抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
その手前で待ち構えるのは、”トリ公”を逃し、性帝に怪我を負わせてしまって気を落とす隊員達であった。
___辛くも、離脱することが出来た。
運良く…否、ハメドリくんの照準システムを麻沙音が少し弄って自分を照準対象外にしていたのだろう。
もしくは、一発だけ放った”d10o”製の銃弾がシステムにエラーを与える程のダメージを与えられていたのかの何方かの筈だと考えた。
然しこれで水引からは完全に敵扱いにされてしまった。
であれば後は淳之介達と合流し、共に策を練るしかない。
故に、SS寮へと足を運んだ___が、
「………そんなに、なのか」
寮前のグラウンドには隊員達が様々な表情を浮かべて佇んでいたり、会話をしていたりしていた。
その空間は異様で、矢張り全員の気掛かりな所は性帝の具合なのではないだろうか。
「…これなら、良いか…?」
これだけの人数が居れば自分が居ても怪しくないだろう、とSS寮の中へと入ろうとした___
「___如月さん!? どうして寮に入ろうとしてるんですか!?」
思わず舌打ちした。
「またキミか…どうしてそんなに僕の見分けがつくんだよ…」
控えめに声を掛けて来たのはついさっきまで一緒に居たSS一番隊の娘で。
「尊敬してますから。それよりも、流石に寮はダメですよ…」
「どうして」
「性帝さまが重体なんです。ですから、今じゃなくても…!」
「いや、今入る」
「だからダメですって___!」
「どうしても退かないって言ったら?」
「……っ、SSではないので…実力行使で止めさせて貰います」
空気が冷たくなる。
二人で会話していた筈なのに、何時の間にか周囲の視線を受けていた。
「仲間割れは良くないって…」
「だったら邪魔をしないであげて下さい」
「…トリ公の正体の話についての報告なんだけど」
言いたくないが、言った。
嘘は吐いていない。
「……本当ですか」
「本当だよ。さっきまで戦ってた」
「それにしては無傷じゃないですか。性帝でさえ重症だというのに、おかしくありませんか…?」
そう言われると痛い。
「…全部説明しないとわからないくらいSSは頭が悪くなったのかな…」
右腰のホルスターに手を添え、威嚇だけしておく。
「……はぁ。明日生徒会室に来ても攻撃しないでくれよ」
いざとなれば勝てないこともないだろうが、ここでSSと溝を作るのは良くない、と退く事にした。
__________
「___と、言うわけですが」
翌日、改めて生徒会室にやって来た。
人払いも済んで居合わせているのは異世界移動組の計五名。
「ハメドリくんの中身は麻沙音ちゃんではなかった。断言できる」
「……そうか、それは、良かった」
「…もしかして、全部わかってる感じで…?」
「如月さん、ちょっと失礼しますね___」
「失礼って何を___っ!?」
「ふっ…んっ、ちゅうぅ…♡」
唐突に唇を塞がれ、気付けば舌が絡み合っていて、気付けば”理解”されていた
「ふぅ…はぁ…。こんなに大事な事を色々とやっていたんですね、如月さん」
「そういう立ち位置に居たんだから、仕方ないでしょう…」
「具体的にはどんな事をやってたの?」
「如月さんは麻沙音さんと定期的に会っていて、トリ公のリーダーとさえ面識がありました。アーマーハメドリくんの弱点まではわかってはいませんが、素材の方も心当たりがあるみたいですし…」
「でも、肝心の計画の内容は教えてはくれなかった。それで、昨日は敵だとか言われたからもう麻沙音ちゃんにも会えないと思う…」
「…桐香のその言い方からすればそこまで絶望的じゃないっていうのもわかった。あまりくよくよ出来ないな」
トリ公のリーダーが秋野水引だということは口にしなかった。
それはつまり、秋野水引がトリ公のリーダーとイコールになっているというわけで、A世界では副会長であることを失念しているのではないか。
「…もしかして、そこそこ記憶が上書きされてきてますか」
「…そういうことになるだろう。淳之介が副会長の立場に居る事が段々と違和感なく見えて来ている」
「完全に記憶が上書きされるのも時間の問題でしょう。ですのでなるべく早く帰る方法を探し出さなければいけません」
人物の相関図が出来たのは良いとしても、それ以上にA世界へ戻る方法が見つかっていないようだった。
「そして如月さんはSSに戻ってきて貰いますね」
「急に戻ってきても皆混乱しませんかね…」
「その場合はほら___」
__________
「………」
放課後の訓練場。
例の如く射撃でもしようかと出向いた所、
「…おかえりなさい、如月さん」
「だから何で僕の行く所に居るのさ」
「専属になりました」
「は?」
「…専属になりました。監視という名目で」
「えぇ…」
すんなりと戻すわけにはいかない、という会長のイメージもあるのだろうと察した。
「嫌なんですか、私と組むのは」
「まあ、事情はわかってくれそうだから何も言う気はないけど…」
一人がお似合いだった自分に共に行動する人間が居るというのは嬉しい反面、責任が重い。
「因みに所属は? まさか一番隊から外されて…」
「寧ろ如月さんの所属が一番隊になったと聞きましたが」
「何それ聞いてない…」
自由に動き回るのを制限しているようにも感じる。
「あー、そういえば名前、聞いてなかった」
「今更ですか…太田部夏海です」
「それじゃあよろしく…相棒?」
「何方かというと上司と部下です」
A世界では面識すらない関係が出来上がってしまった。
あとがき
こっちはB世界だからそういう事があっても良いはずだ___!
というわけで名前を出す事にしました。