抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
大脱膣ゲーム当日。
運営ではなくなった自分に参加義務は無い為、イベントの終了まで自宅から出ない事を選んだ。
ただでさえ休日なのだからと、折角なので色々と仕込みをする事にした。
仕込みといっても大規模なことではなく、自宅でも出来る事だ。
少し前に見せて貰った”設計図”から着想を得た上で、防人老人に依頼した素材で新たなマグナムの弾を造り出した。
「でも、すっかり夕方になってしまった…」
作れたのはせいぜい三発。
素材の量としてはまだまだ余裕はあるものの本日の朝から造り始めた事もあってそこまでの数を揃える事が出来なかった。
然しながら威力は絶大だと信じている。
ただ使い所には最大限注意しなければならない。
そして、計画が動き出す。
__________
学園内に隠されたトリ公の___反交尾勢力の基地の正確な位置は自分でも知らない。
A世界でも一度しか入った事が無い場所なのだから、当然何処から出てくるかもわからない。
それはSSの動向を観察すれば良いワケで。
「___!_____!」
「そこか…!」
飛び交う指示の声の方へと向かう。
声が大きくなっていくと共にSSの人間がちらほらと姿を見せる。
「あれ、如月さん!? SSを抜けたんじゃ___」
「今はそれどころじゃない!」
顔が知られている為隊員とすれ違う度に不思議そうに尋ねてきたり、報告しに行ったりと様々な反応を見せるが、それをお構いなしに通り過ぎ、トリ公のメンバーがいる場所へと向かう。
「___っ、此処か…」
本格的にSSの訓練を受けていたのだろう、疲労感も一切なく現場に急行する事が出来た。
そして戦況の把握を急ぐ。
「…水引はまだ出てきてないか」
戦っているのは会長と女部田が渡会先輩と、淳之介と糺川先輩が片桐さんと戦っている。
文乃は後方支援で狙っているだろう。
そして畔さんが居るワケだが、今の所は見当たらない。
今回の戦闘は元々のSSとトリ公の戦力差に加えて戦闘パターンを淳之介が把握している分更に歴然のものとなっている筈だと考えた。
恐らく彼らも水引を燻り出す為に敢えてSSの隊員には直接戦わせずに当事者だけで戦おうとしているのだろう。
元より自分を戦力として考えていない布陣であるが故に手出しはせずに少し距離を取って見る事しか出来ない。
そして何より問題なのが___
「如月さん、こんな所で何をしているんですか」
「…っ、キミは…昨日の」
「SSではなくなった貴方がどうして此処にいるのか、と聞いているんです」
他のSS隊員にはSSを抜けた理由を説明しなかった為、自分も敵として認識されているという事だった。
「悪いけど邪魔はしないで欲しい。
「説明になっていませんよ…もしかして、寝返ったんですか…!?」
「発想の飛躍が激しい…誰もそんなコト一言も喋ってないけど…!」
「…会長や、中隊長は知っているんですか」
「全部は説明してない、けど…此処に来るのは知ってるよ」
「………という事ですが、どうしますか」
「すかさず報告してしまう辺り、一番隊はデキるけど融通が利かないって思うよ」
SSを抜けているという事実がある以上、トリ公への潜入作戦だと説明しても説得力が下がる。
故にその場から逃げる事にした。
「あっ、逃げるって事はやっぱり敵に…!」
「敵じゃない! 今は証明出来ないけど!」
木々の間を走り抜けながら追ってくる昨日の一番隊の娘に必死に弁明する。
まるで鬼ごっこだ。
「じゃあ、止まって全部説明してください…!」
「それも出来ない!」
「じゃあ何が出来るって言うんですか…!」
「…じゃあ黙って行く末を見守ってて欲しいかな!」
「数でトリ公を押しているのに見守ってはいけないですよね!?」
「あー言えばこーいう! 撃たないとわからない…!?」
流石に付き合い切れない___と無意識の内に苛立っていた自分は既に右側のホルスターに収まっているSS支給のハンドガンを抜いて銃口を彼女に向けていた。
「…っ! 撃つんですか、味方を…」
「味方だと思ってるなら追いかけないで欲しいんだけど…」
「じゃあせめて、傍で見せてください。如月さんが寝返っていないという事を」
「……自分の身は自分で護ってね」
渋々、本当に渋々受け入れた。
______
指示された隊列から抜けた彼女を後ろに控えさせたまま、淳之介達の戦場に戻って来た。
「…どうして加勢しないんですか」
「…トリ公のメンバーがあれだけならこの人数で確保出来るからだ。寧ろ、この後にやって来る”ヒーロー”に用があるんだ」
「ヒーローって、まるでこっちが悪役みたいな…」
「視点が変われば誰が悪役で誰がヒーローかわかったモンじゃないよ。トリ公にとっての”ヒーロー”を待ってるんだ」
「………?」
何を言っているのかわかっていないらしく、首を捻って疑問符を浮かべる彼女を他所に戦いは佳境に移っていた。
渡会先輩には基本的に女部田が接近戦を仕掛け、パイプ椅子からのカウンターを会長が妨げるという布陣で徐々に押している。
それは片桐さんの方も同様で、戦い方を知っている淳之介達が有利に運んでいるのは目に見えて確かだった。
『とった____!!』
ダッチワイフをデコイに使い、片桐さんの背後を取った淳之介が一撃を___
「___!?」
届かなかった。
寸前で何処からか飛んできた”何か”が淳之介の腕に命中し、獲物が弾かれて後方に突き刺さった。
「如月さん、頭上…!」
彼女の言葉で反射的に上を向く。
それから、重々しい音と共に
「やっぱり、ハメドリくん、か…」
「如月さん、性帝が___!」
言われてまた視線をその方向に向ける。
淳之介は既に撃たれたのか、その場に倒れ込んでしまっていた。
「…っ、性帝の身の安全が大事だな…。性帝の戦線離脱の援護に入れ!」
「りょ、了解…!」
咄嗟の指示だったが緊急事態だからとわかってくれたようで、彼女は直ぐに動いてくれた。
___これで邪魔者がいなくなった。
SSビッグスリーが淳之介を護る形でハメドリくんと対峙する。
「まだ…出るわけには」
淳之介の身を案じる事は最重要事項だが、殺したという事は無い…筈だと願い、出る事はせずにハンドガンを収め、左側の”例の弾”を仕込んだマグナムを抜いた。
そして、全身が謎の装甲に覆われたハメドリくんに女部田が攻撃を仕掛ける___も、刃は届かない。
会長が糸で拘束しようとしても、一瞬で解かれてしまう。
傍から見ても、その戦力差は歴然だった。
見事にその差を覆され、性帝が地に伏したという事実はSS隊員を混乱させる。
___撤退せざるをえないのは、当然の対応だった。
自分以外は。
「………っ!」
マグナムの引き金を引く。
重厚な銃声と共に放たれた銃弾はハメドリくんの腕に命中した。
「___っ、誰だ!」
焦りの声がハメドリくんの中から聞こえた。
腕部には、確かに銃弾が装甲を抉ったような痕が付いたからだ。
「……”d10o”で間違いないみたいだな」
戦線を離脱するSSを庇うような形でハメドリくんの正面に姿を現す。
「…悠真くん。頻繁に麻沙音ちゃんに会っていたから何かしてくるとは思っていたけど…まさか、私の邪魔をするなんて…親友として悲しいよ」
「その割には情報を教えてくれないものだからこっちから動くしかないと思ったんだよ」
「最近の行動が目に余るんだよ…このままだとSSに情報が漏れかねない」
「大したモノだと思うよ…
「何処かの誰かさんと違って、知恵だけは揃っているからね…それよりも、どうして撃ったんだい?」
「強度を知りたかっただけだよ。でも、コレだと淳之介が相手だったらいい勝負になってたってワケだ」
「いい勝負だって? たった数秒で倒れたヤツがコレに勝てると思っているのか?」
「………良かったよ、知りたい事は大体知れたから」
「ちょっと待て。一体何を言っているんだ、悠真くん? まさか、私を裏切るつもりだと言うんじゃないだろうね…?」
「裏切るとかそういう話じゃないんだよ」
マグナムを向ける。
「お前のやり方は間違っている」
「間違ってないさ。もう少しで達成出来そうなんだ、邪魔しないで貰えるかな…?」
ハメドリくんも腕を構える。
「___っ!」
「…!? どういうことだ、コレは…」
撃たれると思って少し身構えたが、驚きの声が聞こえるだけで弾は飛んでこない。
「どういうことだ…?」
不思議に思いながら、後退りで距離を取る。
「麻沙音ちゃんは悠真くん思いだなぁ…。また今度にしよう悠真くん。次は、敵だ」
そう言い残し、そのまま離脱する事が出来た。
あとがき
遂にトリ公と完全(?)に敵対する方向に進む事になりました。
そして次回は淳之介達に少し早いネタバレが…!?