※この作品はR-18です。

続・続・月下香の檻 セックスバトルロワイヤル   作:シン之助

10 / 18
秋月暁年は三好家全員を立ち直らせるMRO(三好家再生作戦)を実現しない限り、自分たちからセックストーションの怯えを無くす道はないと悟る。そのためには、SMクラブに殴り込みをかけ、三好満司を打ち負かし、すべての記録や契約を破棄させるほかない。だが、拉致され1週間ぶりに再会した唯子は、排卵誘発剤を嬉々として注射し、平然と秋月親子を罵倒する「唯魔子」・・・魂を悪魔に売り渡した魔女に変えられていた。セックスバトルは秋月家全員の抹殺をもくろむAJK団の巧妙な罠だったのだ。唯魔子によって暁年は次第にマゾ性癖に目覚め、意識を失っていたプールナーナンダは倒れたまま瀕死の状態に陥っていた・・・。だがその裏で、悠人や一之介たちの起死回生をかけた作戦が着々と進んでいた。そして・・・秋月暁人と三好満司の最終決戦の幕が開く!!


第45話 ラウンド・セックス(最終決戦)

---------登場人物---------

秋月 暁人:主人公

秋月 唯子:暁人の母

唯魔子:唯子の別人格(ダークサイド)

秋月 暁年:暁人の父(M商事・開発部・課長←オリジナル設定)

三好 満司:調教師・主人公の遠縁(暁年の母方の従祖母の孫娘の夫)

三好 聖満:満司の子

三好 良枝:満司の元妻

藤原 綾乃:暁人の恋人(オリジナルキャラ)

鈴木一之介:鈴木貫太郎探偵事務所・所長・探偵 (オリジナルキャラ)

及川:鈴木貫太郎探偵事務所・探偵、一之介の部下 (オリジナルキャラ)

パタンジャリ・プールナーナンダ:ヨーガ修行僧 (オリジナルキャラ)

金井由美:**市児童養護施設・非常勤職員、三好満司のマゾ奴隷11号(オリジナルキャラ)

金井真美:M商事・企画開発本部長付秘書、三好満司のマゾ奴隷12号(オリジナルキャラ)

星山真由:A〇Cテレビ・キャスター、アイドル女優(オリジナルキャラ)

鬼童和虎:調教師

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「おら・・・暁年・・・次に少しでも躊躇したり、少しでも吐き出したりしたら、綾乃の処女膜は無くなると思え・・・きひひひっ」

 

 暁年が袋の開口部に口を付け、悪臭をこらえながら小便に浸かったクッキーを一気に口の中に流し込もうとした瞬間・・・

 

「その女に手を出すな!」

 

 中学生の男の声がホールに木霊する。そして黒服を着た小柄な男が満司に殴りかかっていった。そして突然、ホールの中が暗闇に包まれた。

 

「キャッー」

 

 暗闇から女性の叫び声が響き渡る。だがその声は綾乃の声ではなかった。狐のお面を剥ぎ取られた巫女が顔を押さえ、その場にうずくまっていた・・・。

 

「しまった・・・」

 

 満司がチャンピオン側のセコンド席の異変に気が付き、舌打ちをしながらそう叫ぶ。そちらに気を取られた満司の脇腹に、聖満のパンチが直撃するのはほぼ同時だった。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ」

 

 バキツッ

 

 満司が抱え上げていた綾乃とともにその場で倒れ込む。

 

「このクソガキ!」

 

 聖満に反撃しようとした満司の股間を、後ろ手に手錠を掛けられているはずの綾乃が鋭く蹴り上げる。

 

「ひぎゃっ」

 

 満司がもんどりうって倒れたすきに、綾乃は暗闇の中を手探りしながら、プールナーナンダが倒れているセコンド席に向かって逃げ始める。聖満も逃げるように真っ暗な状態のステージに上がると、ガッツポーズを決め、良枝の居るチャンピオンサイドのセコンドシートに隠れるように消えてしまう。

 

「中々良い「愛」を見せてもらったの・・・暁年はあれを飲めるかの?」

 

 そう言ったのは床に倒れ伏していたはずのプールナーナンダだった。プールナーナンダは、今や目を半眼に閉じながら、座禅を組む程に回復していた。しかも口をむしゃむしゃと動かし何かを頬張っていた。

 

(それ・・・失敗作のマーマレード・・・恥ずかしいから、クッキーが終わったら、ちょっとだけ味見をしてもらおうと床に置いておいたのだけど・・・)

 

「あの少年・・・これをわしの口に突っ込んでいきおった。塩まみれだが、真心がこもったいい味じゃぞ」

 

 それが悪戯心なのか、分かって食べさせたのか、聖満はプールナーナンダの口の中に放り込んでいったようだ。

 

「ナーちゃんもう大丈夫なの?・・・っていうかこれは、ナーちゃんのお陰??」

 

 そう言って綾乃は鍵が外れ、勝手に開いた手錠をプールナーナンダに見せる。

 

「このお菓子のお陰じゃな。魔を払い、栄養をつけさせて頂いた。さて、反撃じゃ!そこの小娘ども!少しやり過ぎた様じゃな。2時間もAHFを張り続けるとは・・・自殺行為じゃ」

 

 同時進行していた暁人の作戦もほぼ終了していた。暁人が二人の巫女からお面を剥ぎ取り、一之介と良枝、そして直近から暁人が、暗闇に乗じて大量の塩を二人の巫女にぶちまけていた。一心にAHFを張り続けている巫女たちには反撃する気力も体力も残っていなかった。真っ黒だった巫女装束は、頭の上からつま先まで真っ白な塩に覆われ、暗闇にボッと白いシルエットのラインが浮き上がらせている。当の巫女達は小さな叫び声をあげたかと思うとその場で気絶し、塩漬けされたようにフリーズしている。

 

 「死ななければ良いがの・・・」

 

 むしろプールナーナンダは稀な霊力を持つ二人の巫女を気遣っているようだった。

 

(これでAHFが破れているはずだ・・・)

 

 暁人が祈るようにステージを見つめる。やがて・・・真っ暗だったホール内の電源が復帰し、再び煌々としたステージライトがステージ上にたたずむ一組の男女を照らし出す。二人はひたと互いを見つめあい、何も語ろうとしない。

 今まで悪魔を称賛していた観客が、打たれたように二人をただ凝視している。ステージ上で胡坐をかきクッキーの袋を抱えた全裸の男と、それに寄り添うように横座りしている刺青だらけの全裸の女を、呆けたように見つめている。

 

「父さん!AHFは多分なくなっているはずだ!反撃するなら今しかない!」

 

 その言葉を受けて、暁年は痛む胸を押さえながら、堂々と唯魔子が突き付けた小便浸けのクッキーをゴクゴクと見事全て飲み干していた。

 

「ゲプッ」

 

 アンモニア臭がゲップの息に交じり、顔をしかめながら暁年が暁人に応える様にサムズアップする。その顔に迷いはない。驚愕の表情が唯魔子に浮かび上がる。

 

「お前は馬鹿?!・・・綾乃が解放されて、もう呑み込む必要ないじゃない」

 

 ほとんどの肋骨を折られ、下手に動けば肋骨が肺に刺さった瞬間に暁年は絶命する。暁年はそれを平然とやってのけたのだ。

 

「唯子・・・愛しているよ」

 

 そう言いながら手を差し伸べる。あまりにも真摯で、素直な顔に、思わず手を取ろうとした唯魔子が「ハッ」と驚いて手を引っ込める。

 

「危うくお前に触るところだったわ。虫唾が走る・・・」

 

 それを微笑を浮かべて暁年が聞いている。

 

「変態!私はあなたを罵倒しているのよ、何笑っているのよ。気持ち悪い・・・」

 

 だが、その語尾が次第に弱まっていく。暁年は笑いを浮かべたまま、唯魔子に近づき唇を寄せる。

 

「汚い・・・おしっこや・・・ウンコの臭いがするわ・・・」

 

 だが、その場から逃げようとはしない・・・見開かれた瞳を向けた顔を背けようともしない。

 

「君の口も・・・満司の精液臭いぞ・・・」

「馬鹿・・・変態・・・ウジ虫・・・気持ち悪い・・・暁年・・・暁年さん・・・」

 

 そして、暁年の唇を受け入れる。そっと触れるか触れないか・・・それは繊細な、控えめなキスだった。まるで童貞と処女が交わすキスのように、初めて交わしたキスのように・・・だが新鮮な驚きが唯魔子の身体に電流が走り抜けたように伝わっていく。

 

(舌すら入れていないのに・・・)

 

 唯魔子は、激しい衝撃に戸惑いを隠し得ない。満司の強引なまでの激しいキス・・・お互いをむさぼりあうような唾液の交換・・・それとはまったく正反対の繊細なキスに、まるで乙女が女の喜びを初めて知ったときの様な新鮮な快感が肉體の芯から湧き上がる。

 

「ひゃぁあああああ」

 

 そして、暁年の手が、ゆっくりと唯魔子の肉體を撫で始めた途端、声を上げてしまっていた。まるで肉體を走査するプローブ(計測器先端)のように、慎重な手つきで暁年が唯魔子の身体全体に両の手を這わせ始める。皮膚の表面を空気の層一枚を残して撫でる様な、すれすれの愛撫がすうっと皮膚を通り過ぎるたびに、ゾクゾクとした快感で肉體が仰け反りそうになる。

 

(こんな男の愛撫に感じてしまうなんて・・・こんな情けない・・・マゾの変態の愛撫に・・・)

 

 だが、暁年が撫で上げた皮膚に掘られた邪淫紋が縮れるように蠢き始める。指先や手の平が肉體に触れるたびに、ピクンと肉體が反応し、為すがままになってしまう。満司ではありえない、あまりにも控えめな愛撫。しかし、感覚が次第に研ぎ澄まされ、思わず喘ぎ声が上がりそうになって口を押えてしまう。

 

(こ・・・こんな事で感じてはダメ)

 

 そう思えば思うほど、暁年の繰り出す微妙なタッチの虜になっていく。

 

(はぁう・・・)

 

 この繊細な愛撫に比べれば・・・満司の強引で自分勝手な愛撫が不器用にすら感じ始める。私の事を思い、私の事を考え、私のことをよく知った行為・・・さっき私が言った批判を、この人は前から考えていた・・・。そう・・・私たちのセックスで一番足りなかったもの・・・ペニスの大きさでも、セックスの技術でも何でもない事だった・・・・

 

-------------------

「何をやっているんだ唯魔子!早く暁年に止めを刺せ!あと一蹴りだ・・・どこを蹴っても折れた肋骨が肺を突き破ってそいつは一巻の終わりだ!」

 

 綾乃に蹴り上げられた股間を抑えながら、満司はステージに上がろうと片足をかけた時、低く通る声が満司に話しかける。

 

「何を焦っておるのだ?」

 

 座禅を組み、半眼を閉じていたプールナーナンダの目が開かれ、憐れむ様に満司に向けられる。

 

「焦っているだと?何を言っている・・・死ぬのは奴の方なんだよ」

 

「いいや・・・御主もすでに気が付いておろう。あ奴ら二人の愛に。そして御主の中に生じている嫉妬に・・・。この試合の中盤から、御主は暁年と唯子殿に嫉妬を感じておった。左様・・・唯魔子は御主とのセックスを明らかに避けておった。2時間が経過する第6ラウンドまで、御主がセックスを控えて、唯魔子を暁年に向かわせ抹殺しようとしたのではない。唯魔子の中の無意識が、深層心理に隠れた唯子が、時間を稼いだのじゃ。御主との子作りのためのセックスを、唯子の本心が拒んだからじゃ」

 

「違う・・・唯魔子は暁年を殺そうとしていただけなんだよ・・・お前の都合のいい解釈など・・・」

 

「御主も気が付いていただろう? 嬉々として暁年とのSMプレーに打ち高じる唯魔子に・・・御主との行為中も唯魔子の目が常に暁年に向けられていたことに・・・わしはそこに愛を見出した」

 

「・・・・・・・」

 

「左様・・・唯魔子の無意識下に、深層心理の中に、唯子殿は生きておる。御主も気が付いていたじゃろ。唯子殿への愛とともにそれを願っていることに。」

「貴様・・・何を?・・・俺が唯子を・・・愛していただと?」

 

「御主の中に巣食っておる金賢姫とかいう魔女に、お前の無意識が必死で隠してきたことじゃて・・・。安心せい。唯子殿はまだ唯魔子の深層心理の中に生きておる。魂を完全に殺し去ることなど、短剣一本で出来る事ではないのじゃよ」

「待て・・・俺の中に賢姫様が巣食っているとはどういうことだ?」

 

「ほう・・・まだ気が付いておらぬか?御主の中の魔を?お前が唯魔子にしたことは、御主がすでにされている事。御主の中の無意識はすでに気が付いておる。魂を感じ取ることが出来る部分では、必死で魔女に抵抗しておる・・・」

「何をぬかす・・・これは賢姫様の作戦だが全て俺がやっている事・・・後は唯魔子が暁年を蹴り殺すだけだ」

 

「では聞くが、綾乃殿のことまで作戦にあったかの? 本来、唯魔子に集中しなければならない御主が、なぜ綾乃殿に手を出した?お前の無意識がそうさせたこと・・・違うかな?」

「暁年を悪に堕とすためだ!」

 

「綾乃殿を人質にする事は賢姫の作戦には無かったはずじゃ。なぜなら暁年はそんな事では悪に堕ちん。冷酷な魔女の作戦なら早々に暁年を殺す予定であったろう?」

「・・・・・・・」

 

「元々このセックスバトルは最初から二人だけ、御主と唯魔子で進めるはずじゃった。ところが、唯魔子が暴走しだした。歪んで邪であったが・・・すべてのラウンドは暁年と唯子殿の二人の愛で奏でられている。御主も気が付いていたであろう!」

「・・・・・・・」

 

「御主の焦りが・・・唯子殿への思いが・・・露呈した。綾乃殿に手を出した時点でな・・・。綾乃殿は唯子殿の嫉妬を誘うために、御主の無意識がした事じゃ。だが、失敗だった様じゃの。御主が綾乃殿に手を出した時点で、御主の負けは決まってしまったのじゃ。賢姫の作戦は、御主と唯魔子の中に潜む存在意識の中の「本物」によって失敗したのじゃ」

「・・・・・・・」

 

「さあ、あの二人を見てみい!」

 

 プールナーナンダの指さした先に、ステージライトに浮かび上がる美しい二人がいた。

 

-----------------------

 SMクラブ「J-POP」の電源系の回復はステージ上の照明だけで、MC用の放送設備は全く機能していない。星山真由が狂ったように何かを怒鳴り散らしているが、ステージを見つめる観客には、そこに浮かび上がる二人の姿以外に目に入っていないようだった。ましてや聞く気もしないMCを気にかけるものは誰一人居なかった。そこにある原始的な美しさに、ただただ引き込まれ、何かを感じ取ろうと一心に見つめている。

 

「あああっ・・・暁年・・・あああんんんっ・・・」

 

 唯魔子は暁年のボディタッチが心地よくなり、自分がどこで何をしているのか・・・自分が何者なのかすら分からなくなっていく。そして・・・自分を包み込む様に抱きしめる暁年の身体がとても暖かく感じられる・・・。

 

「チャクラ_ダッシュ4 アナーハタ・チャクラ 胸「神秘の音」』

 

 一心に唯魔子の内面を見つめ続けていた暁年は、微笑みながら唯魔子の胸の中心部にそっと手を置く。

 

「スークシュマ・シャリーラ(人間の精微な身体)はエネルギー循環路であるナーディーと蓮華様円盤状のエネルギー中枢であるチャクラで出来ている。ナーディーとチャクラとが合一した時、身体エネルギーの活性化が起きる」

 

 ステージを指さしたプールナーナンダの言葉に誘われるように、綾乃が、一之介が、良枝が、聖満が、そして満司ですらが二人の男女に思いを馳せ、一心に見つめてしまう。そして・・・プールナーナンダの目が大きく見開かれる。

 

「暁年・・・喝!・・・唯子を戻せ!」

 

 その気合を受けたように暁年の身体が一回り大きくなったように、彼を見つめる誰もが感じる。暁年の気が充実したように・・・エネルギーが満ち溢れているように・・・暁年が大きく見える。

 

「これが・・・波動エネルギー・・・ナーディーとチャクラ・・身体宇宙のハーモニー?!・・・」

 

 綾乃が、暁人が、そして聖満が、不思議な感動に心を震わせ、いつの間にか涙を浮かべている。良枝は満司が打たれたようにその場に呆然と立ち尽くす姿を見て、思わずその手を握りしめてしまう。満司はハッとして良枝を振り返り、良枝から全ての悪が取り払われていることに驚きの表情を浮かべる。その顔に良枝がやさしく微笑みかける。満司に今まで忘れていた感情・・・心からの安らぎが久しぶりに芽生え始める。

 

(救われるとは・・・この事なのか・・・)

 

 そして、その手を熱く握り返してしている自分を見出しても何の逡巡も感じなかった。

 

「完敗だ・・・」

 

 あらゆる人々がかたずをのんで暁年を見つめる中、暁年の顔はそれでも穏やかで無心だった。手を唯魔子の胸に合わせ大きく深呼吸したかと思うと、穏やかな顔のままでそのあてた手に力を入れ始める。

 

「喝!邪淫退散!!チャクラ_ダッシュ4 アナーハタ・チャクラ「神秘の音」」

 

 念じられるようにそう声が発せられた途端、暁年の親指にぐいと力が入れられる。唯魔子の胸にと暁年の親指が沈んでいく。

 

「あっ・ひっ・・!」

 

 唯魔子に深く刻み込まれた邪淫紋が大きく揺れる。

 

「喝!邪淫退散!!チャクラ_ダッシュ3 マニプーラ・チャクラ「宝珠の都市」」

「喝!邪淫退散!!チャクラ_ダッシュ4 アナーハタ・チャクラ「神秘の音」」

「喝!邪淫退散!!チャクラ_ダッシュ5 ヴィシュッダ・チャクラ「清浄なる輪」」

 

 暁年が「喝!」と気合を入れるたびに、邪淫紋の蠢きが大きくなり、臍、胸、喉の回りに渦を描く様に縮れ、やがてしぼむ様に薄れていく。まるで最後の抵抗をするように邪淫紋がのたうち、唯魔子が大きく仰け反る。それを後ろから暁年が支える。倒れ込んだ唯魔子を膝の上で抱えながら、暁年は唯魔子の身体の上に手を掲げると、触るか触らぬかの微妙な距離を置いて上下し始める。その動きは唯魔子の身体の特定の部分に留まらず、肉體を走査するセンサーのように、爪先から頭のてっぺんまでまんべんなく上下している。暁年は首をかしげながら、まるで唯魔子の身体を調べるように、時には頷き、時には考え込むように、まるで名料理人か名医のようにゆっくりと優しく撫で上げていく。満司も、観客も、あぜんとして暁年の様子を見守る。

 

「暁年・・・唯魔子の心と身体のねじれを掴んだか?」

「はい・・・師匠・・・複雑で、多様です・・・しかし、このままでは美しくない」

 

「宜しい・・・お前の中の唯子を思い描け・・・唯子の心と身体の美しさを波動エネルギーの流れに置き換え、整えよ・・・喝!」

「喝!邪淫退散」

 

 暁年の手がまるで別の生き物のように、小刻みにそして大胆に、唯魔子の身体を擦り上げていく。すりすりと唯魔子の肌の上をゆっくりと摩り上げるその動きはまるで唯魔子の身体を磨き上げるように、優しくそして大胆で繊細だった。やがて・・・唯魔子の身体がぴくぴくとはね始める。

 

「うっ・・ウヒッ・・・ひん・・・ひん・・・ひああぁぁぁぁ」

 

「喝!暁年・・・チャクラ_ダッシュ1 ムーラーダーラ・チャクラ 「根本の座」」

プールナーナンダの目が見開かれ、暁年に喝を入れる。

「喝破!邪淫退散!チャクラ_ダッシュ1」

 

 暁年がそれを受け、一気に手の先に気合を充填し始める。宇宙の波動がその手を介して唯魔子の中に流れ始める。

 

「喝!・・・チャクラ_ダッシュ2 スワーディシュターナ・チャクラ 自らの住処」

「喝破!邪淫退散!チャクラ_ダッシュ2」

 

 やがて暁年の手の回りに光の粒が輝きだし、唯魔子の肉體に溶け込んでいく。その光の粒は交互に唯魔子と暁年の手のひらの間を行き来し、次第に数が増え光の帯に代わっていく。色とりどりの光の帯が、やがて唯魔子の肉體を包み込み始める。

 

「綺麗・・・」

「すごい光の粒子が・・・」

 

 いつの間にか、綾乃と暁人も手を握り合い、その荘厳な景色に引き込まれていく。

 

「はぁぁ・・・ひゅやぁああ・・・ひゅぁうゆほぁぅぉぅぁぉぅあいぃうう」

 

 やがて唯魔子の肉體が光りを帯び始める・・・。

 

「喝!・・・チャクラ_ダッシュ6 アージュニャー・チャクラ 「教令、教勅」・・・暁年・・・唯子を呼び覚ませ!」

「喝破!邪淫退散!チャクラ_ダッシュ6・・・ゆいいぃこ~・・・・」

 

 良枝が聖満の手と、満司の手を握り、光り輝くまばゆいステージをともに眺める幸せを3人で共有し始める。

 

「喝!・・・チャクラ_ダッシュ7  サハスラーラ 「次元の超越」・・・唯魔子と唯子をシンクロさせろ」

「喝破!邪淫退散!チャクラ_ダッシュ7・・・唯子♡・・・・」

「はぅ・・・あ・・・・・あああああぁぁぁぁぁ」

 

 唯魔子の身体の跳ね上がりは次第に大きく頻繁になり、やがてくねるような妖艶な動きに代わっていった。今や唯魔子の肉體はガクガクと、まるで強烈なエクスタシーに達したように、快感を体中に感じ始めている。白目をむいたまま、だらりと開いた口から涎がだらだらと零れ始める。その唇を愛おしむ様に、暁年が・・・ゆっくりと唯魔子の顔に唇に寄せ、軽いキスをしながらぬぐい取っていく。唯魔子がそれを恥ずかしそうに受け止め、お互いを見つめあう。二人の愛がとりも出された瞬間だった。

 

「あ・な・た・・・暁年さん?・・・」

 

 暁年が骨折だらけの胸を使って唯子を強く抱きしめる。二人が抱き合った中心に光の爆発が起き、ホールにいたすべての人の目の前がホワイトアウトしていく・・・・・。

 

-----------------

 最初に目を覚ましたのは一之介だった。独り者の一之介が暁年と唯子が放つ光の奔流のダメージを一番受けなかったのかもしれな。少し寂しい思いをしながら、幸せそうに気を失っているチーム「MRO」のメンバーや、乗り移った魔が抜け落ちたような安らかな寝顔を浮かべた観客達をしみじみと見渡していた。

 

 ステージ上には暁年と唯子が、抱き合ったまま気を失っていた。プールナーナンダ博士だけが気を失わなかったのか、暁年と唯子に寄り添うように半眼を閉じて座禅をしている。一之介は二人が脱ぎ捨てた服とマントを裸で抱き合った状態で羽織らせる。唯子の全身に施されていた邪淫紋や乳首ピアス、クリキャップはすべて消滅しているようであった。さすがに陰部まで確認するのは気が引けたため、そこのチェックをすることは出来なかったものの、一之介には確信があった。暁年も同様に、骨折したはずの肋骨や大きな怪我は全て元に戻っていた。鞭打ちでつけられた蚯蚓腫れの痕跡やかすり傷がいくつか皮膚の表面に残っているだけだった。

 

 驚いたのはホールに居た観客の状態だった。何かに憑りつかれたような荒んだ表情を浮かべていた観客たちは、まるで憑き物が下りたように無邪気な寝顔を浮かべながら客席で気を失ったように寝込んでいるのだ。ホールから外に出ても状況は同じだった。黒服を着た従業員や、SM嬢、支配人に至るまで「J-POP」にいる全ての人間が無邪気な様子で気を失っているのだ。

配電盤の前に行くと及川がその前で寝こけていた。数台のスタンガンと催涙ガスプレーが足元に転がっている。スタンガン数台には使用された痕跡があった。どうやら黒服と一戦交えたらしい。それでも何とかここを死守してくれたようだ。

 

「さて暁年さんやMROのメンバーを避難させたら、当局を呼ぼう。こいつら全員豚箱行きだ。少しぐらい警察の連中に手柄を分けてやってもいいだろう」

 

 そう言いながら、スマホを取り出す。だが全く電源が入らない。壊れてしまっているようだ。慌ててホールに引き返し、観客の懐やポケットを漁り、スマホの電源を入れようと試みる。全て壊れていた。

 

 次に目を覚ましたのは、会場にいた観客や従業員だった。だが、会員や幹部従業員には最近の記憶はなかった。一之介や暁人の推理通り、彼らは「ソン・ヨンウ心療内科」を受診していた。この夜に起こったことを含めて、「ソン・ヨンウ心療内科」に受診した以降の記憶を全て飛ばしていた。彼らは目を覚ましたのちも、呆然と見知らぬ会場のシートに身を沈めているほかはなかった。

次に意識を回復したのは、金井由美・真美姉妹だった。彼女たちの記憶は、満司に犯された直後からなくなっていた。数年間のブランクと、自分たちが失った時間に呆然自失のようであったが、清らかな巫女としての心を取り戻したようであった。この事件の後は良心の呵責を感じることもなく、巫女として復帰することが出来るだろう。

 

 チーム「MRO」で最初に目を覚ましたのは三好一家だった。気が付くと満司はペニスを切り取られ、処置までされていた。その時の記憶を満司は持っているようで、さほどショックを受けていなかった。まるで老夫婦のように、良枝と聖満を感慨深く抱きしめ、ステージ上で抱き合って、気を失っている唯子と暁年を感慨深げに見つめていた。そこにはかつての満司が見せた荒んだ感情や狡猾な邪心が全く感じられなかった。家族への温かい思いやりが満司の中で息づき始めていることを、一之介は何となく信じられる気がした。

 

 次に目を覚ましたのは藤原綾乃だった。綾乃は暁人にきつく抱きしめられながら気を失っていることに、むしろ幸せを感じているようだった。目の前で寝息を立てている暁人を愛おしそうに眺めながら、心地よさげにその温もりを楽しんでいるように見えた。

 

 

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本当はここで終わらせるつもりでした・・・。

ところが、山文先生はSF装置を使うとどこまで堕とすのかな?・・・と。

「Delusion Miyuki」「Delusion Miyuki2」

を読んでいたら・・・2段階悪堕ちでした・・・。

嫌な予感がしました。

「月下香の檻」の3巻は加筆の上刊行される予定です。

もしかすると「みゆき」並みに徹底的に堕とされるかもしれない。

それでも救済できる内容にしておこう・・・

(つまり唯子も2段階堕ちします)

ということで第46話以降も続きます。

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それにもう一つ・・・

実はこっちの方が継続させるにあたっての大きな理由なのですが、

「続・続」において唯子は何も戦っていないんです。

主要登場人物はほぼ全員、唯子奪還のために(もしくは阻止のために)、

全力で戦っているんですが、ただ唯子だけが戦いをしていません。

ここは唯子も戦って欲しい・・・いつまでも流されてるんじゃねえよ・・・

という私の切なる願いが入ってしまいました。

次話以降・・・唯子の戦いが始まります。

 

 

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 ホールで最後に目を覚ましたのは暁人だった。だが、ステージ上で寄り添うように寝そべっている暁年と唯子は、いつまでたっても目を覚まさなかった。

 そして目を覚ました暁人から、一之介は衝撃の事実を聞かされた・・・。

 

 




すみませんアップロードを2週間ほど失念していました・・・。
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