エロシーン……なのですが、苛められるシーンといった方がいいかも?
あっ、機械なので!
あの頃からきっと自分は息子としてではなく、男として由梨佳を見ていたのだろう。由梨佳が母親であると知りながら欲情する自分のことを異常だとも思った。だが欲求はどうすることも出来ず、由梨佳を思い浮かべながら自慰をすることも多かった。
初めて自慰をした時、酷い罪悪感に苛まれた。だが優一郎は罪悪感を覚えても由梨佳に欲情することを止められなかった。もしかしたら由梨佳が自慰をする光景を見て以来からかも知れない。そのあたりのはっきりとした記憶を優一郎は持っていない。ただ、由梨佳のことをとても好きだった。できれば由梨佳にずっと傍にいて欲しかった。それは幼い子供にとっては当り前の感情だった。だがいつからか優一郎は別の意味で由梨佳を欲しいと思い始めたのだ。
優一郎は無言で足をひねった。愛液に塗れた足の指で由梨佳の膣を探る。由梨佳は最初はとても傷付いた顔をしていたのに、今はもうすっかり快楽に溺れきっている。優一郎の足にそっと両手をかけた様は、まるで自分から足蹴にされることを望んでいるかのようだ。
いつまでも若く美しい母が優一郎は自慢だった。幼い頃、友達に優一郎はいつも言われていた。いいなあ、お前のかーちゃん美人で。それを聞いた優一郎は口ではそんなことないよ、と言いながらとても嬉しかった。小学校の頃は授業参観の日が待ち遠しかった。何故なら友達が優一郎に羨望の眼差しを向ける日だからだ。そして優一郎は授業中に胸を張って挙手しては問題に答えていく。そんな優一郎を由梨佳は家に戻ると手放しで誉めてくれた。えらいわ、優くん。そして由梨佳はごほうびに、とご馳走を作ってくれるのだ。
自慢の母であった由梨佳が欲望の対象になったのはいつだろう。優一郎は由梨佳を足で弄りつつ思いを巡らせた。由梨佳は激しい快楽に溺れている。とても目の前にいるのが優一郎だと理解する余裕はないだろう。
由梨佳が人間ではないと知ったのはいつだっただろう。小学校を卒業する頃ではなかっただろうか。そう考えてから優一郎はああ、と呟いた。いつなのかははっきりとは思い出せないが、その日の夜に初めて自慰をしたことは覚えている。そして酷い罪悪感に襲われたのだ。忘れかけていたことを思い出して優一郎は小さく笑った。足の指を折り曲げて由梨佳のクリトリスをにじる。
初めての快楽と初めての罪悪感。そして得体の知れない欲求が優一郎の中に生まれた。その日を境に優一郎は由梨佳にとっていい息子であろうと努力するようになった。好かれたいという思いももちろんあった。だがそうした一番の理由は自分の欲望に気付かれたくなかったからだ。
それからしばらくして優一郎は初めて由梨佳の自慰する光景を目の当たりにした。だがその時の記憶があまりはっきりしない。優一郎は額を押さえて目を細めた。確かに自分は由梨佳の自慰するところを見たのだ。なのにどうしてそのことだけ思い出せないのだろう。
「んっ、あっ、そういちろう、さんっ!」
一際高い声で由梨佳が鳴く。優一郎ははっと目を見張って由梨佳を見下ろした。次いで口許に嗤いを浮かべる。足の指を強く陰部に押し付けて優一郎はその足に軽く体重を乗せた。ずぶり、と音を立てて足の指が由梨佳の膣に食い込んでいく。
「かなりガタがきてるね。セルフメンテではやっぱり限界があるのかな」
ひくつく由梨佳の腰を眺めながら優一郎は嗤いを深くした。足首を捻って親指を曲げる。由梨佳は喘ぎながら自分の胸に手をあてがった。乱暴に胸を揉みしだく。
あの日。優一郎ははっきりと由梨佳の自慰を見た。隠れて見たのではない。由梨佳が優一郎の目の前で痴態を晒したのだ。そう、まるで誘うように。優一郎は欲求に逆らうことが出来ないまま、由梨佳を抱いた。最初は指や唇で触れるだけだったのだが、そのうちに由梨佳がねだったのだ。
「あっ、んふっ。多輝くんっ! もっと!」
由梨佳の喘ぎ声を耳にして優一郎はぴくりと眉を上げた。足の動きを止めて由梨佳の顔を覗き込む。由梨佳は切なそうに声を上げて嫌がるように首を振った。
あの時も由梨佳は優一郎のことを総一郎と思っていた。だから由梨佳は総一郎を呼んでねだったのだ。自分を犯してくれ、と。優一郎は目を細めて由梨佳を見つめた。急に快楽が途切れてしまったため、焦れているのだろう。由梨佳が甘い声でねだる。
「おねがい、あそこを……かきまわしてっ!」
泣きながらねだる由梨佳に優一郎は嘲笑を向けた。あの時もそうだった。由梨佳は決して目の前の優一郎を見てはいない。あくまでも誰かの代替品程度にしか思っていないのだ。
由梨佳が自分の中に総一郎の影を見ていることに気付いた時、きっぱりと諦められれば良かった。それなら夢は夢のまま、由梨佳は理想通りの母親のままで優一郎の記憶の中に留められていたのだろう。だが現実はこんなに簡単に夢を裏切ってくれる。優一郎は嗤いながら由梨佳の陰部をにじった。小刻みに足を揺らしてクリトリスを捏ねる。
「どうしようかなあ。このまま放置すれば完全に壊れるけど、それでもいいかなあ」
由梨佳が幸せな家庭を望んでいたように、優一郎は理想の女性としていつも由梨佳のことを思っていた。だが久しぶりに目の当たりにした由梨佳の痴態に優一郎は自分でも不思議なほどに無関心だった。由梨佳に裏切られたというよりも、自分が由梨佳に夢を見すぎていたということが何よりも腹立たしい。優一郎は冷めた目で由梨佳を見つめ、不意に足を退けた。
快楽が唐突に途切れたからだろう。由梨佳が悲鳴混じりの声を上げる。優一郎はその場に座って汚れた足を丹念に拭いた。汚れたテッシュを放る。それは由梨佳の肩に当たって廊下に落ちた。
「こんなことしてる場合じゃない。多輝を診ないと」
靴下を履いたところで優一郎は我に返った。由梨佳の悲鳴のような声が響く。見ると由梨佳の陰部は見た目にもはっきりと異変を来たしていた。開いた膣口の中で膣壁が激しくうねっているのが見える。
「やっぱり、放っておくってわけにはいかないか」
ため息混じりに呟いて優一郎は由梨佳に近づいた。すがりつこうとする由梨佳を手で抑える。子供のように嫌がって首を振る由梨佳の腹に手を伸ばす。へそを探り当てて指を押し込むと、それきり由梨佳は動かなくなった。少なくとも電源を落としておけばこれ以上壊れることはない。優一郎はため息をついて由梨佳をその場に横たえた。
由梨佳の別邸の作りは吉良本邸とそう変わりはない。少し小さくはあるが、基本的に部屋の配置は同じだ。優一郎は大体の見当をつけて二階への階段を駆け上がった。本邸では子供部屋が並んでいる場所に二つの部屋がある。優一郎は自分の私室である側のドアを開けた。
ベッドに多輝が横たえられている。ベッドに入り、毛布をかけているからなのかまるで眠っているようにも見える。実際、多輝の胸は微かにだが上下している。優一郎は静かにドアを閉め、足音を殺して多輝に近づいた。
「故障しているようには、見えないけど……。多輝?」
そっと呼びかけて優一郎は多輝の肩を軽く揺すった。だが多輝は反応しない。胸は上下しているから呼吸はしているのだろう。優一郎は腕組みをしてしばらく多輝を無言で見下ろした。
由梨佳は多輝が起きないと言っていた。機体のどこにも異常はないのだとも言っていた筈だ。総一郎や優一郎に比較すると科学者としての力は少し劣るが、由梨佳は無能な訳ではない。由梨佳がそう言うのなら間違いなく多輝の機体は正常なのだろう。
「精神解析をしてみるしかないか」
だがそうなるとこの別邸にある設備では不可能だ。優一郎は携帯電話で保美に連絡をした。保美は二つ返事をして通信を切る。これで迎えの車が回ってくる。優一郎は電話をポケットに納めてから多輝を改めて見つめた。
数ヶ月前に別れた時と同じ姿で多輝はここにいる。だが立城の屋敷で会った時の多輝は優一郎のことを忘れさせられていた。あの屋敷で何があったかを当時の優一郎は想像することしか出来なかった。が、多輝の機体ログが生きているなら具体的に何が起こったのかを知ることができる。そうすれば今よりももっと詳しい情報が手に入るだろう。
優一郎は微かに笑って多輝の髪をそっと撫ぜた。だが多輝は眠り続けている。
もうちょっとちゃんと機械が書けていれば……(泣)