抜きゲーみたいな島に住んでる童貞はどうすりゃいいですか? 作:楓 湊
そんな努力の裏では淳之介がヤクザと何やかんやあって文乃と何やかんやあってとにかくそれくらい時が経ってしまっていたのだ!
___こうなってしまったからにはもう手遅れ。
ハンドガンだけで無双するなろう系小説のような展開がこれから始まったり始まらなかったりするのだ…。
というわけで、ひたすら射撃訓練に勤しむ悠真くんに質問攻めが飛び交うという回です。
一発、二発、三発___
慣れ親しんだ反動の重さに身を任せ、最後は後ろに倒れる。
「…何発撃ったっけ」
無意識にマガジンに弾を込めながらぼーっとした面持ちで今日は何発的に命中させて、何発外したかを思い出した。
「二十発も、外してる…」
百に届きそうな数を撃っておいて、二十発も外したのは論外だ。
それでは、まだまだ弱い。
「お~、やってるねぇ。成長が楽しみだね~?」
「ん…女部田隊長」
先日の戦い以後、SSをクビになることはなかった。
なんでも、何処か把握できる場所に居ないと何をしだすかわからないから取り敢えず置いているとか何とか。
一番隊からは外され、現在所属先検討中ということで立ち位置は新人のそれに近い。
「昨日も来てましたよね。用事なんて無い筈なのに」
「用事が無いから来てるんだよ? ここは良い暇潰しの場所になるからね~」
「…? まあ、どうぞご自由に…?」
そもそも共用スペースなので彼女が居ることに何も文句言えない立場ではある。
「次の分は外したくないなぁ…」
然し、人が居ればそれはそれで良い具合に緊張もする。
…自分を見ているかどうかは別として。
「___っ」
マガジンの装填が終わり、再び構えて気持ちから作っていく。
「___、___。あ、トーカちゃんこっちこっち~」
何か集まろうとしていないか?
と、気になるような意識を片隅に退け、引き金を引く。
一発、何とか的の円内に収める。
その流れで次発も続けて撃つ。
今度は反動を抑えるように力を込めて、次々発も。
放たれた銃弾は正確に的の中心を通り抜けていく。
今となっては止まっている的であれば中心を連続で貫通させることなど造作でもない。
周囲に惑わされず、自分が丁寧に調整しているハンドガンの性能を信じているから為せる技だと思っている。
「そういえば、如月さんは何故セックスを避けるのでしょうか?」
「そう言えばそうだよね~。ずっとこの島に住んでるなら避ける理由なんてないと思うけどなぁ」
「……昔のことは知りませんけど、興味が湧かないというか、そもそも勃たないというか…」
「えっ、インポだったの?」
「だからそれがわからないんですって」
つい会話の方に意識が行き、四発目が的の中心から逸れて端を掠めた。
「見てるだけだと別に何とも思わなくなってますし…」
「それは…少し、確かめてみたいですね」
「何を?」
「決まっています、セックスですよ…?」
「___!?」
五発目は盛大に的から外れた。
「うわすっごく動揺してるじゃん」
「反応が童貞らしくて新鮮ですね」
事実なので反論出来ない。
「でも、確か二人は今は”あの男”にご執心では…?」
「…あの男、というのは誰を指しているのでしょうか」
「勿論、反交尾勢力を率いる”彼”のことですけど」
もしかしたら、SSビッグスリーならば確たる証拠は無いが察しが付いているのではないかと考えた。
「まさか、繋がりがあるの?」
「あるとも言えるし、無いとも言えます」
「…如月さんが何方側に与するのかは今は気にしてはいませんが…何か、私たちに教えられる情報などがあれば、助かるのですが」
「…せめて言うなら、反交尾勢力とやり合う以上に、対策するべき問題があるということくらいでしょうか」
あくまで推測の範囲ながらも、身体の奥底から確かに感じる殺意を抑えながら、照準を的に合わせる。
「反交尾勢力を後回しにしても対策するべき問題…」
六発目を撃った時には、空気は微妙なものとなっていた。
「では…セックスの話に戻しましょうか」
「え?」
「そうだね。ここは会議をする所じゃないんだし」
「え、いやその話にはなるべく触れないで穏便に済ませて欲しいと心から思ってるんですけど…」
「安心してください。如月さんの言う通り、誰も貴方に襲いかかって食べるようなことなんてしませんから」
「そーそー、当たらずとも遠からず、だったからね~。キサラギくんを襲ったりしないってのは本音だから」
「…そう、ですか」
「然し、それはそれとして本来青藍島に居る筈のない”本物”の童貞が考えることなどには興味がありますよ?」
一体自分が避けてきた間に何の変化があったのか。
ドスケベ大好きな印象の女部田隊長も、ましてやSSのトップに立つ会長でさえも今現在ドスケベ条例に違反している自分に対し罰する気が無いというのだから、これは相当な問題なのだろう。
改めて、反交尾勢力___否、橘淳之介の主人公力がとてつもないものだとわからせられたようだった。
「矢張り、初セックスは印象に残る方が良いのでしょうか?」
「なぜ質問コーナーみたいに…まあ、島外の人だとそう考えるでしょうね」
「そんなに大事かなぁ。気持ち良くなってまた今度もシよって思えたらそれだけで良くない?」
「初めてって凄い大事なんですよ。特に男性にとっては…」
二人して顔を見合わせて軽く首を傾げる。
恐らく青藍島に染まった人間にこの話をすれば九割九分同じ反応を示すだろうが。
「童貞卒業って言うからにはそれはもう学校の卒業式と同じで一生の思い出になるというか…」
「そんな一大イベントなんだ…。」
「ですがその一回が終われば…?」
「…そもそもその一回の相手、つまり恋人が出来ないという問題の話なんですけどね」
「何か童貞は恋人に捧げなければいけない決まりでもあるの?」
「明確な規則みたいなのはありませんけど…と、童貞の願いというか、希望なのかもしれませんね」
「如月さんは違うのですか?」
「僕は単純に勃たないし、セックスをするっていうこと自体を忌避している感じなので…」
「…ねぇトーカちゃん。あまりにもキサラギくんがぶっちゃけるからあんまり驚かないけど、どうしてこんな人がSSに居るの?」
「元を辿れば郁子が無理を言ったのもあるのよ?」
「あーそうだ! ”あっち”のキサラギくんとお話させてよぉ~」
”悠”の話になるまでに既に十数発も的に銃弾を打ち込んでいた。
こんな話をしている間、的に当たらなかった弾は一発のみ。
「…今回だけですよ」
少なくとも身体を操作する意識と喋る意識を分断すれば良い話___
何時もは夜に切り替わる”悠”に無理を言って交代した所で、
「何時でも、どうぞ」
「では私から早速___私のことを覚えていますか?」
「…はっきりとは覚えてない。が…緑髪の少女と顔を合わせたということは、な」
「何方にせよはっきりとしませんね…」
「はーい、次はイクから! 本当に童貞なの?」
「一回もヤってない」
「妹さんのことは?」
「思い出したくないが…こうなった原因だからな、あいつの死は…」
「それじゃあ次は___」
結局現在の状況を確認する程度、事態が動くような重大な問題は避けて答える程度に終わった。
質問攻めが終わる頃には、撃った弾数が百を超え、すっかり空は暗くなっていた。
あとがき
Q.エロゲー制作はどうなった?
A.完成予定から逆算しておよそ三十パーセント程度です
Q.何時になったらエッチシーンに入るんですか?
A.逆に誰とならエッチしてもおかしくないか知りたいです。