抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
ドスケベセックスが日常的に行われなくなってしまった青藍島で、成すべきことを成す為に。
「___失礼します」
ドスケベ条例は廃止された。
それが琴寄文乃が持っている力___なのだろうか。
それとは少し違う、何か黒い意思がドスケベ条例を、青藍島を完全なる悪として島外を敵に回した、そんな気がした。
確証が得られる程の情報は手元には無い。
それなら此方は勝手に動けば良い。
NLNSの秘密基地から出て真っ先に向かったのが生徒会室だった。
「おい、良く此処に顔が出せるな」
生徒会室の中に入るなり、ハンドガンの銃口を突きつけられる。
「もう、争う必要は無い筈です」
「誰のせいだと思って___!」
「………礼」
空気は最悪。
平静を装う事も難しい程に、向けられた銃口と糺川先輩の視線には殺気が込められている。
それは会長に窘められても変わらない。
「目的があります」
「目的? ドスケベ条例はなくなったんだぞ。目的は達成された筈だろう!?」
「その話を、させて下さい」
「……それは、私達SSにも、関係がある事ですか?」
「桐香様!」
「あります、とは断言しません。ただ___」
深呼吸の後、続ける。
「共存を目指したい、それだけです。今なら、まだ間に合うんです」
「共存…?」
「ドスケベを肯定する者と、ドスケベを否定する者の、共存」
「なっ…そんなこと、出来る筈が…」
「これから、それを実現させるんです。ドスケベ条例の象徴の、SHO本社ビルが解体される前に」
あくまで推測でしかない。
ドスケベ条例が廃止されて不要になるモノを優先度が高い順で挙げるのなら、一番はSHO本社ビルではないかと。
頭を潰してしまえば、後の場所など容易いのだから。
「…まだ、戦う敵がいるということですね?」
「そうです…。信じてください、とも言いません。ただ、いずれまた五月蝿くなる…と伝えたかっただけなので」
伝えることは伝えた。
そう思い緊張感で竦む足を無理やり動かし、生徒会室から出ようとした。
「___待って、キサラギくん」
出ようとしたタイミング女部田郁子が正面から姿を現した。
「もう話すことは話しました。後はお二人に聞いて貰えれば___」
「じゃあ、二人きりで話がしたい」
「え…?」
不思議な要望だった。
______
「ありがとうキサラギくん。てっきり話に付き合ってくれないのかと思ったよ」
「僕からお願いするならともかく、中隊長から言われるなら、断る理由がありませんので…」
放課後、ドスケベセックスが禁止になって閑散とした校舎。
その空き教室の一つに、二人で座って話をすることに。
「事情は大体わかったけど…勝手に話して良かったの?」
「…もう争う必要が無いので」
「そっか。それがキサラギくんの考えなら、そういう事にしておくよ」
「助かります」
「それで、ダーリン達はどうするつもりなのかな」
「…文乃ちゃんの為に戦うでしょうね。防人老人と」
「キサラギくんは一緒に行動しないの?」
「最初は一緒に戦う気満々だったんですけど…そういえば武器のハンドガンが手元に無くて、どうしようも無いから待機…ってことになった感じで」
「…本当は武器を調達できればって思ってた?」
「いえ…別方向から、出来ることをしようと思いました」
「それが…SSに協力を仰ぐことだったってことか」
「いえ、SSではありません」
「え?」
「SSといっても用があったのは”ビッグスリー”のお三方だけに、というつもりでした」
というのも、と繋げる。
「SSの全隊員となると、説得なんて不可能ですから」
「それで、まだキサラギくんと直接遣り取りをしてた私たちだけでも…ってことなんだね」
「はい」
首肯の後、俯きがちに言葉を続けた。
「僕には何が何だかわからない話ですよ。本当は文乃ちゃんの事に肩入れしなければ良かったとか、大人しくドスケベしていれば楽だったかもしれないとか、考え出すと止まらないんです…」
「わかるよ。そういう子はSSにだって少なくないから」
「押し付けとか、復讐とか、どれも無い方が良いと思うんです…ある程度の自由はあったって構わないんです。ただ、自由は無秩序の上では成り立ちません…どうしても枠組みというのが必要なんです。ドスケベ条例はその枠組みが厳しかっただけで…改善することが出来れば良い条例になっていた筈なんです…」
「………」
「だから、僕は文乃ちゃんが言った”共存”を信じたいと思いました。そこに、深い気持ちはありません。ただ、何事も起こらない一日があってもそれで良い、ですから…」
「言いたいことはわかった」
彼女はそれだけ言うと、立ち上がって笑みを浮かべた。
「勝てば官軍だからね。勝った側の人間がそう言うなら、負けた私達は従うよ」
「………従わなくても、良いんですよ?」
「そういうことにしておいた方が、キサラギくんに変な目線が向くでしょ? だから、これで良いんだよ」
「………」
「どうしてもって言うなら、意地でも関係性を作っても良いんだよ…?」
「……セックスは、先約がいるので」
「…そっか」
「でも、そういうことにしておきます。でも、どうか内密に…」
「わかってるって。それとなく協力すればバレないでしょ?」
こんなに話をわかってくれる人なのか。
ある意味バッサリとした割り切り方をしているからか、それで良いのか不安に感じることも無いわけではないが。
「…その心遣いに感謝します。では、僕はこれで」
信じて任せても構わないと、そう思わせてくれた。
「あ、そうだ。この際だから一つお願い聞いてくれないかな?」
「お願い?」
「その、大きな戦闘の後…本当に共存が上手く行った時は、ダーリンに私のこと、上手く言っておいて欲しいな♪」
「…尽力はします」
こんな完璧なヒロインに好感を抱かないワケが無い、と思うのだった。
あとがき
会話とかワンシーンを引き伸ばすのはできても連続して別のシーンに移動するのがどうやら私は下手みたいです。
それもまあ元から青藍島に住んでる悠真くんなら日常的に異常な光景を見ているでしょうからそこまで記憶に残らず、印象的な記憶だけを引き抜くとこれくらいあっさり短いお話になるのかなって感じの認識で書いてるからでしょうけれども。
今後もあっさりした感じになるかと思いきや、早いことにもう原作だと終盤なんですよね。
だからシーンの進行度とも絡めると今までより時間の経過がゆっくりになると思われます、多分。