※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

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まだエロはきません!w もうちょいです!
エロシーンはありません。


禁忌を犯す者、裁く者 2

「ねえ、火藍の言う自然ってなに? 僕のしていることはどうして不自然なのかな?」

「自然とは世界の意志そのものだ。不自然であるということは、世界の意志に背いているという意だ」

 

 生真面目に火藍はそう応えた。すると立城が笑い出す。しばらく火藍はその場に佇んでぼんやりと立城を見つめていた。これは一体どういうことだろう。今までとは全く違う立城の様子を見てもそんなことくらいしか考えられない自分が酷く情けない。その原因の一端を担っているのが自分なのだと心の底では知りながら、火藍はその事実から目を背けていた。

 

 決して同じ世界で交われぬように枷をつけよう。それがお前に課せられる罰だ。

 

 あの日、火藍は立城の弟である真也にそう告げて断罪した。断罪の矛に貫かれてなお、真也は顔色一つ変えなかった。じっと正面の火藍を見据えていた目がふと閉じられた時、真也は口許に微かな笑みさえ浮かべていた。

 

 そして先日、真也はこともあろうか二度目の断罪を受けた。同じ魂が二度以上の断罪を受けることは、通常ではあり得ない。だが事実は事実だ。火藍は光に導かれるままに真也に矛を向けた。そして真也は再び火藍の矛の前に倒れたのだ。

 

 あの現実が立城に何の影響も与えなかったはずはない。しばしの後、立城が笑いを納めたのと同じ頃に火藍はその考えに行き着いた。

 

「そんなに可笑しいか? 世界の意志というのが」

 

 火藍は言われずとも立城が何故笑っているのかを知っていた。立城は火藍の言った世界の意志、という言い回しを笑ってみせたのだ。本来、人の思惟を読むのが苦手な火藍に立城の考えていることが理解出来たのは、立城自身がわざと火藍に思考を流してみせたからだ。何故、立城がそんな気になったのかは火藍には判らなかった。

 

「君は可笑しくないの? 世界の意志なんてものは、誰にも見えやしないんだよ。僕にも、君にも……そして歪みもなく純粋な力として生きている彼にもね」

 

 易々とそれだけ言ってから立城は火藍から目を逸らした。正面を向いた立城の後姿がやけに小さく見える。火藍は無言でソファに近づいた。断りを入れないまま、立城の正面に腰を下ろす。だが立城はそんな火藍を無礼だと咎めることはなかった。

 

「じゃあ、君がこうして一時的に蘇ったのも自然? 真也が二度も死んだのも自然? 僕はその世界の意志とやらに従って消えなければならないのかな?」

 

 そう告げた立城の目はもう笑ってなどいなかった。火藍はじっと立城を見据えてからそっとため息をついた。

 

「……気付いていたのか」

「勿論だよ。あらゆる周囲の事象から考えてもそうとしか判断できないからね。一応、黒妖牙に問い合わせてはみたけれど」

 

 そう応えて立城も息を吐く。壊れたような笑いを納めた立城はとても疲れているように見えた。火藍は眉を寄せて伺うように立城の顔を覗き込んだ。

 

「もしかして」

「冥府の印がうっすらと見えているそうだよ。この程度なら消せるって言われたけれど、黒妖牙の手を借りるのはちょっとね」

 

 苦笑して立城はテーブルを軽く撫でた。テーブルの上の空気が揺らいでティセットが現れる。火藍は出された紅茶をありがたく受け取った。

 

「恐らく立城も気付いているだろうが、一つだけ忠告しよう」

 

 そう告げて火藍は立城を指差した。

 

「その器を早急に何とかした方がいい。人の身体はそうは長く生きられない。そのことはよく判っているだろう?」

 

 立城は龍神であるが、同時に人としての器を持って生まれた。本来、火藍たちは力を使って人と同じ形の器を保持している。その方が何かと都合がいいというのが一番の理由だ。

 

 だが立城の器は火藍たちのそれとは少し異なる。人として生まれた立城はその身体に力を加えることで成長を止めてしまっているのだ。器の形を変える際も力を加えることで、人では本来はあり得ない別の性をまとったりもする。けれどそれは人としてだけ考えるなら本来のものではない。

 

「言われなくても知っているよ。そのことはずっと前に気付いているんだ」

「ではどうして早く人の器を捨てない?」

 

 維持しようとするだけで多大な力が消費される。そのことは器を使っている立城自身が一番よく知っているのだろう。だがそう思っても火藍は訊ねずにいられなかった。冥府の印がつく、というところにまで問題が大きくなっているなら黙って見過ごしてはいられない。

 

 ふと立城が苦い笑みを刻む。吐息をついた立城はとても優しい眼差しで火藍を見つめた。

 

「未練、かな」

「未練? ……まさかお前」

 

 カップを持つ手が自然と下がる。火藍の顔は無意識に憂いを帯びた。

 

「確かに君たちのように力のみで器を構成すれば楽なことも判る。手間もないこともね。そうすれば維持に使っていた力をもっと別のことに回せる。今の僕の身体から力を全部抜けば、瞬く間に朽ちてしまうということも判るよ」

 

 水の流れのように滑らかな口調で立城が告げる。火藍は無言で視線を落とした。そう。立城の言っていることは一つ一つがとても正しい。なのにどうして言われていることが心の底から納得できないのだろう。確かに立城が言うように効率がいい筈なのに。火藍は考えながら自然と俯いた。




この頃の立城はある意味イケイケゴーゴーなのです……w
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