青白く冴えた光。
鈴の音が響くようなそんな月明かり。
それだけを頼りにして、師弟は夜の大修道院を歩いていた。
ハンネマンのコートの裾をギュッと掴みながら、リシテアはしきりに周囲を窺ってキョロキョロしてる。
本人はバレてないつもりらしいが、お化けが怖いというのは公然の秘密だ。
誰でも知ってる。
角を曲がるときや建物の物陰、草叢などにイチイチびくっとしてた。
「ひッ!?」
もしかしたらガルグ=マクの主なのかもしれない。
縄張りの見回りでもしてるのか、やたら体格のいい猫が悠々とした足取りで、憐れなくらい怯えてるリシテアの前を横切る。
チラッと一瞥だけすると、
にゃ~。
ドスの利いた低い鳴き声を上げ去っていった。
「……ところでリシテア君」
「はひッ!?」
「寒くないかね?」
「い、いえ、だ、大丈夫です」
「それは良かった。ガルグ=マクは山間だけあって、真夏でも涼しいからな。さっきから震えてるようだから心配してたのだが」
「それは、その、さ、寒いからでなく」
そうだろう。
ハンネマンにもそれはよくわかってた。
風邪など引かないという確証があったからこそ、こうして実験を兼ねた夜の散歩に連れ出したのだ。
お化けよりも怖いのは、人間というのを学べるかもしれない。
リシテアには内緒にしてるが、ルートの安全もあらかじめ確保している。
小刻みに震えてるが少女の身体は寒いどころか、たぶん火照って熱いくらいになってるはずだ。
なのでオールヌードであっても、とくに問題はなかろう。
常識だとか倫理だとかいった問題を、これも実験と割り切ってシカトさえできれば……。
紋章の謎を解き明かすのは、すべてのルールやモラルに優先される。
だからこそこうして条件を吟味し、深夜の課外講習の機会を設けたのだった。
と。
「おや? あれは……」
前方に人影がある。
まだあちらはこちらに気づいてないみたいだ。
まったく警戒してない。
眠そう。
立っていられるのが不思議なほど、ゆらゆら不規則に揺れており、門番は確実に異常ありであります状態だった。
これなら忍び足のスキルがなくとも、どうやら後ろを抜けられそうである。
賭けの要素は無論排除することはできないものの、実験のクオリティを高めるための、エッセンスとしては申し分のない想定イベントだ。
有難く活用させてもらおう。
「リシテア君」
師匠の身体にぴったり寄り添いながら、目をつぶって隠れようとする弟子の名を呼び手を握った。
眼を大きく見開きギョッとした顔をするリシテアを、そのまま引っ張ってあくびを噛み殺す門番の方にずんずん歩いていく。
こうと決めたからには、ハンネマンのやること為すことに躊躇はない。
これぞ狂人ならではのヤバすぎるキレがある。
「え? あ、い、イヤッ!! イヤッ!! やぁンッ!!」
「いくらなんでも声が大きいぞ」
「ッ!?」
素っ頓狂であるが的確すぎる忠告に、リシテアはすぐさま口をつぐんだが、首を左右に振って駄々っ子のように抵抗するのはやめなかった。
歯医者に連行される図に似てる。
しかし魔法を行使しないリシテアの抵抗などささやかなもので、それこそ駄々をこねる子供となんら変わるところはない。
つんのめるようにしながらリシテアは、女は度胸が試される地点まで連れて来られていた。
「くぅううううッ!!」
やはり聡い。
覚悟を決めてるしナニかをキメてるハンネマンと、ここで勝ち目のない攻防を繰り広げても危険が危なくなるだけだ。
半分夢の世界の住人になりかけている門番が、いつ勤労意欲に目覚めこちらを振り向かないとも限らない。
そうなったら彼は一発で、眠気が吹っ飛ぶ光景を目にすることになる。
ただ仕事が手に付くかといえば、おそらくそんなことはない。
頭の中は少女の裸体だけでイッパイになり、職務怠慢どころじゃないレベルで、しばらく使い物にならなくなってしまうだろう。
リシテアしか監視できなくなりそうだ。
たとえそれが刹那の瞬間だけであったとしても、彼が未成熟な白い肢体を忘れることはきっとない。
そうなればリシテアはガルグ=マクに在籍してる間、ずっと劣情まじりの好奇の視線にさらされ続けることになる。
冗談じゃありませんっ!!
ギブ&テイクのあるハンネマンであればともかく、等価交換もなしで乙女の裸体を拝ませる気にはならない。
もうこうなったら、駆け抜けるしかなかった。
こくっ。
喜怒哀楽の定まらない顔で頷くと、感情の読み取れない顔でハンネマンも頷きを返す。
意外に密かな人気があるものの、完全に給料泥棒な門番の後ろを、師弟ふたりは息を合わせてすり抜けた。
そしてリシテアがシンクロしたのは、何もハンネマンとだけではない。
予期せぬタイミングでカクンッと頭がなるたびに、ハッとなる門番と合わせて、リシテアも息ぴったりでハッとなっていた。
恥ずかしい。
ようやく安全圏に脱出して、ホッと胸を撫で下ろしたときには、リシテアの掻く手汗はもの凄いことになってる。
いくら夜とはいえこうして大修道院内を、全裸で徘徊しておいて今更な気もするが、掌がベットリなのを知られるのが妙に恥ずかしい。
これも今更だがパッと手を離した。
弟子が師匠にするには失礼な態度なのかもしれないが、ハンネマンは少し残念そうな顔をしただけで咎めはしなかった。
……ように見えた。
優雅にエレガントにくるっと、背を向けたハンネマンだが内心では、
やっぱり我輩、気持ち悪がられたりしてるのだろうか?
傷ついたりしてたが、何事もなかったみたいに再び歩き出す。
植え込みの中に入っていった。
そこにはテーブルやイスだったりが置いてあり、生徒だけでなくセイロス騎士団や、教会職員も利用するちょっとした憩いの場になってる。
こんなところに独りきりでこんな格好のまま、取り残されては堪らないとリシテアは慌てて後を追った。
「ここで少し休んでいくとしよう」
疲れてない。
だがここならイロイロ実験するのに都合が良さそうだと、脳内でシミュレーションしつつハンネマンはベンチに腰を下ろした。
端っこではなくって、真ん中に位置取ってる。
両脚は緩く開かれてた。
成人女性だと厳しいがいたいけな少女――リシテアなら座れそうなスペースがある。
師匠と異なりキメきれてない弟子は、僅かに躊躇いはしたものの、いいかげん問答の無意味さを悟り膝の間に腰を下ろした。
年齢からも見た目からもおかしくない。
しっくりクル。
そこには仲睦まじいお爺ちゃんと孫といった風情があった。
おそらく何かしらの寓話でも読んでやれば、その印象はさらに完成度の高いものになるだろう。
が。
お爺ちゃんの手は本のページなんて捲ったりしない。
不意に孫の身体を抱きすくめた。
「あッ……」
小さい悲鳴を上げて、リシテアは身体を堅くする。
だが抵抗は一切しなかった。
こういう展開になるのを、察せられないほど馬鹿じゃないのと、重ねてきた実験に馴染んできた結果である。
なので胸の鼓動を速くしたリシテアが、ハンネマンを受け入れるのは早かった。
神々しい月明りを浴びる白い首筋に、ひげがチクチク当たってくすぐったい。
「夜の散歩というのも、乙なものであろう?」
火照りが冷めることのない耳に、息を吹きかけるみたいに囁かれた。
昂ぶりを感じる。
自分のモノと自分のじゃないモノ。
身体に宿る二つの紋章を感応するときのような、そんな二つの官能をリシテアはハッキリ捉えた。
……ドキドキしてる。
強い力で拘束されてるわけでもないのに、持久走をやらされたみたいに息が弾み苦しかった。
剥きだしにされた白く薄いふくらみの先端は、すでに硬くなってツンと上を向いている。
無毛の秘裂は期待するみたいに、じんわりと熱く甘い蜜を滲ませていた。
「はぁンッ」
心地よい束縛の中で少女の身体が仰け反る。
「我輩の目のないところでも、研鑽を欠かしてないようであるな」
リシテアの毎夜のオナニーを確信を持って指摘しながら、尖りシコった乳首を弄くるハンネマンも間違いなくドキドキしていた。
やはり肉づきの薄い小さなヒップの切れ込みから、尾てい骨、脊髄のラインに隆起した露骨な欲情の証が押し付けられてる。
ドクンドクン脈打つ血液の激しさと、熱した鉄の棒のような硬さが、ハンネマンの体内で渦巻く官能の大きさをナニより感じさせた。
「格別だ」
もう何度口にしたかわからない賛辞の言葉を送りつつ、潤み蕩けたヴァージンの秘裂に中指をくぐらせる。
貴族らしいのか学者らしいのか、あるいは紳士らしいとでもいうべきなのか。
男にしては無骨さのない細くキレイな指をしてるが、それでもキツキツの媚粘膜に咥え込むには太い指がぐっぷり呑み込まれてる。
通りをひとつ隔てた場所では、
「紋章石のない剣が、赤き輝きを放った……、あれは紋章の適合反応と見て間違いない」
「何だと? 紋章石のない遺産を使えるはずが……」
物語の核心に迫るような、なにやら意味深な会話がされてるが、その声は実験に夢中の師弟に届くことはない。
ハンネマンは初々しい粘膜を破ってしまわぬよう心掛けながら、挿入した指をゆっくり動かしもう一方の手では勃起してる乳首を苛める。
「格別であるな」
褒められて嬉しくないことはないが、ありがたみはなくなってきた。
憑かれたように同じ言葉を連呼しながら、乳首の淡いリングをくすぐる半径を、包囲の輪を少しずつ少しずつ狭めていく。
触れそうで触れないをしばしくり返し、
キュッ。
「きゃんッ!?」
いきなり摘むというわかり切った奇襲にも、またしてもリシテアは引っかかって、ハンネマンの腕の中でロリータな身体を跳ねさせた。
少女の唇から漏れる羞恥と官能のミックスされた声を、満足とともに聞きながら卑猥な刺激を加えるのに余念がない。
このときのハンネマンの思考はやや嗜虐の傾向にあった。
旬のザナドの実のように硬く柔らかい乳首を、しつこくねちっこくコリコリしてシゴきあげる。
もちろんそうしながら、
ぬにゅり……。
鉤型に曲げた中指で牝肉の中を掻きまわすのも、やはりしつこくねちっこく同時進行で行われていた。
ぬめらかな感触の襞が絡みつく。
「あッ……ン……や……、あン……ふ……ンふぁ……」
可愛くさえずるリシテアのうなじに熱い息を吹きかけながら、ハンネマンは股間のこわばりを処女の少女の身体に擦りつけた。
するとそれに応えるように、リシテアは小さく可憐なヒップをモジモジさせる。
その牡を挑発するみたいな無意識のリアクションに、ハンネマンは淫らな疼きが堪えようもなく込み上げてきていた。
これがただ少女に魅入られてるだけであれば、肉体的欲求を優先して襲いかかり溺れていたかもしれない。
しかしハンネマンの抱く知的欲求とは、性的なモノと分かち難く密接に結びついている。
紋章学の父の独りで慰める際のズリネタ。
興味がある人間はフォドラ全土を網羅してみても、限りなく確実にゼロに近い値になるであろうと断言できた。
なので紋章学の父が、紋章学に関する著書でヌケるのは、フォドラ全土でもハンネマンしか知らない。
すると常日頃から熱心に読んでるのはエロ本であり、世間からは紋章学の権威とされてるが、その真実はエロを追求するエロの権威である。
処女性が失われることによって、今後の研究に支障が出る恐れもあった。
もしやという予感はあるが、予感を確信に変えるのが研究である。
賭けの要素はなるだけ排除したい。
それまでは我慢だ。
よりリシテアのクオリティを高めることに専念する。
乳首を苛めていた方の手をするすると降ろし、ぷっくり充血したクリトリスにそっと触れて転がした。
「ひッ!?」
そのままハンネマンはアーティスト顔負けの流れるような指さばきで、少しだけ芯を覗かせていた陰核包皮を剥きあげていく。
ぶるぶる震える少女の深奥からまた新たな、いっそう粘っこく甘そうな愛液がとろりと溢れた。
その直後芸術家のようにキレイな指先が、リシテアの最も敏感な部分に押しつけられた。
「ひいッ――」
肉芽から全身に凶暴な痺れと疼きが駆け抜ける。
ここまで研究は格別に順調であるものの、まだ快感として受け取るには強烈すぎたのかもしれない。
しかし反応は反応である。
クリトリスを捉えたままハンネマンは指を離そうとはしなかった。
「や、やめ、はあッ……やめ、て、あッ、あッ、あッ……ああああああッ!!」
途切れ途切れのスタッカートを刻みながら、リシテアはびくんびくんと小さな身体を憐れに跳ねさせる。
獲物の末期の痙攣をそれは連想させた。
ハンネマンはリシテアの真っ赤に腫れあがった小豆大のクリトリスを、親指と中指で繊細に挟み込んで神経質なほど執拗に転がし続ける。
爪が破裂しそうな快楽中枢の塊を、温かに慈しみながらも冷たく残酷に引っ掻いた。
「はぁああッ!?」
口唇の端から涎を垂らす横顔を、ハンネマンに間近で観察されながら仰け反る。
少女は綻んだ鮮烈に淡いピンクの粘膜をひくつかせながら、愛液をとろとろと滴らせて太腿とベンチをぐっしょり濡らした。
地面には蟻が群がりそうな、淫らな水溜りができてる。
勿体ない。
いったん愛撫を中断してリシテアの両膝の裏に手を入れると、ハンネマンはスラックスが濡れるのも構わず脚を閉じて載せあげた。
「え、あ、な、え、なん、なんですか?」
不安げな問いを無視して、ハンネマンはリシテアの膝から先を自分の膝の外側へと垂らした。
その態勢のまま大きく股を開く。
必然的にリシテアの股間も、はしたないほど大きく開かれた。
「あッ、ヤダ」
反射的にリシテアは腿を閉じようとするが、狙い通りハンネマンの膝がそれを阻む。
幼女がオシッコをさせられるようなポーズに、リシテアは年頃の乙女としての当然の抵抗を試みた。
が。
こちらも当然のようにそれよりも早く、ハンネマンは愛液をまとわせた人差し指と中指でスリットを割り広げる。
もう一方の手であらかじめポケットに忍ばせていた試験管を取り出すと、月明かりを浴びて艶やかにぬめるヴァージンの秘裂に宛がった。
ナメクジの這ったみたいな航跡を曳きながら、僅かに白いモノの混じった半透明の液体が、ガラスの容器の内側にすぐに溜まっていく。
と。
容器を宛がうという似たようなシチュエーションが、ハンネマンも予想してなかった刷り込みを揺り起こしたらしい。
野外でありしかも裸であるという、理性でなく本能に刻まれた開放感もある。
繊細な粘膜から伝わる無機質な、ひんやりした感触が、急速に膀胱を冷やし尿意を促した。
言葉が記憶をフラッシュバックさせる。
「そこッ、あッ、ああッ、だ、ダメッ、そんな、そんな弄くられたら、ン、ダメ、で、出ちゃうから、また出ちゃうからぁ!!」
網膜に妖しいまでに美しい月を映しながら、リシテアは愉悦に溺れた恍惚の貌を浮かべていた。
努力は一切してないが死ぬほど恥ずかしかったあの実験は、リシテアという天才少女に最上級のエクスタシーとして刷り込まれてる。
痛みには耐えられても、快楽には堪えられない。
「ナニが出るのかね?」
死を待つしかない獲物の首筋に喰らいつくケダモノのような、熱い吐息とともに答えのわかり切った問いを意地悪く囁く。
このときのハンネマンは、かなり変態チックだった。
「オシッコ……出ちゃう……」
じょぼじょぼじょぼ……。
はしたないM字開脚のポーズで、恥ずかしい告白をするリシテアの、だらしない貌は主に祈りを捧げる信者のモノと似てる。
格別であるな。
勢いよく手にかかる生温かさにどこかうっとりしながら、ハンネマンは淹れ立てのコーデリアブレンドが味わえる悦びに胸を躍らせた。
「……ふむ」
しかしまずはリシテア本人が、この味を知ってていいかもしれない。
ハンネマンは愛液と小水でぬめる指先を、夢うつつで呆けてる少女の口元に持っていった。
雛鳥が餌を貰うみたいに、濡れた紅い舌が健気に伸ばされる。
指に付着したコーデリアブレンドを、大好物の甘いお菓子みたいにぺろぺろ舐めてた。
ゆっくり挿入する。
ちゅく・ちゃぶ・ぬちゅ……。
執拗なまでに丁寧に指を舐められるハンネマンはすぐにわかった。
少女の軟体動物のような舌の蠢きは完全に、そして散々教え込んだフェラチテクを自然に披露してる。
師匠は弟子が愛おしくて仕方なかった。