抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
没シナリオとか作ってみたい願望ありますね。
「…………はっ!」
机に伏せていた上体を起こし、瞼を開けて眼前の現実を捉えるまで数刻。
置いてあるデジタル時計には”4:50 AM”と表示されている。
それを証明するように窓から見える空は未だに暗い。
昨日は何をしていたんだっけ_____
いや、まったく覚えていない。
確かに昨日の放課後は真っ直ぐ家に帰らずに反交尾勢力を探す為に散策に出ていた筈だ。
然し、それ以降の記憶がないのはおかしい。
朧気だったり不鮮明ならまだわかるが、ほんの一欠片も思い出せないのは流石に異常だ。
「何か、残してないのか…」
昨日と相変わらずPCのモニターはつけっぱなしだったがデスクトップ画面が表示されているだけで、何か作業中だったかというわけではなかった。
タスクバーには、普段は使わないメモ帳ソフトが開いている表示がされているくらいだった。
今更この年齢になってオカルトじみたモノには恐怖を示さないが、記憶の無い自分が何か書いているかもしれない、と自分の言葉の筈なのに怯えていた。
マウスの右クリックを押さえる指先は微かに震え、ゴクリと喉を鳴らす。
『着物の少女
どうしてそうなる。
昨夜に一体何があったのかを説明するわけでもなく、ただただ難易度の高いミッションを与えられたような感じだ。
それに、命令形ではないということは、恐らく自分で打ち込んで保存したということで間違いないだろう。
ただ、ただ。
「手掛かりが少なすぎる…」
動機も不明、何もかも不明なのだが。
理解できるのは、”彼女”の存在が反交尾勢力と関係していることくらい。
それとも、もっと重要な存在なのかもしれないが_____
_______
9:00 AM
今度は二度寝すらできず、体調を崩した。
想定外の問題に対して身体の反応が異常なことを把握できただけでも良かったと思う。
メモ帳に書かれた一文は消さず、ずっと放置してエロゲー制作に掛かっていたが、ずっと気になってまともに進まない。
あの後、メールなど文章が残るモノは粗方確認したが、昨日と違っていたのはメールフォルダに迷惑メールのような類のものがあったくらいだった。
『明日、午後3時に伺います
どこかで見たことがあるような名前の送り主からのメッセージが本当なら、今日の放課後に来ることが確定しているのだ。
自分の知らない所で。
気持ちを落ち着ける為にも今日は休んで正解だったと前向きに考えることにして、謎の人物に対して何を尋ねようかなどを整理することにした。
______
3:00 PM 頃
身に覚えのない約束の時間に近づくと自然と緊張してしまう。
水乃月学園に入学してからというのもまとも誰とも会話をしていないド陰キャだったのを今更思い出した。
昨日風紀委員長との会話は自然とドスケベを避ける為に培ったスルースキルの賜物なのだ。
普通の会話の遣り取りとは話が違う。
これも自分がモブキャラだと断定しているからこその謎の自信なわけで。
ピンポーン
あれやこれやと朝から思考を巡らせて居る内に時間になったらしい。
ドアまで足を運び、ドアスコープを覗いて来訪者の姿を確認した。
ドアの前に居たのは二人。
一人は体格の良い眼鏡をかけた好青年といった感じで、もう一人は青年と顔立ちが似ているような気がする少女といった所。
男女一組だなんてドスケベセックスしている所しか見ない為、ある意味普通に立っているのが新鮮でもある。
「い、いらっしゃい…ませ?」
腕章を付けていないことを確認した上でガチャリと扉を開き、ぎこちない声で出迎えた。
「何だか昨日と態度全然違うんだけど、人違いじゃないよね兄」
「アドレスは間違ってなかったと思う」
「詳しいことはなk……こほん、部屋の中で話してほしい」
「言い直す必要あった?」
「………」
余計な気遣いが微妙な空気を作り出してしまったので、足早に部屋の中に促すことで紛らわした。
「……で、改めまして。二年生の如月悠真です」
「それは昨日聞いたけど…俺は橘淳之介。こっちは妹の麻沙音」
「ねえ本当にこんな同類じみた陰キャが昨日の”アレ”なの?」
所々鋭い罵倒が入ってるような気がするが、麻沙音さんは自分に対し未だ疑念を抱いている様子だった。
「俺にもさっぱりなんですよね…どうしてこうなったのかさっぱりで」
「…まさか、覚えてないのか? あれだけのことがあったのに?」
「えっ、それだけのことがあったと…?」
_____こうして、先に色々と情報交換をする所から始まった。
「____つまり、SSから逃げる際に俺が反交尾勢力…”NLNS”の皆を結果的に助けた、ということで」
NLNSの目的は『ドスケベ条例の排除』、これに尽きるということ。
その為に自分が残した文にもあった『琴寄文乃』を確保することが当面の目的だとも。
そして肝心の自分は、本当に偶然SSに追われている彼らを何かしらの手段で助けたということだった。
「実際自覚がなさすぎて本当にそんなことがあったかどうかさえわかりませんけど…取り敢えず、橘さんの話は信じますよ」
自分がどう行動したからとは言え、現実として自宅に姿を見せてくれた二人の事を思うと、頼りない言葉でも言ってみせるしかなかった。
「正直に言って如月がこれからSSにマークされる可能性は高いと思ってるんだけど」
「それは俺も同じことを思ってて…恐らく、数人に顔を覚えられてる自信はあります」
そんな自信あって欲しくはなかった。
自分でもそう思う。
「今後、どうするかを少し話し合いたい」
「はい。俺自身、身の振り方を考えておかないとな、と考えていた所でしたから。」
「…とは言っても、俺たちと違って如月は一人だから、毎日ドスケベから逃げ続けるのは難しいんじゃないか?」
「寧ろどうやって避けられてきたのか気になるんだけど…」
「自宅で乱交パーティやってるからとか、それらしい言い訳で避けてたから、最近こそSSに呼び止められるようになってきましたし…」
「かといって不登校になるわけにもいかないよな…」
余計に怪しまれるので、引き篭もるのは良策ではない。
場合によっては包囲されて押し掛けられることも十分有り得るだろう。
「かくして、波乱万丈な日々が幕を開けるのだった_____」
「よくある展開だけどこれ現実だから」
実に笑えないのだった。
______
8:00 PM
二人が帰ってから数時間、この一日で得た情報を整理していた。
・自分はSSと張り合える謎の力があるかもしれないということ
・昨夜の事から、更にSSの取締りが強くなる可能性があるということ
・これ以上関わるのであれば、NLNSへの加入を余儀なくされるということ
いや、全然情報入手できてないじゃん。
これから危険になるってだけじゃんか。
自分の把握できていな行動のせいでイベントに強制参加されられる勘違い系主人公になっていないか。
あくまで遠くからこの一連の出来事をエロゲーに導入できればいいだけだったのに。
このままでは自分も登場人物の一人になりかねない。
というか、
「何で、NLNSに誘われてるんだ…?」
その問いに答えを示してくれる者は居ない。
エロゲー制作が趣味でドスケベ条例に反対する童貞であるだけなのに。
無意識の内に現れたとされる『もう一人の自分』に半分落胆しつつ、半分は期待も込めて。
制作途中のエロゲーのキャラ設定の主人公の欄に、
『名前:悠』
とだけ添えて、上書き保存した。
ど う し て こ う な っ た
どうやらNLNS加入√に突入したようです。
ここからSS加入√に到達するには、悠真くんの記憶を暴いていかないといけないみたいです。
最初に考案していた「あくまで傍観者」の立場から原作を遡るというコンセプトはもはや使わなくなりそうな予感を抱いていますが、実際に戦闘シーンを描き始めるとまた代わっていくかもしれないです。
次回は設定を補完するためにシリアスというよりかはコミュニケーション重視で進んでいきます。SSBIG3と悠真くんの関係も少しずつ露わにしていく感じで。
………ここまでおだてておけば、”明日の自分”はこのような内容を書いてくれると思います。
因みに推しは文乃ちゃんと麻沙音ちゃんと礼先輩です。
この三人の誰かに悠真くんの童貞を貰いたいですね(届かぬ願い)