「もっと、良くして」
そう告げるのがこの時の火藍には精一杯だった。掠れた囁きを聞いた立城がふわりと微笑む。
「いいよ。良くしてあげる」
止まっていた手が再び動き始める。同時に半開きになっていたジーンズの股間がゆっくりと広げられていった。ジッパーが完全に降り切り、白い下着が露になる。次いでジーンズそのものがじりじりと下がり始めた。火藍を弄るようにしてジーンズが腰を伝って降りていく。
やがてジーンズは火藍の足から完全に抜けた。露になった下着の中で立城の手が動く。
「ちょっとお尻を前にずらして。……そう。腰を少し曲げてね」
指示された通りに火藍は尻を前にずらした。腰を曲げると腿を開いているために下着の股布が丸見えになる。その下で立城の手は動いていた。ある程度自由になったためか、先ほどよりは指の動きも激しい。だが一番、火藍に性的な刺激となっているのは、その光景を直に自分の目で見ていることだった。
「やっ、やめっ、あっ!」
折り曲げた中指が濡れた音を立てて出入りしている。下着越しに手の動きを見つめながら火藍は甘い声を上げた。立城はテーブルをまたぎ超えて火藍の座るソファに片膝をかけた。喘ぎを放つ火藍の口を片手で押さえる。声を封じられた火藍は喉の奥でくぐもった呻きを上げた。
「ちゃんと聞かなきゃね。ほら、君の粘膜がくちゅくちゅいってるでしょ? 聞こえる?」
言われた瞬間、火藍は喉の奥で大きく呻いた。羞恥に顔が真っ赤になる。口を押さえる立城の手をつかみ、火藍は腰を震わせた。恥ずかしい言葉を浴びせられただけで軽く達してしまったのだ。抽送を送っていた立城の中指を膣壁が断続的に締めるのが判る。火藍は鼻から大きく息をついて涙の滲んだ目をそっと開けた。
「びくびくしてる。ほら、ここ」
立城はソファの背もたれに頭を預け、火藍と同様に下着を見つめていた。火藍の首の後ろを回った立城の手はまだ口を押さえている。下着の股布がゆっくりと盛り上がり、そしてまたゆっくりと下がる。立城は確かめるようにして火藍の膣口に何度も指を出入りさせた。
ひくつく膣壁を指で擦られると、再び強い快楽がこみ上げてくる。熱い息をつきながら頂点に続く快楽のレールをゆっくりと走り出そうとした火藍は、その直後、電気が走ったような感覚に晒された。
「んっ、くっうん!」
折り曲げていた膝が反射的に伸び、テーブルの上に残っていたティカップを蹴る。宙に投げ出された火藍の足はひくひくと震えていた。いきなり絶頂に達してしまったのだ。
「わ、凄いね。ここ、そんなに感じるの?」
立城は中指で抽送を送りつつ、薬指を滑らせた。女性器の後ろの終わり部分から肛門にかけての短い距離を指が何度も往復する。抽送と共に会陰を弄られた火藍は思わず立城の腕に爪を立てた。絶頂に晒された直後であるというのに、再び強い快楽が押し寄せてくる。
「知ってる? ヒトの女性はね。出産の時にここを切ることがあるんだって。会陰切開って言うんだよ」
目を細めつつ立城が火藍の肩に頭をもたせかける。言葉に含まれた愉悦を感じ取る余裕もなく、火藍は目をかたく閉じて背を仰け反らせた。そうしろと言われた訳ではないのに痛みを想像してしまう。決して自分の会陰部を切開されている訳ではない。なのに火藍は得体の知れない恐怖に晒された。
嫌がりながら首を振る火藍の会陰を立城は焦らすように指でなぞる。
「怖い? 確かにこんなところを切られたら痛いだろうね。でも君の身体は生身ではないでしょ?」
機械の身体なんだから。そう続けて立城は会陰に触れていた指にぐっと力をこめた。膣口を撫でていた指がそれと同時に根元まで潜り込む。
「君って怖いのも好きなの? さっきより濡れてない?」
そう告げて立城は火藍の耳元でくすくすと笑った。根元まで挿し込まれた指が膣内で動いている。折ったり伸ばしたりといった動きに加え、立城は指全体を膣壁に擦りつけるように動かしていた。興奮にひらきかけていた膣内を上下左右に指が蠢く。火藍は口を塞がれたままで大きな呻きを発した。喉の奥で声がひっくり返り、耳の奥に自分の声が煩いくらいに響く。
「彼は本当に優秀だね。こんなに人にそっくりな機体を作り上げてしまうんだから……それもたった一人で」
その呟きは火藍の耳には入らなかった。ずぶ濡れになった下着の奥から聞こえる卑猥な水音と、火藍自身の呻きで呟きはかき消されてしまう。立城はひっそりと笑って火藍の肩から胸へと頭を滑らせた。ずれかけたブラジャーの紐を口に咥える。ずるり、と滑る肩紐の感触すら快感になる。
ブラジャーの肩紐が完全に肩から落ちると胸の膨らみが半分ほど露出される。立城は今度はブラジャーのカップの端を歯で挟んだ。じりじりと時間をかけてカップがずれていく。その頃になると、火藍は嫌がることも忘れてされるままになっていた。与えられる刺激の全てが快感に繋がる。
唐突に立城は火藍の口から手を離した。抑え込まれていた反動で激しい声が火藍の唇から溢れる。
「あっ! くっ、う、くううん!」
ずれたブラジャーのカップの中に舌を忍ばせ、立城はくすぐるように舌先で火藍の乳首を舐めた。そうしながら股間には変わらず愛撫を与え続ける。そんな立城の弄り方に火藍は力なく頭を振った。刺激は同程度に与えられていても、段々と物足りなくなってくる。
「乳首が勃起しているの、判るでしょ? ここと同じだよね」
「な、あっ! やああっ!」
言いながら立城は下着の中に入れていた親指の腹でクリトリスを上下に擦った。柔らかなタッチで撫でられた火藍はたまらず自分を抱きしめた。身体の前でかたく組み合わせた腕に押される形で乳房が盛り上がる。
「どっちが硬いか確かめてあげるね」
言うが早いか、立城は股間を弄っていた手を急に下着から抜いた。唐突に刺激が途切れる。その手が素早く火藍の下着をずらした。火藍の秘部から漏れた透明な雫が、糸になって伝っている。その様をまともに見せられた火藍は真っ赤になって唇を噛んだ。
ヒューマノイドの機体はとても欲情しやすく作られている。だがこの時、火藍の頭からはそんな機体の事情が吹き飛んでいた。その感覚は肉体を力で構成していた頃と同じだった。死ぬ前に誰かにこうして愛撫された気がする。だがそのことを火藍ははっきりと思い出せなかった。
エロシーン長丁場にトライしたものの、視点を変更しないと苦しい、ということで次のエピソードまでこのシーンは続きます。