抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
SSの仕事がまとも与えられない自分はよく射撃訓練に勤しんでいる。
…つまり、毎日やっているのではないだろうか。
無意識と日課になっているみたいだ、不本意だけど。
そして、致命的なミスが一つ。
以前より余計に他者との関わりを絶って訓練しているせいか、反交尾勢力の動向を一切把握できていないということだ。
「見事にSSの利点だけを受け取ってるって感じ…」
とても、申し訳ない感じがした。
「___あ、如月くん今日もやってるねー。調子はどう?」
つい先程まで一人きりだった訓練場に何者かがやってくる。
SSの先輩…名前も所属の隊も知らない女性。
「まあ…何時も通りですよ。先輩の方はどうです?」
「私もまぁまぁかなぁ。でも、キミほど上手くはいかないよ」
先輩は自分が無心で撃っている時にふらりと姿を現し、飄々とした態度で話しかけてきた。
それが数日…射撃武装を主とする者同士、そちらの話では意気投合したのだ。
「でも、先輩の方が実戦形式では成績優秀ではありませんか」
「それはキミが実戦訓練に顔を出さないからだろう…? 大隊長に聞いても難色な反応しか返してくれないし…」
「顔を出せとは言われてませんからね。言われたらそれはもう喜んで参加しますよ」
「本当かぁ…? だったら今度は来てみたらどうだ? 大隊長には私から口添えしておくから」
「はぁ…。邪魔者扱いされませんかね…。自分で言うことじゃないですけど、僕大半の隊員さんに嫌われてますよね?」
「それだけがネックなんだよね…。”あの一騎打ち”の時とは比べ物にならないくらい腕が上がってるんだし、それに何時もの謙虚な態度で参加すれば大丈夫じゃないか?」
あの一騎打ちとは、先日の女部田隊長との勝負にならなかった勝負のことである。
「本当はそれが目的で今日は…?」
「まさか。今日はそれだけじゃないよ。私の訓練もそうだし、キミに提案をしようと思っていてね」
「提案? ドスケベなやつじゃないですよね」
「勿論それはまたおいおい…今日は如月くんにはハンドガン以外の銃器もどうかという話をしたかったんだ」
「ハンドガン以外の、ですか」
あまりハンドガン以外の武器は積極的には使ったことがない。
「まーたそういう顔をする。そんなに嫌?」
「嫌というか…まぁ…」
意識の問題だった。
「楽をしてはいけないと言われているようで…」
「別にハンドガンで戦うことを縛りとは言わないと思うけど…」
「懐に隠せて邪魔にならなくて、片手で撃てるハンドガンがどうしても馴染んでしまっていて…」
「誰かを暗殺しかねない雰囲気だね」
「背後を取った時点で勝ちですからね」
「そういう話じゃないよ…」
「まあともかく、ハンドガン以外は使う気がないですからね」
「そう言わずに一回くらい使ってる所を見せて欲しいものなんだけどなぁ」
「そうすると『じゃあ次は編隊行動に加わって』ってなりそうですもん」
「これで簡単にライフルの方に興味を示してくれるならそうしてたよ」
「ほらやっぱり…」
「……諦めるしかないかぁ。期待してたんだけどねぇ…。」
「その件はもう諦めてください。次の合同演習とかはほら、僕自身で言っておきますから」
「キミにそんな権限ないだろ」
「そういえばそうでしたね…最近やけに会長とかが話し掛けてくるからつい…」
「そういえばキミは会長のお気に入りだったな…」
SS内では自分は嫌われるか、会長のお気に入りらしいから触れないでおこう___と避けられるの二択しかないのではと考えた。
「そういうのも、払拭しないといけないですね…」
「そうだ、だから次の合同訓練は絶対に来るんだぞ?」
「わかってますよ。新兵の所にでも何処でも」
銃器と訓練の話しかしない関係ではあるものの、ドスケベを避ける過程で必然的に避けてきたコミュニケーションを久し振りに上手く取れたような気がして内心ほっとしていた。
「それでは後は先輩に譲りますね」
会話も良い感じに纏まった所で、訓練場を後にした。
何処かざわつくような胸を軽く押さえ、帰路についた。
______
何時もと変わらない道を歩き、自宅の前まで到着した。
相変わらず夜になっても嬌声がBGMに入ってくるが、今宵は何処か雰囲気が違った。
「……お待ちしておりました」
「…どうして」
「こんな時間に悪いな」
自宅の前に、何時も昼飯を共にする淳之介くんと、この島ではあまり見掛けない着物の少女___
琴寄文乃本人が、自分を待っていた。
あとがき
新キャラ紹介
先輩
SSに所属するA等部三年生の先輩。
名前はおろかどの隊所属なのかも悠真は把握していない。
というか素性すらハッキリしない謎の存在。
偶然仲良くなったモブキャラだと思ってくれたら幸いです。
今回は短めですがこの辺で。
次回から本編に悠真くんが絡むことになります…