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足音も高く要が教室に乗り込んできたのは午後の授業が始まる直前だった。やれやれとため息をついた優一郎の机に真っ直ぐに近づいてくる。
「いま、聞きましたわよ! やれやれとか思いましたわね!? もしかしてため息もつきましたかしら!?」
どうしてそんなことが判るのだろう。優一郎は半ば呆れた気分でいいえ、と微笑を浮かべてみせた。要が舌打ちをして周囲にいた生徒たちをぎらりと睨む。これ以上、ここにいては目立ちすぎるだろう。優一郎は仕方なく席を立って要を連れて教室を出た。
教室を出るとしっかりとボディガードの二人が待ち構えていた。二人に会釈をしてから優一郎は要に向き直った。これできっと午後の授業は放棄せざるを得ない。ただでさえ最近、まともに授業を受けていないのだ。これでテストの結果が悪ければ即座に退学だろう。
「うちの部室にいらっしゃいますか? それとも、生徒会室で?」
「とりあえずはそちらの部室に案内して頂けますかしら? ……野木、周藤。戻ってよくてよ」
そう要が告げると二人は深々と頭を垂れてその場を後にした。どこまでも真面目な二人だからこそ、この要にずっと付き従っていられるのだろう。そうでなければ突飛な行動も多いこの生徒会長には付き合い続けられない筈だ。
人気のないところに行くまでは、という考えはしっかりあるのだろう。要は地下に潜るまでの間、何も言わなかった。優一郎も自分からは話し掛けなかったため、二人は無言のままで地下の部室に入った。
「あら。いらっしゃいませ、要様」
廊下を歩いていた保美がにっこりと微笑んで頭を下げる。それから保美は優一郎にも会釈をしてみせた。軽く手を上げて応えた優一郎とは裏腹に、要はもの凄い勢いで保美の許へと駆けて行く。
「保美さん、あなたお体の方は大丈夫ですの!?」
さすがの保美も要の勢いには面食らったらしい。瞬きを数回ほどしてからうろたえたえつつ頷く。
「え、ええ。おかげさまでこの通り修復して頂きました。ありがとうございます」
そう言ってから保美は深々と要に頭を下げた。確かにあの時、要が報せてくれなかったら作業は遅れていただろう。優一郎はそう思いながら一人、頷いた。だが要はそれだけでは納まらなかったらしい。保美の身体のあらゆるところを触って確かめている。
「た、確かに直ってますわねっ」
「はい……あの、ちょっとそこは……すみません、今は作業中なので」
頬を染めて保美はその場をそそくさと後にした。要が納得したように一人頷いている。そんな要に近づいて優一郎は苦笑した。
「ヒューマノイドの身体は機械ですから。修復は簡単です。人間ならこうはいきませんけど」
話すなら奥の部屋がいいだろう。そう思いながら優一郎は地下一階の最奥部へと要を案内した。要はなるほど、と呟きながら頷いている。
「つまりは! わたくしは生身であったからこそ、あの場で疎外されたわけですのね!?」
奥の部屋に入るなり、要は声を荒らげてそう告げた。勢いに任せて優一郎にずんずんと迫ってくる。さすがに優一郎も慌てて後ずさりした。
「壊れても修理すればいい者と、怪我をすれば回復不能になるかもしれない者。その二者が居ればおのずからどういう行動をとるべきかは決まってくるでしょう」
言いながら優一郎は背中に硬い感触を覚えて肩越しに見返った。いつの間にか壁際に追い詰められている。要は焦る優一郎の心情を完全に無視してうんうん、と頷いている。だが腕組みをしているところを見ると、全てに納得しているとは思えない。
閉じていた目を開いた時、要は怒りをこめて優一郎を睨んでいた。
「身体は機械でも、脳が損傷したら再生できないのではなくて?」
要の言葉は的を射ている。思わず優一郎は言葉に詰まった。要は腕組みをして胸を張る。どうやら優一郎が返答に困っていることを見抜いているらしい。
「確かに要さんの言うとおりですが、脳はかなりの衝撃や熱にも耐えられるように保護されています。爆弾の爆発に巻き込まれても大丈夫ですよ」
出来るだけ言葉を選びながら優一郎はそう答えた。だが龍神を相手にした場合、それでは不十分なのだと胸の中で付け足した。するとぴくりと要の頬が引きつる。僅かな変化を見止めて優一郎は思わず身構えた。
「あいつは尋常な相手では無かったわ!」
確かにそうだろう。相手はその龍神だったのだ。優一郎は要の鋭さに内心舌を巻いていた。これ以上、どんな言い訳をしてもきっと要は納得しないだろう。優一郎は深くため息をついて降参の印に両手を軽く上げた。
「あれが、龍神なのですね。実物を見て納得しましたわ。百聞は一見に如かずとはこのことですわね」
優一郎が解説する前に要がそう切り出す。そこまで判っていれば話は早い。まずは座ってください、と優一郎は近くにあった椅子を要に勧め、自分も机の前の椅子を引いた。
「とりあえず、わたくしも保美さんも、カレンさんも無事で済みましたけど、それは僥倖でしか無い。その理解でよろしいですわね?」
少なくとも要の知る者たちの状態はそれで間違いない。優一郎は真剣な面持ちで頷いた。
この辺りはまだ機械が書けてなくて(泣)
すみません……。