※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

28 / 262
エピタイに困った挙げ句こんな感じに……。
エロシーン前哨戦です。
あ、ここにはエロシーンはほぼありません。


色仕掛けと色仕掛けられる方法 1

 色仕掛け、という言葉がぐるぐると頭の中を回っている。だが何度考えても有効な手段とは思えない。多輝はうーん、と低く唸って椅子を大きく後ろに傾けた。途端にバランスを崩しかける。慌てて机をつかんだ多輝に由梨佳が呆れたように声を投げかけた。

 

「やめなさい、行儀悪いわよ」

 

 由梨佳はホワイトボードに数式を途中まで書いたところで手を止めている。ごめん、と慌てて詫びて多輝は端末に向き直った。よろしい、と鷹揚に頷いてから由梨佳がくすくすと笑う。

 

「そんなに変か?」

 

 憮然として多輝は呟くようにして訊いた。すると由梨佳が口許を押さえて頷く。確かに椅子から転げ落ちそうになったのは、これで三度目だ。笑われても仕方ないだろう。ちぇっ、と舌打ちをして多輝はそっぽを向いた。

 

 午前の授業が終わり、昼食が済んだ後の休憩時間に多輝は由梨佳を連れて庭に出た。冷たい風が吹いているが、考えすぎて疲れた頭を冷やすには丁度いい。自分の身体を抱くようにして身震いした由梨佳に、多輝は上着を差し出した。

 

「ほら、着ろよ。寒いんだろ?」

 

 ためらっている由梨佳の手に強引に上着を押し付ける。由梨佳は少し困ったように笑ってから大人しく袖を通した。

 

「ありがとう」

 

 言って由梨佳はまじまじと多輝を見つめた。視線を感じた多輝は訝りつつ何だ、と訊ねた。

 

「どう見ても女の子なのに、こうして話していると男の子みたいだなあと思って」

 

 多輝くんって呼びたくなっちゃうわ。そう付け足して由梨佳が苦笑する。多輝はにやりと笑って首を傾けた。傍にいた由梨佳を抱き寄せて額に口づける。ひんやりとした額に唇をつけると由梨佳が驚いたように身を竦めた。

 

「いいぜ、多輝で。おれもそう呼ばれた方がしっくりくるし」

 

 先日までの暗さは今の由梨佳の表情にはない。完全に吹っ切れたという訳ではないだろうが、それでも幾分かは落ち着いているようだ。身体の細さを確かめるように由梨佳の肩を抱きなおし、多輝はゆっくりとした足取りで歩き始めた。

 

「正直なところ言ってしまうと、どうも、天輝さんって呼んでもぴんとこないの」

 

 多輝の横を歩きながら由梨佳がそう言って苦笑する。立城さんには悪いけど、と由梨佳が告げたところで多輝は憮然となった。あんな奴に気を遣わなくていいんだ。吐き捨てるように言い返す。すると困ったように由梨佳が笑う。

 

「それにおれ、立城に天輝って言われたことはないぞ?」

「立城さんと喧嘩でもしたの?」

 

 急に由梨佳が話の矛先を変える。うっ、と詰まって多輝は足を止めた。自然と由梨佳の肩を抱く手に力がこもる。

 

「べっつにー。喧嘩じゃないと思うし」

 

 君に色仕掛けは無理だろうしね。立城の言葉が多輝の脳裏にまざまざと蘇る。多輝は小道に降り積もった雪をつま先で蹴った。白い雪が散る。

 

「それならいいんだけど」

 

 心底、ほっとしたように言って由梨佳が微笑む。その笑みを直視できず、ぎこちなく多輝は視線を外した。由梨佳を引き寄せるようにして再び歩き出す。すると小さな悲鳴を上げて由梨佳が足をもつれさせながらついてきた。

 

「いろじかけ、かあ」

 

 何の気なしに呟いてから多輝はため息をついた。確かに立城に言われた通り、自分にそれは無理だろう。何しろ女としての魅力というものが何か判っていないのだ。どうやって相手にそれを見せ付ければいいか、等ということには到底考えが及ばない。うーん、と唸った多輝の頬をふと何かがつついた。見ると由梨佳が指先で軽く多輝の頬をつついている。

 

「なんだよ」

「誰が教えたのかしら。そんな言葉」

 

 困ったような怒ったような顔で由梨佳が問う。あ、そっか。多輝は納得して苦笑した。由梨佳は多輝の教育を担当している。教えた覚えのない言葉を多輝が口にしたことが疑問らしい。

 

「んー。まあ、誰でもいいじゃねえか。おれ、どっちかって言うと色仕掛けに乗る方が得意なんだけど」

 

 そう言って笑いながら多輝は両腕にしっかりと由梨佳を抱きしめた。慌てたように由梨佳がもがく。だが本気で抵抗する気はないらしい。もう、と多輝の耳元で困ったように笑う。

 

「だめ……あんまり刺激すると……。あっ!」

 

 低いモーターの音が由梨佳の下腹部から聞こえてくる。それに伴って由梨佳の腰がぎこちなく震えた。多輝は小さく笑って由梨佳の唇を塞いだ。密着した身体の間に手を入れて由梨佳の胸を弄る。

 

「準備おっけーじゃん。やろうよ」

「ごめん……なさい。不安定になってるから……どうしても……あっ!」

 

 ブラウスの隙間から指を入れ、多輝は由梨佳の乳首を弄っていた。指先で焦らすようにつつくだけで、由梨佳がびくりと身体を震わせる。小道に積もった雪の上を、ぎこちなく由梨佳の足が滑る。

 

「きゃあっ! あふっ!」

 

 完全に身体が傾く前に多輝は腕でしっかりと由梨佳を抱きしめた。

 

「おれもしたくなってきたからさ。しよ?」

 

 するりと由梨佳のスカートの中に手を忍ばせる。涙を零して声を殺す由梨佳を多輝は慣れた手つきで弄った。由梨佳が震えながら小さく頷く。多輝はよし、と笑って由梨佳の身体を軽々と抱き上げた。




あっ、百合警報出すの忘れてましたが……。
多輝はもう女カウントでいいですかね?(汗)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。