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日曜の街は賑やかな人の声に包まれている。街灯の上につけられたスピーカーから絶え間なく音楽が流れる。そんな街を二人の青年が歩いていた。金髪の青年が口許に煙草をぶら下げながら笑う。隣を歩くのは色つきの眼鏡をかけた青年だった。
人の流れを避けて二人は映画館に向かっていた。今、流行の洋画を観に行く予定なのだ。前売り買ったっけ。呑気に金髪の青年が告げると眼鏡の青年がああ、と軽く頷く。
二人はやがて映画館に辿り着いた。駅から少し離れているためか、映画館の前の人の流れは緩やかだ。煙草に火を点けながら金髪の青年が映画館を見上げる。壁に大きな看板が掲げられている。
「おまえのシュミって変わってるよなあ。人気あんのはわかるけど」
金髪の青年は映画に余り興味はない。だがそれでもインターネットの情報で今から観ようとしている映画が一番人気なのは知っていた。眼鏡の青年が困ったように笑う。
「裕って、サスペンス苦手なのか?」
「んー……あんま好きくない」
そんな会話を交わしながら二人は映画館に入ろうとした。が、その寸前に慌てたように金髪の青年が声をあげる。ガラス扉をくぐりかけていたもう一人の青年が怪訝そうに足を止める。
「おい! あれ、千佳じゃないか!?」
「……なんだって?」
眼鏡の青年が顔を強張らせてドアに背を向ける。金髪の青年は震える手である方向を指し示していた。眼鏡の青年が指先を目で追って息を飲む。
「ほんとだ。千佳だ」
「なんで……こんなとこに」
千佳と二人が呼んだ女は人の流れに紛れて横断歩道を渡っている。二人は警戒しつつ千佳を目で追った。だが千佳が自分たちのいる方へ歩いてくることに気付いて慌てる。
「どうするよ! おい、こっち来んぞ!」
「ど、どうするって言っても」
二人は慌てた声を上げつつもその場を動くことが出来なかった。その間に千佳はゆっくりと二人に近づいてくる。ひきつった顔で金髪の青年が千佳から目を逸らす。眼鏡の青年はぎこちなく笑ってから片手を上げた。
「あら。またつるんでるの? あんたたち」
千佳がにやりと意味深に笑う。確かに二人は休日にはよく一緒にいる。だが二人は千佳にそう言われても、お互い彼女いないもんなあ、といつものようには返さなかった。ああ、と頼りない声で返事してから眼鏡の青年は金髪の青年の背中を肘で小突いた。慌てたように金髪の青年が振り返る。
「よ、よう。千佳。元気そう……だな」
取ってつけたように笑って金髪の青年は告げた。すると千佳がんー? と眉を寄せる。
「なによお、二人とも。気持ち悪いわね。いつもの元気はどしたの?」
あー、ひょっとして拾い食いでもしたんでしょう。ばっかねえ。そう言って千佳がけらけらと笑う。その様子は以前と全く変わりない。二人は顔を見合わせてから千佳に向き直った。
「お、おまえ……その」
「群れからはぐれたんじゃないのか?」
口ごもった金髪の青年のせりふを途中でさらい、眼鏡の青年がうかがうように告げる。え? と千佳が目を丸くしてから笑って頷いた。
「そうよぉ。一度ははぐれたみたいねー。ま、その間のことってあんまし覚えてないんだけどさあ」
「みたいねえ……って、おまえ、呑気にんなこと言ってていいのかよ!?」
群れから一度はぐれた者はストレンジャーと呼ばれる。完全に群れからは切り離されてしまうのだ。金髪の青年は声を荒らげてそう告げた。すると千佳がにやりと笑う。その笑い方も以前の千佳と全く同じだ。
「そのことなんだけどさあ。見てよ、これ」
言いながら千佳は自分の下腹に手をあてた。二人は訝りながらも千佳の手許に注目した。そして同時に二人の目が見開かれる。二人の目は千佳の下腹部の奥にある輝きをはっきりと見取っていた。
「すっごいと思わない? 本物なんだよ?」
嬉しそうに言いながら千佳が二人の肩をつかむ。二人はごくん、と生唾を飲んだ。必死で忘れようとしていた飢餓感が二人の胸の奥からこみあげる。
「……ねえ。アタシとやろうよ。絶対、気持ちいいよ」
企みのこもった千佳の笑みに二人は顔を見合わせた。どうよ、と千佳が再度訊ねる。二人は千佳を見つめてにやりと笑った。二人の表情に警戒心は全くなくなっていた。
男性二名も初なのですが、今回限りです……。
名前つけなきゃよかったなあ……(汗)