エロシーンはありません。
「栄子さんにとってはもしかしたら不快な話かもしれませんが……。父と母がどうして結婚したのか? という理由から説明させていただくことになります」
高校生時代、総一郎はそれまでに例のなかったヒューマノイドという、機械の身体と人間の脳を組み合わせた機械化人間を試作しようとしていた。当時、ヒューマノイド工学そのものがなかったこと等から見ると、総一郎の草案は画期的なものと呼べた。
だがそれ故に助力をどこにも求めることは出来ない。もちろん、総一郎は最初からそんなものには期待はしていなかったようだ。素材を選別する作業をも自ら行っていたことからそれははっきりとしている。
ヒューマノイドの素材については絶対の条件が幾つかある。まず女性であること。何故なら女は子供を産むという理由から男よりも頑丈に出来ているからだ。当然、様々なストレスについても女性の脳の方が耐性があるだろう、というのが当時の総一郎の考えだった。次に脳機能が高く、運動神経、思考能力の点についても優れていること。その二点が当時の総一郎の弾き出した素材の絶対条件だった。
総一郎は学校内……つまり、手近な場所で素材を探すことにした。コストの問題もあるが、何より人が大勢集まるということで学校は素材を探す場所としては手ごろだったのだ。あらゆるテストを行い、その結果から総一郎は素材に相応しい候補を二名ピックアップした。そして総一郎はその二名を素材にすると仮定してヒューマノイドの設計図を含む、プレゼンテーション資料を作成した。
「父は普段は設計図は書かないんです。すべて記憶してますから。設計図を書く時は他人に説明しなければならない時だけなんです」
総一郎がピックアップした素材は二名。どちらも当然、女子生徒だった。一人が宇田川由梨佳。そしてもう一人は栄子だった。栄子はその財力をも念頭に置いたプランが練られた。つまり、総一郎は栄子の資金力をあてにした、高価なパーツを組み込んだ機体を設計したのだ。対する由梨佳のプランでは、資金援助があてに出来ないという理由も含めて、コスト削減を主眼に置いた機体が設計された。
二名についてのプランを提示した総一郎だったが、第一候補を栄子に設定していた。ヒューマノイドの適性やあらゆる面において、由梨佳より栄子の方が候補としては有力だったのだ。
だがしかし、実際にプレゼンテーションが行われる直前、偶然に由梨佳がその資料を発見してしまう。由梨佳は資料を見つけた後、自分を素材として売り込んだのだ。
「しかし、母を改造してからヒューマノイドにいろいろな問題点が発見されたんです」
記憶のギャップによるストレスを解消するため、ヒューマノイドには快感の過剰なインプットが必要になる。それは実際に由梨佳がヒューマノイド化されてから発見された問題点だ。だがこの点についても総一郎は的確に対処した。要するに由梨佳が求めるままに、総一郎は由梨佳と性交渉を行うことにしたのだ。
機体を維持するためにはメンテナンスが必要になる。しかも由梨佳の機体はコスト削減を主眼に置いて作られたため、設計段階で計算されていたより、はるかに壊れやすかった。結果、由梨佳は毎日必ずメンテナンスを受けなければ機体を維持できないことが判明した。
それらの事情を考えあわせて「結婚」したほうが合理的だと由梨佳が提案し、形式上は結婚することになったのだ。
「実際に母が本当に形式だけの結婚だと考えていたのかどうかはわかりませんけど」
言いながら優一郎は苦笑したくなった。由梨佳は言ったままの意味で結婚したかった訳ではないだろう。総一郎を納得させるために、あえてそう言ったのだ。総一郎に恋心を抱いていた由梨佳は、形式だけという理由を作ってでも総一郎の傍に居たかったのだ。
かつん、という小さな音に気付いて優一郎は伏せがちになっていた目を上げた。栄子がぼんやりとした面持ちで端末を見つめている。だがその目はどこも見ていないのではないか。優一郎にはそんな風に思えてならなかった。
「話が長くなってしまってすいません。つまり、もうひとつの選択とは栄子さんをそのヒューマノイドに改造することなんです」
よほど、総一郎と由梨佳のなれそめに衝撃を受けていたのだろう。栄子はすぐには反応しなかった。由梨佳がプランを発見することがなければ、もしかしたら今、総一郎の横にいたのは栄子だったのかも知れないのだ。いや、それ以前に栄子は恐らくたとえヒューマノイド化されたとしても、由梨佳と同じように半ば騙す形で総一郎の横にいることを望まなかったのではないか。そう、優一郎が思う程度には栄子の自尊心は高い。
最初からそーいちろーさんは天才という設定になってます。