※この作品はR-18です。

抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか?   作:楓 湊

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セックスもまともにシたことがない人が結婚なんて考えられるわけないだろ!


32話 急に結婚とか言われてもわからない

 ___パーティーが終わるまで、結婚の話で盛り上がってしまった。

 

 まぁ、酔いも回ってるみたいだったし自分に酒気はまだ早いので外に出る事にした。

 

 

 「ん…っ、戻って来たんだなぁ…」

 

 車椅子に乗って、少しだけ散歩のつもりでビーチに向かった。

 真ドスケベ条例になってからヌーディストビーチだったものが別に服を着ていても構わないとなって気軽に出向く事が出来るようになった。

 

 「………」

 

 十年も経てばこの島も面影がなくなってしまうのかというのは杞憂だった。

 

 相変わらず、夜空が綺麗だったからだ。

 

 否、相変わらずではなかった。

 そんな景色を眺めるような場面は自分にはないのである。

 

 だから___

 

 「こんなに、綺麗だったなんて」

 

 以前は進んで外出するなんて考えた事も無かった。

 それが今は普通に外出しても何も言われる事はない。

 

 「___悠真さん含めて、皆さんで手に入れた共存ですから」

 

 「……文乃さん」

 

 背後から付いて来ていたと思われる文乃が何時の間にか隣に居たのを声を掛けられたことで気付く。

 

 「文乃、で構いませんよ。私の方が歳下ですし…」

 

 「…まだ、時間の流れに追いついてないんです。皆が遠い存在に見えてしまって…」

 

 「…結婚を避けたがるのも、そういう事なのですか?」

 

 「___それを聞いてくるとは思わなかった…不思議に思いました?」

 

 いいえ、と文乃が首を横に振る。

 

 「きっと、ドスケベを避けていた理由と何か通ずるものがあるのかもしれない、と思いましたので」

 

 「…確かに繋がってはいるかも。でも、同じってわけじゃなくて…その、僕なんかでいいのかな、って何時も思うんです」

 

 「それは勿論悠真さんの事を好きで___」

 

 「その言葉を素直に受け取れないんです。だって、そこまでの事をした覚えもないし…第一、僕という存在が足を引っ張る可能性だってあるわけで…」

 

 文乃の言葉を遮るように言葉を挟む。

 

 「然し、悠真さんが成して来た事は、今も好きだと言って下さる方が居るという事実が証明しているではありませんか」

 

 「…そうなんだよ。郁子さんから結婚したいなんて言われるとは思ってなかったけど…」

 

 「___悠真くん呼んだ?」

 

 「え゛っ」

 

 文乃とは反対の隣側に郁子が何時の間にか陣取っていた。

 

 「どうして…付いて来てたの?」

 

 「うーん…何だかフミノちゃんといい感じだったから?」

 

 「別に悪いこと何もないでしょ…」

 

 「そうだね。悠真くんには何もないかもしれないけど、悠真くん以外がどう思うかだよね」

 

 「むべむべ…」

 

 折角良い感じで締めれそうだったのに台無しだった。

 

______

 

 他愛の無い会話を少ししてから、文乃は「そろそろ良い頃合いですので、お先に戻りますね」と一人戻って行ってしまった。

 そして、意図せず郁子と二人きりになった。

 

 「もう少し、お話したいな」

 

 そんな郁子の要望で、暫くは夜空を眺めながら会話が続く。

 

 「___悠真くんはどうして結婚するのを避けるの?」

 

 「…まだ時期が早いから?」

 

 「早いって言っても、もうイクたち結構いい歳だよ? 逆に結婚しておかないとって焦らない?」

 

 「別に結婚しなくても生きていけるからね…何とも」 

 

 「じゃあ、どうして今欲しいのが配偶者、なんて言ったの?」

 

 「………消去法」

 

 少し言葉に詰まった。

 

 「本当は、何もいらないってこと?」

 

 「今まで貰い過ぎてたから…かな。これ以上何かを得たら、不吉なことが返ってくるような気がして」

 

 「そんなことないと思うよ。だって、こんな姿になって…悠真くんは自分でやったことだからって割り切ってるかもしれないけど、そんな姿を毎日見る皆はどう思う…?」

 

 「…別に、そこまで皆に干渉するような生活を送るわけには___」

 

 「だってもう歩けないかもしれないんだよ!? もう、両手で抱き締められないかもしれないんだよ…?」

 

 酔ってしまっているのかはわからない。

 今まで見たことが無いほど、郁子は感情的に___感傷的になっているように思われた。

 

 「…まだ、死んでないからさ。例え寝たきりになっても、生きてるなら僕はそれで」

 

 「悠真だけの話やなか! なしてナナセちゃんと同じこと言うと!?」

 

 何時の間にか、郁子に肩を掴まれ、正面で向き合っていた。

 標準語が崩れて方言が出ているのも気にせず、彼女は涙を滲ませながら続けて言った。

 

 「そがんこと言わんで…お願いやけん…」

 

 「………」

 

 再び言葉に詰まった。

 彼女がこんなにも情緒を乱して言ってくれているというのに、自分には何もわからなかった。

 

 「…どうして、そこまで僕の事を…?」

 

 言った直後にしまった、と後悔した。

 

 「そんなの…決まってるでしょ…」

 

 

 「悠真くんのことが、好きだからだよ」

 

 郁子は笑みを浮かべて、そう言った。

 

 「___」

 

 どうして、と言いたかった。

 

 でも、口からは何も言葉が出てこない。

 

 自然と自分も、涙を流していた。

 

 「…わかった」

 

 「なにが…?」

 

 「郁子さんが良いって言うなら…結婚、したい」

 

 もしかしたら、自分はもっと幸せになっても良いのかもしれない、と。

 

 「もちろん…よろしくお願いします」

 

 相変わらず、そこまで好意を受ける理由がわからないのだけれど。

 

 「………っ」

 

 というかそもそもそんなフラグいつ建ったのか知らないけど。

 

 「じゃあ、もう報告しても良いよね?」

 

 「お好きにどうぞ…」

 

 

 矢張り、皆それぞれが主人公なんだなぁ…なんて、しみじみと思うのだった。




あとがき

もうこれで…終わっても良い…

ですが、あと数話だけ続きます。
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