※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

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エピタイがアレですけども……。
エロシーンがあるエピソードですが、ここにはまだエロシーンはありません。


キッチンでの暴力行為 1

 待ち合わせの期日は三日後。時間は昼の十二時。手帳にそれを書き込んでから順は目を上げた。目の前にいる都子はむっつりとした面持ちでカップを傾けている。身代わりに置いた替え玉はきっちり始末した。順がわざわざ出向いて始末をつけたのだ。そのことに今さら、不服を感じている訳ではないだろう。

 

「ねぇ、みーやこちゃーん。何でそんなに怒ってるの?」

 

 猫なで声で順は訊ねた。すると都子が音を立ててカップをソーサーに戻す。今は特に必要がないため、都子は女の身体をしている。別に不満なんてない筈なのにねぇ。順は内心で呟いて答えを待った。

 

「わたくしの知らない間に女性の方を部屋に引き込んで! それもお二人も!」

「あれー? それってやきもち? ヤだなあ。オレ、都子がいっとう大事だってゆってるのにぃ」

 

 よしよし、と言いながら順は都子の頭を撫でた。都子がぴくりと頬をひきつらせる。

 

「違いますわ! 木村に関係のない方を危険なことに巻き込む必要はないと言っているんです!」

 

 そんなことは聞かなくても判ってるんだけどね。順は胸の奥で呟いて、えー、といつもの調子で唇を尖らせた。組み合わせた足の片方を宙に揺らす。都子はひきつりつつも、気が納まったのだろう。順にいきなり殴りかかってくるようなことはない。

 

 順は既に退院したことになっている。あの時に受けた傷はとっくの昔に癒えているのだ。だから今は替え玉をベッドに置く必要はない。だがそのおかげで順はいつも以上に都子の怒鳴り声を聞く羽目に陥っていた。

 

「大体、お兄さまはいつもいつも勝手に」

「オレが勝手じゃなかったことなんて、今までなかったっしょ? それにどーして都子はそゆことだけ言うの? 他にもいーっぱいオレは悪事を働いてるんだよ?」

 

 都子の言葉を遮って順は淡々と告げた。カップを傾けながら片目だけを開ける。すると都子の困惑した面持ちが見えた。

 

 都子にはまだ報せていない。彼女たちはただの人間ではない。身体はともかく、れっきとした龍神だ。その気配に都子が勘付いていないのは、強固な結界の内側に彼女たちを置いているからだ。でなければ真っ先に都子は彼女たちに刃を向けただろう。こうして心を取り戻したとは言っても、都子には対龍神用にあらゆる暗示を施してあるのだ。

 

「で、でも……」

「ごっちそうさまー。あー、美味かった」

 

 これ以上、都子と話していたら藪をつついて蛇を出しかねない。順は早々に席を立ってティルームを出た。残された都子は恐らくしばらく悩むだろうが、だからこそ静かになる。疲れた身体を引きずるようにして順は私室に戻った。

 

「ちょっと、いつまであたしをここに閉じ込めとく気よ!」

 

 順を出迎えたのは優しい言葉ではなかった。鋭い怒鳴り声にため息をついて順は部屋の扉を閉めた。声の主である水輝は部屋の中央に仁王立ちになっている。

 

「だからー。何度も言ってるじゃん。水輝ちゃんがこの部屋から出たら危ないんだってば」

「火藍は出てるじゃないの、おもっきり!」

 

 今、屋敷に火藍はいない。順の命令に従ってとある場所の調査に行っているのだ。マスター登録を行ったために火藍は順に逆らうことが出来ない。それを利用しない手はないじゃない。順は内心で呟いてから苦笑いを浮かべた。

 

「あー、だからー……その、ね? 火藍ちゃんはちょっとおつかいに」

「何で火藍だけ!? あたしも一緒に行きたかったのに!」

「いや、それはちょおっと遠慮願いたい……うわ!」

 

 唐突に飛んで来た水を避け、順は慌てた声を上げた。つい習慣で煙草を咥えていたことに遅まきながら気付く。悪い悪い、と詫びながら順はポケットに煙草を戻した。水輝が憤然と腕組みをして順を睨む。

 

「ホントはねー。キミを然るべきトコへ送りたいんだけども」

 

 言いながら順は机についた。今日の仕事は幸い、殆どない。あとはデータチェックしてメールを何本か送ればいいだけだ。端末を立ち上げてから順はちらりと水輝に目をやった。相変わらず水輝は敵意を剥き出しにしている。

 

「どこよ、それ」

「んー、アイツのトコ。名前は勘弁して。口にするのもヤだから」

 

 だがそれだけで水輝は誰のことかを理解したらしい。ああ、と納得顔で頷いてみせる。この察しのよさをどうして火藍ちゃんに向けられないかね。心底、疲れながら順はそんなことを考えた。

 

「でも、あたしのこと忘れてるみたいだし」

「あははははー。そうかも……って、うわ! 端末に水は止せ!」

 

 慌てて結界を展開して順は辛うじて水の攻撃から端末を守った。水輝がふん、とそっぽを向く。

 

 翠が何を考えて水輝をここに送り込んできたのかは判らない。ハンデは少ない方がいいだろう、という翠の言葉を信じるなら、水輝は恐らく順の手ごまに利用できるのだろう。だが今のままの状態で水輝が自分に手を貸すとは到底思えない。何だかなあ、と呟きながら順は肩を落とした。

 

 不良返品とかさー。受け付けてくんないのかね。真剣にそう思いながら順はちらりと水輝に目をやった。一つ所に閉じ込められていて苛立っているのだろう。水輝は部屋の中を大股で歩いては順に罵詈雑言を飛ばす。




水輝(女)という書き方が必要かもですね(汗)
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