機械なので記録とかアレなのですが、上手く書けてませんね(汗)
エロシーンはありません。
総一郎は由梨佳をついでのように扱っていた訳ではない。だが総一郎は離婚する時にも由梨佳を一人の女性として愛してはいなかったようだ。あくまでも総一郎は由梨佳を仲間と見ており、機体ストレス値の上昇に伴って行う性交渉ですら総一郎にとっては研究作業の一環に過ぎなかったのだ。
どんなに被虐心旺盛なヒューマノイドでもそれは確かに耐えがたいだろう。由梨佳のように幸せな家庭をただひたすらに夢見ていた女性であればなおのこと、だ。なのに由梨佳はこうして多輝に対しても毅然とした態度を崩さない。あくまでも由梨佳は多輝を息子である優一郎と同年代の子供だと思っているのだ。
「由梨佳先生の他に別の交際相手なんて見つかるかどうかは判らないけど」
そう言い置いてから多輝は渋々と頷いた。渋い顔は演技ではない。苛立ちのままに自然と多輝の表情は苦いものになっていた。子ども扱いされていることには腹は立たない。事実、多輝の年齢は優一郎とほぼ同じだ。少なくとも由梨佳は多輝の倍は生きている。だから由梨佳の目に多輝が子供に映ってもそれは自然なことなのだ。
多輝が苛立っているのはもっと別な理由からだった。意識して感覚を閉ざさなければあらゆる思惟を多輝は拾ってしまう。だから最近は感覚を自由に開閉できるように特訓しているのだ。そうしなければ流れてきた何者かの思惟に引きずりこまれてしまう。
だがどんなに閉ざそうとしても由梨佳の思惟が流れてくるのだ。由梨佳は多輝に理性的なことを言いながら、その実、性的な欲求に囚われ続けている。マスター登録を欠いていることがその原因の一つだろうが、それだけではない。多輝に他の女性との交際を奨めつつも本当はそれは嫌だと感じているのだ。由梨佳が望む幸せな恋人同士の間に他人の割り込む隙はない。だが由梨佳は夢に描く恋人同士の姿に多輝と自分を当てはめようとしては意識下でそれを否定する。そんな真似を繰り返しているからストレス値が上昇してしまうのだ。
いいじゃねえか、別に。ヒューマノイドだからって幸せになっちゃいけないってことはないんだから。幸せな家庭を望んで何が悪いってんだよ。
立城の屋敷にいた頃、多輝は悩む由梨佳にそう告げた。あの時は心の底から確かにそう思っていたのだ。だが今の多輝の考えはその時とは異なっていた。頑ななまでに保とうとしている由梨佳のプライドをずたずたに引き裂いてやりたい。幸せな光景を夢に見ることすら出来ないほどに壊してしまいたい。由梨佳を人形のように弄んでみたい。だからこそ、今の由梨佳の状態は多輝にとっては少し不満なのだ。
もっと毅然と、心の底から理性的な自分を演じてみればいいのに。そんなことを思いながら多輝は由梨佳の返事を待った。由梨佳は頷いた多輝にほっとしたのだろう。そっと息をついて口許を緩める。由梨佳の笑顔は寂しそうだった。
「あなたならすぐに見つかるわよ。それに焦る必要もないわ。あなたに相応しい女の子が見つかるまでは、性欲処理に私を使えばいいんだもの」
性欲処理、ねえ。内心で嘲笑うように呟きながら多輝は由梨佳から目を逸らした。顔を歪めて唇を噛む。
「もしかして旦那さんのこと、まだ忘れられない?」
だからそんな風に自虐的なこと言うのか。多輝は苦しい声でそう続けた。するとはっとしたように由梨佳が多輝を見つめる。多輝はその視線を感じてはいたが、由梨佳の方は向かなかった。
「そういえばすっかり忘れてたわ。ありがとう」
「忘れてたって……」
今度は多輝が驚愕に目を見張る番だった。演技でも何でもなく、多輝は正直に驚きをこめて由梨佳に目を戻した。由梨佳はくすりと笑いを零して首を傾げてみせる。幾らヒューマノイドが人とは異なるものだと言っても、こんな風に短期間に伴侶であった者のことを忘れるだろうか。
そう考えてから多輝はとあることを思い出した。由梨佳が壊れてしまった本当の経緯についてだ。多輝は直接に聞いた訳ではない。殆ど閉ざされている優一郎の感覚から漏れ零れた拾った情報の中にそのことが含まれていたのだ。
由梨佳は多輝が壊れた後、優一郎に性的な刺激を求めたのだ。母親としての立場やプライドも全てかなぐり捨て、由梨佳は一心に優一郎を求めた。優一郎は要求のままに由梨佳に快楽を与えた。追い詰められていた由梨佳は結局、ストレスが解消されることはなくそのまま壊れてしまったのだ。
多輝は見開いていた目を静かに閉じた。ヒューマノイドの機体は人より頑丈だと思われがちだが、実際にはとても繊細に出来ている。息子である優一郎に淫らな真似をした瞬間、ひょっとしたら由梨佳の機体の記憶のシステムに異常が発生したのではないか。いや、もしかしたら優一郎自身が修復の際に何らかの処置を施した可能性もある。考えこむ多輝の表情は次第に強張っていった。
「深く考えることかしら? あなたが居るから私はまだ存在を続けられる。それは紛れも無い事実よ」
難しい顔で考えこむ多輝に由梨佳がそっと気遣うように声をかける。多輝はああ、と目を上げて微かに笑ってみせた。
機械仕掛けの人形(ヒューマノイド)の精神構造には色々あるのですが、そもそも独占欲みたいのがあんまりないのです……。
そこのところを上手く書ければ良かったのですが……。とほほ。