※この作品はR-18です。

魂の座 二部 緋色の遺言   作:伊駒辰葉

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エピタイの通りです。
エロシーンはありません。


清陵高校、ただ今工事中

 割れた窓硝子五十枚。壁にひびの入った箇所、多数。大きく穿たれたグランドの穴は今、修復されつつある。ぴくぴくと口許を引きつらせながら要は工事の経過報告を受けていた。報告している野木の額にはびっしりと汗が浮かんでいる。

 

 ずれた黄色いヘルメットを直しながら要は鋭い目で野木を睨みつけた。目の前にかしずく野木が焦ったように視線を彷徨わせる。安全第一、とヘルメットに書かれた文字は所々がかすれている。まるで今の清陵高校の状態を現しているようで、要は苛々と野木のヘルメットを指で弾いた。

 

「それでは工事はほぼ日程通りに進んでいると?」

「はっ。予定通りに行われております。……が、いかんせん、この天気が」

 

 空を見上げながら要は舌打ちをした。今日もまた空は曇っている。予報では午後から雨になると言っていた。さすがの要も天気だけはどうしようもない。どれだけ金を積んでもそれだけは動かせないのだ。舌打ちをして要は曇天を睨みつけた。

 

 簡易的に建てられたプレハブの屋根を雨が打ち始める。要はやれやれとため息をついてプレハブを出た。放り出したヘルメットを野木が恭しく受け取る。ヘルメットに押さえられて崩れた髪形を直しながら、要は校舎に戻った。

 

 これでまた工事は一時中断される。ただでさえ忙しいというのにこの有様だ。要は苛々しながら生徒会室に戻った。ドアを乱暴に開けると中に控えていた周藤が慌てたように飛んで来る。差し出された今日の報告書をさらうように受け取って、要は席についた。端末を立ち上げて生徒たちのスケジュールを流し読みする。

 

 そもそも自分だけがどうして蚊帳の外に置かれなければならないのだ。あの日の夜から要はずっと不満を感じていた。それまで信じがたいと思っていたものが、いきなり現実となって目の前に現れたのだ。赤い女のことを思いながら要はぎりぎりと歯軋りした。床に転がった保美の機体は見る影もないほどに壊されていた。カレンは果敢に戦っていたが、恐らく勝てはしなかったのだろう。現に優一郎の研究室は封鎖されたままだ。どちらも学校には出てきていない。事情を説明してもらおうと思っても、優一郎まで学校を休んでいる始末だ。

 

 なおざりな説明なら受けた。だがそれで納得できる筈がない。優一郎が何事かをごまかそうとしていたのは明らかだし、何より聞きたかった肝心なことについては優一郎は一切触れなかったのだ。要がそのことについて訊ねようとすると、必ず話を逸らしてしまう。結局、要は未だに蚊帳の外に置かれたままになっている。

 

 がり、と嫌な音がする。要は無意識に机に爪を立てていた。丁寧に手入れされた爪が擦れて削れている。そのことに気付いた要は慌てて手を退けた。机が傷付いている。

 

 不意に何かが目の端に引っかかる。要は怪訝に思いながら画面を見た。明るい画面の真ん中に見慣れないものが映っている。どうやら校内を張り巡らせているネットを通じて誰かが話し掛けてきたらしい。要はため息をつきながらキーボードを弾いた。

 

「んー?」

 

 眉間に深く皺を寄せたまま、要は画面に顔を近づけた。見慣れないIDだ。要は傍にいた野木に命じて当のID番号を検索するように伝えた。即座に野木がキーボードを叩き始める。

 

「要さま。該当するIDの持ち主はこの学校にはおりません」

 

 殆ど時を置かずに野木が答える。要は難しい顔をしたまま、しばらくそのIDを睨みつけていた。だがこうしていても埒はあかない。

 

「一応、メインコンピュータとの接続は切るわ。メッセージに不審な点があったら即座に動けるよう、諜報部との回線を開いておいて」

「はっ」

 

 野木の返事を聞いた後、要はおもむろにキーボードに指を滑らせた。リターンキーに触れる。すると画面の中央部にメッセージが表示された。要はしばらくそのメッセージを睨んでいた。野木が恐る恐る要の様子を伺う。

 

「おのれ、あの男! どこまでも人を愚弄して!」

 

 椅子を蹴倒して要は地団駄を踏んだ。いつまでも指示の来ないことを訝っていたらしい野木が飛び上がるようにして驚く。要は歯軋りしながらディスプレイを両手でつかんだ。爪が嫌な音をたてる。

 

 画面の中央に空色のウィンドウが開いている。

 

『ねぇ、いいかげんオレとする気にならない? その気になったらここにおいでよ。絶対、損はさせないから♪』

 

 軽薄な文句が表示されている。要は憤りに任せてディスプレイを持つ手に力を込めた。ほどなく生徒会室を中心にして破滅的な音が響き渡った。




要、相変わらずですw
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