---------登場人物---------
秋月 暁人:主人公
秋月 唯子:暁人の母
唯魔子:唯子の別人格(ダークサイト)
秋月 暁年:暁人の父(M商事・開発部・課長←オリジナル設定)
三好 満司:調教師・主人公の遠縁(暁年の母方の従祖母の孫娘の夫)
三好 聖満:満司の子
三好 良枝:満司の元妻
藤原 綾乃:暁人の恋人(オリジナルキャラ)
鈴木一之介:鈴木貫太郎探偵事務所・所長・探偵 (オリジナルキャラ)
及川:鈴木貫太郎探偵事務所・探偵、一之介の部下 (オリジナルキャラ)
パタンジャリ・プールナーナンダ:ヨーガ修行僧 (オリジナルキャラ)
金井由美:**市児童養護施設・非常勤職員、三好満司のマゾ奴隷11号(オリジナルキャラ)
金井真美:M商事・企画開発本部長付秘書、三好満司のマゾ奴隷12号(オリジナルキャラ)
星山真由:A〇Cテレビ・キャスター、アイドル女優(オリジナルキャラ)
鬼童和虎:調教師
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ホールが暗闇に包まれる20分前、チームMROの面々は綾乃とプールナーナンダを後ろ髪引かれる思いで後にすると、暁人の作戦通りに行動を開始していた。
三好良枝を先頭に「清め塩」調達チームはまず、客につまみ類を提供するキッチンに向かっていた。
「塩貸してくんない?」
良枝はいきなりキッチンに入り込むと近場にいた調理人を捕まえて、そう切り出していた。
「いきなり・・・何ですかリリーさん・・・」
キッチンにおいても「マッド・リリー」の名は知れていたのだろう。数名の料理人が集まり、怒りを買わないように揉み手をしながら対応し始める。
「だから・・・塩・・欲しいのよ」
「ちょっと待ってください。誰か塩の瓶持ってきて・・・えっ・・袋ごと?」
食卓塩の瓶を手にしていた料理人が、袋と聞いてあきれ顔で聞き直す。だが、「マッド・リリー」の威光は絶大だった。あっという間に、3袋の塩が良枝の後ろに隠れるようにしていた聖満の手に渡されていた。
「それがリリーさんのお子さんっすか?」
その聖満を驚いたように調理人が見とがめる。
「何よ?」
「いや・・・何だか意外で・・・」
「どういう事よ」
「いや・・・満司さんが連れている時と何だか雰囲気がね・・・」
その料理人は、このSMクラブに連れてこられていた聖満がお腹をすかしている場面に出くわすと、快く余った食事を分け与えていたようだ。彼もこの怪し気なクラブに出入りする小学生の聖満に心を痛めているのだ。その真意が伝わると、良枝の強面の顔が急にほころび始める。
「ああっ・・・この子変わったんだわ」
「変わった?」
「少し塩を振ってやったからね」
「はあぁ?」
「これから盛大にばら撒いてくるから・・・あんたも、次の仕事、探しておいた方が良いわよ」
「えっ?」
調理師がその意味を考えている間に、リリーもその子もキッチンから消えていた。
「今日は少し塩分控えめでつまみを作るかな・・・」
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「何で俺たちは父ちゃんでなくて、あの情けないおやじのためにこんなことやっているんだ?」
大きな塩の袋を持たされ、聖満が不服そうに良枝を見上げる。ちょうどキッチンから出た暗い廊下の突き当りに来た時だった。
「何でだか分かるかい?」
「・・・・・・・・・」
分かる訳ないわよね・・・良枝が自嘲気味にはにかみ笑いを浮かべる。そして、決心したように聖満に向き直る。
「あの方が、お前の命の恩人だからだよ」
「あの情けない暁年が・・・・・・・」
「そう・・・お前はね・・・そこのステージで・・・お前が唯子を犯し、辱めていたその同じステージで・・・同じように辱めを受けながら生を受け、死んでいく運命だったんだよ」
「!・・・・・・・・・」
持っていた塩を取り落としそうになるのをこらえながら、聖満は物問いた気に良枝を見つめる。
「今の唯魔子が、12年前の私の姿だ・・・。12年前、私も排卵誘発剤を打たれ、公開種付けセックスで満司から精を受けてお前を授かった。SMクラブに集まったゲス野郎の好色な目で見られながら、徹底的に人間性をはく奪されながら、それでもお前と言う宝を授かったんだよ」
「・・・・・」
「10か月後・・・満司は私に公開出産ショーに出ろと言った。そう、これから10か月後に唯魔子が出演させられるショーと同じだ。観客が求めているのは単なる出産の立ち合いじゃない。お前もそろそろ気が付いただろう。マゾ化させられた女が、ご主人様にすべてを捧げつくしてしまうのを。それがたとえ自分の息子だろうと・・・これから生まれてくる胎児だろうと・・・」
「・・・・・・・」
「そう・・・公開出産ショーとは名ばかり・・・臨月を迎えた妊婦と、子宮の中にまでペニスが届く巨根の持ち主との公開セックスショー・・・」
「それって・・・・」
「そうさ。お腹の胎児を気遣っていた母親が、快感に負けて雌の顔になり、やがて子供のことなど関係ない様に激しくセックスをするさまを、ここに集まったゲス野郎どもの前で見せるのさ。ご主人様に全てを捧げ尽くし、マゾの快感に負けていく女を笑いものにしながら・・・、サタンに我が子を捧げる悪魔的な快感に浸りながら・・・絶頂を迎えるために・・・私はすべてを差し出すつもりでいたのさ」
「・・・・・・・」
「それを身を挺して救ったのが、お前が言う「情けない男」さ。そのショーを断るための違約金500万円を支払い、AJK団と渡り合ってお前と私を救ったんだよ。単なる遠い親戚の私たちを、その「情けない男」は・・・全てを掛けてやってくれたんだよ」
「・・・・・俺は父ちゃんに殺されそうになったのか・・・」
「因果応報・・・お前は一生その事で悩んでいくだろう。だがね、これだけ言っておくよ。お前も同じ事を唯子にしようとしていたんだって・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「そして私も同罪なのさ・・・お前を捧げようとしたのは、私も同じ・・・」
「・・・・・・・・」
「満司がお前を連れて歩くのは・・・その贖罪の為さ・・・お前を利用するためじゃない・・・あの人もやっと気が付いてきたんだ・・・」
「・・・・・・・・」
「けれど私は逃げてしまった。どうしても自分が許せなかったから・・・お前に真実を知られたくなかったから・・・。正気を失い、マッド・リリーとして、徹底的に狂って現実逃避をしていた。」
「・・・・・・」
「これも私なりの贖罪だった。でもね・・・この事は、あんたには知らせてはいけないと思っていた。満司が話していないのも同じ思いだ。きっとお前が大人になるまで・・・」
「俺はもう大人だ・・・女をいくらでも喜ばせることが出来る。俺は、唯子を幸せにしている」
「フン・・・満司が本当に女を幸せにしていると、あんた本気で思っているんじゃないだろうね?」
「みんな、幸せだって言ってる。あの唯子も、由美も真美もみんな父ちゃんに心酔している・・・・・」
「お前の父ちゃんは、肉体的にしか人を幸せにできない。人の愛をかすめ取るだけで、自分から愛を与えられない。なぜだか分かる?」
「・・・・・・・・・・」
「本当に人を愛せないから・・・肉体的に情欲を満足させ、情愛を得られても、愛を勝ち取ったことなど一度もない。満司自身が心から人を愛することが出来ないから。なぜなら、魂を否定してしまったから。本当の幸せを知らないから、自分を含めて人に与えることが出来ない・・・」
「そんな事はない・・・俺は、現に唯子を幸せにしている」
「じゃあ何で唯子は唯魔子になった?何でこんなところで公開種付けセックスをして・・・お前と同じような子をこしらえようとしている?」
「・・・・・・・・」
「だからお前は大人になっていないんだよ。ここが・・・魂が分からないやつは本当の幸せが分からない。どんなに肉体的に喜ばせても、人を本当に幸せにすることが出来ない・・・愚かな私は12年間かけてそのことを学んだ。大事な人生の一番輝く時期・・・12年間も無駄にしてしまった。お前にそうなってほしくない。魂の在り処を・・・しっかりと見届けなさい。暁年さんの・・・本当の男を見届けなさい」
「本当の男?」
「今に分かるわ」
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比較的早く、調理場で大量の塩を手に入れられると分かった時点で、一之介は良枝と聖満と別れ、別行動をとっていた。裏口から外に出ると、車内で寝呆けている及川を叩き起こした。朦朧としている及川を正気付かせるのに手間取ったが、大概の睡眠導入剤に対抗できる違法すれすれのあらゆる物質を所持しているのはこの時のためだった。
「あいたたた・・・なんだかすごく頭痛いんですけど・・・それに眩暈が・・・」
フラフラとしながらも及川は何とか正気を取り戻したようだ。
「所長・・・俺、あの星山真由ちゃんに声かけられたんですよ。CMに使うって・・・俺・・・星山真由ちゃんに「ごくろうだニャン」とか言われながら、CM用にコーヒーを飲んで感想を言う撮影をしたんですよ・・・俺の撮影・・・TVで採用されるかな・・・」
「お前・・・どこまでも幸せな奴だな」
「それほどでも・・・星山真由ちゃんみたいな嫁さん欲しいな」
「いや、それはやめておけ。寝首を掻かかれるぞ」
「えっ・・どうしたんすか?」
「あの女・・・そこまであいつらに加担していたとすると・・・すでにAJK団に入団していると見た方が良いな・・」
「星山真由ちゃんがAJK団に?」
一之介の表情がいつになく硬い事に及川も気が付く。冗談ではなさそうだ。
「裏口の鍵を開けておく・・・そこにある良枝さんが置いて行った催涙ガスや、スタンガンが役に立ちそうだ。後でこっそりと持ってこい。これからはスマホで密に連絡を取る。常に回線は開けておけ」
そう言い残すと、再び「J-POP」の裏口からこっそりと入り込んでいった。
「なんだか面白くなってきやがった!」
大量の武器を抱えながら、及川は一之介に続いて「J-POP」に入っていった。
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良枝や一之介たちと別れた暁人は観客席の後ろに回り込みながら、何とかチャンピオンサイドのセコンドの真裏にたどり着くことが出来た。綾乃の言う通り、二人の邪悪な巫女は一心に何かの呪文を唱えながら、暁年ではなく、プールナーナンダに向かって何らかの「気」を放射しているようであった。
(AHFを本当に塩なんかで払うことが出来るだろうか?)
しかし、古来から用いられている塩の効能・・・特にN国の古来から伝わる宗教における塩の「お祓い」効果は絶大だ。ご神木を大事にし、その保護を訴えてきたプールナーナンダを苦しめるものであれば何らかの効果をもたらすことは可能なはずだ。ましてや本来はその守護者たる巫女にとっては・・・・。
(だが・・・どうやって塩をかければいいんだ・・・どんな方法で・・・どの場所に・・・)
N国古来の儀式など全く知らなかった。ましてや波動エネルギーなど皆目見当もつかない。考えるな・・・感じろ・・・。そう思った途端、見たくもないステージの様子がいやが応にも目に入ってきた。
「あはははっ・・・でもこれからよ。もっともっと酷くしてあげる。ルーインドオーガズムの虜にしてあげる・・・。徹底的にマゾを拗らせて最低の人間便器にしてあげる・・・」
母親が父親を罵倒しながら股間をピンヒールの底で踏みつぶし、折れた肋骨を蹴り上げている。暁人はざわつく心を落ち着かせるのがやっとであった。感じるのは邪悪な気だけだった・・・。まずは理性で・・・
<考えろ・・・>
【人差し指を重ねるように手を合わせて、こちらからは見えない位置で組んで、その指先を暁人の方に向けていたわ!】
綾乃の証言が脳裏をかすめる。狐のお面を被っているために巫女たちの視線の先は分からないが、その指先は今でも挑戦者側のセコンド席の方に向いている。僕ではなく・・・プールナーナンダ師匠の方に向けられていたんだ。
<考えろ・・・考えろ・・・>
「つまり指向性があるってことだ。きっと彼女たちにとっては波動エネルギーは方向性をもって伝達されている。・・・であれば・・・まずは方向性を失わせること」
そのためにはどうしたら・・・洋魔子と一緒かもしれない・・・真っ暗にしてしばらく方法感覚を失わせることが出来るかもしれない。ブレークの達人・・・ここは一之介さんの出番だ。
だが、それ以上の名案は浮かばない。この巫女たちにどうやって・・・。塩を一振りした途端に、満司に気が付かれる。奴はセコンドの近くから絶対に離れていかない。挑戦者側で決してバトルをしていない。まるで巫女を守っているようだ・・・。
「巫女を守る?」
守らなければならないほど脆弱な状態・・・いや、彼女たちにとってこれはぎりぎりの戦いなんだ。少しでも精神を乱されれば、少しでも外乱が入れば、失なわれてしまう。そしてもう一度よく、巫女の様子を観察する。
「!・・・・・・・・・・・・」
ぶるぶると打ち震え、露出している二の腕や太ももには汗が大量に滲み出ていた。今にも倒れ込みそうだ。こんなことを2時間近くも・・・お面の下の顔はきっと蒼白に違いない。必死で、AHFを張っている・・・。
「塩を浴びせるのは多分一撃で十分だ・・・。だが、満司の気をそらさなければ、あいつが確実にディフェンドしてくる・・・。この作戦の満司側の唯一の弱点・・・それがあの巫女達なんだ。だから唯魔子ばかり動かしている。だが、防御の体制は鉄壁だ・・・」
(でも・・・それだけだろうか・・・あの巫女のどこに塩を振りかければ・・・)
<考えろ・・・考えろ・・・考えろ・・・>
でもやはり情報を少なすぎる。虎穴に入らずんば虎子を得ず・・・もっと二人に近づかないと。少しずつ、観客席の後ろから間合いを詰めていく。そして・・・二人の会話が聞こえ始める。透き通った心地よい声・・・だが、その響きには微かな濁りを感じる。穢された魂がもたらす微妙な濁り・・・。暁人は自分の感覚が、今まで以上に研ぎ澄まされていることに少しづつ気が付き始めている。これもプールナーナンダ師匠の影響なのだろうか?いったい、プールナーナンダ師匠はどんな風にこの世界を見ているのだろう・・・・。
「このバトル・・・いつまで続くの? 真美」
「由美・・・もう少しよ。満司様があの無様なマゾ豚を片付けるまであと少しよ」
暁人は驚いて、二人の暗黒巫女を見返す。頭の中に直接響いて来たからだ。お面を被った巫女達から聞こえてくるのは、何やら訳の分からぬ呪文だけだ。
(テレパシー?思念だけで会話をしているのか?・・・)
どうやら暁人の事は勘づいていないようだ。SMクラブのショーに来ている連中に思念を汲み取れる者など居ないと高を括っているのだろうか?それとも僕がプールナーナンダ師匠の影響で感覚が通常以上に研ぎ澄まされているのだろう?
「熱くてたまらないわ。このホール空調が甘すぎるわ。ねえ・・・こんなお面は早くとって・・・新鮮な空気を吸いたいわ」
「だめよ・・私たちにとって顔は命。言霊を乗せる口は巫女の魂の拠り所・・・」
「お笑い種ね・・・悪魔に全てを売り渡してしまったのに魂?」
「満司様のご立派な一物を咥え込んで、何度も穢され、すっかり邪悪になってしまっているけど、魂はなくならない。でないと私たちは「気」を操れなくなる。由美分かっている?」
「ええ・・・真美・・・それこそが私たちの存在意義。賢姫様も私たちからは魂を奪えない。真っ黒に染め上げられても」
「ええ・・・由美・・・でも穢して頂いたお陰で、かえって強力なパワーを得ることが出来た。サタン様や賢姫様の邪で強大なパワーが・・・」
「さあ、あともう少し・・・唯魔子が暁年を蹴り殺せば、それで終了よ」
(何だって・・・)
暁人は危うく自分の感情を爆発させそうになり口を押える。そして思念を巫女に気づかれないよう心を押える・・・心を落ち着かせ鎮める。
(巫女の言っていることが正しければ、満司の目的は母さんを寝取るだけじゃなく、父さんを殺させようとまでしている・・・)
だが、それは満司らしくない。あいつはそこまで悪に堕ちているとは思えない。むしろ母さんへの愛すら感じていた・・・。それは母さんの父さんへの愛を逆手に取った捩じれ切った愛・・・背徳や裏切りの快感の上に成り立つ危うい愛・・・所詮は父さんへの愛を掠め取っているだけの彼独特の邪な愛だった。しかし、そこには満司なりに唯子と言う存在に対する愛が確かにあった。あの時の満司の顔がそれを如実に物語っている。
「お前・・・お前もその短剣を渡したことを後悔しているんだな」
父はその事を喝破していた。
(賢姫なのかもしれない・・・)
金賢姫・・・AJK団と言う組織は父さんを恨んでいる。ショッピングモール開発でAJK団を排除し、その邪悪な目的を打ち砕いてしまった。彼らの悪事を晴天の下に晒し、その存在を明らかにしてしまった・・・むしろ彼らの標的なのが今の父だ。これは、今回のバトルの真の目的は、秋月家や一之介さん、プールナーナンダ師匠の抹殺が目的・・・! その結論は簡単だった。
(満司自身も金賢姫に洗脳されている・・・いや・・・無自覚に従わされているんだ。互いの利益がかなっているから)
「ねえ・・・真美・・・だったら口だけ隠せばいいじゃない。アイマスクと普通の口マスクで十分だわ。よりによってお狐様のお面をかぶせるなんて・・・」
「由美・・・でもそれが良いのでしょ?こんなはしたない格好が・・・。乳首まで丸見えの巫女装束もミニスカートのような緋袴も・・・それがたまらなく良いのでしょ?・・・お狐様を穢す背徳が・・・」
「私たちの守護神であったお狐様のお面をつけて悪事を働くなんて・・・ゾクゾクが止まらない・・・背徳の快感が止まらない」
「ふふっ・・・背徳の快感・・・これに逆らえるものなどいないわ。由美・・・お前の股間も濡れ濡れじゃない・・・その快感を、背徳の感情を、邪悪なパワーに変えてあの糞爺に送り込みなさい。穢して頂いた心と身体に賢姫様やサタン様の強大なパワーを取り込み、あの爺にぶつけて殺しなさい!」
「あああん・・・真美・・・強力なパワーを感じるわ」
「さあ、あともう少し・・・あの爺を呪い殺すのよ」
「ええ・・・お姉様」
暁人は暗黒巫女のあまりにも邪な思念に吐き気を催し、没我から抜け出し外界に感覚を戻す。水中に潜って止めていた呼吸を水面から出て一気に再開したときのように、激しくゼーゼーと肩で息をしている自分に気が付く。暗黒面に釣り込まれそうになる恐怖と嫌悪が次第に遠のき、現実の感覚が戻り始める。空気が感じられ、周囲の音が聞こえ始め、視界が広がっていく。
<考えろ・・・考えろ・・・考えろ・・・>
彼女たちは口を守らなければいけない・・・つまり口を清められれば、悪を言霊に乗せられない・・・。そうか・・・だからお面をつけて・・・。清め塩はあのお面を剥ぎ取って口を狙うべきだ。彼女たちからお面を剥ぎ取り、三方から清め塩を顔、特に口めがけて振りかける。その際は照明を一切遮断し、彼女たちから方向性を奪う。
一か八か・・・すべて仮定だらけの、感のみに頼った最低最悪の作戦。でも今はこれしかない。後は良枝さん達が塩を大量に調達し、満司がセコンドから離れる瞬間が訪れるのを待つばかり・・・。
<すべては整った・・・>
しかし・・・意識が全て外界に戻った暁人は、ステージ上で展開されている信じられない光景に唖然として言葉を失う。
(いくら何でもやり過ぎだ・・・時間稼ぎのために・・・そんな事まで?!)
暁年は唯魔子の足元に倒れ伏し、胸を蹴り上げられながらマゾオナニーを強制されている。しかもいつの間にかマスクを取り上げられ、素顔を晒したままの状態・・・。その上、観客に嘲笑われながら写真まで撮られて・・・・。
(時間稼ぎのためなんかじゃない。ルーインオーガズムのせいだ・・・理性が奪われオナニーしか考えられなくなっている。トランス状態になって何の判断も、何の常識も、何の道徳心も、全て奪われてしまっている。僕が洋魔子に経験させられた地獄のオナニーよりさらに残酷な形態・・・観衆の前での公開調教・・・)
AHFを取り除くまで・・・父さんは唯魔子に従うふりをしているうちに、その邪淫に取り込まれてしまったのだ・・・あの目・・・あの表情は・・・演技でも何でもない・・。
(父さんダメだ!それにはまったら戻れない!!)
だが、一度経験した暁人には、その訴えかけが無意味であることをよく理解していた。
(もう手遅れかもしれない・・・)
まるで狂ったようにオナニーを続ける父親を見下しながら、唯魔子が・・・母さんが、肋骨が折れた胸を容赦なく蹴り上げる。
(母さんダメ・・・ダメだ~!)
だが暁人の願いもむなしく「ボキッ!」っという肋骨が折れるくぐもった破滅的な音と「ひぎゃっ」という父親の押しつぶしたような悲鳴が何度もホールに響き渡る。もし折れた肋骨が肺や心臓に刺さったら・・・・思考自体が凍り付いてしまう。
(こ・・・これは酷すぎる。父さんも母さんもやり過ぎだ・・・これじゃ父さんが死んでしまう・・・こんなこと、いくら洗脳されているとはいえ、母さんが出来る事じゃない)
そして満司の言葉が胸の中を去来し始める。
【時間は巻き戻せないんだよ。この短剣が刺さったとき、この女から唯子は居なくなった。死んだんだよ。この女はその抜け殻にしか過ぎない・・・】
その顔は悲しげで真実を語っているようにしか見えなかった。
(本当に殺されて・・・金賢姫と言う魔女に精神を乗っ取られてしまったのか・・・)
そしてもう一度・・・ステージ上の女・・・唯魔子を見つめる。だが、そこには絶望的な光景しか広がっていない。唯魔子は父さんの骨折した胸を嬉々として蹴り上げ、残酷なルーインオーガズムの快感を冷酷に味合わせているだけなのだ。
<目の前の現実を心の目で見るのじゃ>
突然、プールナーナンダ師匠の声が聞こえたような気がした。
<ここよ!頭で考えなくていいの。ここで感じなさい>
洋子さんの必死に訴えが心に響く。
<あなたの魂の声に従って行動すれば・・・自ずと道が開ける>
洋子の声が、プールナーナンダの声に重なって暁人の脳裏を何度も去来する。二人は同じことを言っているだけだ・・・。答えは示してくれていない。
(僕自身で答えを見つけさせるために・・・僕自身で答えを見つけないと意味がないから)
しかし、そう思っている暁人のすぐ目の前では、信じられない事を父親に向かって宣言している母親の姿があった。
『うふふふふふっ・・・マゾ豚の完成~! これからお前をタップリと人間便器にするように調教してやるわ』
『お前が人間便器になった後は暁人と綾乃ね・・・今度こそ童貞と処女を奪って、ゆっくりと調教してやるわ。特に綾乃はいつでもサカっている色情狂に変えて、牝豚奴隷・14号としてこのステージ上で満司様と二人で調教してやるわ!』
酷すぎる・・・この女はやはり母さんじゃない。僕や綾乃にまで・・・母さんはやはり死んでしまった。怒りと悲しみが暁人を捉え、理性を剥ぎ取り、考えを失わせる。
<考えるな・・・感じろ>
<・・・感じろ・・・>
絶望的なステージをもう一度心の目で見つめる。そして、父を冷酷に蹴り上げる母を・・・唯魔子を・・・見ながら、ある事に気が付く。お父さんに顔を近づけ・・・「シー」・・・と言う仕草をしている?この仕草・・・・そして父さんに何かを囁いている。一瞬だけ、母さんの顔になった様な・・・・。
<洋魔子もそう言っていたか?>
満司は不敵にそう言っていた。洋魔子に魂がないと言い切っていた。
(でも、あの時・・・洋魔子が僕にルーインドオーガズムを味合わせようとしたあの時・・・洋魔子の魂は本当になくなっていたんだろうか?・・・)
ふとそんな疑問が持ち上がる。
<考えるな・・・感じろ>
<・・・感じろ・・・>
だが、綾乃が聖満に犯されそうになった時・・・満司を急き立てて僕と同時に犯させようと提案し、聖満の行動をわざと遅らせた。きっと満司は気が付いていない。そして僕が母さんと間違いを犯しそうになった時も、わざわざあの「漆黒の短剣」を突き付け、母さんの行動を立ち止まらせ自制させている・・・。普通のナイフで十分な時にあえて魔の道具を持ち出している。洋魔子の無意識の行動に洋子さんの善意が滲み出ていたような気がした。
(洋魔子には無意識の行動がある。良心に裏打ちされた無意識の行動・・・)
理由はない。「そう感じられたから」としか説明が付かない。だが、少なくとも洋魔子は結果的に僕がくじけそうになるのを防いでいた。
(洋子さんの魂の断片が深層心理に残っているとしたら・・・)
そう感じる瞬間が何回かあった。うまく説明できない・・・だか確かにそう感じた。
(唯魔子にもあるはずだ・・・母さんの本質が残っているはずだ)
唯魔子にも魂の断片が、「善」なるもの残滓が残っているはずだ。洋魔子は倭男さんを、唯魔子は父さんを「思う」気持ちや愛を完全に無くしても・・・そこに至る過程は消えない。強い愛で結ばれる魂の本質は変えられない。何度取り除かれても、無意識下で愛を取り戻してしまう。唯魔子は父さんを殺そうとしているのに、その父さんに再び魅かれ始めている。父さんへの思いも、愛も、すべてリセットされているのに、唯魔子に僅かに残った母さんの本質が、父さんに気持ちを傾かせてしまっている。転写された金賢姫の人格や、当の唯魔子すら気が付かないうちに・・・・。
きっと何度愛を奪おうと、何度リセットボタンが押されようと、唯魔子からは父さんへの愛は消し去れない・・・。
その時だった・・・
「カン!カン!カーン!」
今までと異なったゴングの響きが場内に響き渡った。生贄マドンナ・・・母さんのセックスの承認が行われ・・・公開の種付けセックスが行われる局面に移行したことを告げるゴングであることに気が付く。
いったい僕は何分こんなことを・・・プールナーナンダ師匠の思念と同化してしまったのだろうか・・・。ステージにあるタイマーを見ると、第6ラウンドが始まって5分以上も経過していた。そして、一番見たくない光景・・・ステージ上に用意された毒々しいピンク色のベットの上に、母さんと満司が抱き合っている光景が目に飛び込む。
『ここに来て跪きなさい。お前はこれから私たちがするセックスの下準備をするのよ・・・マゾ豚!』
ベットサイドで母さんが父を呼びつける。「下準備」と言う事はセックス自体はまだ行われていないようだ。
(まだ間に合うのか・・・)
だが、その後の展開はもっと酷いものだった。優しかった母親が、尊敬する父親に寝取られた相手への敗北宣言をさせているのだ。そして、種付けセックスのお願い・・・あの時と一緒だった。
「私の完敗をお認めします・・・満司様。どうか惨めなマゾオナニーしかできない私に代わって、私の戸籍上の妻で満司様の所有物・牝豚奴隷13号こと三好唯子様に満司様のドロドロの濃厚子種汁をタップリと注いでください。精液便所である元妻の子宮にたっぷりと種付け汁を注入して、満司様の遺伝子を持った素晴らしい子供を唯子様に妊娠させてください。生まれた子供はどのようになさっても一切文句は言いません・・・私はその為のお手伝いを心から致します」
惨めに首を垂れ、自らの敗北を認めていく父親を見ても暁人は不思議と軽蔑や侮蔑の感情が湧いてこない。
(僕も同じだった・・・)
もし僕があの時の経験をしていなければ、きっとこの場面を正視している事など出来なかったに違いない。狂ったようにあの場に躍り出て、全ての作戦をダメにしてしまっていたかもしれない。そして綾乃が、ステージの反対側で同じように二人を見つめていることに気が付いた。彼女も悲しそうな眼をしているものの、そこには軽蔑や絶望は見られない。マスクを通してもそのことはよく分かった。きっと僕と同じ・・・あの時の経験が役に立ち、僕たちから魔を防いでくれているのだ。
そして暁人は初めて悟った。父親の早すぎるマゾ堕ちを不可解に感じていた。それが今になってやっと分かったのだ。
(父さんも同じだ!)
父さんは時間稼ぎをしているんじゃない。自分から唯魔子に呑まれようとしている、悪に染まろうとしているんだ。きっと唯魔子を理解するために。唯魔子の中にいる唯子を蘇らせるために。
(父さんは自分の命を賭けて、唯魔子の中の魔と同化して、賢姫と対峙するつもりだ・・・)
父さんは満司に染められ、満司に依存し、満司を愛してしまった母さんごとそれを受け入れた。そして今は、唯魔子と化した母さんをも受け入れようとしているんだ。その被虐性癖や悪への依存すらも受け入れ、一体化しようとしている。今の父さんにとって、満司に負ける事やマゾ化する事や、悪堕ちすることさえどうでも良いんだ。いや、死ぬことさえ・・・母さんさえ救えれば・・・。
(自分の事はすべて棚に上げている・・・いつものように・・・)
唯魔子がそれに気が付いているのは明白だった。まるで暁年の覚悟を試すように、唯魔子の攻撃は激しくなる一方で、罵倒は汚い言葉の羅列になり、暁年の胸を蹴り上げる力はますます強くなっていた。
(父さん・・・いつまで続ける気なんだ・・・このままだと本当に死んでしまう)
暁人はステージを見ていられなくなり、顔を背けてしまう。
(一之介さん・・・良枝さん・・・早く塩を・・・)
そう思った時だった・・・
「ひぎっぁぁあ!」
ステージ上から暁年の断末魔の叫び声が上がる。
「バキッ・・バキッ!」
さらに数本の肋骨が胸の内部で折れ、ひしゃげていく音がホール内に響き渡る。暁年は絶叫と共にもんどりうって倒れ、ステージの上で気絶してしまった。だが、唯魔子はそれで終わらせようとしない。暁年に水をかけて意識を戻すと、再び胸を容赦なく蹴り上げ始めるのだ。やがて、全ての肋骨が折れたよなうな不気味な音がホールに響き渡った。
「バキッ・・バキッ・・バキッ!」
胸の皮膚の一部を骨折した肋骨が押し上げ、血が滲み始め今にも皮膚を突き破って血飛沫が上がりそうになっている。
(折れた肋骨が肺や心臓に刺さったら・・・)
ひとたまりもない・・・・。そう思っていると、唯魔子が暁年の胸の上にハイヒールを履いた足で乗り上げてしまう。
(父さん・・・母さん・・・もうやめて・・・もう限界だ・・・本当に死んでしまう。それとも父さん・・・死ぬ気なのか?母さんの人格が死んでしまったから・・・・)
暁人がついに堪えられなくなり、声を上げようとした瞬間だった。
「唯ママ・・・それ以上やっちゃダメ!」
綾乃だった・・・直前まで世話をしていたプールナーナンダを横たえたまま、ステージサイドに駆け寄り必死に叫んでいる。
(何やってるんだ!?満司に見つかるぞ!)
だが遅かった・・・・。
「おや?・・・どんな阿婆擦れかと思ったら暁人君の恋人の綾乃ちゃんじゃないか・・・処女がこんなところに来るなんて・・・いけない子だね・・・きひひひっ」
満司がイヤラシイ嘗め回すような視線を綾乃に向ける。
(綾乃・・プールナーナンダ師匠を置いて逃げろ!)
だが、責任感の強い綾乃が瀕死のプールナーナンダを置いて逃げだせるわけがなかった。露出の高い衣装を手で覆いながら真っ赤になってその場にうずくまっている。
(ダメだ綾乃・・・逃げろ!)
「いけない子には・・・お仕置きが必要だな」
満司はステージ上のベットを降りてそのまま挑戦側のセコンド席に行き、綾乃を手錠で拘束してしまう。
(反則だ!レフリー!・・・・)
そう叫ぼうとしたとき、一之介が暁人の肩を掴んだ。
「止めておけ・・・奴はすぐには手を出さない。暁年さんを精神的に追いつめるだけ追い詰めて、悪堕ちさせ、自らの死を選ばせようとしているんだ。簡単には手を出さないはずだ」
「それよりも作戦を聞かせろ。どうすれば良いんだ?」
一之介が暁人の顔が落ち着いていくのを見て、一之介がホッとしたところに、綾乃の悲鳴が聞こえ始める。
「やぁ・・だめ・・・やぁぁ・・あああぁん」
恋人の悲鳴に気が気でない暁人は、しかしそれでもセコンド席から目を引離し、血走った目で一之介に説明を始めようとした。
「塩を持ってきたわよ」
ふと後ろを振り返ると、大量の塩を抱えた良枝が立っている。状況が分からず良枝を見つめる。
「安心しな・・・まだ綾乃ちゃんには手を出さないわよ。満司のやつ・・・余裕ぶっこいているのさ!」
「聖満君は?」
「あんたがボッと考え事をしているから、声を掛けないで挑戦者側のセコンド席に向かっているわ。最悪の場合、聖満が綾乃ちゃんを助ける」
「彼が?」
「あら?さっきも助けたのよ。やくざ相手に・・・結局負けちゃったけど・・・」
「聖満君が?」
「そう・・・彼もそろそろお年頃なのよ・・・肉体だけでない恋、心の・・・大人の恋がしたいのよ」
複雑な顔をした暁人を微笑ましく見ながら、良枝が尋ねる。
「それで・・・何かパッて凄いアイディアを考えてくれたかい?」
「・・・ええ・・・多分・・・AHFを破るところまでは・・・でも、綾乃が捕まってしまうのは番狂わせです。そこまで想定していない」
「大丈夫よ・・・綾乃ちゃんも、唯子さんも取り戻す事は絶対できるわ。それを今、暁年さんがやっているんだから」
「いえ・・・満司の目的は、母さんだけじゃなかったんです。彼らの真の目的は秋月家全員、プールナーナンダ師匠や鈴木貫太郎探偵事務所まで含めての抹殺です」
「彼ら?」
「そう・・AJK団・・・金賢姫と言う魔女が作った秘密結社です」
そう話している間にも、綾乃の叫び声がやがて喘ぎ声に代わっていくのがよく分かる。
「あん・・・あぁん・・・」「あっ♡・・・ぃいやぁああああ!」
暁人は居ても立っても居られない。
「いつ仕掛けるんだい?」
「なるべく早い方が良い・・・母さんが父さんを殺してしまう前に・・・」
その露骨な表現に良枝の顔が怪訝そうに曇る。
「そんな事を言うもんじゃないよ」
そう言ったものの、満司と唯魔子が醸し出すあまりにも邪悪な雰囲気に、観客が感化され始め、不穏な空気がホール中を満たしているのは明らかだった。
「ハイルサタン!」
「ハイルサタン!」
という、悪魔を礼賛する声が彼方此方で飛び交い、ホール中に邪気が溢れかえっている。
「ふっふふ・・・満司様・・・綾乃のマスク・・・それも取っちゃいさいよ・・・そして・・・ピンク色の処女オッパイを素顔と共に観客の方々に撮って頂くの。今後その娘がまともな人生を送れないように、タップリと拡散して頂くために・・・」
カシャッ・・カシャ・・・
「だめ・・撮らないで・・・暁人・・・助けて!」
暁人の我慢の限界を超えていた。セコンド席に向かおうとした瞬間、一之介の張り手が暁人の左ほほに飛ぶ。
バシッ
「いいか・・・今は耐えろ!この作戦の事だけに集中しろ!さあ説明したまえ」
「くっ・・・分かりました」
目の前では父親が母親の肛門を舐め始め、恋人が何も隠すもののない股間をスポットライトに浮かび上がらせ、観衆からフラッシュを浴びている。その中でギリギリの精神力を発揮して、暁人が説明を終えると、一之介が申し訳なさそうに謝罪する。
「よし・・・それで行こう。痛かったか?申し訳ない。綾乃ちゃんのおまじない、すっ飛んでなければいいが?」
「それは大丈夫です。次はここにしてもらいますから」
そう言うと、張り手を受けて膨らみ始めた頬を指さしていた。
「それではMROを開始だ!」
一之介がそう宣言した時、暁年が唯子の言われるままプールナーナンダからクッキーの袋を取り上げ、差し出そうとしているところだった。