食糧庫を後にした私は、マチルダ二等兵とデリラ二等兵を引き連れて執務室へと戻った。そして扉を開けると、そこには顔を真っ青にしたマリー二等兵他三名が直立不動で怯えて立っていた。その横には無表情の少女が一人立っている。綺麗な銀髪で、凹凸の対比が素晴らしい少女だ。その少女は無表情ながら凄みを感じさせ、直立不動になっていた少女達をいびっていた。
…そういえば、マリー達を寝かせたまま執務室を出たんだったな。
「も、申し訳ございませんワイヤット隊長!!」
「申し訳ございません、隊長。まさか執務室で寝ているとは思わず。軽くお説教をしていました」
「…そうか、済まないな。随分気持ち良さそうに眠っていたものだから、ついそのままにしてしまったんだ。許してやってくれ」
「…はい。分かりました、隊長」
眉根をピクリとも動かさず、銀髪の少女は去っていった。そして、未だに謝り倒しのマリー達を慰め、私は今日の執務を終わりにすることにした。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「大丈夫だ、気にするな。それよりもう夕方だ。夕飯を食べに行こう」
「あ、はい!お供させていただきます!!」
ーーー
二等兵達を連れて私は、この駐屯地唯一の食堂へとやってきた。中に入ると200人前後の少女達が思い思いに食事を取っていて、中々に姦しい場所だった。
まぁ私が来た瞬間に空気が止まったが。
「…あー…気にしなくて良いぞ?夕飯を食べに来ただけだからな」
「は、はい」
「り、了解です」
カチンコチンに固まってしまった空気に少し罪悪感を思いつつも、今日の炊事当番なのだろう少女からお盆に乗った食事を受け取った。そして座れそうな席を探そうとしたら、先んじてマリー二等兵達が席の確保に動いていた。
「隊長!こちらです!」
「あぁ、分かった」
マリーは流石に食堂の空気が固まっているのを察していたのか、見つけてくれた席は一番端の場所だった。そこに腰を下ろし、お盆をテーブルに置く。そして改めてお盆に乗った食事を確認した。
「ふむ…缶詰肉と塩漬け野菜のスープに街で買ったパンか。そして飲み物は酒…酒かぁ。しかもブランデーを水で極力薄めたのが一杯…」
「何か問題でもありましたか、隊長?」
「いや、そうだな…なんでもない」
街で買ったというパン以外は完全な戦場糧食だと思ったなんて、この場では言えないな。が、これはちょっと由々しき問題だ。まだ一週間だから身体に不調は出ないだろうが、一ヶ月もこんな食事をしたら塩分過多とアルコール摂取過多で体調不良になってしまう。明日にでも生鮮食を仕入れないと行けないぞこれは。
(うーむ…原隊のツテを使うか?いやでもしかし、あまり迷惑を掛けたくない…だが背に腹は変えられんよなぁ)
ずずず…とスープを啜る。…しょっぱい。塩をちゃんと落としたのかこれ?まぁいいか。
そんな風に黙々と夕飯を食べながら考え事をしていると、段々と食堂に活気が戻ってきているのに気付いた。どうもそれなりに怖がられてたのかもしれない。まぁ追々どうにかしよう。
ーーー
食事を終え、食堂から帰ってきた私はほろ酔いになっているマリー二等兵達を隊舎へと返し、隊長室の隣にある自室へと入った。服を脱ぎ、下着姿になった私はそのままベッドへゴロリと横たわる。慣れない事をしたからか、まぁまぁ疲れていた。
「…やっと一日が終わった…」
そう呟いて寝返りを打ち、天井を見上げる。当たり前だが知らない天井だ。本当にここに配属になったんだなと実感してしまう。
「…なんというか、問題が山積みだな、ここは」
武器はボロボロ、食事は戦場糧食、練度は訓練兵以下、そんでもって全員女だ。どうにかなるのかこれは?
「こんな状態で、なんとかなるのか?…いや、なんとかするしか無いのか」
あの辞令、拒否権は無かったがそれでも拒否しておけばよかったと今更ながらに思う。どうしてこうなったんだろうか。さっぱりわからん。
「まぁ…仕方ない。引き受けた…というよりは命令だったが、私も軍人。あまり泣き言ばかり言ってもいられない。明日早速動くとしようかな」
取り敢えず先ずは………