古代ローマのふた×TS総受けの哲学 作:ふた×TS論理的なストア派哲学者
ざあざあ、ざあざあ。
降りしきる大雨の中、誰にも看取られることなく一つの命が終わろうとしている。
僕の命だ。
そうか。嗚呼、そうか。
どうやら僕は死ぬらしい。
なんとも実感のないことだ。しかし、現に僕の身体は着々と死に向かっているのだ。実感は無いというのに身体は死に始めていることを理解しているとは、なかなかにおかしなことだと思うが。
初めて死ぬのだから、得てして死とはそういうものなのだと考えるべきなのかもしれない。
だが、横合いから飛び出してきたトラックに轢かれて死ぬなど、テンプレが過ぎて笑えてくる。いや、笑うような力も元気も残ってはいないのだけれども。
なんにせよ、僕はここで死ぬ。
一人、孤独に死ぬ。
無意味な人生だったなんて思わないが、もう少し長生きしたかった。未練はそれくらい。齢二十歳過ぎにしては充実していたと思うから、それくらいだ。
人は、死ぬ時は死ぬ。死ぬ時にまで、悔いを思い返したくはない。その運命を享受しよう。
お父さんお母さん、僕を産んでくれてありがとう。可愛い弟と妹よ、お兄ちゃんのパソコンは絶対に漁るな、それは劇物だ。友人達は僕の葬式には来ないでくれ、うるさい。
僕の世界を構成する人々よ、さらば。僕は先に逝きます。
……なんて心の中で言ったところで、格好は付かないな。まあ良いか。
僕は、こうして随分と緩く二十年と少しの人生を終えた。
□
「……あ?」
ある日ある朝のこと。ローマ帝国が属州
目が覚めた時、僕ルキウス・アンナエウス・セネカは前世の全ての記憶を取り戻した。次いでによく分からない力も得た。きっかけは不明。でも昨日は凄い高熱を出して気を失ったのを覚えている。
取り戻したのは、日本人
しかし、なんともまあ奇妙なことに今の僕の肉体は
なんと僕は男から女になってしまっていた。
記憶によればTS転生というやつか。どうやら昔から感じていた言いようのない違和感はこれが為だったらしい。なるほど、畜生。
まあ、そうなってしまったものは仕方が無い。原因をただ無為に探求すること、理由なく後悔すること、運命を恨むことに意味は無い。克服するために働かなければ。
そして、次いでに得られたよく分からない力というのは仮称千里眼のことである。
これに関しては本当によく分からない。
失せ物探しには重宝しているが、流石に
これは駄目だ。本当に必要な時にだけ使うべきだ。いや、ただの一度たりとも使うべきではないのだろう。大望も理想も無い僕にはあまりにも過ぎた力だ。
―――だから、僕は
その結果として、相も変わらず今起きていることは全て把握出来てしまうものの、前のように未来を垣間見ることは無くなった。代わりと言ってはなんだが、意図せず魔法のような力を使えるようにもなった。
この眼の副産物なのか、できることは出来る。そういう感覚が僕にこの魔法のような力を行使する才覚か、権利を与えたらしい。
……さて、そんなこんなで早急に環境を改善した折りのこと。
話は少し変わるが今の僕は四歳である。
そして少し遠くの地では、なんと彼が丘で処刑されたらしい。あの彼だ。あの彼である。
つまり僕は紀元前に生まれ、あの歴史的事件と同じ時を生きているのだ。
所謂TS転生者で、仮称千里眼と仮称魔法が使えて、紀元前のローマ帝国生まれ。
……ひとつ言わせて欲しい。
―――何だこの世界観!?
僕は一人、頭を抱えた。
とはいえ、濁流のような情報を前にして呆然としているばかりではいられない。
せっかくの二度目の生なのだ、人として精一杯に生きなくては。
それに実はTSはともかくとして、転生というのも興味が無かったわけじゃない。そこそこにサブカルチャーも嗜んでいた。
こうして魔法のような力も手に入ったのだし、ここは只管に自己研鑽に励んでみるのも良いかもしれない。
だが取り敢えず、よく分からない世界観の世界に転生してしまったらしいことだけはしっかりと理解した。多分、ファンタジーが混ざった史実世界もどきだと思われるが、実際のところは確かめる術が封印した千里眼しかない。しかし、それを使うのは憚られる。視え過ぎるということを忌避する意味でも、人として生きる為にも。
だから、先ずは情報だ。差し当ってはこの欧州の中心、ローマを目指すべきだろう。この世界の何もかもは都会に集まる。情報だって例外ではない。
そのために両親を説得できるだけの力をつけ、地盤を安定させるべきだ。加えて、魔法があるということはそれを役立てなくてはならない場面もきっとある。その時に備えて魔法の研鑽もしなくては。
やることは山積みだが、幸いなことに僕はそういう時ほど燃えるタイプ。全力でやるのみ。
当面の目標を決めた僕は、早速行動を開始するのであった。
今にして思えば、この時の僕は僕が女であるということを甘く見ていたのだろう。
これから先、女であるこの身に襲い掛かる幸せな受難の数々を僕は知らず、唯一避けることのできた可能性、千里眼を自ら封じた僕は魔法を使えども結局のところは単なるか弱い女でしかないのだと。
数十年先の未来で身をもって思い知らされることになるのを、僕は知る由もなかった。
史実準拠ではなく、ほぼほぼオリ主です。えっち文章なのであんまり細かく指摘されてもそれはそれで困ります。後、千里眼とかその他もろもろはつよつよ美少女って良くない?という単なる作者の趣味でしかありません。セネカにそんな要素はほとんどありません。
ちなみにこの世界線の英雄王は美少女だし、その親友と金星の女神はふたなり。花の魔術師もプロト仕様で、当然騎士王はふたなり美少女だったり。