エロシーンはありません。が、脱がせますw
「お、おれ、いつの間に……?」
本格的に訳が判らなくなって多輝は焦った。一体、どうして自分は女になっているのだろう。混乱しつつ多輝は自分の身体の各所に手で触れてみた。髪は伸びているし、胸には二つの膨らみがある。股間からは男性器が消え、腰が細くなっている。
「ああいう風に変化するんですね。初めてみました」
にっこりと笑って優一郎が傍らに腰を下ろす。戸惑いながら多輝は何となく優一郎から少しだけ離れた。そっと腰をずらしたところで唐突に肩をつかまれる。多輝は思わず息を飲んで慌てて優一郎を見た。
「なっ、ああいう風って、どっ、どんな風にだよっ」
焦りすぎて多輝の声は完璧に裏返っていた。優一郎の手から逃れようと身体をよじる。だが優一郎は多輝の肩をつかんだ手を離さなかった。多輝に身を寄せて耳元に口を近づける。耳に温かい呼気を感じて多輝は思わず首を竦めた。
「口で説明するのは難しいですね」
くすりと耳元で笑われて多輝は掠れた声を漏らした。どうしてだろう。さっきまでは何ともなかったのに、今は身体の奥がじんと熱くなっている。多輝は慌てて耳を押さえて優一郎の胸に手をあてた。押し退けるとようやく優一郎が身体を離す。
「とっ、とにかく! 実験するんだろ!? 別におれは何ともないから、やめなくていいぞ!」
そう告げて多輝はベッドから飛び降りた。優一郎から逃げるようにして部屋の隅に移動する。そんな多輝を優一郎は面白いものでも見るかのように眺めていた。
「わかりました。実験は通常通り行いましょう」
笑顔で告げて優一郎は腰を上げた。床に置かれた鞄を取り上げる。多輝はぶかぶかの服に身を包んだまま、腰に手を当ててふんぞり返った。
「おう、了解したぞっ」
そう吐き捨ててから多輝は優一郎に背を向けた。折角着替えたものの、この服のままでは動きにくい。多輝はジャケットを脱いで次にズボンのベルトに手をかけた。そこで振り返る。優一郎は何故か多輝の後ろでじっと立っている。
「な、何で見てるんだよ」
壁にかかっていたハンガーにジャケットをかけながら多輝はぼそりと訊ねた。顔に自然と血が昇ってくる。真っ赤になった顔を見られたくなくて、多輝は出来るだけ優一郎から顔を背けていた。ハンガーを壁に戻してちらりと目を向ける。優一郎は人の悪い笑みを浮かべて壁に寄りかかっていた。腕組みをして多輝を眺めている。
「いえ、ちょっと気になる事があるんです。その身体……」
そう告げて優一郎は頭の先からつま先まで、多輝を舐めるように見つめた。視線を感じた多輝はうろたえながら俯いた。別におかしいところはないような気がする。一体、優一郎は何を気にしているのだろう。だがそう思いながらも多輝は自分からは何も訊ねなかった。何故か嫌な予感がしたからだ。
「機体のような気がするんですけど」
そう言われて多輝は硬直した。身体に違和感はどこにもない。だがそれはイコール、多輝の身体は機体の状態に戻っているということだ。女である時の多輝は肉の器を使ったことがない。それ故に違和感がないということは機体になっているということなのだ。
「そっ、そうか?」
訊ね返した多輝の声は裏返っている。そのことを自覚しつつも多輝は乾いた笑いを放った。きっと気のせいだろ。そう告げてから顔を上げる。
「気のせいかどうか調べてみたほうがいいと思うんですが」
いつの間にか優一郎は多輝の傍に寄っていた。間近に迫った優一郎に驚き、多輝は反射的に足を引いた。だが部屋の隅にいたためにすぐに背中が壁に当たる。
「い、いや、あの、別に調べなくていいって。ほら、実験するんだろ?」
背中には壁、右手にはたんす。そして左手には優一郎の腕がある。退路を完全に断たれた多輝は愛想笑いを浮かべてそう提案してみた。すると優一郎がふむ、と顎に手を当てる。その後、優一郎はにっこりと笑って頷いた。
「わかりました。実験の後でゆっくり調査しましょう」
「調査って……いや、あの、な? ちょっ……うわ! ちょっと待て! だからってわざわざ服を剥がしてくれなくても!」
多輝は懸命に身をよじって優一郎の手から何とか逃れようと試みた。だが優一郎は有無を言わせない力で多輝のシャツに手をかける。
「力を抜いて」
「や、やだよ! 自分で脱げるってば!」
多輝は必死の面持ちでそう主張した。が、優一郎はシャツを握った手を離そうとしない。そのまま両手を多輝の胸に強く押し付ける。多輝は壁に押さえつけられて懸命にもがいた。
「動かないで。服が破れますよ」
そう告げて優一郎はにっこりと笑った。その笑みを見た途端、多輝はまるで催眠術にでもかかったようにぴたりと動きを止めた。うう、と呻いて身体の力を抜く。多輝の反応を先に読んでいたのだろう。優一郎は何のためらいもなくシャツのボタンを外し始める。
「やっぱり、機体である可能性が高そうですね」
「なっ、何でだよ」
白い肌が露になる。ボタンを全て外したところで優一郎の手はシャツから離れた。多輝はその隙にシャツの合わせ部分を両手でそれぞれつかんだ。左右の手を交差させて肌を隠す。真っ赤になって視線から逃れるように身体をひねった多輝に、優一郎はふわりと笑みかけた。その笑顔を横目に捉えた多輝の胸の奥で心臓が跳ねる。いや、実際には心臓などないのだ。大きく脈打った胸をシャツを握ったこぶしで押さえ、多輝は呻きながら壁の方を向いた。
背を向けた多輝を覆うように優一郎が壁に肘をつく。多輝は壁に額を強く押し付けて唇をかんだ。
エロシーン一歩前的な。
残念ながらエロには雪崩れ込みません。すみません。