※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

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このエピはこれでラストですー。
エロシーンはありません。


立城と優一郎の会合とラベンダー 6

 優一郎は完全に混乱しきった表情をしている。強引に記憶を読むことは可能だろう。だが今、それをすれば恐らく返り討ちに合う。立城は疲れた顔に微かな笑みを浮かべた。

 

「もしかして無意識的に立城さんの力を妨害してしまう可能性があるとか?」

「提案したゲームの効果は互いに必要な情報を引き出すだけではなくてね。実は体力補強の意味もあったんだ」

 

 優一郎の問には答えず、立城はそう話を切り替えた。するとまた優一郎が眉を寄せて考え込む。

 

 力を妨害するのではない。立城の力を取り込み、逆流させてしまう可能性があるのだ。そしてその結果、立城の持つ記憶は優一郎に提供されるが、反対に立城は優一郎の記憶を読むことは出来ない。だがそのことを立城はわざわざ優一郎に説明するつもりはなかった。

 

「それなら水輝さんを呼んだほうがいいのでは?」

 

 ストレートな質問に立城はぴくりと眉を上げた。

 

「今、水輝と交わったら確実に僕は消されるだろうね」

 

 そう呟いてから立城は息をついた。だからこそ水輝はこの屋敷には近づかない。それは互いの間で特に約束が交わされている訳ではなく、水輝は本能でここを避けているのだ。

 

「奈月さんも居れば問題ないでしょう?」

 

 そのための夜叉では? そう優一郎が素直に問う。立城は力なく笑って首を横に振った。今、奈月がここに戻れば当然のように自分はあらゆる方面に手を伸ばしてその身柄を拘束することになる。そしてその身柄をたてにして水輝を脅迫することになるだろう。

 

 奈月をたてにされれば水輝はどんなことを持ち出されても頷かざるを得ない。今、だからこそ立城と水輝、そして奈月はばらばらに動いているのだ。

 

「奈月さんがここにいれば、僕は全く別の動き方をすることになる。それはまだ早いから」

 

 そう言ってから立城はああ、と苦笑した。いつの間にか情報を引き出されている気分になる。優一郎はだが無意識なのだろう。告げた立城に不思議そうな眼差しを向けている。

 

「あの、姉にとりついていた歪みがまだ悪影響を及ぼしているんですか?」

 

 何の気なしの言葉だったのだろう。だが優一郎の言葉に立城は目を見張った。次いで力ない笑みを浮かべる。

 

「僕のこれは元々持っているものだよ。定期的にどこかに分けないとならないんだけれど、ちょっと今は」

 

 そこまで言ってから立城は優一郎に向き直った。何事かを考えているのだろう。優一郎は目を伏せている。立城はにっこりと笑ってぬるくなった茶を啜った。

 

「じゃあ、二つ目の条件は無効、と。三つ目は」

 

 言いながら立城は指を折った。驚いたように優一郎が目を上げる。恐らくはまだ二つ目の賭けについて考えをめぐらせていたのだろう。だがそれを無視する明るさで立城は片目を閉じてみせた。

 

「これは簡単かな? 由梨佳さんの機体維持をお願いしたいんだけれど」

「大丈夫です。それについては目処がたっています。ご安心ください」

 

 即座に優一郎が応える。うん、と笑って立城は腰を上げた。スーツの内ポケットから携帯電話を取り出す。優一郎に背を向けて立城はとある番号を押した。ほどなく女性の声が応える。

 

「ああ、僕です。例の件はどの程度まで進んでいる?」

 

 そう言いながら立城は執務机に腰を下ろした。二つ折りの携帯電話の向こうで女性が淡々と進行状況を報告する。うん、と頷いて話を聞きながら、立城はちらりと優一郎に目を向けた。優一郎は黙って茶を飲みながら菓子を食べている。

 

「……うん、判った。じゃあ、先方に連絡を取ってくれる? ……え? うーん……まあ、その辺はごまかしはきくから大丈夫だよ。僕が行くから」

 

 そう告げると途端に電話口の向こうで女性が慌てた声を上げた。なに、と笑って立城はそっと囁いた。大丈夫、という囁きに女性が押し黙る。

 

「それじゃあ、スケジュールの調整はよろしくね。余計な会見は切っちゃって構わないから」

 

 そう告げてから立城は電話を切った。今ごろ、向こうは大慌てになっている。そのことを思いながら立城は苦笑した。電話をスーツにしまってソファに戻る。優一郎はもの言いたげな目を立城に向けた。

 

「彼と会えるようにはしておくよ。はっきりと日時が決まったら連絡をしよう。……これでどうかな?」

「ありがとうございます。お忙しいところ、ご迷惑をおかけしました」

 

 そう言いながら優一郎が腰を上げる。立城も一緒に立ち上がった。帰ろうとする優一郎に声をかけて引き止めてから呼び鈴を鳴らす。ほどなく執務室には桜が現れた。一礼した桜に声をかける。

 

「送って差し上げて。学校でいいんだよね?」

「あっはい」

 

 優一郎が急に高校生の顔に戻る。そんな優一郎にくすくすと笑ってから立城はそうだ、と言葉を足した。

 

「例の賭け、乗る気になったらいつでも言ってくれる? 楽しみにしているから」

 

 そう告げてから立城は挨拶の代わりに片手を上げた。桜が深々と一礼して執務室の扉を開ける。どう応えたものかを考え込んでいるのだろう。優一郎はかたく唇を引き結んで難しい顔をしている。立城は微笑みを浮かべてそんな優一郎の背を押した。




賭けにはならないんですけどね……。
この時点で既に……。
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