※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

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流れ的には優一郎には美味しい感じに。
エロシーンはありません。


優一郎の願望と要の要求 2

「そうです。そして、あのか……炎をまとった少女は、栄子さんを襲った相手とも無関係では無いと思われます」

 

 火龍神である火藍を目覚めさせたのは間違いなく風の主だろう。それは機体を探られた時に検出された力の種類からも明らかだ。そのことを優一郎は判りやすく話して聞かせた。話が栄子のことに及んだ途端、それまで饒舌だった要が黙り込む。

 

「お母様の手術、急いだほうがいいかしら?」

 

 一通りの話をし終えた時、ふと要がそう呟いた。強気だった要の態度が急に弱々しいものへと転じる。そうですね、と優一郎は答えた。

 

「ひとつ、要さんにお願いがあるのですが……」

 

 確かに栄子の手術は急いだ方がいい。だが栄子のことももちろん、優一郎には別に急いで対処しなければならないことがあった。あの写真の少年が多輝と同一人物でなければ問題はない。が、もし本人であった場合、何らかの手段をこうじてその肉体を取り戻す必要がある。

 

「栄子さんを助けたに行った時の事、お話したと思います。その時、木村の内部の方にお世話になったんです」

 

 多輝の肉体を取り戻せば。そうすれば一つ、懸念材料が減る。何故ならあの日、病院に現れた少年は風の主そのものではない。もし、あの少年が多輝の身体を使っていたら。いや、それ以前にその少年が写真の少年と同一であったなら。要に恋心を抱いているということがこちらの武器になり得る。もしかしたらそれが風の主に対抗できる方法になるかも知れないのだ。

 

「神崎葵さん……木村総研の方なんですが」

 

 そう言いながら優一郎は名刺を取り出した。要に手渡しながらあの夜にあったことを話し始める。それを聞く要は無駄な口を挟まず合鎚だけを打っていた。

 

「木村の内部も一枚岩では無いという事ね?」

 

 納得顔で要は頷いた。名刺を優一郎に戻してそれで、と訊ねる。優一郎ははい、と頷いて話を続けた。

 

「そうです。それで彼からおもしろい情報を得たんです。木村総研の社長令息があなたに一目惚れしたと」

 

 一瞬、要の反応が完全に消える。次いで優一郎はびくりと身体を震わせた。いきなり要が口許に手を当てて高笑いしたのだ。優一郎は思わず引きつった頬をそっと手で押さえた。

 

「わたくしも罪な女ですわね!」

 

 どう答えようかな。優一郎は僅かの間、真剣に悩んだ。だが要は勝手に自己完結しているらしい。高笑いしながら当然ですわ、と言っている。

 

「で、わたくしに工作員のするような真似をしろと?」

 

 ふと我に返ったのだろう。急に要が顔をしかめて呻くように告げる。相当に面倒な話だと思っているらしい。困ったような笑みを返しつつ優一郎は首を振った。

 

「いえ、ただその社長令息と一度だけお話していただければいいんです」

 

 そう、葵さんに頼まれまして。そう付け足すと要は途端に真顔になった。栄子を救い出す際に葵には世話になっている。その話を前もってしていたことが良かったらしい。しばし迷った後、要はいいですわ、と頷いた。

 

 本当は要の改造が終了してから事を進めたかった。多輝ととてもよく似た少年に会った時の要の反応を想像しながら、優一郎は心の底でため息をついた。きっと要は冷静ではいられないだろう。だが日々、催促の電話は入っている。下手をすると社長自身がこの学校に乗り込んできそうな勢いだ。そうなると困るのは優一郎の方だ。

 

「ただし、条件を出させていただいてよろしいかしら?」

 

 考え込んでいた優一郎の耳に要の声が届く。優一郎は目を上げてにっこりと笑った。何でしょう、と穏やかに問い掛ける。

 

「お母様を誘拐した相手にわたくしも狙われているの」

 

 それを聞いた優一郎は目を見張った。初めて聞く話だ。何ですって、と声を上げた優一郎に要は苦い顔で頷いた。

 

「つい先日も、メッセンジャーを使って挑発されましたの」

 

 そう言って要は先に起こった出来事について話し始めた。どうやら校内のネットを使ったように見せかけて、要の端末に直接にアクセスしてきたらしい。が、足跡を辿ろうにも要が怒りに任せてディスプレイその他を壊したためにままならないらしい。ふむ、と優一郎は口許に手をあてがって話に頷いた。

 

「わたくし、売られた喧嘩は買う主義なのですけど、あの龍神などというとんでもない輩と、生身の身体で対する気には到底なれませんの」

 

 確かに要一人で抗するには敵が大きすぎる。ああ、だから。優一郎は納得して頷いた。だから要は最初からこだわっていたのだ。機械ならば部外者にはならなかったのか、と。

 

 それなら先に要の改造はできるかも知れない。優一郎は悠然と微笑んで頷いた。

 

「つまり、龍神と対するために、要さん自身もヒューマノイド化を望まれると、そういう理解でよろしいですか?」

 

 そう訊いた時の優一郎はそれまでの苛立ちが消えていくのを感じた。変わりに言いようのない高揚感が満ちてくる。また、一人、ヒューマノイドが増える。今度はどんな機体になるだろう。

 

 用意された機体を思い浮かべながら優一郎は軽く首を傾げた。要が頬をうっすらと染める。それがなによりの答えになった。




要は高笑いが得意ですw
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