※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

110 / 262
このエピソードの途中でTSします!
ここではないのですが、一応警報出しときます!


女の多輝と男の多輝 1

 多輝は無事に正常な状態に戻った。記憶がまだ混乱することもあるようだが、以前のように長い眠りには就かなくなった。時折、唐突に動きを止めるのは記憶を整理しているかららしい。そのことを思い出して優一郎は小さく笑った。

 

 由梨佳の機体については保美に修復作業を任せてある。壊れた由梨佳を性的な妄想をかきたてる道具として使っているためか、作業はゆっくりとしか進んでいない。が、それもたいした問題ではないだろう。どのみち急いで直したところで利はない。それならばいっそのこと、保美やカレンが楽しんでしまった方がいい。それに由梨佳の機体を基本として新しいヒューマノイドを作る予定もある。その際に直接作業を行うのは保美だ。機体構造をつぶさに観察することも必要だろう。

 

 よいしょ、と小さな声をかけて優一郎は腰を屈めた。机の下に入れ込まれたダンボールを引っ張り出す。とりあえず現状でできることはしておかなければならないだろう。今、焦ってもすぐに斎姫が取り戻せる訳ではない。葵が何らかの動きを見せてからでも充分に間に合うだろう。そう考えながら優一郎はダンボールの中を探った。雑多に詰められたディスクケースを一枚ずつ取り上げる。目的のものを探り当ててから優一郎はそのダンボールを足で机の奥に移動させた。

 

 ケースからディスクを取り出しながらそういえば、と優一郎は呟いた。葵には力を何度か放出した。なのにどうして葵は何の反応も見せないのだろう。相手側の状況を探ることは出来ないが、こちらに力が反射されなかった以上、相手に意図した通りに力が作用していると見て間違いはない。思惑通りに力が作用しているなら、今ごろ葵は相当に苦しい思いをしている筈だ。

 

 それに、と優一郎は目を細めた。葵が動かないのはまだいいとしても、他の誰も何のコンタクトもとってこないのは何故だろう。考えをめぐらせてから優一郎は小さく息をついた。手にしていたディスクを端末に入れる。

 

 スクリーンセイバーが消える。優一郎は仕掛けたディスクから目的のデータを表示させた。それはこれまでにまとめた木村総研のデータだ。

 

 木村総研は実質稼動していない企業だ。それらの情報は主に果穂が収集した。果穂も以前に関わりを持ってはいたが、詳しいことは全く知らなかったようだ。データを優一郎に送ってくるたびに、意外だというようなコメントを一言ずつ添えていた。

 

 画面が明るくなって建物の設計図が表示される。優一郎は腕組みをしてそれをじっと眺めた。表示されたのはとあるビルの内部構造だ。こうして見る限り、ビルにはどこも変わったところはない。ごく普通のオフィスビルだろう。一階に受け付けカウンターが設置され、広いフロアの奥に二基のエレベーターがある。ラウンジとしても利用できるようにフロアの一角には客用の椅子やテーブルが設えられている。

 

 二階以上のフロアはオフィスとなっている。そして最上階にあるのが社長室だ。階段、エレベーター、トイレ、給湯室。それらの配置にも何の問題もない。強いて問題があるといえば、この建物が木村の地と呼ばれる場所にあることだろうか。

 

 業務内容は表向きには経営コンサルタントとなっている。優一郎は次に業務内容等のデータを表示させた。やはり表向きに発表されているものはどこを見てもごく当り前のことしか書かれていない。優一郎は口許に手をあててじっと画面を睨むように見た。

 

 木村の地の中心部にこのビルは建てられている。先の栄子の拉致事件の折に確かめたように、あの場所の構造は独特だ。要や果穂の言を信じるとすれば、土地に描かれた五芒星によって中心に力が流れていることになる。が、実際にはこのビルは空っぽだ。何しろ木村総研は空っぽの企業なのだ。実際に潜入すればもっとはっきりするだろうが、恐らくはあのビルに人はいない。

 

 なのに木村総研は定期的に荷物をどこかに向けて発送している。発送先は全国に散っているということ以外は判らない。誰が、何のために。そして運ばれているものは一体何なのだろう。優一郎は新しく果穂から送られてきたデータをディスクにコピーした。

 

 そっと息をついて優一郎はディスクを端末から取り出した。今は葵との接点がない。連絡を取ろうにも、電話やメールは不通になっているのだ。やれやれと呟いて優一郎は再びダンボールを引き寄せた。ケースにしまいこんだディスクをその中に放り込む。

 

 今はとりあえず巨大ロボットの製作が先かな。そう呟いて優一郎は画面に製作日程表を表示させた。日程通りに作業は進んでおり、冬休み直前の今は動作テストが繰り返し行われているようだ。要曰く、もっといいデザインにしたいということだったが、今さら機体のデザイン等を変えている暇はない。何とか要を言いくるめることには成功したが、今度は何を言い出すことやら。優一郎は先日の要との問答を思い起こしながら深々と息をついた。

 

 操作訓練も日々、行われている。要を指導しているのはロボットの設計チーフだ。が、ある程度の訓練が終了したら要には別の訓練を行う必要がある。手動でロボットを操作していては絵美佳の作ったロボットには到底かなわない。だから要とロボットを直結するシステムを後日搭載する予定だ。こちらの都合はロボット製作企業に報せる必要はない。あちらの作業が終了してから作業を行えばいいのだ。

 

 ふう、と息をついて優一郎は背もたれに寄りかかった。もう夜も遅い。今日はそろそろ寝た方がいいだろう。明日はさすがに学校に行かなければ教師に心配されてしまう。優一郎の成績はたとえ欠席が多くとも申し分ない。が、やはり休んでばかりいては教師も不安になる。

 

 端末の電源を落として立ち上がる。タイミングよくそこで研究室のドアが開いた。困ったような顔をして研究室入り口に多輝が立っている。




遠隔で葵(順)に攻撃を入れてる優一郎ですw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。