微エロ? でもさわりだけですし、機械なので。
機械人形の現実 1
電話を切った由梨佳は泣きそうな顔で受話器を電話の本体に戻した。力なく腕を垂らして電話を見つめ、微かに笑う。悲しそうなその笑みはすぐに消えた。こみ上げてきた欲求に耐えられなくなったのだ。
この別邸は由梨佳名義となっている。立城の許を離れてから由梨佳はここで暮らしている。多輝も一緒にいるのは一人きりではメンテナンスが出来ないという理由もあるが、多輝自身が由梨佳と共にいることを望んだからでもある。
一緒にいて安心できたのはわたしの方なのに。考えを巡らせていた由梨佳は自嘲気味に笑った。無意識に多輝が求めたからという理由にしてしまった自分が情けない。それに多輝が本当に心の底から安心していたのなら、今のような事態にはならなかった筈なのだ。
由梨佳は広い廊下に一人へたり込んでしまっていた。この別邸には使用人や研究員はいない。いるのは由梨佳と多輝だけだ。誰もいない廊下で由梨佳は息を殺してスカートの中に手を入れた。
指先で下着の底を弄る。下着越しにもはっきりと判る作り物の感触に泣きたくなる。由梨佳の性器は多輝のそれとは違い、人に似せられてはいない。コスト削減を目的に作られたためにどうしても機械的な外見が残ってしまったのだ。それに手触りも。由梨佳はそう呟いて悲しそうに笑んだ。
下着を弄っているうちに我慢が出来なくなる。由梨佳は声を殺して下着の中に指を滑らせた。直に触れるともっとはっきりと判る。まるでボタンのような手触りのクリトリスをなぞって由梨佳は目を閉じた。快楽がこみ上げてくると同時に下腹部にモーター音が生まれる。声を殺しているためにその音はいつもよりもはっきりと由梨佳の耳に聞こえた。回転したモーターに繋がれた膣圧調整のバルブに空気が注入される。油圧式のピストンがゆっくりと持ち上げられ、そしてまた沈む。それに伴って膣壁を構成する人工皮膚と人工の筋肉が締まったり緩んだりする。
機体内部の動きが由梨佳には手にとるように判っていた。ピストンが上下する音が微かに聞こえる。効率的に男性の射精を促すために膣壁がうねり始めている。由梨佳は機械的な自分の動きを嘲るように笑った。目に溜まった涙が自然と頬を伝う。
「こんなわたしが、誰にも必要にされるわけないのに」
人を模したものとヒューマノイドは定義づけられている。だが由梨佳の機体はあくまでもコスト削減重視で開発された。それ故に人を模しているとは言い難い部分も幾つかあるのだ。女性器もそんな中の一つだ。
性的興奮を受けると油圧がかかってクリトリスが肥大する。張りつめたクリトリスの手触りは機械的でとても生身の人間を模しているとは言い難い。由梨佳は涙を零しながら指でクリトリスを捏ねた。情けなさに苛まれているのに、こうして機体は欲情する。それがヒューマノイドを維持するために絶対的な条件なのだと判ってはいても、感情ではどうしても納得出来ない。
白衣の裾が廊下に広がり、由梨佳の身体を隠している。由梨佳は廊下に膝をつき、身体を丸めて自慰をしていた。恥ずかしいという気持ちと情けなさが同時にこみ上げる。こんなに機械的な身体なのにどうして欲情してしまうのだろう。機械的であるなら、何故機械らしく外部から欲求を操作できないのだろう。ヒューマノイドはストレスを解消するために快楽が必要になるというシステムを判っていつつも、由梨佳はぼんやりとそんなことを考えた。多輝に教えたことの一つ一つが頭に蘇る。本当は説明していた自分だって納得などしていなかったのに。
由梨佳がヒューマノイドの特性を説明した時、多輝は不服そうだった。だが説明する由梨佳のストレスが先に高まったためだろう。多輝はそれから由梨佳を抱いた。あの時、由梨佳は多輝の不満は解消されたのだと思っていた。だが違う。多輝は不満をただ隠していたに過ぎないのだ。
「私が多輝くんに甘えていただけなのね……」
声を殺して泣きながら由梨佳は指を膣内に突き入れた。強い快楽に由梨佳は思わず声を上げた。腰が刺激を求めて勝手に動き始める。由梨佳は甘い声を上げて腰をひくつかせた。指が膣壁を強く擦る。愛液はしとどに溢れ、下着に染み込んでいく。
多輝が嘘をついていたとは思えない。好きだといったあの言葉に嘘はないのだろう。だが決して満たされていなかったのも確かだ。そうでなければ今の多輝の状態はとても説明できない。何しろ多輝の機体にはどこにも異常がないのだ。なのに多輝は一向に目を覚まそうとしない。内部に龍神という人でない者が入っているにしても、この多輝の状態は変だ。だから由梨佳はどうすればいいのかを先に立城に相談しようとした。
だが立城は相談させてはくれなかった。その代わりに与えられたのが多輝の機体を作った者の情報……つまり多輝を優一郎が作成したという事実だった。そのことを聞いた由梨佳は酷いショックを受けた。それまで由梨佳は多輝を作ったのは立城だと思っていたのだ。勘違いしていたという恥ずかしさと同時に由梨佳の胸には恐怖がこみ上げた。その恐怖は優一郎に向けられた訳ではない。そのことを聞いて喜んでしまった自分に対してだ。
総一郎によく似た優一郎に対して、由梨佳は母親以上の情愛を抱いていた。そのことは由梨佳も自覚している。そんな優一郎が多輝の機体を作ったとしたら。ヒューマノイド工学に興味を抱いていることは知っていたが、優一郎がそこまでの腕を持っていると由梨佳は初めて知ったのだ。もし、優一郎が……もしも自分の機体を調整してくれたなら。
「あ、んっ。優一郎……」
いけないと知りながら由梨佳は呟くように優一郎を呼んだ。機体が男性器を受け入れるために動作する。由梨佳は掠れた声で優一郎を呼びながら自慰を続けた。膣に指を激しく出し入れする。
「母さん、ただいま参りました」
不意に背後で声がする。由梨佳はびくりと震えて慌てて振り返った。いつの間にか優一郎が廊下に立っている。穏やかな微笑みを浮かべている優一郎を見る由梨佳の目が見開かれる。驚き焦っている自分の気分とは裏腹に、機体のモーター音が激しくなったのだ。嘘、と呟いて由梨佳は慌てて白衣の前を重ね合わせた。だがそんなことをしても音は聞こえてくる。由梨佳は真っ赤になって俯いてしまった。
ヒューマノイドはそういうものなのですw