※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

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あ。すみません。エロは後半に固まってました(汗)
エロシーンはありません。


禁忌を犯す者、裁く者 4

「知っている? 何故、ハンターが生まれたのかを。彼らは歪みが生んだ産物なんだよ? その歪みを放っているのは何も人だけじゃない。いや、龍神がその大半を垂れ流しているとでも言おうか?」

 

 本来、龍神は一点の穢れもない存在である筈だった。ある時までは確かにそうだったのだ。歪みと呼ばれるものは龍神たちとは無縁のものだった。だがある時を境にして龍神たちの間に僅かずつ歪みが浸透し始めた。最初の歪みを作ったのはもしかしたら自分だったのかも知れない。そう思いながら火藍はじっと俯いて膝に乗せた手をかたく握った。

 

「ハンターだけじゃないよ。誓約者だって本当は必要とされてはいなかった筈だ。歪んだ龍神が道を外れてしまうのを正すために彼らは生まれたんじゃないの?」

 

 淡々とした立城の声が聞こえる。だがその声はどうしてだか自分の上っ面を滑っているような気がする。火藍はふと目を上げて訝りをこめて立城を見た。立城は感情の失せた眼差しで火藍を見つめ続けている。

 

「彼らが何事かに対して苦痛を覚えたとしようか。で? 君のマスターだけが特別である筈がないよね? 僕たちはそんな彼らのことまでケアする必要があるの?」

 

 何も言い返せない。火藍は唇をかんで無意識のうちに息を殺していた。立城が両手を軽く広げて背もたれに寄りかかる。動いた拍子に柔らかな髪がふわりと揺れた。

 

「正直に言ったら? 君は単純に彼を助けたいんでしょ? そのために龍神の仕業だということにしているんじゃないの?」

 

 肯定も否定も出来ないまま火藍は硬直した。立城は小さく笑ってそんな火藍に指を向ける。指差された火藍は呪縛を解かれたようにのろのろと手を動かした。テーブルに戻していたティカップを取る。つかむと中の紅茶が揺れているのが見えた。知らぬ間に手が震えている。火藍は出来るだけ震えを抑えようと大きく息を吸って静かに吐き出した。

 

「……そうかも、知れない」

 

 掠れた声で火藍はそれだけを何とか吐き出した。すると乾いた笑いを放って立城が腰を上げる。テーブル越しに火藍の顔を覗き込んだ立城の目がすっと細くなる。

 

「知れないんじゃない。そうなんだよ」

 

 火藍はぐっと詰まって思わず立城から顔を背けた。手にしたカップが不自然に揺れる。立城はそんな火藍のあごを手で捕らえた。強引に自分に向けて口許に笑みを浮かべる。

 

「どうして君は蘇ったの? 彼の呼び声でも聞こえた?」

「そんな筈がないだろう。わたしはこの器に宿った時には記憶がなかったんだから」

 

 火藍は厳しい目で立城を睨みつけて即答した。すると立城が首を小さく横に振る。その後、立城は口許に嘲笑を浮かべた。その途端、火藍の背中にぞくりとしたものが走る。

 

「それは問題のすり替えだよ。答えにはなっていないね」

 

 記憶のあるなしは関係ない。そう続けて立城は手に力を込めた。あごをつかんだ手を引くと、自然と火藍の上半身が前に傾く。火藍は発作的に立城の手を払おうとした。が、頑として立城は手を離そうとはしない。

 

「あれだけ君のことを愛しいと思っているんだもの。大声で呼ばれて君も悪い気はしなかったんでしょ?」

 

 くすくすと笑いながら立城がそう告げる。火藍はやめろ、と掠れた声で漏らした。何故か顔が熱くなる。意志とは裏腹に火藍の顔は真っ赤に染まっていた。

 

「そうでなかったら蘇ったりはしなかったんじゃないの? 君のことだもの。死した後に現世に未練を残すような真似、まさかしていなかったんでしょ?」

 

 それとも未練でもあったの? 囁きでそう訊ねられて火藍は目を見張った。間近に迫った立城が嘲るように笑っている。火藍は奥歯を噛みしめてあごをつかんでいる立城の手を握った。力をこめて剥がそうと試みる。だがどうしても立城は手を離そうとはしない。

 

「離せ!」

 

 業を煮やして火藍は怒鳴りつけた。すると立城がふわりとした笑みを浮かべる。先ほどまでの嘲笑とは違う微笑みに火藍は思わず息を飲んだ。くるりと表情を変えた立城が軽く首を傾げてみせる。

 

「いいよ。助けてあげても」

 

 あっさりと告げた立城を火藍は絶句して見つめた。立城が微笑みを浮かべたまま火藍の目を覗き込む。そっと寄せられた額が触れ合った瞬間、火藍は僅かに目を細めた。

 

「無論、ただじゃない。僕は慈善家じゃないからね」

「……代価を寄越せということか」

 

 低く呻くように火藍は言葉を返した。立城がにっこりと笑って頷く。そのストレートな肯定の仕方に火藍は思わずひきつった。この様子だと立城はろくなことを言いそうにない。直感でそれを理解した火藍は慌てて立城の手を引き剥がそうとした。だがそれまでと同様に立城は火藍を離そうとしない。暴れようとした火藍の手に握られたカップから紅茶が零れる。それをふと見てから立城は困ったように笑った。

 

「この間、張り替えたばかりなんだけど。このじゅうたん」

「えっ」

 

 火藍は焦りながら目を床に向けた。乳白色のじゅうたんの毛足は長く、艶やかだ。汚したらきっとクリーニング代だけでもばかにならない筈だ。思わず息を潜めて火藍は注意深くカップをテーブルに戻そうとした。




この先、エロ展開になります。
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