※この作品はR-18です。

東方闇幻想録 〜記憶の探索〜   作:如月 愁

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では、どうぞ。


第八話 七武将の六人目

矢黒長介 別名闇医者

 

 

幻想郷——博麗神社、居間。

 

妖夢「……愁さん、大丈夫ですか」

 

愁「うん。大丈夫だよ」

 

妖夢「……本当に?」

 

愁「本当に大丈夫だよ」

 

霊夢「(本当に大丈夫かどうかがこっちにはわからないのよね、この子は……)」

 

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レミィが隣に座ってきた。

 

レミィ「……ねえ、愁。正直に言ってよ」

 

愁「え」

 

レミィ「次の六人目のこと、思い詰めてるでしょ」

 

愁「……」

 

レミィ「黙った」

 

霊夢「やっぱりそうじゃない」

 

愁「……思い詰めてるっていうより、考えてる。こいつだけは少し複雑だから」

 

レミィ「どういう意味?」

 

愁「……こいつが、妹を」

 

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霊夢「……そいつが?」

 

愁「矢黒長介。六人目。こいつが僕の妹を殺して、記憶を失わせた」

 

フラン「(……お兄様……)」

 

妖夢「……」

 

愁「(静かに)だから複雑なんじゃなくて——こいつだけは、ちゃんと終わらせたい。適当じゃなく」

 

レミィ「……愁」

 

愁「大丈夫だよ、レミィ。ちゃんと考えてるから」

 

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翌日——

 

愁は紫に呼ばれて、スキマの向こう側にある広い部屋にいた。

 

紫「……来たわね。矢黒長介の件でしょ?」

 

愁「はい。情報をもらえますか」

 

紫「もう集めてあるわよ」

 

愁「さすがですね、紫さん」

 

紫「褒めても何も出ないわよ。……でも愁、あなたの顔が少し違うわね」

 

愁「そうですか」

 

紫「こいつは……特別なのね」

 

愁「……はい」

 

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紫はスキマから分厚いデータを取り出した。

 

紫「矢黒長介のプロフィールは知ってるわよね。父は大学病院の院長、母は薬物取り締まりのトップ。両方のコネを使って薬物の売買をしている」

 

愁「はい」

 

紫「一度逮捕されているけど父の権力で揉み消された。それも記録に入ってるわ」

 

愁「……それは知ってます」

 

紫「でも——これは知らないでしょ」

 

愁「……」

 

紫は一枚のファイルを渡した。

 

愁「(目を通して)……これは」

 

紫「矢黒が使った記憶消去薬物の配合と——投与記録ね。あなたの妹に使ったものと、同じ薬よ」

 

愁「(静かに)……証拠として使えますか」

 

紫「完璧に使えるわ。これを持っていれば、どんな権力があっても揉み消せない」

 

愁「……ありがとうございます、紫さん」

 

紫「礼は終わってからでいいわよ。……で、どうするつもり?」

 

愁「まず取引ルートを潰します。次に証拠を送りつける——でも父親のコネが効かない部署に」

 

紫「具体的には?」

 

愁「矢黒の母の職場は薬物取り締まりのトップ。でも、そこには情報が流れてる。だから——同じ省庁の、矢黒の家とコネがない別の部署に直接送ります」

 

紫「……なるほどね。父親には対抗できても、全方向は守れないってわけね」

 

愁「はい。あと——取引の日時と場所も同時に流します。現行犯で押さえれば、父親が動く前に証拠が揃う」

 

紫「(少し微笑んで)愁、あなたいつからこんなに頭が回るようになったの」

 

愁「紫さんの隣にいたら自然と」

 

紫「……それは素直に受け取っておくわ」

 

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現実世界——数日後の夜。

 

矢黒は取引現場にいた。

 

夜中の二時。

人気のない倉庫。

いつもの場所、いつもの時間。

 

——のはずだった。

 

矢黒「(……なんか、嫌な感じがするな)」

 

そのとき——倉庫の出口に、懐中電灯の光がいくつも見えた。

 

矢黒「……!」

 

警察だった。

 

しかも見慣れない部署の制服だった。

 

矢黒「な、なんで——!」

 

逃げようとしたが、もう遅かった。

 

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愁はのんびりお茶を飲んでいた。

 

霊夢「……もう動いたの」

 

愁「うん。たぶん今頃捕まってるよ」

 

レミィ「相変わらず手が早いわね」

 

愁「待つの、苦手だから」

 

霊夢「それで終わりじゃないでしょ。父親が動くんじゃないの?」

 

愁「動く前に証拠を送った。矢黒の家とコネがないところに——妹への投与記録も含めて全部」

 

霊夢「……全部?」

 

愁「全部」

 

────────────────────────────────────────────

 

矢黒の父親が病院の不正経営を理由に捜査対象になった。

 

翌々日——

 

矢黒は保釈されたが、自宅には戻れなかった。

 

財産は凍結。

病院も閉鎖の危機。

母親は辞職。

 

矢黒の「権力」は、跡形もなく消えた。

 

矢黒は一人になっていた。

 

取り巻きはいなくなった。

権力もなくなった。

薬物の仕入れルートも潰れた。

 

実験台もいない。

 

なら——自分だ。

 

矢黒は、部屋に残っていた「最後の薬」を取り出した。

 

これさえ打てば、何かが変わるかもしれない。

これさえ使えば、まだやり直せるかもしれない。

 

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矢黒は目を覚まさなかった。

 

父も母も、そのとき捜査の対応で手が離せなかった。

 

異変に気づいたのは、昼になってからだった。

 

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その夜、愁は縁側に一人で座っていた。

 

レミィが後ろから来て、黙って隣に座った。

 

しばらく二人とも何も言わなかった。

 

夜風が吹いて、木の葉が揺れた。

 

レミィ「……終わった?」

 

愁「……終わった」

 

レミィ「……」

 

愁「……なんか言って、レミィ」

 

レミィ「……お疲れ様。よく頑張ったわ」

 

愁「(少し笑って)……ありがとう」

 

レミィ「(そっと肩に頭を乗せて)……もう一人よ」

 

愁「……うん。もう一人」

 

────────────────────────────────────────────

 

霊夢「(遠くから二人を見て……)(……あの子、こういうときだけ素直になるのよね)」

 

妖夢「霊夢さん、覗いてますよ」

 

霊夢「覗いてない、偶然見えただけよ」

 

妖夢「同じことです」

 

 

 




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