エロシーンにそろそろ入りますが、ここにはないです。
「長い時を生きたとしても、何事かを成せる者と成せない者はきっちりと分かれている。時間があるからといって、全ての希望が叶う訳じゃあない。……そんなこと、頭のいいお前なら知ってんだろ?」
時間を欲するのはよくあることだ。幼い容姿である果穂にもいつかは死ぬ時がくる。死んだら誰だってタイムアップだ。だが今すぐに果穂が時間を手に入れようとするのは奇妙だ。ヒューマノイドになったとしても壊れれば修復が必要だし、最悪の場合は死に至ることもある。だからすぐにヒューマノイドの機体を手に入れたとしても、果穂に永遠が約束される訳ではない。
「己の猶予時間を欲するには生きている時間が足りやしないか? お嬢さん」
そこまで言ってから多輝ははたと我に返った。いつの間にか言いたかったこととは別のことを口走っている自分に気がついたのだ。果穂はさっきまでの怯えた表情から不思議なものを見る目に変わっている。多輝は思わず足を止めて一度強く頭を振った。
「た、たき? どうしちゃったの?」
「……うるさいな。ちょっと黙ってろ」
頭の中にもやのように広がっていた考えを叩き出す。多輝は口許に嗤いを戻して大きく一歩踏み出した。乾いた音を立てて果穂が後ろに下げた足で何かを蹴る。壁際にあったコンセントタップを果穂の踵が蹴ったのだ。
「どーも変なとこから妙なもんを拾う癖があるみたいだな」
独り言のように呟くと多輝の背後で優一郎がくすりと笑った。優一郎は元々、多輝の能力については深く問わない。もしかしたらどんな特性かをはっきりと知っているのだろうか。疑いの眼差しを肩越しに投げてから多輝は果穂に向き直った。
「今のは気にするな。単なる独り言だ」
「なんかへんよ? だいじょうぶなの?」
不安そうに返す果穂の頭のすぐ脇に多輝は手を伸ばした。勢いよく出した手が壁に当たって高い音を立てる。その瞬間、果穂は息を飲んで目をかたく閉じた。
「おれはお前の身体の話をしてるんだ。……お前、大人の女の身体が今すぐにどうしても欲しいんだろ? さっき言ってたのとは全く別の理由で」
覆い被さるように腰を屈めて多輝は果穂に囁きで告げた。すると果穂がはっと目を開いて慌てて顔を背ける。意地悪く嗤いながら多輝は果穂の顎を指でつかんだ。強引に自分の方へと向かせる。果穂は涙を目に浮かべて唇を噛んだ。
「……なあ、優一郎。こいつの要求ってすぐに何とかなんねえの?」
果穂を間近に見つめたまま多輝は後方に向かって声を飛ばした。のんびりと多輝と果穂のやり取りを眺めていた優一郎が不思議そうに首を傾げる。
「今すぐに、というわけにはいきませんけど。機体の中枢部分だけならすぐにお渡しできます」
「中枢部って……なに? もしかして心臓みたいなもん?」
そう言いながら多輝はつかまえた果穂の顎をゆっくりと左右に振った。検分するように顔を眺める。果穂は間近に迫った多輝から身を庇うように自分を抱きしめていた。
「果穂さんなら、それを自分の望むようにカスタマイズすることもできるでしょう?」
多輝の質問に優一郎は答えなかった。答える必要がないと踏んだのだろう。多輝はふうん、と呟いて果穂から手を離した。身体を起こして優一郎を見返る。
「それだと自分で作らなきゃなんねえってこと?」
「改造の最終工程は母にやってもらいましょう。先輩、かまいませんね?」
問いかけにしばし多輝は考えを巡らせた。忘れていたが由梨佳はヒューマノイド工学に携わる科学者なのだ。優一郎の手を煩わせるまでもなく、由梨佳に命じればいいだけの話だ。そう答えを出して多輝はああ、と返事した。次いで果穂に目を戻す。一度は視線が外れていたからだろう。安心していた果穂の顔が再び怯えたそれになる。
「人形が自分で自分をカスタマイズなんてする必要、ないもんな?」
多輝はにっこりと笑って果穂に告げた。驚きに目を見張って果穂が絶句する。多輝は腕をゆらりと伸ばして果穂の白衣に手をかけた。両手に一気に力をこめて白衣を引き千切る。悲鳴を上げた果穂は多輝から逃れようと身体をよじった。
「別に最後だけじゃなくて、全部由梨佳先生にさせてもいんだろ?」
「いや! はなして!」
今度はブラウスをつかんだ多輝の手を果穂は必死に引き剥がそうとした。が、元々の身体の作りが違う。多輝は龍神の力を使うまでもなく易々と果穂のブラウスを引き裂いた。
「そうですね。別に問題はありませんね」
にっこりと笑って優一郎が答える。果穂の腕をつかんでいた多輝は肩越しに振り返ってにやりと嗤った。優一郎は多輝の意図を理解しているのだろう。いつの間にか立ち上がって机にもたれている。片手に握ったコーヒーをのんびりと傾けながら見物するという算段なのだ。
「いやっ! やめて! たき、いたいっ。はなしてよう! てがちぎれちゃう!」
「ふうん? 子供っぽいことも言えるんじゃねえか」
嘲笑を浮かべて言いながら多輝はするりと手を動かした。その途端に果穂があ、と小さな悲鳴を上げて抵抗を止める。多輝は果穂の細い胴を両脇から手で挟んで親指だけを胸に乗せた。破れた服の隙間にある果穂の胸は平らだ。膨らみの気配すらない胸にはだが、不釣合いなものがつけられている。
多輝は……まあ仕方ないですね……。