抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
___妹は死に、助けようとしていた兄妹は引き裂かれ、理解を求めていた少年の復讐を止められなかった。
B世界の自分は果たして平静でいられたのだろうか?
その答えは否だ。
妹を失っただけで記憶まで改変してしまう程に脆い自分が、耐えられる筈が無い。
だから、麻沙音の所に行って傷の舐め合いをしていたのかもしれない。
少しでも気を紛らわす事が出来ればと思って。
そう考えると、手紙の意味だって変わってくる。
「___自殺願望、だったのかな」
手紙にあった『次の夏』というのはあと一年、頑張って生きてみようという意思表示で、妹の所に行くという事は、逝くという事なのだろうと考えた。
USDが成立してしまえばこの世界に生きる価値はない、と既に見切りを付けていた可能性も考えられる。
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「……………」
水引らSHOやSSやらを一応撒くことに成功し、旧日本軍の跡地とかだという色々と思い出の場所へと身を隠す事になった。
そこで淳之介達と合流出来たのは僥倖だった。
「キサラギくん」
「…どうしました? 郁子さん」
「名前で呼んでくれるんだ…ありがと。もっとキサラギくんの話を聞いておけば良かったなーってちょっと思っちゃった」
「僕も…最初から情報を共有していれば良かったなぁ…って後悔してます」
「淳之介くんが引っ張ってくれるって言ってくれるのは、とても心強いね」
「発想と行動力が半端じゃないんですからね…」
「でも、キサラギくんはあまりNLNSの皆と関わってないけど…良かったの?」
「それはまぁ…あのハーレムみたいな場所に男が増えても仕方ないかと…」
「わかるけど…本当にそれだけなの?」
「…エロゲーを作ってみたいと思ったんです。この島を舞台にして」
「エロゲー…ダーリンがやってるやつだよね?」
「この島はエロゲーの舞台にするには十分すぎる場所でした。そして反交尾勢力っていう存在が出てきた時にストーリーをなぞらえようと思ったんです」
「それが、NLNSに近付いた理由?」
「その時に”悠”が郁子さんに戦闘を仕掛けたせいで、SSに捕まって…成り行きでSSに入ることになって…色んな事情を知ることが出来ました」
でも、
「僕には淳之介ほど、青藍島の人間に憎しみを抱いてはいません。確かにドスケベ条例は僕にとって不都合だらけだったのでそれは素直に嫌でしたが、島の人に対しては、同じ人として接するべきだと思っていることは変わりません」
「復讐に囚われる淳之介くんを、フミノちゃんが変えてくれたってことだよね」
「そうだと思います。その結果が真ドスケベ条例を作ることが出来た…ってことですね」
「…それで、エロゲーは?」
「主人公は淳之介でした。それに該当するヒロイン候補も郁子さん達を含めて人数は揃っていました。でも、作れそうにないと途中で思うようになりました」
「それは…淳之介くんにとってフミノちゃんの存在が大きすぎるから?」
「…そうです。というより、淳之介の今まで選択肢があったからと言って、それを利用するのは今の選択に対する冒涜だと気付いてしまいました」
ここに居る人を元ネタとするのはあまりにも非道だと、思ったから。
「だから、エロゲーはもう作らないことにしました。僕はあまりにも客観視と楽観視が酷すぎると思ったので」
「そこまで卑下しなくても良いんじゃないかな…?」
「成長出来たと思うので、構いません。僕はまだまだ、人を知らないんだと気付けたので…」
でも、どうしても、
「エロゲー制作とかそんなの関係なく、NLNSという組織は僕にとっては聖域のようなものなんです。少なくとも僕があの輪に入る姿が想像出来ません」
そして、
「僕は、自分が見ている人が幸せになってくれたら、幸せなんです」
真理だった。
これが、如月悠真の。
「だから、あまり干渉したくないってこと? 自分が介入したら幸せになれないって思ってるから?」
「まぁ…いるよりはいない方が良いかと___」
「それ、本気で思ってるの? 本気で、キサラギくんは自分が邪魔な存在だと思ってるの?」
此方を見詰める郁子の顔は心配と不安が混じっているように感じた。
「…既に持ってしまった関係なら、そうは思いませんよ。ただ、まだ何の関係も無いなら…」
「…だから、関わった以上は自分が全部責任を取らないといけないってこと?」
「悪い方向に働くなら、そう思ってますけど…」
「…そっか。これが淳之介くんとキサラギくんの違いなんだね」
納得したような、また違う感情のような、然しどこか清々しい表情を見せた。
「…もし、キサラギくんがどうしようもなくなって、助けて欲しいって思った時が来たら、イクのこと、呼んで欲しいな」
「え…?」
「これで一回くらい責任を果たせなくても、気が楽になるでしょ?」
そして笑顔で、
「だって…淳之介くんがフミノちゃんと元の世界で結婚するなら、次は悠真くんが良いなぁって思ったから」
「……え、どうしてそうなるんです…?」
「どうしてだろうね。イク、淳之介くん一筋なんだけどなぁ…でも強いて挙げるならやっぱり、強いから?」
「強いって…一回きりでしたけど」
「それは、悠真くんが自分でチカラを抑えてるからじゃないかな? 出来るだけ干渉しない、出来るだけ穏便に済ませたい、出来るだけ…って自分に縛りを設けてるから本気が出せないんじゃないかな」
一理ある。
確かに、殺意ほどではないが本気で叩きのめそうだなんて思ったことはない。
「でも、それだけじゃないよ」
「じゃあ、どうして___」
「まだ、悠真くんのおちんちんを味わったことがないから?」
思わず頭を抱えた。
「…なんで複数人とセックスの約束をしないといけないんですかね…」
「やっぱり童貞は貴重なんだろうねぇ…淳之介くんは色々拗らせてるのはわかってるし、比べたら悠真くんって普通だなぁって思っちゃうんだろうね」
「普通だから普通に筆下ろしさせてくれそうって話なのかな…」
「イクが相手だと何か嫌なことでもあるかな?」
「…罪悪感?」
「それは大丈夫だよ。もし本当に悠真くんとセックスする時が来たら、気持ちは決まってるってことだから」
「…そうですか」
追い詰められてる、と見ても良いのだろう。
ある意味危機的状況にある自分の客観的な精神を、報酬を明示しておくことで無理に落ち着かせようとしている。
とても、本気だと考えたくはなかった。
あとがき
郁子ちゃんと二人きりの会話…フラグだけ建てて逃げます…