続いて要の足元に優一郎が回る。要は言われるままに膝を立て、腿をひらいた。スカートをたくし上げるとそれまで隠れていた部分が露になり、妙な涼しさを感じる。要は先ほどと同様に天井を見つめて全く関係ないことを考えようとした。
関係ないこと、関係ないこと。呪文のように心の中で繰り返してから要は何とか気を逸らそうと努力した。もし、ここで優一郎を強く感じてしまったら作業の邪魔になる。パーツの取替え時に水分があっては作業にならないだろう。
ににんがし、にさんがろく、にしがはち。
他に何も思いつけず、要は懸命に頭の中で九九を唱えた。その間にも優一郎が作業する音が微かに聞こえてくる。その音を出来るだけ聞かないように要は手で耳を塞いだ。
ししじゅうろく、しごにじゅう、しろくにじゅうし。
だが、乳首とは違い、クリトリスのパーツの取り替えは多少の時間がかかるのか、優一郎は要が四の段を唱え始めても作業を続けていた。続いて要は五の段を唱え始めた。六の段、七の段と続けてやがて九の段に行き着く。
くくはちじゅういち。
そう、唱え終わって要は顔をしかめた。いつの間にか要は目を閉じている。だからなのか、優一郎がどこに触れているのかがいつも以上によく判る。要はええい、と呟いて今度は九九を逆に唱え始めた。
「くくはちじゅういち、くはしちじゅうに、くしちろくじゅうさん」
懸命に感覚を切り離そうとしていた要の口から自然と九九が飛び出す。要の足元で作業をしていた優一郎はそれを聞いてくすくすと笑っていた。だが、耳を塞いでいる要にその声は聞こえない。
「ごろくさんじゅう! ごごにじゅうご! ご」
「終わりましたよ」
要が必死で五の段を逆に唱えている最中に優一郎が告げる。身体を揺すられて要ははっと目を見張った。
「あっ、ありがとうございますですわ!」
必死の思いで感覚を断ち切ろうとしていた要は、混乱のままに優一郎に告げた。優一郎は取り外した古いパーツを白衣のポケットにしまっている。要はほっと息を吐いてはだけた服に手をかけた。とにかくこのみっともない中途半端な格好を何とかしよう。そう思いながら外れたボタンをかけはじめる。
「要さん、そのままで。さっそくですけど、パッシブセンサーが反応しています。状況を報告していただけますか?」
「へ?」
横から声をかけられて要は間抜けな声を上げて瞬きを繰り返した。自然とボタンにかけていた手が止まる。身体の動きを止めた要は妙な感覚に目を落とした。身体を起こしてスカートをめくり上げる。要はまじまじと股間を覗き込んであっ、と声を上げた。手で翳りを分けた先で小さな光が点灯している。
「パッシブセンサーが反応するとクリトリスが検知した力に相当する色で発光するようになっています。意識リンクはまだ実装されていませんから目視で確認願います」
言われて要は目を凝らした。だが見えにくい。要は眉を寄せて指先でクリトリスが被っているカバーをずらした。すると光がもっとよく見えるようになる。
様々な色に光は移り変わっていく。黄色から灰色、赤から青、翠から紫、白から黒へと光は変化する。とても何色と断定できる色ではない。どう表現していいのか迷い、要は複雑な表情をして顔を上げた。
「光ってはいますけど……何色というのはちょっと」
困惑しつつ要は素直にそう告げた。
「本来なら、ここで自動的に乳首のアクティブセンサーが起動します。でも今は、自動起動機能はオフになっています」
言われて要は自分の胸元を見下ろした。ふむ、と頷いて目を上げる。優一郎は要に頷いて言葉を継いだ。
「新型の乳首では手動で対龍神センサーを起動できるようになっています。右に180度回転させた後、カチリと音がするまで押し込み、元に戻してください」
要は言われるままに左右の乳首を指でつまんだ。指を動かして右に回転させる。九十度回転させたところで微かな手応えを感じる。要はさらに乳首を右に回した。要の乳首はどれだけ回転したかを判り易くするため、九十度ごとに乳輪の内側に目盛りが打ってあるのだ。そして回転させるごとに手応えを感じるよう、乳首には目盛りを読む小さなばねが仕掛けられている。要は慎重に指先に意識を集中して二度目に手応えを感じたところでぴたりと指の動きを止めた。今度は乳首の先端を乳輪に向かって押す。すると要の乳首はゆっくりと沈んでいった。何かが嵌るような音を聞いてから要は今度は乳首を引っ張った。元の格好に乳首が戻ったところで要は顔を上げて出来た、と優一郎に言おうとした。
何だかむず痒いものを感じて要は何気なく目を胸に戻した。女性らしい豊かな膨らみの先端、乳首の部分が小さく乳輪に出入りしている。一定間隔で出入りを繰り返す乳首を見た要の頬は赤くなった。
「ぴこぴこ……」
つい、乳首の出入りする様子を呟いてしまう。
「こうして、両乳首のアクティブセンサーとクリトリスのパッシブセンサーが連動して、情報収集を行います。収集した情報は腹部内のハードディスクに保管されます」
淡々と優一郎が説明を続ける。なるほど、と要は頷いてしばし沈黙を守った。乳首は相変わらずぴこぴこと動き続けている。コミカルな動きに要はじっと見入っていた。
要ははっと息を飲んで慌てて顔を上げた。今まで呑気に構えていたが、センサーが反応しているということは、近くにとんでもない力を使う者がいるということではないのか。
「たっ、大変ですわ!」
そう叫んで要は慌てて優一郎を見た。だが優一郎は何故か焦っていない。説明をしていた時と同じようにとても穏やかだ。
機械的なところを頑張って書いてみた感じです。
まだまだですけども……。