坂本健一郎 別名大魔王
幻想郷——博麗神社。
フラン「ねえねえ、次で最後なんでしょ?」
愁「そうだよ」
フラン「じゃあ派手にやろうよ!」
愁「……派手にはしないよ」
フラン「えー!なんで!」
霊夢「あんた毎回それを言ってるじゃないの」
フラン「……そうだっけ」
レミィ「そうよ」
フラン「……ちぇー」
────────────────────────────────────────────
愁は縁側に座って、空を見上げていた。
妖夢「愁さん……今回は、どんな顔をしていいかわからないんですが……」
愁「そうだね」
妖夢「……七人目ですよ。本当に最後ですよ?」
愁「……うん」
妖夢「……愁さんは、終わったらどうするんですか」
愁「え?」
妖夢「七人全員いなくなったら、その後は?」
愁「……そんなこと、考えたことなかったな」
妖夢「(そう言って微笑む愁を見て)(……この人は本当に……)」
────────────────────────────────────────────
七人目——坂本健一郎。
別名大魔王。
愁がかつていじめられていた頃、それを「陰から全て管理していた」男だ。
父は国会議員。総理大臣とも繋がっている。
権力の網は細かく、深く広がっている。
これまでの六人は——事故に見せかける、自滅を誘う、告発する——そういった手が通じた。
だが坂本は違う。
こいつは「証拠が出ても揉み消せる」人間だ。
こいつは「追い詰めても逃げ道がある」人間だ。
こいつは「自分では絶対に動かない」人間だ。
だから——愁は三日間、何もしなかった。
ただ、考えた。
────────────────────────────────────────────
三日目の朝。
霊夢「……ねえ、愁」
愁「うん」
霊夢「あんた、三日間ずっと考えてるじゃない」
愁「うん」
霊夢「(隣に座る)……珍しいわね。いつもはもっと早く動くのに」
愁「……こいつだけは、ちゃんとしたかったから」
霊夢「……」
愁「六人まではさ、みんなどこかに弱点があった。自業自得になる部分があった。でも坂本は……こいつだけは、自分では絶対に動かない。他の人間を使って、自分は安全なところにいる」
霊夢「……それで?」
愁「だから——こいつには、自分の手で掘った落とし穴に落ちてもらう」
霊夢「……どういうこと?」
愁「(少し間をおいて)こいつの一番の弱点は、「自分が一番賢い」と思っているところだよ」
────────────────────────────────────────────
紫のもとへ——
愁「紫さん。坂本の秘書と、直接のコネクションを全部出してもらえますか」
紫「もちろん揃ってるわよ。……今回は、私も少し手伝うわ」
愁「え?」
紫「あの子の記憶のことは……私も関わっているもの。最後ぐらいは一緒にやらせて」
愁「……ありがとうございます、紫さん」
紫「礼は終わってからでいいって言ってるでしょ」
────────────────────────────────────────────
まず——愁は坂本の秘書に接触した。
正確には、紫がスキマを通じて「接触の糸口」を作った。
秘書の名前は田口という。
坂本健一郎の父親の秘書を長年務めている人物だ。
田口は最初、愁の話を聞かなかった。
でも——「矢黒長介が今どうなっているか」を話すと、態度が変わった。
田口「……あなたが、そういう人ですか」
愁「何者かと聞かれたら、答えにくいですが」
田口「……坂本家の件は……ずっと、おかしいと思っていた」
愁「ならば、協力してもらえますか」
田口「……証拠として使えるなら、渡せるものがあります」
田口から受け取ったのは——
坂本が関与した薬物取引の詳細な記録。
さらに——
愁の妹への「指示書」。矢黒長介に命令を出した記録だった。
愁「(それを見て、少しの間、動かなかった)」
田口「……大丈夫ですか」
愁「……はい。ありがとうございます」
田口「……坂本には、これ以上好き勝手はさせられない」
次に——愁は坂本本人を動かすことにした。
坂本に「取引の話」を、匿名で持ちかけた。
内容は——「
愁が現代に持ち込んでいる技術の一部を「設計図」として見せることで、坂本の興味を引く。
こいつは権力も欲しいが——それ以上に、「誰も持っていないもの」が欲しい人間だ。
予想通り——坂本はすぐに食いついた。
指定した場所は廃工場。
昼でも人気のない場所だ。
────────────────────────────────────────────
その日——愁は一人で廃工場に向かった。
レミィ「(心配そうに)本当に一人で行くの?」
愁「うん」
レミィ「私も——」
愁「来なくていいよ、レミィ。今回は僕が行きたい」
レミィ「……」
愁「(少し微笑んで)終わったら、すぐ戻るよ」
レミィ「……わかった。でも絶対戻ってきなさいよ」
愁「もちろん」
────────────────────────────────────────────
廃工場の中。
坂本は護衛を三人連れて来ていた。
そして——正面に、横川愁がいた。
坂本「……横川愁」
愁「久しぶり、坂本」
坂本「なぜここに——」
愁「呼んだから来てくれたんでしょ。ありがとう、ちゃんと来てくれて」
坂本「……何が目的だ」
愁「(穏やかに)終わらせに来たよ」
坂本「……! お前ら——」
護衛三人が愁に向かおうとした瞬間——
三人とも、音もなく崩れ落ちた。
坂本「なっ……なんだ、なにをした!」
愁「眠ってもらっただけだよ。一日は起きないから安心して」
坂本「きさま……何者だ……!」
愁「(少し考えてから)人間かどうか聞かれたら、難しいとこだけど——神だとは言われてる」
坂本「ふざけるな——!」
────────────────────────────────────────────
愁は坂本に近づいて、一枚の封筒を置いた。
愁「それに入ってるのは——あなたが今まで関わってきた犯罪の記録、全部だよ」
坂本「……何?」
愁「薬物取引の詳細。指示の記録。通話データ。矢黒長介への命令書——それと、僕の妹に何をしたかの記録も全部」
坂本「……そんなものが存在するわけが——」
愁「田口さんが持ってた。長年の積み重ねってすごいね」
坂本「田口が……! あいつが……!」
愁「それは今、複数の機関に同時に送信されてる。父親のコネが届かないところに、全部」
坂本「……っ! 止めろ——!」
愁「もう遅いよ」
────────────────────────────────────────────
坂本の手が震えていた。
愁「……坂本、一つだけ聞いていい?」
坂本「……なんだ」
愁「僕の妹のことを——覚えてる?」
坂本「……」
愁「(目を見て)覚えてるんだね」
坂本「……それが何だ。お前も、お前の妹も——ただの道具だった。弱い奴が悪い。それだけだ」
愁「………………そう」
────────────────────────────────────────────
愁は何も言わなかった。
怒鳴りもしなかった。
泣きもしなかった。
拳を振るいもしなかった。
ただ——坂本をまっすぐ見た。
その目には、怒りも、憎しみも——なにもなかった。
あるのはただ、静かな「終わり」だけだった。
────────────────────────────────────────────
愁「(静かに)……ありがとう。正直に言ってくれて」
坂本「……なに?」
愁「謝ってほしかったわけじゃないから。ただ——確認したかっただけ。こいつは本当に終わらせていいやつかどうか」
坂本「……お前、何を——」
愁「うん。大丈夫。確認できたよ」
────────────────────────────────────────────
その夜——坂本健一郎は、証拠とともに逮捕された。
父親の手が動いたが——証拠を受け取った機関の動きのほうが速かった。
田口の証言もあった。
坂本は拘置所に入れられた。
数日後——坂本は拘置所の中で、かつて自分が切った「裏の仲間」に処された。
流血は——なかった。
────────────────────────────────────────────
七人目死亡
──七武将、全員終わり──
────────────────────────────────────────────
幻想郷——
愁が戻ってきたとき、縁側にはレミィが待っていた。
フランも、霊夢も、妖夢も、さとりも——みんないた。
レミィ「(立ち上がって)……終わった?」
愁「……終わった」
レミィ「(そっと抱きついて)……本当に?」
愁「本当に終わった」
しばらく二人はそのままでいた。
────────────────────────────────────────────
霊夢「……お疲れ様」
愁「ありがとう、霊夢」
妖夢「愁さん……本当にお疲れ様でした」
フラン「お兄様!お疲れ様!ご飯作ったよ!」
愁「え、フランが?」
フラン「もちろん咲夜さんに手伝ってもらったけど!」
咲夜「(遠くから)ほとんど私が作りました」
フラン「(小声で)そこは言わなくていいんだよ咲夜……」
愁「(声に出して笑う)……ありがとう、みんな」
────────────────────────────────────────────
夜——
愁は一人で縁側に座っていた。
風が涼しかった。
幻想郷の空は、いつも通りきれいだった。
レミィ「(隣に来て座る)……ねえ、愁」
愁「うん」
レミィ「これで本当に全部終わったのね」
愁「……うん」
レミィ「……どんな気持ち?」
愁「(少し考えて)……軽い、かな。ずっと何かが重かったんだけど——なくなった感じがする」
レミィ「……そっか」
愁「……でも、妹のことはまだ終わってないから」
レミィ「……うん。それは一緒に向き合いましょ」
愁「……ありがとう、レミィ」
レミィ「(頭を肩に乗せて)……当たり前じゃない。私はいつでもここにいるわよ」
星が多い夜だった。
感想・評価してくださると作者のモチベーションが上がります。どんどん書いてください!
誤字があれば教えてください。
絶対送ってきてください!
それでは~
あ、少し期間が空いて最終話投稿されると思います……たぶん。(的中率85%)
タイトル変更について
-
やっと変わったか……
-
前の方がいいな〜