※この作品はR-18です。

続・続・月下香の檻 セックスバトルロワイヤル   作:シン之助

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 調教師・三好満司によってマゾ奴隷に堕とされた妻・唯子を取り返すため、秋月暁年は満司にセックス勝負を挑むことに・・・。だが、満司が仕掛けたセックス勝負は、唯子に排卵誘発剤を注射して行う妊娠を掛けた「セックス・バトルロワイヤル」だった。暁年をサポートするハズだった謎の仙人・プールナーナンダは意識不明になり、探偵・鈴木一之介の窮余の一策も全て潰され、悠年はまさに背水の陣で満司と対峙していた。だが、満司によって再度洗脳された唯子は、暁年をゴミのように扱う別人に生まれ変わっていた・・・。


第38話 ラウンド3

「さあ唯子・・・あの男の・・・正義面して人々に幸せをもたらそうなどと、善意の押し売りをする迷惑な存在を・・・抹殺しろ!・・お前に苦痛をもたらす・・・魂の束縛を思い出させる偽善者を、お前と同じにしてしまえ!・・・そうだよ・・・殺す前に・・・お前の元夫をマゾ豚に変えてこい」

 

 唯子にそう囁きながら、その手に小ぶりな九条のバラ鞭を手渡していた。それを聞いた唯子がニヤリを邪悪な微笑みを浮かべる。

 

「仰せのままに・・・満司様」

 

 再び挑戦者・課長マンのターンとなった。

 気を取り直した暁年はゆっくりとステージに上がると、冷ややかに自分を見下ろしている唯子に近づき、その目を見据えながら真摯に話し始める。

 

「唯子・・・君の言ったことは真実ではない。君がそんなことを考える訳がない。言わされているだけだよね?」

 

 だが、唯子は冷ややかに暁年を見つめ続けるだけで何も答えようとはしない。唯子の後ろ手に鞭が手渡されたことなど気が付かない暁年は、唯子に近づくと恐る恐るその手を握ろうとする。

 

「唯子・・・お願いだ・・・このマスクをとらなくても・・・手ぐらいは握ってほしい。君をもう一度感じさせて欲しい」

 

 真摯に頼めばきっと分かってもらえる…。きっと分かり合える。そう信じて疑わなかった。唯子の口元が微笑に変わっていく。

 

(分かりあえる。私たちなら・・・)

 

 暁年は唯子のその目を見て一縷の希望を見出す。手をつなぎ君を感じる事が出来れば・・・。

 

ピシッ!

 

 だが・・・その暁年の手の甲を、唯子のバラ鞭が襲う。

 

「ひっぃた!」

 

 ジーンと言う痛みがしたかと思うと左手の甲がみるみる蚯蚓腫れをおこし、痛みが身体全体に伝わっていく。信じられない面持ちで、暁年は微笑んでいる唯子の顔を探るように見つめてしまう。だが、その表情には何の斟酌も、苦悩も浮かんでいない。むしろ、サディスティックな快感に顔を恍惚とさせていた。かすかに浮き上がった微笑は嘲笑だったのだ。

 

「今のは反則だ!レフリー!反則を取って」

 

 一之介の必死のアピールにもかかわらず、アウェイである「MRO」チームの言葉に、SMクラブの用意したレフリーが耳を貸すわけもなかった。

 

「当、SMクラブで使われている機材に関しては、すべて認定済みの機材と言う事で凶器には当たりません。3秒以内の使用は何度でもOKです」

「そ・・・そんな事・・・聞いてないぞ!」

 

 暁人がそう食って掛かるのを、一之介が止めに入る。

 

「こいつらに何を言っても無駄だ・・・ここはアウェイなんだ。そのことをしっかりと認識していないと」

 

 そう言っている横で、MCの二人が、もっともらしい理由をつけてレフリーを正当化していく。

 

「いい判断ですね。九条鞭はバラ鞭の中でも大変バランスのいい鞭なんですよ。革製の一本鞭は皮膚を切り裂いてしまうほどの威力が有りますので、どちらかと言うと拷問や懲罰に使われ明らかな凶器と言えるでしょう。しかしバラ鞭の場合は、強烈な痛みとジーンと痺れるようなマゾ的な快感を与えることが出来るバランスのいい鞭なんです。痛みは強いですが、皮膚が裂ける事がなく何度でも打ち据えられます。まさに調教用の鞭・・・凶器でも何でもありませんね・・・」

「おおおっ・・・流石・・・調教師だにゃん・・・ためになるにゃん!」

 

 暁人がMCの二人を睨みつける。

 

「畜生・・・適当なこと言いやがって。あいつの思うがままじゃないか・・・これじゃあ満司が使用する凶器は今後も簡単に認められるってことになるじゃないか・・・」

 

 そう言っている間もバトルは続けられていた。

 

「ふふっ・・・言ったでしょ!私に触らないでって・・・でも、それではあなたが可哀そうだわ・・・キスならしてあげても良いわよ」

 

 嘲笑を浮かべながら見下すように暁年を見つめている。そこには愛情のかけらも感じられない。逡巡する暁年に唯子は挑発するように言う。

 

「ほら・・・あなた♡・・・キスしたいでしょ?良いわよ・・・いらっしゃいよ?このままじゃまた何もできずに15分経っちゃうわよ」

 

 妻や母親の顔をかなぐり捨てた唯子は、今まで見たこともない女の色香を放ち、科を作るような妖艶な仕草で挑発する。だが、暁年が近づこうとすると「ピシッ」と暁年の手の甲が正確に打ち据えられていく。

 

「くぅ・・・」

 

 暁年は苦痛に顔を歪め

 

「痛い?苦しい?・・・違うわよね・・・気持ち良いんでしょ?満司様から聞いたわ・・・あなた・・・洋魔子様とマゾプレーしたのよね?」

 

ビシッ・・・

 

 あの時の異常な経験が、暁年の脳裏をよぎる。痛みが次第に身を捩るような快感に変化していく。必死で耐えていた快感がぶり返す。唯子と魔洋子の顔が重なり、あの時の異常な経験が、ゾクゾクとした快感を伴って思い出されてくる。

 

「お気づきになって?その時、あなたの心に植え付けられていたのよ。マゾの快感が・・・。あなたはセックスの事などからっきしだから・・・気づいている訳がないわよね。」

 

ビシッ! ビシッ!!

 

「でも・・・身体は正直よね・・・ほら起ってきたわ・・・ほら・・・認めなちゃいなさいよ・・・「私はマゾです」って。そうしたら、キスをしてあげるわ。ほら!」

 

ビシッ! ビシッ!! ビシッ!!!

 

「あはははっ・・・もうビンビン。マゾ!変態!ほら・・お言い!」

 

ビシッ! ビシッ!! ビシッ!!! ピシッ!!!!

 

 暁年は既にもう限界だった。痛みはすべてゾクゾクとした快感に変換され、鞭が手の甲に当たるたびに仰け反るような快感が体を通り抜けて行った。そして、全くの別人にしか思えないもう一人の唯子に圧倒されていた。唯子そっくりの顔立ちに、唯子そっくりの声に、・・・逆らえることなどできなかった。鞭を打たれるたびに、強烈な快感が全身を駆け巡っていった。強烈な快感が暁年のすべてを覆いつくしていった。

 

「私は・・・私は・・・」

「父さん!言っちゃだめだ!」

 

ビシッ! ビシッ!! ビシッ!!! ピシッ!!!! ピシッ!!!!!

 

「私は・・・マ・・・マゾです」

 

 ついに言ってしまっていた。あの時と同じ・・・唯子とよく似た洋子の時と・・・。唯子の発するオーラのようなものに自分が呑み込まれ、その暗黒面に魅了されてしまう。到底逆らう事の出来ない暗黒の魅力・・・。

 

「あはははははっ」

 

 艶めかしい魔女のような嘲笑が、ステージ上を木霊する。

 

「お・・お父さん・・・お母さん・・・」

 

 実の父親と母親のSMプレーを目の当たりにして、暁人の顔がショックと苦痛で歪み始める。次第に暁人の心が歪み、精神に影を落としていくのを、満司は冷笑を浮かべながら観察している。

 

「ひひっ・・・まだ、まだだよ小生意気な坊主め。この前の借りはきっちり返してやるからな・・・へへへ・・・実の両親の変態っぷりをタップリと味わうんだな」

 

 一之介は自分が想定していた最悪のシナリオ(ワーストケース)よりも、もっと酷い事態に陥っていることにこの時点で初めて思い知っていた。今の状況はネトラレ敗北・・・などと言う生易しいものではなかった。暁年へのマゾ調教、すぐ隣にいる暁人の精神的なダメージ、そしてプールナーナンダの突然の不調・・・すべてがリンクしている。これらは偶然の一致ではない。金賢姫という魔女に力を借りた途端、満司と言う悪辣なサイコパスがより残酷に、より凶悪になって秋月家に襲いかかかっているのだ。

 

(まるで今のN国のようだ・・・賢姫の邪悪な計画によってこの国自体がおかしくなり、満時の様なサイコパスがとてつもない力を得ている。

 

 不正がまかり通り、邪な連中ばかりが幅を利かせている・・・)

今のこの光景はその異常な状態を端的にあらわしている一つの事例でしかない。

 

(これはセックスバトルの返り打ちなどという単純な罠じゃない。唯子さんや暁年さんだけでなく・・・プールナーナンダ博士や暁人・・・もし連れてきているとしたら綾乃ちゃんにまで被害をもたらす何重もの罠だ!こんな事がN国中で起きたら・・・)

 

 もともと満司の逆恨みは唯子ではなく、秋月家にまで向いていた。暁年に関係のあるもの全員にその魔の手を無限に伸ばしている。賢姫と言う魔女はそう言った人間の暗黒面を最大限に利用し、人間そのものを滅ぼそうとしているのだ。

 この段階で一之介が出来る事は一つしかなかった。今すぐにタオルを投げ、暁年を敗北させること・・・・。例え唯子が妊娠させられても、暁人とプールナーナンダ博士を救うべきだ。「冷たい方程式」はここでも成り立つ・・・。少なくともこの二人は救わなければ、俺は探偵など名乗ることなどもう二度と出来ない。

 あとは全てタイミングの問題だった。撤退の好機をどうやって見つけ、いつ仕掛けるかだ・・・・。

 

-------------

 暁人のすぐ目の前では、嘲笑を浮かべた唯子による暁年へのマゾ調教が続いていた。

 

「畜生・・・これじゃあ、父さんのターンと言っても母さんに手を触れることすらできないじゃないか!それどころか満司に操られた母さんが・・・父さんを逆に調教している・・・これじゃまるで満司のターンみたいじゃないか!」

「違う・・・唯子さんは操られてなんかいない。あれは自分の意志でやっているんだ。暗示にかかっている訳でも、洗脳されている訳でもない。自分の意思だ・・・」

 

 一之介が残酷な一言を暁人に向かって告げる。実の息子にとって死ぬほどつらい言葉を・・・。

 

「そ・・・そんな・・・」

「撤退しかない・・・すくなくとも君とプールナーナンダ博士は救わなければ、俺は探偵として失格だ」

 

 すでに暁年の手の甲は真っ赤に晴れ上がり、暁年は涙を浮かべながら恍惚の表情を浮かべていた。その様子に満足しながら、唯子が邪悪な笑みをもらす。

 

「ほら・・・ご褒美よ・・・キスをしてあげる!」

 

 そう言って、暁年の顔に自らの顔を近づけ、唇に唇を重ねようとする。

 

「ぺっ!」

 

 だが、急に暁年の顔に唾を吹きかけると、突き飛ばすようにステージの床に突き倒してしまう。そして、ハイヒールを履いた片足を、もんどりうって倒れた暁年の胸の上に乗せ、押さえつけるように乗り上げてしまう。

 

「バーカ・・・お前に唇を許すとでも思ったの?お前に手で触れられるのすら嫌なのにそんな事も分からない訳?。バーカ。だからダメなのよ・・・お前とのキスはこうやって唾を与えるだけで十分よ!良い事?私の肉體は全て満司様だけのものよ。二度と触らないでくれる。ほら、もっと私のつばが欲しいなら、口を大きく開けなさい」

 

 暁年の胸を唯子のハイヒールがグリグリと踏みにじりはじめる。ピンと尖った細い踵が、暁年の胸に食い込んでいく。その苦痛すら、今の暁年にとっては心地よい。そして、最愛の妻によって屈辱を加えられているという、究極の苦痛が暁年をさらに狂わせていく。

 

「だめだ・・・父さん・・・もうやめてくれ・・・母さん・・・」

 

 だが暁人の必死の願いもむなしく、暁年は唯子に命ぜられるまま、呆けたように口を大きく開けてしまう。

 

「ふふっ・・・良いお顔よ。それに・・・ちっちゃなここも、ビンビンじゃない。変態亭主!」

 

 暁年の股間を指さしながら、唯子は口をそばめると、大きく開けられた暁年その口に近づける。

 

ドロドロッ・・ドロブッ・・・ドロドロュ・・

 

 突然、粘度の高い、強烈な悪臭を放つネバネバの液体が、暁年の口内に注ぎこまれていく。

 

「あはははっ・・・満司様の精液のお味・・・如何かしら?・・・ずっと口の中に含んでいたから、少しは私の唾液も交じっているわよ!」

 

 急いで吐き出そうとした口の中に、唯子のハイヒールの爪先がねじ込まれる。

 

「さあ・・・全部飲み干しなさい。お前も、身体の中から満司様に犯されるの。そうすれば、私と一緒よ・・・二人で・・・暁年さん・・・」

 

 そう言った唯子の目を見て、暁年はハッと見つめ直す。最後の一言は蚊が鳴くように細く、聞こえたのはたぶん自分ひとりだ。人差し指が口の前に立てられている。しかし、その指は直ぐに降ろされ、次の瞬間には唯子のハイヒールが暁年の股間を踏みつけ始める。

 

「やっぱりとんでもない変態ね!・・・こんなにビンビンにして・・・寝取り男の精液を飲まされたというのに・・・包茎短小チンポが精いっぱい大きくなって・・・変態もいいところよね。ほら、役立たずの包茎チンポはこうしてあげるわ!」

 

 唯子はそう言いながら、暁年の股間をハイヒールの靴底で踏みつぶすように擦りあがていく。

 

「ほら・・・ほら・・・あははは・・・ますます起ってきた!・・・マゾ!・・・変態・・・ほら・・・ほら・・・」

 

 性器を荒々しく靴底で擦られる惨めな被虐感が、肉体的な快感とともに暁年の心を支配していく。そして、すぐに射精感が襲い始める。

 

「あっ・・・だめだ・・・唯子・・・いくっ・・・逝ってしまう・・・唯子・・」

 

 だが、逝きそうになった瞬間、意地悪くハイヒールの足が離されてしまう。

 

「あははっ・・・バーカ・・・・誰が逝かせるもんですか・・・ほら・・・ほら」

 

 そう言うと唯子はいきなり暁年の睾丸をハイヒールの爪先で蹴り始める。

 

「ぎゃっ・・・」

「しょせんは短小チンポね・・・このマゾ!金玉蹴られて起たせるんじゃないわよ!」

 

 優しかった母親の残酷で汚い言葉・・・尊敬する父親の惨めなマゾ堕ち・・・暁人はついに凝視することが出来ず、耳を覆って俯いてしまう。

 

「嘘だ・・・こんな事って・・・嘘だ・・・父さん・・・母さん・・・もうやめてくれ・・・」

「おい坊主・・・これが現実なんだよ!これが人間の本性なんだよ・・・薄汚くて、ドロドロの汚物のような存在なんだよ。へへへっ・・・みんな俺様の様なんだよ。ここにいる連中と変わらないんだよ」

 

 耳を覆う暁人の様子をせせら笑う様に、満司が大声で声をかける。絶対的絶望が暁人と一之介を押しつぶそうとしている。

 

------------------

「ひゃー・・・挑戦者・課長マンさん・・・チャンピオンの精液を、口移しで呑まされていますにゃ。それもキスとは程遠い屈辱的な方法で・・・これじゃあ、挑戦者サイドのターンと言ってもほとんどチャンピオン側のネトラレ調教ですにゃ。それも元妻である唯魔子さんを使っての・・・なるほど、鬼童さんの仰ってた事、この事だったのですにゃ?」

「ええ・・・さっきのプレー、明らかにこの屈辱を与えるためですね。さすが満司さんだ。全て計算しつくされていますね」

 

------------------

 

(父さんが完全に・・・呑み込まれている・・・見ていられない・・・)

 

「嘘だ・・・こんな事って・・・嘘だ・・・父さん・・・母さん・・・もうやめてくれ・・・」

「おい坊主・・・これが現実なんだよ!これが人間の本性なんだよ・・・薄汚くて、ドロドロの汚物のような存在なんだよ。へへへっ・・・みんな俺様の様なんだよ。ここにいる連中と変わらないんだよ」

 

 耳を覆う暁人の様子をせせら笑う様に、満司が大声で声をかける。絶対的絶望が暁人と一之介を押しつぶそうとしている。

 

「違う・・・断じて違う・・・人間の本性は善だ!こんなこと間違っている!」

(僕は決して絶望しない!)

 

 そう思いたかった。涙が止めどなく零れ、思わずこぶしを強く握っている。そして、すぐ目の前に父の脱ぎ捨てたスーツが転がっている事に気が付く。その上着のポケットから、綾乃のクッキーの袋が零れ落ちている。地獄のようなこの場所で、奇跡のように輝いて見える。

 

(これが最後の希望・・・母さんに正気に戻ってもらうための最後の希望・・・)

 

 暁人はステージサイドに近寄ると、その袋を開け、クッキーを一握り取り出すと、横たわる父親の股間を蹴り上げる母親に向かって叫んでいた。

 

「母さん!お願いだ!正気に戻ってくれ!!・・・これを・・・綾乃のクッキーを・・・」

 

 そう言うと、クッキーを一粒・・・渾身の力を込めて放り投げていた。

 

(母さんの口に届け!)

 

 だが、その願いもむなしく、クッキーは唯子の肩口にあたり、ステージの床に落ちてしまう。

 

「あら?」

 

 肩に何か当たったのに気が付いた唯子は、床に落ちているものを見て驚いて後ろを振り返る。

 

「母さん!お願いだ・・・正気に戻って・・・この事態を抜け出せるのは母さんの力しかない!母さん・・・助けて!これを食べて!綾乃の魂を受け取ってくれ!」

 

---------------------

「おっと・・・挑戦者サイドから・・・生贄マドンナに補給作業にゃん。これは許されるのかしら?鬼童にゃん?」

「いえ、各ターン間のインターバル5分間でしたら可能なのですが・・・インターバル以外は反則になりますね・・・」

「でも、そろそろインターバルの時間にゃん・・・5,4,3,2,・」

 

カーン

 

「これは挑戦者サイド、タイムアウトに救われましたにゃん・・・」

ゴングが鳴っても暁年は呆けたようにその場にへたり込んだままだった。嘲笑を浮かべた唯子が、股間を蹴り上げる動作をやめ、自分から離れていくのを呆然と見つめている。

「インターバル中であれば挑戦者から生贄マドンナへの補給作業が可能ですが?」

レフリーが一之介と暁人にそう声をかける。

「しかしそれを受けるかどうかも、生贄マドンナである唯子さん次第となります」

 

 暁人が必死の思いで、綾乃のクッキーの袋をリングサイドから差し上げる。だが、唯子はそれを冷たい目で見下している。

 

「フーン・・・綾乃のクッキーね・・・」

 

じゃり・・

 

 だが、唯子は暁人が投げいれてステージの床に落ちていたクッキーをハイヒールの底で憎々し気に踏みつぶしていく。

 

「そ・・そんな・・・」

 

 信じられない光景を凝視しながら、暁人が絶望の表情を浮かべる。

 

「へへっ・・さすが俺様の奴隷だ・・・なかなか酷ぇ事しやがるな・・・お情けに一口ぐらいは食ってやれよ?」

 

 余裕を見せた満司が唯子に向かってそう命ずる。

 

「はいご主人様・・・仰せのままに」

 

 唯子はそう言いながら暁人のいるリングサイドに近づくと、全く表情を変えずにその袋を面倒くさげに受け取る。

 

「お母さん、お願いだ・・・一口で良いから食べて!」

 

 唯子は冷めた表情で袋からクッキーを一つ取り出すと、無造作に口の中に放り込む。

 

カリッ・・・

(母さん!正気に戻って!)

 

 唯子の口の中で、バターの豊潤な香りが広がっていく。

 

(母さん!僕たちを救って!お願いだ!!)

 

しかし・・・

「不味いわね・・・」

 

 唯子は全く表情を変えずにそう言うと、「ペッ」と暁人のすぐ目の前のステージ上に吐き出してしまう。

 

ベチャ・・・

 

 咀嚼されかけていたクッキーが汚物のようにステージの床に飛び散る。

 

「きひひひひひひっ・・・そうだろ・・・唯子・・・それ不味いよな・・・」

「酷い味ですわ・・・満司様」

 

そう言うと、渡された袋を暁人のすぐ目の前に落とすと、袋ごとハイヒールで踏みつぶし始める。

 

ジャリッ・ジャリッ・ジャリッ・・・

 

「そ・・・そんな・・・綾乃が・・・真心こめて作ったクッキーを・・・そんな・・・」

「ジャリッ・ジャリッ・ジャリッ・・・」

「あはははっ・・・真心?・・・それが迷惑なのよ・・・重いのよ・・・何が手作りよ・・・やだわ・・・鬱陶しい・・・愛情の押し売りに気が付かないの?・・・気持ち悪い子・・・やだわ・・・もう・・・死になさいよ」

 

ジャリッ・ジャリッ・ジャリッ・・・

 

「母さん!・・・・」

 

 暁人の叫び声が涙声に変わっていく。その声はむなしく響くだけで、唯子には届かない。唯子はあらかた踏みつぶしたクッキーを、袋ごとステージの外に蹴り飛ばしてしまう。暁人の足元に、ぐちゃぐちゃに潰され変わり果てたクッキーの袋が転がる。

 

「こんな・・・こんな事って・・・」

 

 愛する人が作ったクッキーを、こともあろうに実の母親に踏みつけにされ、ごみのように扱われる・・・。最後の希望が、最後の頼みの綱が・・・目の前で絶望に変わっていく。

 

「僕は決して・・・・・・・・・」

 

 暁人は涙を浮かべながら、目の前のひしゃげたクッキーの袋を見つめるほかなかった。がっくりと膝をつき、嗚咽をもらす事しかできない。

 

「情けない・・・・早く死ね!」

 

 唯子は崩れ落ちる我が子に向かって追い打ちをかけるように冷酷に言い放つと、満司の元に科を作るように戻ってしまう。一之介は唯子のあまりの変貌ぶりに驚きながら、すぐ目の前のプールナーナンダが今にも椅子から転げ落ちそうになっていることに改めて気が付く。顔面蒼白となり息絶え絶えになっている。

 

「救急車を呼ぶほかない。プールナーナンダ博士はもう限界だ」

 

 SMクラブの支配人が、こちらの様子に気が付いたのだろう、一之介の耳元で酷薄そうに囁き始める。

 

「ショーの間に救急隊員が入り込むなんてのは御免ですよ。救急車を呼ぶなら、さっさとタオルを投げて試合を棄権してくださいよ。そのおいぼれを外に連れ出して、携帯かなんかで救急車でも何でも呼んでください。満司様の種付け公開セックスがあればショーは続行できますからな」

 

 こんな状態で俺たちがこの場を離れたら・・・唯子さんは満司の子種を孕まされて・・・俺たちは敗北以上の代償を払う事になる。しかし、今はそれしかない。AJK団の・・・いや金賢姫の差し金であれば・・・

 

(万事休すか・・・)

「暁人・・・プールナーナンダ博士を背負ってこのまま俺について来い。撤退だ」

 

 耳元で囁く一之介の絶望的な言葉を聞いて、泣き崩れていた暁人はその場で凍り付いたように動かなくなってしまう。

 

「ダメです・・・僕達はここで逃げてはいけない・・・ここで逃げてしまったら、一生満司のような男にかなわなくなってしまう」

「男には諦めなければならないときがある。それがいまだ。明日のために、今日の屈辱に耐えるんだ。それが男だ」

「お父さんとお母さんを置いて?・・・・男だったら、戦って戦って戦い抜いて・・・」

「プールナーナンダ博士を見殺しにする気か!」

「・・・・!・・・・・」

 

「あ・・・暁人・・・行きなさい」

 

 暁年は自分の目の前で、愛する妻が愛する息子を引き裂き、ズタズタにしていくところを信じられない面持ちで見ているしかなかった。あの優しい唯子が、何より家族を思い、息子を愛していた唯子が・・・自ら教えたレシピのクッキーを息子の目の前で、平然と踏みつけにしていた・・・まるで記憶が無くなってしまったように。

 

(記憶を無くしたように・・・・)

 

 だが、暁人は・・・それでも諦めていない。ズタズタになりながらも何とか勇気を持ち続けている。

 

「暁人・・・行きなさい・・・私と唯子は大丈夫・・・プールナーナンダ師匠を救ってあげなさい。私も車から降りる時が来たようだ」

 

 暁年はセコンドの青いシートに腰かけ、俯いたまま顔を追上げる事すらできない。息子の目の前で母親とSMプレーもどきをやらかした事に唖然としていた。そして、SMの底知れぬ魔力と恐ろしさを嫌と言うほど思い知っていた。

 

「でも父さん・・・」

「私達なら大丈夫。君から勇気をもらった。次の戦いのために君たちは前に進め。心配するな・・・君たちはきっと勝つ。なぜなら君が正しいからだ。人間の本性は善だ。恥ずかしい事に、父さんはこの場の雰囲気にのまれ、唯子に圧倒され、自分の弱さに負けそうになった。でも、何とか耐えてみせる。私たちに構わずプールナーナンダ師匠を助けてあげなさい」

 

 暁人の目に涙が浮かぶ。

 

(この人は自分の事を棚に上げる天才なんだ・・・)

 

 暁人は断腸の思いで一之介と共にプールナーナンダを連れてこの場を撤退することを決意していた。

 

「カーン」

 

 その時、チャンピオンのターンが始まったことを告げるゴングが鳴り響いた。

 

-----------------------

「へへ・・・何だか浮足立っているようじゃねえか・・・だがな、よく見ておくんだな。この女がどんな女なのか、しっかりと分からせてやるよ・・・お前たちにな」

 

 満司はそう言いながら、挑戦者側に見せつけるように唯子を前に向かせながら突き出すと、後ろから抱きすくめるように唯子の乳房をやわやわと揉み上げていく。その顔には勝ち誇ったようにニヤニヤ笑いが浮かび上がっている。そして、暁年の目の前で乳房を揉みしだかれている唯子も、暁年を見下すように挑発的な視線を送っている。

 

「ありゃりゃ・・・チャンピオンは観客ではなく挑戦者側に唯子さんを見せつけているにゃん」

「さすが満司さんですね。観客に見せているのは唯子さんの調教だけではないのですよ。先ほどから一貫して徹底的なネトラレ調教になっています。排卵誘発剤によって挑戦者側も引くに引けない。このバトルを通じて満司さんは、挑戦者にも公開ネトラレ調教をしてるんですよ。これをやられると、寝取られマゾ化するだけでなく、だいたいEDになっちゃうですよ。もうまともなセックスは出来ないでしょうな・・・ひひひっ」

 

 唯子もいつも以上に胸を突き出し、挑戦者側にそのたわわな乳房を見せつけている。満司は、MCの言葉を裏付けるように暁年を見下しながら、余裕綽々で唯子の乳房を揉み続けている。そして、唯子がそれに応えるように科を作り、満司にもたれかかりながら顔を上に向けると、愛おしそうにその唇に唇を重ねる。

 

「ひやっ~・・・生贄マドンナ・唯子さんはもうチャンピオンにメロメロって感じですにゃ。熱愛キッス。まるで挑戦者の事が目に入っていないにゃん」

「いえいえ・・・これは、明らかに見せつけていますよ!唯子さん、見下すようにチラチラと挑戦者である元夫さんを横目で見ています。嘲笑すら浮かべていますよ」

「ホントだにゃん・・・。元夫への軽蔑と満司様への愛情の落差が凄い!」

 

 満司は心からの愛情がこもった唯子のキスを受け、ネットリと舌を絡ませ続ける。

 

チュパ・・チュバ・・

 

 

 

唾液を交換する卑猥な音を聞きながら、絶対的絶望が秋月親子と一之介の胸をえぐる。しかし、その無念を心に秘めながらも、暁人と一之介はプールナーナンダに懸命な介抱を行いながら撤退の準備を進める。一之介がタオルに手を掛けたその時、唯子と濃厚なキスをしていた満司が唇を離すと、暁人を睨みつけながら言い放つ。

 

「お前が逃げ出す前に、この女の本当の姿を見せてやるよ」

 

 唯子の唾液が混じった涎を滴らせながら、蔑みの笑みを浮かべた満司の口から地獄のような一言が発せられる。




本小説は以下のサイトにも不定期で(作者に余裕があれば時々挿絵付きで)掲載しております。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16140374
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