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「ごめん、ちょっと気になることがあったからさ」
そう告げて多輝はおもむろに腰を上げた。とにかく由梨佳の気が変わらないうちに作業を進めてしまわなければならない。何しろ扉の向こう、廊下の先の部屋に壊れた果穂が放置されたままなのだ。
「それでは一つ目の条件はオーケーということでいいかしら?」
「あ、そっか。一つ目がそれか」
早速、由梨佳に迫ろうとしていた多輝は拍子抜けした声を上げて椅子に戻った。ここで焦ってはいけない。優一郎にもマスター登録が終了するまでは大人しい振りをしていろと言っていたのだ。逸る心を抑えて多輝は由梨佳に頷いてみせた。
「それでは、二つ目の条件を言うわ」
微かに浮かんでいた笑みを消して由梨佳が真剣な表情になる。多輝は胸中で身構えつつ固唾を飲んで次の言葉を待った。
「二つ目の条件は、あなたがマスターになった後に、私を決して人間扱いしない事よ。あなたは私の所有者として、私を道具として扱って欲しいの」
意外な言葉に多輝はすぐには返事が出来なかった。由梨佳から流れてくる思惟に翳りはない。嘘は吐いていないということだ。だとすると今の言葉は由梨佳の紛れもない本心だということになる。
「……とりあえず条件を先に全て提示してくれ」
返事を先送りにして多輝は片手を上げてそう応えた。由梨佳は神妙な面持ちで頷いて更に言葉を続けた。
「条件はこのふたつよ。この条件でよければ、いつでもマスター登録を受け付けるわ」
にっこりと笑って由梨佳はスカートの裾を捲り上げた。ストッキングに包まれた腿までが剥き出しになる。多輝はしばし由梨佳を見つめてから力なくため息をついた。どうやら今までの努力は無意味だったようだ。そのことを心底悔いながら多輝は肩の力を抜いて片手を上げた。
「要するにおれは無駄なことをしていた訳か」
独り言のように呟きながら多輝は立ち上がった。え、と由梨佳が不思議そうに目を見張る。これだけのことを提示すれば多輝はマスター登録を断念すると思っていたのかも知れない。多輝は瞬きを繰り返す由梨佳にちらりと視線を流してから部屋の奥に移動した。並ぶスチール棚を探りながら疲れたため息をつく。
「最初から言えば良かったんだよな」
そうぼやきながら多輝はスチール棚の中から目当ての箱を取り上げた。それは優一郎があらかじめ用意していたものだ。プラスチックの箱を片手に多輝は由梨佳のところに戻った。困惑した面持ちで由梨佳は多輝と手に握られている箱を見比べている。自然と腕から力が抜け、いつの間にかスカートは元の位置に戻されている。
「それは……?」
不安そうに訊ねる由梨佳を多輝は感情のない目で見つめ返した。箱の蓋を開けながら面白くない気分で告げる。
「新規のマスター登録用のスティックだってさ。そう、おれは最初っから言えば良かったんだよ」
箱の中にはペニスの形によく似た一本のスティックが入っている。その表面はゴムで出来ており、機体内に挿入する際に損傷がないように設計されている。言えば生身の身体に使う張り型とよく似た外見だ。だが内容はまるで違う。このスティックを由梨佳に挿入するだけでマスター登録が簡単に行えるというものだ。
「おれの物になれ。以上」
片手にスティックを握って多輝は由梨佳の前に立った。演技することを止めた多輝を見つめて由梨佳は目を見張っている。
「はい」
小声で返事をする由梨佳の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。だがそれは悲しみの涙ではない。恐らく多輝のことを本当に心の底から思っているからこそ、自分の提示した条件がクリアされたことが純粋に嬉しいのだろう。多輝は小さく舌打ちをして由梨佳の肩に手をかけた。
「他の女つくるのもおっけー。人形扱いおっけー。少しくらいおれの楽しみ残してくれればいいものを」
眉を寄せてぼやきながら多輝は無造作に由梨佳のスカートの中に手を入れた。片腕に由梨佳を抱き寄せて下着を探る。微かな声を漏らした由梨佳を強く抱きしめながら多輝は目を閉じた。どこかで誰かが笑っている気がする。
「ああ、でも一つだけちょっと無理なことがあるか」
由梨佳の下着を素早く引き下ろしながら多輝は呟いた。腕の中で由梨佳が慌てたように顔を上げる。だが多輝はそれを無視して右手に握ったスティックを由梨佳の股間に運んだ。
「何? 多輝くんが望むなら私、なんでもするわ」
「おれ、他と違って寿命が長いんだよな」
そう言いながら多輝はスティックの先端を陰唇の間にあてがった。慎重に手を上下させる。既に濡れてはいるが急に挿入するのは無理だ。スティックで撫でるように膣口を弄りながら多輝は由梨佳の肩に顔を埋めた。胸に抱いた由梨佳の身体はやけに細い。
「多分、おれは周りの奴らが死んでも生き残る。あの優一郎だって多分おれより先に死ぬだろう。あれで一応は人間だからな」
腕の中で由梨佳がびくりと震える。それは快楽を感じ取っただけではない。多輝の言うことがおのずと予測できたからだろう。多輝は口許に苦い笑みを浮かべて右手をゆっくりと動かした。徐々にスティックが膣壁を押し広げて進む。
「んっ……」
掠れた甘い吐息を聞き取って多輝は静かに目を閉じた。
「だからちょっとおれに付き合ってよ」
そう囁いて多輝はスティックを膣の奥に挿入した。応えを口にする余裕もなく由梨佳が身体を震わせる。かちりという小さな音を聞き取った多輝はスカートに入れていた手を出した。両腕にしっかりと由梨佳を抱きしめる。
だって一人じゃつまんないし寂しいからさ。その呟きは誰の耳にも入ることはなかった。
多輝が面倒くさくなって投げましたww