抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
淳之介の思惑通り、麻沙音以外のNLNSメンバーを揃えて戻って来た。
此方も此方とてSS隊員を取り戻した。
そして、作戦会議の結果、水引を倒す事よりも麻沙音の確保を最優先としてSHO本社ビルへの侵攻を決定した。
作戦の布陣としては、本社ビルの外でSS隊員がデモを装い、淳之介達を中へと誘導する。
それから下から最上階まで淳之介を送り出すような形で各階で敵を迎え撃ちながら進む。
そして淳之介は一対一で麻沙音と戦う。
水引は重要な予定があるから本社ビルには来ないという事が確定している。
それも麻沙音が勝っても負けても何方にせよ計画の進行に支障が無いという事を示している。
そして、水引の予定の相手は自分だ。
正確には自分はおまけ程度かもしれないが、既に水引を呼び出すメールは送信済みである。
いわば自分を餌として水引を釣り、麻沙音を救出するという作戦である。
「とは言っても、水引が来るという保証はない…か」
「もし水引が来なかったら、僕がそっちに向かえば自然と役者は揃うので問題ないかと」
自分もこのB世界で出来る最後の話し合いに参加している。
自分の行動はここまで来るとエゴでしかない。
「それで…もしその戦いで死んだとして、本当にA世界に帰って来れるのか?」
「そればかりは時間差なのでどうしようもないかと…だから、淳之介達が勝つのを信じて足掻いてみるよ。」
明らかに虚勢なのだが、笑ってみたが、情けない事にまったく笑顔にならなかった。
__________
夕刻、ちょうど淳之介達が麻沙音奪還の計画を開始したといった所。
水乃月学園のグラウンド、そこが水引を誘った約束の地で一人で佇んでいた。
「………」
馬鹿みたいにB世界に来てからの事を思い浮かべながら、静寂に包まれた時間を過ごしている。
「___馬鹿も良い所だよ。悠真くん一人と麻沙音ちゃんを交換したいって魂胆なのかな?」
堂々と、真正面にアーマーハメドリくん___秋野水引が現れる。
「…もしかしたらそうかもしれない」
「冗談だよ。そもそも悠真くんと麻沙音ちゃんじゃ何も釣り合わない。かたや唯一の肉親で、かたやそこまで深い繋がりのない友人もどきの差なんて比べるまでもないだろう?」
「そうだと思う」
「だから、最初で最後の友人が、こうして迎えに来てあげたんだ…共に復讐を___」
「”俺”が、そんな事をしに来たと本気で思っているのか?」
「ああ…本気で、戦う気で来たんだね。勝ち目なんて与えるつもりは無いと言った筈なのに…何か面白い策でも考えて来たのかい?」
「何も。足掻くだけだ」
口数が減ってくる。
「足掻く…? そんな実力差でもないだろう…秒でカタがつく」
「まぁ、そうだろうな」
「何が言いたいんだ? 私とおしゃべりがしたいってワケでもないんだろう…?」
「どんなに話しても復讐を止めないんだろう…だったら説得する気もないさ」
「ならどうしてこんな無謀な事を___」
「無謀だな。そして無意味だ」
キッパリと言い放つ。
「でも、そう思ってるのはお前だけで、俺には意味がある」
「ただ殺されるだけの事に、何の意味があるっていうんだ…!」
「それはお前にはわからない」
「何だと…!?」
「だってお前は理解しようとしないから。自分が今まで大多数の人間に理解されなかったからって、自ら他人を理解することすらやめてしまったお前には、一生わからないさ」
「貴様__!」
胸ぐらを掴まれ、身体が浮く。
「やっぱり、わからないだろ」
それでも、言い切る。
「結局、暴力で捻じ伏せる選択を取る。踏みとどまれる場所は幾らでもあったのに」
「そんな場所なんてなかった!! 平和的に解決なんてできない、貴様らの世界だって戦わなければ変わらなかっただろう!?」
「チカラの使い方を間違ってるって言ってるんだ___!」
「何が違うって言うんだ!? 悠真だって散々その手で、敵を撃ってきたじゃないか…!」
「倒す気なんてない! 止める為に戦ってるんだ! 誰の生命も奪わないって___」
「綺麗事だ! 結局人に銃を向けてるのは変わらないじゃないか!」
無機質な手で左腕を容赦なく潰す勢いで掴んでくる。
___でも、言うのをやめない。
「ぐ…ぅ…っ、でも、お前には殺意がある…!」
「チカラを向けてる事には変わらない! チカラに意味を求めるなんて___!」
「あ゛っ゛___!!?」
掴まれていた腕が伸びている方向に一気に引っ張られる。
人間の比ではない力で無理に引っ張った結果___腕の感覚が激痛で飛ぶ。
「これでも、まだ減らず口を叩くか…!?」
「ぁ…っ、が…っ…やっぱり、暴力で捻じ伏せようとして…」
「まだ言うかああああああああ!!!」
次は鋭く重い痛みが右脚から全身に響く。
至近距離でライオット弾を何発も撃ち込まれる。
「___ッ!」
今までの負傷なんて大したものじゃない___既に視界は何も見えない。
「___っぱり、___いか___」
水引の言葉は聞き取れず、視界が元に戻る事はなかった。
あとがき
あまり喋り過ぎると淳之介との戦いの際に口論できなくなりますからね…早めの退場で御座います…
というわけで次回、唐突に10年ほど飛びます、お楽しみに!