※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

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前の続きです。
エロシーンです。


密時と失望 2

「足、上げて。入れてあげるから」

 

 あの時、水輝は何のためらいもなくそれを刀で貫いた。天を駆けた紅い力は間違いなくその光景を見ていたのだろう。倒れながらそれは口許に微かに笑みを浮かべた。だからだろうか。水輝はあの時、囁くように何かを告げた。

 

 何だっけ。順は火藍の膣口にカプセルをねじ込みながら考えた。あの時に水輝が言った言葉がずっと思い出せずにいる。

 

「どうしてかなあ。他のことはイヤになるほど覚えてるのに」

 

 知らず、順はそう呟いていた。火藍の腰を僅かに浮かせて膣壁とペニスの隙間に指を運ぶ。指先に押されたカプセルが膣の奥に侵入する。火藍はそれだけで達してしまったようだ。あられもない声を上げて順の首筋にすがりつく。火藍の喘ぎを聞きながら順は無言で指を抜いた。その指を水輝の口に入れる。

 

 指先で水輝の口の中を弄る。あたたかな舌が指にまとわりつく。順は目を細めて水輝の膣に挿入されているバイブに力を這わせた。膣内でごく弱く振動していたそれが一転してうねるように膣壁を擦る。急な変化にびくりと震え、水輝はその場に身体を起こした。両手で押さえた股間から愛液が溢れ飛ぶ。

 

「隠しちゃ駄目でしょ。ほら、そこに座ってアソコを指で開いてごらんよ」

 

 そっけない口調で順は水輝に告げた。そう言いながら火藍の腰を自分の腰の上に落とす。激しい声を発しながら火藍は頭を強く振った。水輝が目から涙を零しながら足を開いて座る。指で開かれた膣口からはとめどなく愛液が零れている。順は感慨もなくその様子を見つめてから火藍に目をやった。

 

 抱けば抱くたびに失望する。順は包むように腕を伸ばしてそっと火藍を抱きしめた。柔らかな抱擁にも火藍は反応しない。今の火藍を支配しているのは快楽だ。そしてその快楽は抱いている自分ではなく、傍にいる水輝を思うことで更に強くなっている。順はそっと火藍を抱きすくめて目を閉じた。こんなに輝きが近くにあるのに、どうしてだろう。火藍が酷く遠くに感じられる。

 

「あっ、んんぅ……みずき!」

 

 腕の中で火藍が声を上げる。順は苦笑してそっと火藍を離した。

 

「いいよ、いっても」

 

 呟くように告げる。指先で煙草をつまみ、順は天井に向かって煙を吐き出した。火藍が激しく腰を揺すって高く鳴く。だが順にとってはそれすら現実ではないように思えた。一気に果てた火藍の膣が脈打っている。

 

「よいしょっと」

 

 脱力した火藍をそっとベッドに横たえる。剥き出しになった火藍の陰唇の間に力で作り上げたバイブを挿入してから順はベッドを降りた。二人はベッドでそれぞれに悶えている。その様子をちらりと振り返ってから順は机に近づいた。引出しから一本のスティックを取り上げる。

 

 スティックを手にして順はベッドに戻った。水輝の身体をベッドに横たえる。水輝は抵抗せずにベッドに横になった。

 

「まあ、当初の計画通りに進めることにしよっか。……もう意味がないような気もするけどね」

 

 水輝の膣に嵌っていたバイブを抜く。声を上げて腰をひくつかせた水輝を押さえ、順はスティックを膣内に進めた。奥までしっかり入れてからしばらく待つ。すると水輝が急に静かになった。数秒の間の後に水輝の唇が機械的な声を紡ぎだす。

 

「精神パターン認識。マスター登録、完了しました」

 

 それを聞いて順は苦笑した。笑みに自然と影が差す。

 

「これね。カレのトコに潜り込んだ時に見つけたんだ。ホントは火藍ちゃんと気持ちを確かめ合う前にすれば良かったのかもだけど」

 

 まあ、過ぎたことだしね。ため息をつきながら順はそう続けた。マスター登録用の鍵であるスティックを静かに膣から抜く。それまで人が変わったように静かになっていた水輝の唇がまた甘い喘ぎ声を漏らし始める。順はスティックを床に放り捨てて水輝に圧し掛かった。

 

 水輝が声を上げて背中を反らす。順はそれぞれに悶える二人を眺め下ろして微かに嗤った。その嗤いはだが、二人に向けたものではない。順は自分自身を嘲笑していた。強く水輝にペニスを突き入れながら歌いはじめる。その歌の途中で順はふと動きを止めた。ああ、と笑って水輝から離れる。いつの間にか水輝は傍にいた火藍に擦り寄っていた。

 

「そっか。マスター登録、火藍ちゃんで設定されちゃったか。……ま、いっか」

 

 ずるり、と音を立ててペニスが抜ける。横たわる火藍に抱きついた水輝がうっとりと目を閉じる。順はため息をついてベッドに背を向けた。

 

 あの時の水輝はきっとそれを嗤っていたのだろう。死に行く風龍神をばかな奴だとせせら笑っていたに違いない。そうでなければならない。順は当時のことを脳裏に蘇らせて胸を押さえた。白かったシャツはすっかり血に染まっている。だがそんな順の異変すら、ベッドの二人は気付かないままだ。やれやれと苦笑して順はバルコニーに出た。小鳥を呼び集めて餌をまく。

 

「ヘンだと思ったんだ。だってこの水輝ちゃんって火藍ちゃんの好みそのものだもの」

 

 言いながら順は空を仰いだ。昼間だというのに周囲は薄暗い。張り巡らされた分厚い雲からは小雪が降り続いている。順はキッチンから引き寄せたパンくずを小鳥に与えた。寒さで飢えていたのだろう。小鳥はどんどん集まってくる。

 

「さてと。落ち込んでてもしょーがないし。ほら、ここに餌は置いておくからね。おなかが空いたらおいで」

 

 手を叩いて順はバルコニーから部屋に戻った。床に落ちていた下着とジーンズを取る。血に濡れたシャツを脱いで傷を確かめる。この間より傷は深くなっている。これでは包帯程度ではごまかせない。やれやれ、と息をついて順はベッドを見た。もつれ合う二人に無造作に近づく。

 

「ちょっと火藍ちゃんの力、ちょうだいね。……ちょっとキスするだけだよ。取り上げたりしないから大人しくするようにね」

 

 不満そうに声を上げる水輝に言い置いて、順は火藍に唇を寄せた。目を閉じて身体の中に渦巻く力のほんの一端だけをすくいあげる。指で触れていた胸の傷は何とか見られる程度には塞がった。

 

 真新しいシャツを羽織って廊下に出る。順は力なく笑って閉じたドアにもたれかかった。通りかかった使用人が不思議そうな視線を寄越してくる。何でもないよん、と笑ってから順は廊下を歩き始めた。




立ち直りが早いのが順なのですが、相変わらず損な役回りです。
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