく。いや、違う……私の秘部が、敏感になっている……?
「くっ……あっ……んんっ……あっ!」
二十分。私の唇から零れる声は段々と大きくなり、暈が内側のどこかへ引っかかった途端、甘い喘ぎへと変わった。
「あっ、くうっ……! も、もう、十分だろう……!? いい加減、私の上から、あうっ!」
三十分。一向に途切れない男の動き、そして体の異変に不安が過ぎる私は、男を横へどかそうとする。けれど、ぐり……! と、一際強く、男は剛直を押し込んだ。
瞬間、溢れ出す快楽の余韻。そのものではなく、ゆっくりと広がり、昂らせるような快感が生じ、私は言葉を口にできなくなる。
「あっ……! はあっ……! くっ……! ああっ……!」
――一時間。私が気づくのに要した時間。
ここにきてようやく、私は男の狙いを悟った。
男は、焦らしていたのではない。ずっとずっと、初めから――私の弱点をむき出しにしようとしていたのだ。
ぐり、と男が腰を動かす。それだけで剛直が刺さりっぱなしの最奥は、完全に白旗を上げて、愛液と快楽を溢れ出させる。
私には、どうすることもできない。気づくのが遅れた、遅すぎた。
私のもっとも大切なところは、男に征服され、とろかされきってしまったのだ。
「あっ! あ゛あ~~~~……」
ずるりと、男のものが動き始める。ひだの一枚一枚が暈でえぐられ、悦んでいるのが分かった。
それぐらい、私の秘部は敏感になっている。そんな降伏しきった場所に、猛々しい一撃を入れられようものなら……
「あ……私の、王よ……」
ずるずると入り口まで引き抜き、止まった男を、私は見上げる。許してくれと、その言葉は出なかった。ただ唇が動き、吐息に溶けていく。
愛おしそうに頬を撫でる大きな手。ラニ、と私の名前を呼ぶ優しい声。
愛してると言わんばかりの男の微笑みの中で、その瞳だけが、獣の欲で染まっていて。
――どちゅんっ! と、剛直を強く最奥に叩きつけられた時。
私は一瞬、それを理解することができなかった。
「……あ? あぅ? ぅあ、ああっ――あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~~~~っ!!!」
少しの混乱が、頭を巡って。次の瞬間、爆ぜるように膨れ上がった快楽が、私の思考を奪い去る。
胸が跳ね上がる。顔が仰け反る。足先がピーンと張って、あらん限りの嬌声が喉を突き抜けていく。
ガクガクと腰を震わせ、愛液を撒き散らしながら、私は絶頂していた。これまでのまぐわいが児戯ではないかと思うほどの、強烈な快感だった。
「あ゛~~~~っ!! あ゛~~~~っ!! あ゛~~~~っ!!」
息が続く限り嬌声を打ち上げて、また喉を震わせ、また繰り返す。叫んでも、叫んでも、終わらない。人形の器に到底収まらぬような快楽が、ずっと駆け巡り続けている。
「んっ!? んむうっ! ふっ、んんむっ! んっ! んっ……!」
途中、男に唇を塞がれた。そっと差し込まれた太い舌に助けを求めるように、私は自分から舌を絡め、吸い付き、離れまいとする。
まるで甘え盛りの稚児のよう。付き合わされる相手の都合なんて考える余裕はなくて、男の慈悲に、私はただ縋るしかない。
十分近くもの間、私は接吻を繰り返していた。体にめぐる快楽から逃げるように没頭し、何より男への愛情が溢れてたまらなかった。
「んっ、んうっ、んっ、んっ……ぷはぁっ……」
絶頂の余韻がやっと治まった頃、私はようやく男を解放する。唾液の橋が互いを行き来し、それは首元まで濡らしていた。
「…………」
長い沈黙が、褥に降りる。顔を真っ赤にした私は、男に言いたいことがたくさんあったが、何も言葉にできなかった。
ここまでされて、さらけ出して、何を口にすればいいのか。言い訳? 罵倒? そんなもの、私が見せつけた恥の前には砂の城より脆いだろう。
しかし、何か口にしなければ、この衝動が抑えられない。こんなにも一方的に責められ、あられもなく絶頂した私の矜持は、もう散々なほど傷ついている。
「……お前、よくも……あんっ!?」
たっぷりと時間をかけて吐き出そうとした恨み言は、しかし叶わなかった。
ぐりっ、と秘部の最奥に、男が剛直を押し付けたからだ。
「なっ……!? お、お前、まだ私を嬲るつもりか!? 責め苦のような快楽を与えておきながら、まだ足りぬと!?
いくら我が王とはいえ、大概にしてもらおうか! 今宵はもう終わりだ、さっさとどいて……きゃうっ!?」
羞恥を怒りでごまかして叫んでいると、今度はどすっ! と秘奥を強く叩かれる。
それだけで甘く絶頂し、男にすがりつくことしかできなくなる私は、せめても、キッと男を睨むも。
そこにあったのは、どこまでも優しく、残酷な、嗜虐の獣の微笑みだった。
「あ……あんっ!?」
ラニ、と呼びかける男に、私は思わず後ずさる。
それを腰を掴まれ引き戻され、嬌声を上げる私に、男は言う。
ラニから誘ってくれて嬉しかった。
あんなに可愛いラニは初めて見た。
寂しい思いをさせてごめん。次からは、ちゃんと気づくから。
だから今日は、思いっきり気持ちよくさせてあげるね。
ラニが、泣いても、叫んでも、許してって言っても、やめないから。
だから一緒に、頑張ろうな……
その言葉に、私は悟ってしまう。
そうだとも。男とて、我慢していたのだ。私に負担を掛けぬよう、細心を払っていたに違いない。
けれどそれを、私が壊した。男がずっと押さえつけていた獣の檻に、自分から飛び込んでしまったのだ。
だから、もう――逃げられない。これから私を、貪ろうとする男の手から。
その事実に、私は何も言えなくて。
ただ体ばかりが、きゅううううっ、と男の剛直を咥え込んで。
それにニイッ、と嗜虐的な笑みを零す男に、私は怯え、逃げようとしながらも……期待で胸が一杯になっていた。
「あっあんっ! やっ、あっ、ああっ! あんっ、ああ~~~~っ!」
「やっ、やめろぉっ……! おなか、さするな……! 髪も、撫でるな、ああっ! お、おかしくなってしまう……幸せ、感じてしまう……! あっ、あ゛あ゛~~~~っ!!」
「こ、こんな姿勢でするのか……? まるで、獣ではないか……! ひんっ! お、お尻、叩くな……! わ、分かった、分かったから……!」
「この私が、こんな……男の前に尻を持ち上げた格好をするなど……お前、覚えておけよ……この屈辱は、必ず……あ゛あ゛~~~~~~~~っ!?」
「やめろぉっ! この格好で、胎をさするの、やめろぉっ……! か、感じてしまう! お前の、熱くて、大きくて、太くて、逞しいものを、強く……! ああっ!? あんっ! あんっ! あ゛んっ!」
「ああっ! た、頼む、キス、してくれ……! 怖いんだ、後ろからだと、お前を感じられなくて……! んっ! んっ、んうっ! んっ、んんっ、ん~~~~っ!!!」
「あ゛んっ! あ゛んっ! あ゛あっ! あ゛んっ! もっ、だめっ、
「一緒に、一緒にぃっ! 果てるなら、お前と共に……! あっ! あっ、あっ、あっ、あっ――あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~~~~っ!!!」
「あ……出てる……お前の、子種……私の奥、叩きつけて……ふふっ、まったく……孕まぬと言ってるのに、出し過ぎだぞ、お前……」
「……なあ、全然柔らかくならないんだが……まさかお前、まだ……」
「……本当に、仕方のないやつだな……満足するまで、私を気持ちよくさせるがいい……永遠なる、私の王よ――」
「あっ! あんっ! あっ、んあっ! あんっ、あんっ、あんっ! あうっ、ああっ、あんっ! ああ――……」
「…………」
私は黙っていた。こんな時、何を話していいかなんて分からないからだ。
星の帳、男の一室。一糸まとわぬ姿の私を、同じく裸体の男が抱きしめている。
嬉しそうに、微笑ましそうに私の髪を撫でる男。存外に気持ちよくて何もかもを忘れてしまいそうだが、言うべきことは言わなくては。
「……おい、お前。勘違いするなよ」
男の胸板に背を預けたまま、私は言う。
「今回のことは、事故だ。私は……そう、おかしくなってしまっていたんだ。でなければ、あんな、あんな真似……」
思い出して、恥ずかしくて身悶えする。自分が如何に男を欲してやまないか見せつけるなど、末代までの恥だ……!
一人であればゴロゴロと転げ回ってもおかしくない恥辱に震えていると、すごく可愛かったよと、能天気なことを口にする男。
「そういう問題ではない! 私の沽券に関わるというのだ! いいか、忘れろよ、お前! 不満そうな顔をしても駄目だ!」
えー、と言わんばかりに口を曲げる男に、私はしつこく口封じをする。男を頷かせることに成功した私は、それに疲れをにじませながらも、密かに安堵せずにはいられなかった。
可愛かった。すごく可愛かった。男は確かにそういった。あんなにもはしたなく男を求める、品のない私を。
受け入れられて、嬉しかった。それどころか褒められて、幸せだった。ふふ、と思わず笑みを零す私を、男は愛おしそうに眺め。
ラニって攻められるの好きなんだね、と唐突に言い放つ男に、カッと全身が熱く火照った。
「……ほう。お前、どうやらよほど私を辱めたいらしいな」
私の怒りに律が反応し、周囲の気温が低下する。にも関わらず、男は飄々とした笑顔で、私の頬に手を伸ばした。
ラニ、と名前を呼ばれる。愛玩に呼びかけるような、隷属を含む響き。
それにないはずの心臓が高鳴ったのを感じた私は、ひどく逡巡した後、少しだけ素直になることにした。
「……気持ち良かったのは確かだ。だからもし、お前が望むなら……好きなだけ、魔女ラニを辱めたまえよ。
それはお前にしか、許さぬのだからな――永遠なる、私の王よ」
見つめ合い、口付けを交わし、どちらともなくゆっくりと抱き合う。
愛する男と褥を共にする、至福の時間。私は生涯、それを忘れることはないだろう。
エルデンリングのR18書いたし、きっと増えてるやろなぁ(検索カチカチ)
R18 エルデンリング (1件)
…………?????(宇宙猫)
どうしてえっちなラニ様のいちゃらぶ小説が増えないんですか(血涙猫)
誰でもいいから書いてくれよぉ……ブライヴ、イジー、ラニ様、私の王♡ のイチャイチャ道中記とか見たいんだよぉ……
以下、本編にまったく関係のないと見せかけてあるかもしれないアンケート。
ラニ様の胸を
-
盛る(セルブス派)
-
盛らない(ブライヴ派)
-
中立(イジー派)
-
複乳など(褪せ人派)