抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
___完全に五人は孤立していた。
根城にしている戦場跡地が敵に見つかっていない事が何よりもの幸運だったが、それも虱潰しに捜索されれば発見されるのは時間の問題だと言える。
淳之介が此処ぞという時に皆を引っ張るとは言ったものの、具体的な案は未だに出て来ないらしく、動き出す事が出来なかった。
「___やっぱり、邪魔だよなぁ…」
こうなってしまったからには今更誰が悪いとか言っていられる状況などではないのだが、矢張り情報を持っていながら泳がせていた自分の責任というものは自然と大きく感じてしまう。
ならば自分が何処かで挽回しなければならないというものだが___
「___まさか、先輩があんなに如月さんの事を扱い難いと思っていたとは思いもよらなかったですね?」
この期に及んで会長の世話をしていた。
「それはもう…今まで勝手に行動しまくってただけなので」
「だから先輩もそれで良いと思っているのではありませんか?」
「いや、この状況で勝手に動くわけにはいかないでしょう…」
「それは…先輩はまだ知らない、如月さんの事情があるからでしょうね」
「え、全部話してないんですかやっぱり…!」
「話さなくても、先輩は既に察しているみたいでしたから」
「察してたのは麻沙音ちゃんの事だけでは…?」
互いを精神の拠り所としながらも、麻沙音は自分を頼る事はしなかった。
勿論水引本人から自分には情報を流さないように言われていたが、それでも情報を見せてくれたのはある意味信頼の形を成していたという事なのだ。
「如月さんは、何を望んでいるのですか?」
「それはもちろん、元の世界に帰って…目覚めるまで待ちたいですよ」
そういえばA世界の自分は意識不明のままだ。
であればB世界の自分が何かすることは無い為、そこだけは心配していなかった。
「本当にそれだけですか?」
「当然、それだけじゃない…です。何せ、こっちの僕は色々と立ち回りが酷すぎますから…」
「確かに…言われてみれば如月さんって面白い立ち回りばかりしていますよね? 本当に敵か味方かわからないくらいコロコロと動き回っていましたから…」
事実である。
「こんなに何方の考え方の板挟みになって正気で居られるワケがないんです」
「でも、童貞なんですよね?」
思わずは?と言いそうになったが抑えた。
「ええ、まぁ…」
「どんな立場になっても如月さんは童貞であり続けた。それが物語っていると思いますよ?」
「………」
「だって、先輩ほどの強い拘りがないのであれば今、此処で私とセックスしても構わないではありませんか?」
「いや、それは___」
僅かな沈黙の後、
「それは出来ない。淳之介が居るから…って、そういう事か…」
「ふふ、どうやらわかったみたいですね?」
「やっぱり、心の奥底は成長してないんだなぁ…純愛を望んでる。成り行きでヤるセックスは望まない。愛のないセックスは望まない___」
そして、
「目の前で繰り広げられてる恋愛バトルを邪魔するわけにはいかない___」
違った目線からも、辿り着いた結論。
それしかなかった。
「それは逆に、如月さんもそういった恋愛をしてみたいという願望があるのでは…?」
「一理あります」
でも、
「淳之介の女事情には関わりたくないなぁ…と」
「それが本音ということですね♪」
「何が嬉しいんですか」
「漸く腑に落ちたと言いますか、どうして私とのセックスの約束をしてまで今行うことを避けるのか、気になっていましたから」
「そういう性癖だったらどうするんだ…」
「それはそう言って下さったら焦らされてると思ってオナニーしますよ?」
「心の底からそうじゃなくて良かったと思うよ…」
「ふふ、敬語をやっとやめて貰えるのですか?」
「吹っ切れた。うん、一段と吹っ切れた気がする。やるべきこともわかったし」
「それはとても気になりますね…何でしょう?」
「水引とサシで戦う」
矢張り、この世界の自分の役目とはそういうものだと理解した。
自分の力不足で、未然に防げなかった衝突。
幾ら皆で解決しようにも、ある程度個人の問題と思えるまで状況が落ち着いてきたのだ。
「それは…私達の為に、ですか」
「それもある。でも、水引の問題は自分も関わっている以上は…」
「普通に戦えば、殺されてしまいますよ?」
「それでも、構わない」
断言する。
「殺されてもいい。これはケジメの問題だから…」
「…私は、嫌です」
「なんでまた…」
「どんな形であれ、SSに入っていたんです。それはつまり、私の家族ということですよ。家族に死んでほしいという人が居ると思いますか…?」
珍しく不安と心配を孕む表情を見せ、此方へと引き戻そうとしてくれている会長を見ていると自分が情けなくなる。
「…そう言われたくなかったから、距離を置いていたのかもしれない」
然し、
「…もう、決心してたみたいだから、もう大丈夫」
B世界で死んだらA世界で戻ってこれるかの保証もない。
以前淳之介が言っていた世界間でのフィードバックなどを考えるとB世界の自分が死ぬとA世界の自分が死ぬ可能性もあるという事だ。
「……そこまで決めているのであれば、説得するのは無駄みたいですね」
「もし、A世界に戻ってきたら…普通に過ごしたいです、ね」
思い切りフラグを建てた所で、立ち上がった。
「でも、今直ぐ戦うってワケじゃないので、そこはご心配なく。まだ、その時じゃないから…」
「では、それまでは私の傍にいて下さい」
「もちろん」
せめて、その時が来るまでは、こんな状況ではあるけれど何事もなく過ごそうと思った。
あとがき
そろそろタグに設定した残酷な描写が出てきます。
ぬきたし2編はあと二、三話ほどで終わると思われます。
毎話毎話短い文量での更新ですが、最後までお付き合いいただけると幸いです。