分割しようかと思いましたが、途中で切ると勢いが削がれると思い、そのままにしています。
ご了承下さい。
「……ん」
ぱっちりと、目が覚めた。いや、覚めてしまったっていう方が正しい。
ちょっと重い体を引きずって、枕元の目覚まし時計に近づき、まだ暗闇に慣れてない目を凝らすと、何とか今が3時半ぐらいであると分かった。
最近は夜中にふと目覚めることが多くて、今日もそういう日になったみたいだ。
多分家族絡みの問題が俺の中ではっきりと整理できてないせいで。
昨日はそれを塗り潰すぐらい、幸せなことがいっぱい起きたっていうのに、まだまだ切り替えられていないみたいで、儘ならないな。
そんなことを考えていると、どうにも寂しくなってきた。ここが俺の家で、どうしても家族のことを思い出してしまうのも、原因かもしれない。
とにもかくにも、翔にハグをして欲しくなった。
シーツの中で手を伸ばすけど、その両手は当たることなく空を切った。
それもその筈で、隣で寝ていた翔がいないからだ。
いつも起きた時は、横にいるのに。
……まあトイレだろうな。今までの起床のタイミングが、翔のそれとぴったりと合っていただけの話か。
翔と一緒のベットで眠るのが頻繁になってから、久し振りに1人で占有するそれは、隣に大好きな人がいるっていう、安心感を覚えるあの狭々しさに比べると、物理的に広いものの、寒々しくって仕方がない。
早く帰って来てくれないかな、あの温かさが恋しい。
寂寥感を覚えていると、それに触発された鬱陶しい、ネガティブシンキングがポンポンと涌き出てきた。
──本当に、翔はトイレにいるのか?
──実は、翔とは今日一緒に寝てないんじゃないか?
──そもそも昨日のことは全部、夢なんじゃないか?
……ああ、やだやだ。
またそんなことばっかり、考えようとしてる。
いつもならばそうやって、鬱々とした思考に陥る所だけど、今日からは違う。
シーツの外へと腕を出し、右手の薬指に収まった指輪を、窓からの僅かな月明かりで照らしてみた。
燐光を帯びて、淡く光る樹脂のサファイアと、金色の輪。
この自分の手の中にある物品が、昨日の出来事は夢じゃなかったって証明してくれてて、ほっとする。
そしてその輝きが、昨日の夜の情景の煌めきと重なった。
……花火を背景に、欲しかった指輪をプレゼントされての、プロポーズ。
凄いロマンチックなことをされたなって、今思い返すと、顔のニヤニヤが止まらない。
ああ、やばい。嬉しい。きゅんきゅんとする。
そうやって枕に顔を埋めて足をジタバタさせてると、マイナス思考は多少収まって顔を出さなくなっていた。
ざまあみろ、と己の邪悪なる部分を足蹴にした。
……でも、どうせまた性懲りもなく、憎たらしい顔を出すんだろうけど。
その時はまた、指輪の力を借りよう。
──そうした頭の中での騒動が解決したと思えば、トイレの扉の開閉音がしてから足音が鳴って、止まる。
良かった、本当にトイレに行ってただけか、と安堵したけれど、それ以降、動きがない。
気になったから、というより待つのが焦れてきたから、自分のベッドから転がり出て、翔に会おうとした。
──実は、音の正体が翔じゃなかったらどうしようと、ちょっぴり怖くもあって、抜き足差し足にて進んでると、拍子抜けなぐらいにあいつはあっさり見つかった。
ごそごそと、月光踊る薄暗い台所で、ぼんやりと光る冷凍庫の中を漁る不審者が1人。
見慣れた後ろ姿とその服は間違いなく、翔のもの。
アイスの箱を取り出して、それをじっと見つめてる。
──どうするかな、止めとくか……。
独り言をボソボソと言いながら、食べるかどうか、葛藤している様が何だか、おかしくて。
笑いがこみ上げそうになるお腹を押さえて、そんな不審者に、声をかけてみた。
「翔?」
「うぉおおっ!」
バン、とアイスの箱を放り込んで、勢いよく冷凍庫のドアを閉める面白い人。
こちらへと振り向くと、誰も聞いていないのに、翔は言い訳じみた説明を始めた。
「あ、いや。さ、さっき起きたばっかでな。ぼーっとしてると何か食べたくなって。いや勿論お前にこれ食べたよって、後で食った奴買うよって、言うつもりだったぞ!」
「……ふふふっ、分かった。じゃあ、食べようよ」
翔は変な嘘をつく奴じゃないから、間違いなく、本当だろう。
そうとなれば、2人で背徳のおやつの時間だ。
翔の後ろ手に封じられたままの扉を開けて、アイスキャンディーを2つ取り出して、片方を翔へと手渡す。
自分の分の包装を解いて、冷え冷えとしたそれを一口分噛みきると、口に広がる練乳とイチゴの、まろやかな酸いた味。安定感があって、外れない。
「深夜に食べるアイスは格別だね」
「そりゃそうだ。背徳の味だ。…………なあ、今日も、下手に起きてしまった感じか?」
「うん。そんな感じ」
「……寝られるのか」
「んー、多分。こうやって変な時間に起きるのも終わりな気がするから、大丈夫だよ」
「……」
自分の精神状態は昨日の夜よりかは断然マシになってる筈だから、充分寝られる可能性はある。
この夜中に起きるのも、解消するまで時間の問題な気がするから、翔に余計な心配はかけたくない。
さっさと寝てしまおう。
しゃくしゃくと、寝起きの火照りが残る体に冷たさを落としていく内に、あっという間に棒だけになってしまった。
「んじゃ、戻ろう?」
寂しげなそれをゴミ箱に投げ込んで、さあベッドへと向かおうとした矢先、手を握られ引き留められる。
ちょっと心臓がドキッとして、一体何だろうと振り向くと、頬を掻いてる翔から、意外な提案が飛んできた。
「──渚、散歩に行かないか?」
*
──月が沈んで、あらゆるものの輪郭がぼやけている明朝にて。
「──ってな訳だ」
「そうなんだ。……大変だったね、それ」
「ああ。まさか大学の自販機から、あんなのが出てくるなんてな。危うく寺に駆け込む所だった」
「こわ〜……」
少し体を動かした方が眠りに就きやすいだろうという翔の配慮を、渚はありがたく受け取った。
僅かに彼方が明るくなってきたぐらいの曖昧な空を見上げ、ぼんやりとした頭を抱えながら、翔と渚は近所にある、海岸の砂浜を歩んでいた。
その過程で、とりとめのなかったり、あったりする話を,しては聞いての応酬を繰り返す中、4回目の渚の番となって、TS娘の子作り事情の暴露を始めてから、数分が経過していた。
「──それで、TS娘の原始卵胞っていう細胞は、40代ぐらいまでは消費しても増加するらしいんだ。これがどういうことかって言うと、俺が排出する卵子はその細胞が無くなり始めるまで年をとらなくて、若いままなんだって。男の時の精巣の要素を受け継いでいるからかもって、研究所の人達は予想してるらしいよ」
「へええ」
「んで、普通の卵子は生まれてから1日しか生きれないんだけど、こっちのは3日間も生きられるんだ。さっき言った原始卵胞の違いとかって、これまた言われてる」
「結構違うもんなんだな、普通の女と比べて」
よく分からないなりに、翔は相槌を打つ。
渚は嬉々として更に話題を広げる。
「でね、普通の人の受精卵は細胞分裂しながら着床する為に、1週間ぐらいかけて移動するんだけど、8時間ぐらいで済ませるんだよね。それに加えてTS娘の子宮内膜は着床しやすいようにできてる。だから、TS症を発祥した奴は、女性の数倍は妊娠する可能性が高いんだ」
「はあ〜っ……凄い話だな……」
「まぁ、そのせいで勢いに流されてとか、レイプとかで、望まぬ妊娠をする例が多いから、俺も排卵日を予測する検査薬や、アフターピルをもらってたんだよね」
「……あ」
翔の脳裏に、初体験における過ちがフラッシュバックして、翔は足を止めた。
TS娘の体の仕組みは、渚の補助の為に多少は理解していたのだが、そういう生殖事情には詳しくなかったので、先程までの渚の話を遠く感じていた。
しかし、望まぬ妊娠という単語にて、途端に現実味を帯びてきて、そしてアフターピルという用語が、あの夏の出来事を想起させる形となった。
思い返せば返すほど、かつての性欲に敗北した己の浅慮さに、恥じ入るばかりであった。
「……いや、マジで。あの時俺が中に出してしまったのって、想像以上にヤバかったんだな。……すまん」
「え、あ。こっちも無遠慮に言っちゃってごめん。……結局何も起きなかったんだから、もう気に病まなくてもいいんだよ?」
「いや、渚が許してくれてるのは分かってるんだが、それに甘えてたらいよいよ見境がなくなるというか、何しでかすか分からないから、戒めとして、絶対に忘れないようにしてるんだ」
「……何しでかすのか、見てみたくはあるけど」
「……そういう言葉は効くから、止めてくれ」
性欲というのは乗りこなし、調伏させるもので。
浅ましきそれに屈服し、身を任せるなど、断じてあってはならなかった。
と、固い決意を秘めてはいるものの、渚のそういった1言で簡単に揺らいでしまうことを反省しなければならなかった。
「……まあ、それで話戻すんだけど、TS娘は卵子を生む日が1番体が妊娠しやすいよう、出来上がるんだって。……だから、何が言いたいかって言うとね。俺が、子作りする時は、排卵日の前日とかじゃなくて、当日がいいんだってさ」
「なるほどな。……ん?排卵するときって、痛みが生じるんじゃなかったっけ、大丈夫か。……いや、そういうのには鈍いんだったか?」
「そうそう。生理痛とかと同じで、TS娘はそういう性器周りの内から生じる痛みとかには、凄い鈍いんだよね。チクっとしたりするぐらい。だから、気にならないよ。まあでも、気分が落ち込んだりとか、イライラしたりとかの、精神面の奴らはバリバリくるんだけどさ」
「不思議なもんだよな……」
その返答以来、会話は停滞し、静かに砂を踏む2つ分の音だけが、ひっそりとした海岸へ染み込む。
そうしていると、ふと、隣の渚の分の足音が消えて、翔は立ち止まり、振り返る。
渚は少し躊躇って、口を開く。
「子供を作るいつかってさ、いつになるかな」
「……そうだな。さっき渚が言ってたTS娘の子育て支援も、話を聞く分には良いと思うけど、過信はできない。少なくとも、卒業して、仕事に慣れて生活の基盤が安定してからだから、4年以上はかかるだろうな。……まだまだ遠く感じるけど、多分すぐ来ると思う」
「それが1番、か……」
翔が堅実な将来を考えてくれていることへの、安堵と嬉しさが渚の胸中に生まれていた。
だが、心の底にある未来への朧気な恐れと寂しさが、翔への返答を、少し落胆したような言葉尻にしていた。
「……駄目か?」
「ううん。そうじゃなくて。……正直に言うと、あの時はいつかって言ったけど、今すぐ翔との子供が欲しいって、思ってる俺がいる。早く翔との家族の証が欲しいっていうか、何というか」
「…………」
「……うん、ごめん。俺の我が儘だ。思ってるだけだから、気にしないで」
仕方ないこととはいえ、妊娠までの道程が長いのは事実であり、家族が欲しい渚にとっては、一日千秋の思いに違いない。
翔はそんな渚の意を汲みたかったが、それの解決案は今のところ出せそうになかった。しかし、だからといって、このまま放置するというのは気がかりであった。
軽い慰め程度にしかならないのは、明白であったが、頭の片隅にある、常々思案していたことを、翔は口頭にて提出することにした。
「……なあ。今までもちょくちょくしてきたけれど、これからはもっと2人の写真をいっぱい撮ったり、アクセサリーとかそういうのをプレゼントし合ってさ、俺達の思い出を形にして、互いの不安を消せる拠り所になる物を、増やさないか?」
「え。…………っ、本当に、本当に優しいね、翔は。俺の我が儘なんだから、放っといていいのにさ」
「そうじゃない。……これからどうしても、お前が知らない男と喋ってたりするのが怖くなるから、そういう形になった奴を見て、俺は渚の大事な存在なんだって、安心したいって、常々思ってたから、なんだ」
「そっか。…………ありがとう」
渚が右手の薬指に嵌まったままの指輪を撫でた。
翔の隣に立って、自分と手を繋ぐよう合図して、歩幅を合わせて歩き出す。
握ってくれているそのごつごつとした手はやはり、温かい。
「……家族を養えるようになるって目標は出来たし、これから、もっと勉強しなきゃな、俺」
「俺も、勉強して家事をもっと学んで、翔を支えられる奴になれるよう、俺も頑張るよ」
そうこうしている内に、2人は砂浜の終わりまで歩き切っていた。これ以上は、何の風情もない無機質な岩場が続くだけ。
すると、砂を付くことを厭わずに、翔は砂浜に座り込んだ。
渚も、翔の隣に足を畳んで座った。
何をするでもなく、海面を見つめたままに、ただ時間を悠々と消費する。
染み入るようなさざ波の音と、角の取れた潮の匂い、ひんやりとした空気。
2人はこの、のっぺりとした、夜と朝の狭間の時間を、目と耳と肌にて、感じ入っていた。
長閑に流れる時の中にて、渚が何気無い調子の声色で呟いた。
「……いつかする時の日に、さ」
「ああ」
「1日中、生でシてみたい」
押しては引く波による幻聴かと疑うも、窺うような渚の表情に、聞き間違いではないことを理解する。
かつての高校生の自分に聞かせようものなら、鼻血を吹き出して失血死してしまうような、あまりに破廉恥な一言は、翔を動揺させるには充分だった。
「……エロすぎないか」
「まあ、多分途中で疲れて止めると思うけど、思い出に残るようなえっちな事をやってみたい。後、朝からヤることで、上手くいけばその日の夜に妊娠できるかもしれないからさ」
女の体になって大分経つが、ついぞ卒業することのなかった童貞としての、有り余る願望と性欲は、未だに渚の奥深くにて、残っていた。
それと、直ぐ様にでも子供が出来たという、証を欲してる、女性としての意識が混ざりあって、そう発したのであった。
「……どう、かな?」
「……いいぜ、1日中喘がして声を枯らしてやる」
「ふふっ、翔にできるかな?」
「言ったな。後で吠え面かいても知らないぞ」
「俺のクレオパトラ直伝のテクニックをお見せするよ」
「じゃあ俺は……カエサルのパワーを見せてやる」
「どっちが強いか、勝負だね」
「ああ、最強の偉人決定戦だ。賽は投げられた」
波に浚われて消えてしまった方がいいのかもしれない、つまらない冗談を重ねていると、翔は欠伸が出てしまいそうになった。
噛み殺そうとしたが、間抜けに大きく口を開く結果となった。
そして渚にも、その生理現象が伝染する。
我慢はせずに、桃色の小さな口に手を当てて、おしとやかに欠伸をした。
閉じていた眼を開けば、黒から青に変わりつつある海面が、そこにあった。
気がつけば、周りはほんのりと明るくなって、曖昧だった様々なものの輪郭が、はっきりしてきていた。
「帰って、寝るか?」
今日のところは、昨日の疲れを完全に取りきろう。
いよいよ動きだそうとする朝に背を向けて、立ち上がろうとした瞬間、渚が左手の小指を頬の横に差し出した。
「──さっきのもさ、約束してもいい?」
翔は立ち上がる補助にしようとしていた、右手の砂を払って、小指以外の指を手の内へと折り、少女のそれと絡める。
必ず叶えると、決意を示して。
「いいさ」
──指切りげんまん。嘘ついたら針1000本飲ます。
指、切った。
*
──8月4日、土曜日。
長年の約束を果たす、排卵日と上手く重なった休日の朝。
同居している、渚の家にて。
「…………んあ?」
鼻腔を掠める、ふくよかな匂いで翔は目を覚ました。
寝ぼけ眼を何とか開いて、頭の上の目覚ましへと目を向けると、設定した時間より10分は早い目覚めであることが分かった。
隣で寝ていた筈の渚がいないのを確認して、窓越しの日光を浴びつつ軽く背伸びをしてから、ベッドから這い出て、台所へと向かう。
見慣れた廊下の棚に置かれた、2人の旅行写真や花嫁姿の渚が収まった写真立てとすれ違い、様々な記念日が書き込まれた、カレンダーが張り付けてある部屋を通り抜ければ、漂う匂いの根源である、そこへとたどり着いた。
くつくつと煮える味噌汁の味見をしていた、寝間着である、翔とのペアTシャツを着たままの渚が、朝の第一声をかける。
「おはよ。もうちょっと寝ててよかったのに。昨日まで仕事だったんだからさ」
「おはよう。いい匂いがしたもんでな。配膳するよ」
「うん。お願い」
首にかけられた革紐のネックレスに結びついている、サファイアの結婚指輪を擽りながら、渚はコンロの火を消し、食器を見繕う。
翔は冷蔵庫の中に入れられていた2つの弁当箱を取り出して、電子レンジで温めつつ、麦茶が入ったヤカンとコップを食卓へ持ち運ぶ。
棚に納められた、遊園地のプレゼントとしてもらって以降使い続けている、先端の塗装が剥がれ、地の木の部分が剥き出しになった箸を一瞥して、渚の箸と共に引き抜き、運んできた諸々の物と一緒にテーブルの上へと、配置した。
渚が味噌汁とご飯を椀によそったのを受け取って、温め終わった弁当箱と共に並べて、翔と渚は席に付く。
「いっぱい食べてね、精力つける為に」
「おお……」
弁当箱を開くと、中にはみっしりとつまった、昨日の夜調理していたニラと卵と豚肉の炒め物、甘辛く煮た短冊切りの油揚げに、常備菜であるきんぴらごぼうに、ナスの漬物。
そこに、汁椀に注がれたネギとアサリの味噌汁と、ゴマを振り掛けた茶椀いっぱいの白米。
全体的に色味豊かであり、それだけで食欲をそそる。
そして──
「それと、はい、赤まむし」
「ええ……」
──こと、と添えられた、ドリンクの精力剤。
おどろおどろしい竜が踊っているラベルは、華やかな食卓に不釣り合い等という言葉では足りないぐらいに、凶暴であった。
「うーんミスマッチ」
「まぁ、これはちょっとしたジョークで買ったから、気にしないでいいよ。でも飲んでくれたらおもしろ、いや、嬉しいな」
「……まあ、とりあえず。いただきます」
「どうぞっ。いただきます」
渚は男の頃から料理は出来ていたが、女になって両親が消えてから更に、翔の母の元で腕を磨きあげて、洗練された料理は、翔を虜にして止まない。
主菜達は味付けが濃く、黒胡椒が利いたスパイシーな炒め物、噛み締めるほどに煮汁が染みだす油揚げで、柔らかすぎず、固すぎない具合に炊かれた白飯が進む。
だが、そんな濃い味付けは諸刃の刃であり、ともすれば舌が辟易として飽きかねないのだが、口休めとして入れられた、さっぱりとしているナスの漬物と、きんぴらごぼうがいい塩梅であった。
そして、アサリの味噌汁も丁寧な灰汁取りで雑味がなく、貝特有の旨味に溢れた汁と歯応えのある肉厚なアサリの身は、これまた白米のお供として優秀である。
どれも美味なおかずたちでもりもりと飯を頬張る翔に渚は、つい口元がほころぶのを止められずに、その頼もしき健啖家ぶりを、にこにこと眺めていた。
「そんなに美味しそうに食べられると、作った甲斐があるよ、ほんと」
「ああっ。いつも通り、美味くてしょうがない。あ、ご飯よそってくる」
「茶碗ちょうだい?俺がよそってあげる」
「いいのか?すまん、ありがとう」
当の昔に渚に胃袋を掴まれて以来、彼女が作る食事は翔にとって、何でもない1日の、幸せの項目の大部分を占めていた。
主菜副菜を半分ほど残して、白飯のおかわりをして、順当に食べ進めていると、いつしか茶碗の中の米粒は、一粒たりともなくなっていて、詰まっていた弁当箱と、汁椀の中身も空になった。
コップの麦茶を飲み干し喉の渇きを癒すと、既に食べ終わっていた渚へと、手を合わせた。
「ごちそうさまでした。美味かった」
「うん、ごちそうさま。……残ってるよ?それ」
冗談めかして、渚がテーブルの隅に避けられた精力剤を指差す。
言うまでもないことだったが、テーブルの隅に避けられたぽつねんとした精力剤は、この朝の食卓に入る余地はなく、そして間違いなくこの機会を逃せば、冷蔵庫の主、または肥やしになるのが目に見えていた。
それは少し勿体ないな、と翔は考え、致し方なく、飲むことを頭の中で決定付けた。
精力剤を引き寄せて、覚悟を決めて蓋をねじきれば、嗅覚への虐待と思わんばかりの、ツンとした刺激臭が鼻を突く。
手中の中にそんな毒物があるという現実に震えるが、風呂上がりの牛乳のように、怒濤の勢いを持って流し込んだ。
「………おおっあぁ!」
「うわぁ……どんな味だった?」
「……っ美味いもんではないな」
「やっぱり?」
「やっぱり」
ちびちびと飲んで味に悶絶するよりかは、一瞬で飲みきった方が苦痛は少ないと判断したが、薬の風味と得も言えぬ味わいが口を攻撃し喉を焼いて酷いものだった。
とんでもないものを腹に入れてしまったという後悔があるが、精力がつくというのなら、この腹の中で、消化させてやるのも吝かではないと、思い込むことにした。
「…………ふふっ、はははっ」
「何笑ってんだ泣くぞ」
「あははっ、泣かないで?…………ふぅ、片付けよっ」
そんな翔の様子を一頻り笑い終わると、渚は食器をまとめて盆に乗せ始めた。
そして運ぼうと盆に手を伸ばす翔に、こう告げた。
「先、シャワー浴びていいよ。皿洗ってるからさ」
「え?いやいや。今週の皿当番は俺だし、朝食も作ってもらったから、やるよ」
「翔には今日頑張ってもらわなきゃいけないから、気にせずさあさ、入って入って!」
「おお、ああ?……じゃあ、まあ。お先」
渚も頑張る必要があるだろうと反論の構えを取ろうとしたが、彼女の機嫌の良さとテンションの高さに、押しきられた。
翔はその優しさを大人しく受けとることとして、身を清めるべく椅子から腰を上げた。
──8時5分。
渚との思い出の海へと潜り込んでいた翔は、ドライヤーの起動音を聞こえてきたことで、現実へと浮上する。
ごうごう、と温風が吹き付ける音に急かされるようにして、諸々の準備を整えようとする。
これからの行いから世間の目を覆い、隠す為に、大体の部屋のカーテンを閉じて、バラエティが終わり早くも通販番組へと切り替わっていたテレビの電源を落とす。
そうすると、煌々と差す日の光で満ち溢れた外の、エネルギーに溢れた忙しない空気とは異なる、ゆったりとしていて、仄暗く気怠げな、深々とした雰囲気が、家中を満たした。
そして、脱衣所からもドライヤーの音が消えて、生活音が途絶えて直ぐ、此方へとやってくる軽い足音。
女体化してから長い月日が経っているというのに、一切の加齢を感じさせない可憐な少女のものだ。
「お待たせっ」
「ああ」
渚はウェーブがかかった桃色のショートボブを揺らして、そして胸元が緩めな半袖の、深緑のワンピースを身に付けていた。
ワンピースの大きめの袖口から出ている、初雪のように白く、毛が一本も見えない、たおやかな四肢は、極度に痩せている訳でも、太っている訳でもない、健康的な女の子の模範を名乗れるぐらいの、理想的な肉付きをしている。
本人の努力もあるものの、TS娘は基本的に太り辛く、女体化したての時のスタイルを、維持することが容易であるからだった。
しかし、その保たれた体つきとは異なり、女性的な部位は性転換直後よりも大きく成長しており、体のラインが出にくい、ゆったりとした服であるにも関わらず、首元からなだらかな丘となっている胸部の膨らみ、裾から浮かび上がった、まん丸とした臀部が主張していた。
勿論それらは、大好きな男との幾度もの性交と、愛撫による発達なのは、自明の理であった。
その容姿を一瞥して、何度も思い、胸に秘めることなく発してきた礼賛が、今日も翔の口から飛び出した。
「──綺麗だ。渚」
「そういう翔も、かっこいいよ。……ふふっ」
微笑んで、渚は隣にそっと座り込んだ。
翔へと体重を預け、肩へと頭を置く形で寄りかかる。
いつだって隣に、その存在があるという安心感は何者にも代えがたい。
翔は渚の頭を撫でた。出会った頃から変わらない手つきで、慈しみと愛しさを込めて。
渚は頭をゆらゆらと、快い様子で揺らす。
そしてその頭に置かれた手は、首筋へと流れ移った。
「…………ん……」
衣擦れの音と、肌を重ね合う音。
首筋を撫でている手に渚は目を細めて、それに頬擦りをした。
ぷにぷにとした突きたての餅のような頬っぺたが、男らしい厚く固い手に押し付けられて、沈みこむ。
それと共にふわりと舞う、香油により相乗された、渚の甘い体臭。
その匂いは、自分からもするようになっていて、それほどまでに渚との深く長い関係が続けてこれたことに、翔は感慨深くなった。
「──ずっと、ね。この日が来るの待ってた。やっと翔との子供を妊娠できるんだって考えると、嬉しくてたまらないんだ」
「俺もだ。やっとお前との約束を果たすことが出来る」
「……待ってた分、いっぱい抱いてね」
「もちろんだ。今日はずっと、離さないからな」
「俺の声を、枯らせれるかな?」
「やってみるさ」
「……楽しみにしてる」
「ああ、……」
短い歓談を続けている内に言葉数が減っていき、そして生まれた、一瞬の沈黙。
それが、次の段階へ進む合図となった。
「……じゃあ、ベッド。──行こ?」
耳を真っ赤にして、渚は先んじてそう言った。
それを受けて翔は立ち上がり、手を繋いで、渚をエスコートしようとした瞬間。
少女は少し、背伸びをした。
「んっ」
「……っ」
翔の口に訪れた、ふんわりとした軽い衝撃。
それは、一瞬だけ重なる、戯れのようなバードキス。
正に虚を突かれたと言わんばかりの、呆けた表情を浮かべる翔に、渚は気恥ずかしそうに、はにかんだ。
「えへへ。……もう一回っ」
「……おう」
わざわざ背伸びをさせないように、翔は少し屈んで、口と口をくっつけさせた。
ちゅ、ちゅっ、と小鳥の啄みを繰り返しながら。寝室へと連れ添って歩く。
そしてその純情な愛情表現が10回を越えた辺りで、2人が寝るベッドへと到着していた。
首に下げていた、結婚指輪のネックレスを棚に閉まって、陽だまりと渚、そして翔の匂いが混じりあったシーツをめくり、少女は寝台に体を横たわらせると、誘うようにして腕を広げた。
「来て、翔」
帳を下ろした薄暗い部屋の中では、その艶やかな肌の白が、一層に映えていた。
ワンピースの胸元と裾が乱れて、形が崩れない半球の上部と、むっちりとした太腿がちらりと覗けている様は、そのキュートな外見には似つかわしくない、成熟したメスとしての、色香があった。
翔は寝台に登り、渚の背中と腰の寝台との間に手を入れると、のしかかるようにして。
彼女を、ぎゅう、と抱きすくめた。
「……あ………」
「苦しく、ないか?」
「うん、続けて……」
男の耳元で、少女の色めいた吐息が溢れる。
隙間もないぐらいに密着されて、翔の存在をどこまでも覚えさせられるようなこの体勢を、渚は好んでいた。
身動きが取れないようにされて、そして体にかけられた重さと力は、どうあがいても自分のそれでは跳ね除けることができない。
自分が女であることをまざまざと意識させられるのと、翔に求められているということが、彼女の内に眠るマゾヒズムを刺激し、優越感を満たす。
そして互いの距離がどこまでも近いが故に、翔の匂いと体温に包まれて、片割れの存在を五感にて強く感じとれるのが、理由だった。
また、一見すれば、服従させ蹂躙するよう乱暴な姿に見えるが、その実苦しくならないよう、体重のかけ具合と力加減に細心の注意を払ってくれている優しさがまた、渚は好きであった。
酸素を取り入れて膨らむ胸部。
ドクドクと早鐘を打つ心臓の鼓動。
じっとりとした熱を覚える息遣い。
伴侶の、命の息吹を、一身に感じて。
「……翔」
「渚」
翔が見下ろし、渚が見上げる。
奇しくも、関係性が大きく変移した、翔が渚を初めて犯したあの夏と同じような体勢にて。
──今度は、憂いなく渚の膣内へと精液を吐き出し、孕ませて、名実共に合意の上で、自分の女にして、子供を産ませる。
オスとしての本懐を果たす、待望の、最大の機会に、翔は約束を叶える決意を新たにする。
──あの時はキスが少し怖かったから、代替として喉を差し出した。
でも今は、何も恐ろしいことなんて、ない。
渚は目を閉じることなく、視界一杯に翔の顔を納め。
自分から、顔を近付けていく。
そうして2人の唇が重なろうとして──
ちゅう。
──と、互いの口で覚える、甘い粘膜の粘り。
そうして、長い夫婦の営みが始まった。
「……んん、んちゅぅぅ……」
──先刻までの愛情を確認し会うバードキスとはまるで違う、性交の前準備として互いの興奮を誘い、そして満たす、深く強い接吻。
渚はキスをよく求めるようになった。元来抱えている寂しさを、翔の口内の温かさと、粘膜の感触で埋める、親友ではできない恋人としての愛情表現と甘え方が、気に入っていた。
「ちゅるる……じゅうう、んきゅ……んんっ」
当たっただけのような軽い接吻をした時の、初々しい乙女のような表情だった筈が、淫蕩な光を目に宿して、目尻をとろりと下げた、艶めかしく、発情していると分かる顔に変わっていて。
番との愛を確かめあい、より発展させる密度の濃い口づけを、もっともっと、と欲張って、翔の首の後ろで交差させた両腕で引き寄せる。
傍目から見れば、のしかかっている翔が攻勢のように見えるが、その実態は渚に主導権を握られて、成すがままだった。
加減を知らない初心な童貞と処女のように、酸欠間近までお互いに吸い続けて、ようやく唇を離した。
「ぷぁ……はっ、はっ……、っん……」
「ふーっ……ふぅ……」
熱と色の籠った2人の湿った吐息が、閉じきった寝室の空気を白く霞めていく。
渚は再び翔の唇へと自分のそれを押し付けた。
そして今度は、彼の口の中へと己の舌を入り込ませ、ぐちゃぐちゃに混ぜ合うことで、より一層、淫らな色情の炎の中へと、呑み込まれていく。
「ん〜〜♥️ぢゅぷっ……ちゅう、ぇあ……はぷっ……ちゅうううう……」
互いの涎を移し合って、自分が相手の色に染まっていく甘美な感覚に陥る、口同士の性交と例えられるような、熱烈なディープキスを繰り返す。
相手の涎が入り込んで喉を通る度に、緩効性の毒が回るように、あらゆる感覚があやふやになり、ぐずぐずと溶けていくようだった。
特に、時間の感覚に対する影響が顕著で、翔はディープキスを始めてどれほどなのか良く分からなかった。10分以上経ったようにも、実は1分も経っていないかもしれない。
口づけの魅力に取り憑かれた、ぼやけた脳には判断がつかず、どうにもはっきりしなかった。
「はむ、むちゅ、……れろっ……ちぅ……っ♥️」
唇を繋げたまま、翔の口内にいる舌を自分の舌でつつきあって、裏側をくすぐって、持ち上げると、くるくると絡めあい、全体を満遍なくなぞる。
そうして、外へと引き摺り出された翔の舌を渚は唇で捕まえた。
食みながら吸い付いて、どんどん自分の口腔の中に引き込んで、頬の裏側で愛撫する。
どちらのともつかない、濁った涎が口の端から滴り落ちて、糸を引いては互いの口回りを、べとべとに汚していった。
「ふっ、んむ、んんっ」
「んはぁっ、ん、ん…………っ♥️」
ぐいぐいと、意識せずして翔の腰が動いて、ズボン越しの固い剛直が、子宮の上の肌を滑っていく。
じんじんと最奥が疼くけれども、それ以上の直接的な刺激はやってこない。
渚にとってそれは、あまりに切なくてもどかしい。
もっとキスをしていたいと延長を望む気持ちと、早くそこをいじって欲しいと切望する気持ちがせめぎあうが、いよいよその疼きが耐えられないものになってきて、結果選んだのは後者だった。
舌を1度己の口腔の元へ戻すと、息も絶え絶えに、渚はお願いをした。
「下っ、触って、翔……。切なくて、おかしく、なりそう……っ」
「っあ、すぐ、触る」
翔は抱きすくめていた左腕をワンピースの裾の中へと入り込ませた。
手で探ると、ある筈のそこにショーツはなく、無防備に晒された大事な部分が、あった。
ピンと立ったクリトリスを手のひらに当てて、ぐにゅぐにゅと女性器全体を手で揉む。
「んぁっ……う、ん……♥️」
無毛のそこは滑らかであり、柔らかくある。
そして既にそこは、妊娠への期待と濃密な口づけで、前戯の必要がないほどに、しとどに濡れていた。
ワンピースの裏地に、漏れ出た愛液の染みが広がっているほどに。
愛撫を受けながら、渚は接吻の補助をしていた両手を翔の下半身へと伸ばしていき、パンツへと手を入れると、股座で屹立するそれを包む。
思わず翔は腰を引いて、密着を解除した。
心臓から血液を大量に流し込まれて、迸るように脈打つ、いつも以上に硬く、大きい海綿体。
特に、竿に浮き上がった血管の太さは尋常ではない。
渚は恍惚の表情で、手でその熱を感じ入る。
「今日の翔の、ここ、すごい……」
「うっ、く」
そんな賞賛を女から貰って、猛らない男はいない。
外部から揉み解された女陰に中指を添え、指の腹でその女穴の入り口を撫でると、指先をそこへ差し出した。
──ぎゅ、ぷん♥️
肉を押し広げる抵抗が一瞬あった。
だが直ぐに、指は膣内へ侵入を果たした。
「あ、はっ……ん♥️」
翔の中指から伝わるのは、明らかに平常時のそれとは違う火照り。排卵により体温が上昇して、微熱ギリギリのところで止まっていることで、女性器が受胎の為の内臓器官であるというのを、ありありと再認識した。
そしてそんな大事な部分に、無遠慮に指を入れ、そして射精する許可を得ていることが、なによりも翔を興奮させる。
ぬめぬめとした、粘っこい肉ヒダを軽く指でさすりながら、へその下の辺り、渚のGスポットへ。
ざらついたそこに中指を滑らせて、波打たせると、渚は体を跳ねさせて、大きく反応した。
顔を仰け反らしていることで、無防備になった首筋へと舌を這わし、初体験以降、性感帯となっている渚のそこを同時に責め上げる。
──くちゅくちゅくちゅ♥️
「ふぁっ、んんっあ、あっ♥️っく、ひうぅっ♥️」
爪先をピンと伸ばして、容易く渚は絶頂へと登り詰めた。
中指を痛いぐらいに膣肉が締め付けてきて、翔は生での渚の膣内は、どれほど気持ち良かったのかを、思い出さずにはいられない。
渚の中をしっかりとほぐし終えて、指を抜くその時に、僅かにGスポットと指の腹がすれ違って、渚は甲高い艶のある声を漏らした。
そうして抜ききった指を眼前に晒すと、濡れそぼった女陰からダマとなって出てきた、粘りが強く、そして体温で蒸されたことで匂いが強まった指に纏わりつく淫蜜が、甘ったるい濃いメスの媚臭を漂わせた。
「っ……」
そんな劣情をもたらす臭いを嗅いでしまったものだから、翔の愚息が強く跳ねて、目の前の女を犯したいという、暴力的なまでの衝動が巻き起こる。
1回の絶頂だけで愛撫を止められた渚も、奥の疼きが解消された訳ではなく、お預けを食らったような物で。
その性で、僅かにあった理性と恥じらいが剥ぎ取られて、翔のイチモツが、中に欲しくてたまらなくなった。
「……翔。もうっ、我慢、できないっ……」
その言葉を受けて、翔は挿入するべくして、にべもなく体を離すと、渚は裾をたくしあげ、膝裏に手を通し足を頭の方へと持っていくことで、秘部を持ち上げている、所謂まんぐり返しの体勢となった。
それは、精液が奥で溜まり、精子が子宮に流れ込みやすくすることで、受精を促す体位が出来るようにし、股間を恥じらいなく見せつけることで、翔を誘惑しようとする意図があった。
「っね。はや、く。ここに精子、ちょうだい……?」
潤んだ瞳を揺らして、渚は大陰唇にあてがった指を外側に動かすことで、翔の愛撫で少し乱れた、一本の縦割れを広げた。
くぱぁ、と、初心な見た目の外側と正反対の、粘液でぐずぐずに蕩けている、桜に僅かに朱を足した色をした、男を知っている淫らな内側が、剥き出しとなった。
顕になった菱形の肉の雌しべに、翔の熱烈な視線を浴びて、渚はぞくぞくと背筋を興奮で震わせ、膣穴をひくりと蠢かせた。
「──っ、っはぁ、はぁっ……!」
欲しがりな少女の媚態を示されて、息を切らすまでに獣欲を滾らせた翔は、パンツを脱ぎ捨てて、いきり立つ怒張を、広げられたままの秘部へと宛がう。
鈴口と膣口が触れあうと、ぶちゅり、と粘ついた音が鳴った。そしてそこで、突き進もうとする腰を止める。
先端から伝っていたカウパー液が膣へと付着している以上、もうこの時点で、その中に僅かに混じった精子が、卵子を求めて、子宮へと突き進もうとしているかもしれない。
故に、もう引き返すことは無意味に近い。
だが、それでも、互いの人生を大きく変える選択を自他共に確認するべく、一刻も早く、交尾をしたい欲求を押さえながら、翔は渚に問う。
「渚っ、いいん、だな……っ」
広げていた指を、翔の頬へと当て引き寄せると、渚はその必死な問いに、いやらしく答えた。
「うんっ、作ろ?……俺と翔の、赤ちゃんっ♥️」
「────!」
──ぶちゅ♥️ぐぶぐぶ♥️
亀頭が何の抵抗もなく、膣内へ突入した。
初体験の時は陰茎が最後まで入りきらず、固かった渚の膣だが、幾度もの翔とのセックスを経験して、最初で最後の男であることを認識して以降、その剛直の形を健気に覚え、そして丹念に解され開発されたことで、すっかりと馴染み、翔の陰茎専用の蜜壺となっていた。
他の男を知らない、翔だけを受け入れる一途な膣内は、愛するオスの、久しぶりの生の肉棒を熱烈に迎え入れる。
「──ぁ♥️んん……っ♥️あっ♥️〜〜〜〜っ♥️」
──ぶちゅん♥️
多量に分泌された愛液の塊が潰れ弾ける、濁った音を立てながら、閉じていた膣内を肉棒が押し広げて、一気に奥深くへと突き刺さった。
「翔のっ、ぁ、あっあっ♥️すごく、熱い……よぉ♥️」
「う、あっ……くぅ」
何度も体験してきた渚の膣への、1回目以来、封じてきた、コンドームで隔てない、生での挿入。
久し振りというには足りないぐらいの時を経て体感する、ゴム無しでのホカホカとした肉厚な淫肉に包まれる感覚は、初体験の、強烈すぎた快感と寸分足りとも違わない。
そこには、溶かされてしまいそうと錯覚するほどの熱さと、濃密な気持ちよさがあった。
「早く、ぐちゅぐちゅって、してぇ♥️」
言われずとも、組み伏せている女を、もっと鳴かしたいと叫ぶ獣欲のまま、腰を打ち付けていく。
膣は桃色の柔壁を収縮させ、オスの射精を促そうとして、弱点である裏筋に当たる肉ヒダをうねらせ、重点的に竿をねぶってくる。
腰が砕けそうな快楽が翔の内から込み上げるが、それに負けじと、Gスポットの周辺を撫でるように浅く往復させ、擦り上げ続ける。
──とんっ♥️とんっ♥️
「あっやっ♥️ぅ♥️もう、イくっ、ぁ───っ!♥️」
効果はてきめんで、ガクガクと腰を浮かせて、渚はすぐに達した。
蠕動する膣道が、陰茎をみちみちと握り締める。
翔と肉体関係を結んでから、渚は分かったことが1つあった。
それは、彼との体の相性が、とてつもなく良いということだ。
女になって暫く経ってから試してみた、手や玩具を用いての自慰では、こんなにも感じることはなかったし、達したこともなかった。
渚は自分が不感症なのか、それとも女性の体へ期待し過ぎていたのかと思っていたのだが、痛みを伴った上に乱暴で、翔の独り善がりなものだった初めての性交の時に、初めて絶頂を迎えられた。
その後、再び自慰を試してみてもあの時ほどの快感を得ることができず、ならばと翔との情事を行えば、必ず2回はイくようになっていた。
そして経験を得たことにより習得し、上達した翔の性技がより渚を快楽の高みへと登らせて行く。
「渚、渚……っ!!」
「っ♥️もっと、名前、呼んでっ……♥️」
そして翔も、渚と体を重ね合わせた回数は、もう数え切れない程なのに、何度味わっても飽きることのない、女体の魔性っぷり、いや、彼女の体に魅了され続けていた。
それはもう、互いにかかったまま解けることのない、蠱惑的な魔法なのだろう。
乱れる渚にたまらず、浅かった抽挿は、種を植え付ける為の、オスの本能を剥き出しにした、深く長い猛烈なピストンとなっていた。
接合部から膣の分泌液が糸を引いては纏わりついて、
幾重もの架け橋が出来ては途切れていく。
──どちゅどちゅどちゅ♥️
「あ、あ♥️あっ♥️あっぅ♥️」
赤子の部屋の扉に、何度も先端でノックして、妊娠の用意をしろ、と肉感的な言伝を送っては、甘えた声が少女の口元から滲み出して、止まらない。
柔らかな自分の肌に分厚く固い肌がぶつけられることで生じる、どうしようもない悦びが、渚の思考能力と、可憐さを奪って、淫乱な女にさせていく。
「あっ、ぐ!渚、もう……っ!」
亀頭がパンパンに張ってきたことで、敏感な膣内が射精の気配を感じて、一層締まりを強くする。
渚は翔のそれで子宮がいっぱいになって、自分が征服される様を想像するだけで、おかしくなってしまいそうだった。
「ふぁ♥️っん♥️……っ翔──」
逃げ道を無くし確実に孕ませるべく、ふっくらとした大陰唇に、陰嚢をぴったりとくっつける。
僅かに遠くなっていた二人の体の距離は、再び0になった。
膨れ上がった亀頭に、ぐっと子宮口がいとおしそうに吸い付いた刹那。
渚は耳元で、囁いた。
「──愛してる……♥️」
「っ!俺、も、────う、ぐううっ!!」
堰を切ったように、灼熱の奔流が尿道を押し広げて、イチモツは弾けた。
──どびゅるるる♥️ぶびゅうう♥️どぷっ♥️どぷん♥️
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ♥️」
溜め込まれたゼリー状の卑猥な粘体が、渚の内にへばりつき、染め上げていく。
液体というよりは固体に近い精液が奥にぶつかる度に、まるでこの女を征服してやったという刻印が焼き付けられるようで、渚の視界はチカチカと瞬いて、甘イキを何度も繰り返した。
そして、絶頂による子宮の一時的な収縮が、精液を吸いあげて子宮頸管の奥へと、誘い込むように作用する。
そうして飲み込んだ精液の中の、夥しい数の優良な精子達が、ふよふよと卵巣に漂う卵子を求めて、その身をくねらせながら、我が物顔で胎海を泳ぎ始める。
孕みたい、孕ませたいという、メスとオスの相互の欲望と情念が、渚の子宮の中でとぐろを巻いていた。
長く深い吐精がやっと止まって、多少の余裕が出来た翔は、己の面を引いて、渚の顔へと視線を向けた。
「…………っあ♥️………ぅ♥️」
渚は、胎内に注がれた、子宮に滞留する熱に陶酔していて、時折快楽の波に体をびくん、と震わせながら、潤んだ焦点の合わない瞳をぼんやりと宙へと向けていた。
そんな茫然自失とした渚の表情はどこまでもエロティックで、翔は思わず彼女の唇を奪う。
絶頂の余韻の最中にいようと、無意識の内に舌を絡めて、渚はその接吻に夢中になる。
「ちゅ、ぅん……れろ……ちゅぱっ」
「……っはぁ、渚」
「……んぁ、……気持ちよすぎて、ぼーっとしちゃってた……」
「……そうか」
繋がったままのそこから伝わる、渚の胎内の熱によって、翔は腰から先がぬるま湯に浸かっているような錯覚を覚えていた。
そこに尾を引く射精の快楽も合わさることで、翔も夢うつつのような状態だった。
互いに汗で髪が張り付いて乱れた顔を、見つめあう。
「もうちょっと、繋がっていよ?」
「おう……」
渚はふにゃりと笑った。
翔はまた、のしかかるようにして、体を楽にしたのを、渚は彼の背中と腰に手と足を絡めることで、また彼女も楽にした。
翔は射精後の虚脱感が無いことに感嘆していた。
精力みなぎる朝食か、精力剤のどちらもが作用したようで、胸中に灯った興奮と色めく火照りは、早々に冷めそうになかった。渚のお陰である。
故に、性交を再開することは容易だが、今渚と共有している、この事後の時間はそれより優先する程に、心地いい物で。
何を言うでもない、優しい静寂が流れる中で、不意に翔は耳元で呟かれる。
「翔?」
「ん、どうした」
「呼んだだけっ、ふふ」
「……渚」
「なーに?」
「呼んだだけ、だ」
「……んふふっ」
冗談に答えてくれた翔に、渚のいたずら心がくすぐられた。
少女は膣へと意識を向け、力を入れる。
そうすると、軟化していた肉棒を膣肉が食いしめて、粘膜に張り付いたままの竿が跳ねて、尿道に残った僅かな精液すらも、絞り出されていく。
「──あっ、う、く!……渚っ!待ってくれ、あっ!」
「んっ、んっ……♥️」
──ぐちゅぐちゅ♥️きゅうううっ♥️
精子を欲していることをこれでもかと示されて、即座に反り返るようにして、翔の分身は硬さを取り戻した。
萎んでいたそれが膣内で膨らむ感覚は、出したら抜かなければならない、コンドームを着けたセックスでは味わえない新鮮さと、自分で気持ちよくなって大きくなってくれたのが、はっきり直で伝わる嬉しさがあった。
自分の中で陰茎がすっかりと勃起したことと、悶える翔を見て、渚はいたずら心を満足させたが、それはそれとして、今日に至るまでコンドームによる避妊を徹底してきた反動から、1回程度の中出しでは、物足りる訳がなかった。
妊娠の確率を高めるべく、そして当分ないであろう、生ハメをもっと楽しむべく、性交の続きを求める。
「上に乗って、いい?」
「……オッケー」
翔は一度体を動かして、渚の中に収まっていた陰茎を引き抜いた。
粘度故か、それとも子宮に飲まれてしまったのか。
膣口から注ぎ込んだ子種が出てくることはなかった。
汗で重くなってきた服を脱ぎ去って、両者ともに一糸纏わぬ姿となると、翔が寝台に体を横たえて、渚がその上へと乗っかる。
「さっきより、おっきくない?」
「まあ、……そうかもな」
渚は肉竿を握って、肩幅ほどに足を開き、胸板へと空いた片手を置いた。
こすこすと、勃起を維持させる為に、その小さな手で上下に肉棒を摩擦しながらゆっくり腰を降ろしていく。
先端から伝わる、ねっとりとした粘膜の肉感。
膣口から亀頭へと、とろとろの粘液が滴っていく。
翔が腰を浮き上がらせれば、すぐさまにその肉穴に飲み込まれるであろう。
渚は先端だけを密着させると、手による摩擦を止め、腰を前後に揺することで、翔の腹の上で、生での感触を楽しむ。
それはまるで、娼婦のような淫乱な所作。
「うおぉ、エロ……」
「ふーっ、ふーっ……、いれるよ、んんっ♥️」
──ぐちゅん♥️
凶暴な肉杭へと、渚は自ら体を差し出した。
何の抵抗もなく奥まで突き刺さり、翔の陰茎は外気との20秒にも満たない再会からお別れをして、どろどろの淫らな沼の、奥深くに埋もれていった。
「……んっ♥️あっ♥️はっ……気持ちいいっ」
目を瞑ったまま、ぐりぐりと前後に腰を揺らし、時にはくねらせてを繰り返しては、その度にメス全開の濡れた吐息と声を溢す。
視界という情報を断つことで、膣肉がゴム越しではない剥き出しの肉棒を、自分の最も感じる所をぐいぐい圧迫されている感触に集中し、堪能していた。
上下の動きでの摩擦による快楽では、精液を掻き出してしまう故に、前後に動くことで、精液を膣に馴染ませるようにして、精子が一匹でも卵巣へとたどり着けることを願いながら。
「ふっ、ふうっ♥️あっ、うっ♥️イく、イく……っ♥️」
徐々にその腰のグラインドの勢いが増していく内に、胸が大きく弾んで揺れて、甘酸っぱく匂い立つ汗が飛び散っていく。
耐え難い程に高まった性感が弾けて、絶頂に至ったことで翔の腰の上で渚は震えるが、すぐにまた腰をくねらせて、性運動を再開した。
騎乗位は、女性が気持ちよくなる為の体位であるが、粘膜がめくれあがっては押し込まれていく、接合部の様子がはっきりと見ることができるのと、激しい前後運動で陰茎が揺さぶられシゴかれることで、そんな常識なんて忘れる程に、官能的な痺れが常時翔の脳を焼く。
そして何よりも、己の腹の上で、淫乱に踊り快楽に溺れていく少女に、翔の性的興奮と快感は高まり、止まらない。
楽しんでいるところ悪いという気持ちはあるが、辛抱たまらず、渚の腰を掴むと、翔は己の腰を打ち上げた。
こりこりと奥で擦れていた先端が、子宮口へと突き刺さる。
「──あんっ!♥️やっ、あ♥️だめだめっ、だめぇ♥️」
想定の外からやってきた思わぬ快感で、動きが乱れていく。
駄目と言いながらも、渚も突き上げてくるそれに合わせて腰を迎えて、奥へぶつけていた。
翔は渚が胸板に置かれていた彼女の手を拾い上げると、指と指の隙間を埋めて繋ぎ合った。
渚にとってそれは、情愛の手綱となる。
手綱を持って己の下の暴れ馬を御そうとするけれど、ペースに乗せられ意のままに動かされて、男を喜ばす猫なで声を多分に漏らしてしまう。
「ぐっ、あ、っ!出すぞ、渚っ……!」
渚の指が、翔の水掻きに食い込んだ。
それは、絶対に離さないという、強固な意思表示。
同じくして、鈴口と子宮口が濃密なキスを交わした。
「翔っ♥️一緒、に…………っ♥️」
──どびゅううう♥️どぷん♥️どぷん♥️
「〜〜〜〜〜〜っっ♥️んんぁ、ああっ!♥️」
濃厚な精液の奔流が、胎内を灼く感覚。
肉棒で串刺しになっている渚は、その奔流に成す術なく、簡単にイった。
2度目の濃厚な射精よりしばらくしてから、渚は腰を揺すって尿道に残る精子を存分に搾精した後、滑りに滑る膣内から、ちゅぽんと、翔の剛直を引き抜いた。
先程と同じように、たっぷりと注がれた子種は子宮が貪欲に飲んでいて、その入り口から垂れてくることは、なかった。
「……まだ休憩しなくて、大丈夫?」
「全然、イケる」
「本当?っふふ」
浮かべた乙女然としたあどけない笑み。
さっきまでの女だった渚とのギャップに、翔の肉欲はそそられて、また下半身へと血液を送り込むよう、脳が指示を始めた。
「もっと中に出して、赤ちゃんが出来るように頑張ろう?……あなたっ♥️」
そう言って渚はころん、と寝転がった。
滅多にしない、翔へのしおらしい呼び方に興奮せざるを得ず、夫は妻をまた組伏せるのであった。
──片足を手で持ちあげられ、支えられている、夫の欲望を迎え入れていた渚を壁際に押し付けて。
「んっ、んぅ〜〜────♥️」
翔は、直ぐに復活するであろう射精欲と生殖欲を発散した。
旺盛な子種を奥に流し込んで、暫く余韻に浸る為に、結合したままの状態を維持してから、ゆっくりと陰茎を抜いた。
渚は壁からずり落ちて、すとんとシーツに座り込む。
そうして呼吸を落ち着けようとする彼女の眼前には、4連続の過度な射精で、しょぼくれた男根があった。
それは互いのあらゆる体液が撹拌されてこびりついていて、どろどろになって汚れている。
とろんと水気を帯びた瞳を瞬かせて、目の前の、奥まで触ってくれて、愛してくれる翔の分身へと、渚は指を這わせた。
「……翔、綺麗にしてあげる」
「え……、あ、頼む」
「ん。……わ、すごい匂い」
ずいと差し出された翔のそれに付着している、色んな体液のまざった独特な臭いに少し眉をひそめたものの。
「……あー、ん」
軽い口づけを亀頭に落として、濡れた唇を舌でちろりと舐めてから、ぱくりと肉棒を頬張る。
口づけで散々感じていた、膣と同じぐらいの剥き出しの体温に包まれる。
まぶされた体液を綺麗に舐めとって、尿道に残る精液を吸い上げられ、未だ敏感な竿が数度、震える。
しょっぱくて苦い体液の味が消えて、翔自身の味しかしなくなったら、一度口から肉棒を抜いて、口内に残る残滓を、何でもないように飲み込んだ。
んん、と可愛らしい咳払いをしてから、渚は、ぼそりと1人呟く。
「……ん、まだ元気にならない。じゃあ……、ちゅ」
「え、いや。待ってく、れっ」
渚は薄く伸ばされた涎でぬらぬらとしている竿の裏側へ、労うようにキスを繰り返しつつ、重い陰嚢を両手に乗せて、揉みしだいていく。
息子が起き上がろうとしていたのを認めていた翔は、そもそも綺麗にするのが目的じゃなかったのかと、指摘しようとしたが、やって来たじんわりと染み込むような快感に、言葉を失う。
渚の脳は淫熱に浮かされていて、いつも以上に、奉仕したいという欲求に素直だった。
大きなリップ音を鳴らしながら、渚は翔の精嚢に卑猥な応援を始めた。
「金玉頑張れ♥️ちゅ♥️俺で興奮して作った精子、俺のお腹の中に、ちゅ♥️ちゅう♥️いっぱい、出してね♥️」
「──っ、あっ、うっ」
初体験を迎えて、受け身だったのが、遊園地の告白によって明確に結ばれてからは、積極的に翔を悦ばせて、気持ちよくさせようとする能動的な傾向が顕著となった。求めたがる。
一度スイッチが入れば、いつもの冗談を言うような口調で、男の時の軽薄で猥雑な淫語ではなく、情欲を誘う淫乱な言葉と表現を多用し、性的な挑発をする。
そんな言葉を聞く度に翔の脳と股間は痺れて、性欲に体の主導権を委ねさせようとするのだから困り物であったが、それは嬉しい悲鳴であった。
「……あむ、ちゅる、……れろっ」
竿へと口づけを落としていた唇が、黒々とした陰嚢へと向かった。
陰嚢にかかる熱の籠った鼻息と吐息がくすぐったい。
渚は玉袋のシワを舌と涎で丹念に伸ばしていくと、睾丸が収まる袋ごと口に含んで、もむもむと食みながら、舌をくねらせ、舐め回す。
「やば、い、それ……っ!」
「……んぐ、んむ……はぷっ……」
呻き声をあげる翔の反応に気を良くして、口内の睾丸を飴のように転がして、刺激する。
そこがどれほどナイーブな部位かは、男であった渚には十二分に分かっており、繊細な舌の力加減で、丁寧に愛撫される。
翔は純粋に陰嚢への責めが気持ちいいというのもあるが、それ以上に大事な存在にそんな奉仕をさせているという倒錯感が、射精後の失われた興奮を、直ぐに取り戻させていった。
「…………んっ、ぷぁ」
渚は充分と見るや否や、玉袋から顔を離した。
渚の口との間にでろりと涎を滴らせ、橋を作るそれは、竿と同じようにぴかぴかに掃除されていた。
先程よりも硬さと大きさが強まった肉棒は、断続的に痙攣するものの、精液が込み上げて、吹き出すことは、なかった。
「元の、かっこいいのに戻ったね……♥️」
見上げられた、色に濡れている蕩けた眼差しが、翔を捉える。
ぞくりと背筋に走るものがある、渚の纏う筆舌に尽くしがたい色気にたまらず、彼女の肩に手を置いたその時、チリリリと、チープな着信メロディが寝室に響く。
はっとして、目に理性の光を取り戻した渚が、テーブルの上に置かれたままの自分の携帯へ手を伸ばす。ちっちゃな液晶に写る名前を一瞥して、溜め息を吐く。
通話を開始する前に、渚は手を合わせて、翔へと頭を下げた。
「ごめん、凛子からみたい。どうせしょうもない用事だろうから、すぐ戻るよ」
「……オーケー」
大学時代の女友達からのようだ。
度々講義で一緒になることがあった、ありし日の記憶が翔の脳内を過る。
彼女は控えめに言って面倒な性格をしている故に、この電話に出なかった場合、2時間おきぐらいにはコールしてくる未来が想像出来た為、手早く応答することを選んだ渚に納得した。
「もしもし?ごめんね凛子、今取り込み中!……えー、じゃない!いつもみたいに構えないんだよ。だから、え?何?……あー、その。いや、それはちょっと、言えない。……違うから!もう、そんな発想しかしないのか頭ピンク野郎──」
ちらりと、翔は視界の隅に映る時計を目に入れた。
結婚祝いに貰ったその時計盤の上を廻る短針は、頂点をとうの昔に過ぎていた。
あやふやになっていた時間の流れを一度把握すると、途端に冷静になって、苛烈な運動で消耗したことによる喉の乾きが、著しいものになってきた。
小声で水分補給と食事の用意をする、と伝えると、渚は申し訳なさそうに、手で丸を作った。
それを受けて、翔はベッドから抜け出す。
その際、翔は何となく後ろへ振り返った。
そこには、自分達が愛し合った痕跡で湿っている、オスとメスの淫臭が匂い立つ、生々しい情事の後が、克明に残されていた。
そこから離れるのが名残惜しくもあったが、男は部屋の外へ歩き出した。
──冷蔵庫の中で冷やしていた、食後の匂いがあまりしないゼリー飲料と、1.5Lの麦茶のペットボトルを取り出して、持ち運んでいく。
「──それさ、後じゃ駄目な感じ?……あー、はいはい分かった分かった。今から探すから、今日はもう2度と電話すんなよもー!」
寝室の扉を開けば、まだ渚の電話は続いていた。
絡みが鬱陶しいことを除けば、中々面白い奴だと渚は言うが、しかし度が過ぎてはいないだろうか。
友好関係を維持することは重要なのは分かるが、と渚の判断を支持したのを棚に上げる。
翔は自分のことを今この瞬間だけでも忘れて、友人から頼まれたであろう探し物に夢中な渚に、少しだけ妬いていたのだった。
いつもされているのだから、こちらへ気を向ける程度の軽い悪戯ぐらい、いいだろう。
さっさとテーブルへと腕に抱えている物を置き、渚の小さな背中から、ひっそりと近づこうとして。
──ぶちゅ♥️
「え?」
渚の下半身から、粘つく音がした。
翔は渚の股間へ目を向けて、驚嘆の声を零す。
そこには、膣内で止め切れなかった粘度の高い多量のザーメンが垂れて太腿を伝っていた。
それなのに渚は、変わらぬ調子で電話を続けている。
渚の子宮内には、己の吐き出したおびただしい数の、卑猥なオタマジャクシがメスを孕ませようと、必死に泳いでいるだろうに、当の精子を受け入れている本人が、それに対し頓着せず平然としている様に、得も言えぬ身勝手な興奮を抱いた。
勿論、己の股に起きていることを彼女は分かっていて、拭うよりも捜索を優先しているだけなのだろうが、翔にとってその光景は、あまりに卑猥で、小さくなっていた翔の陰茎は、加速的に膨張した。
「はいはい、あったあった!次渡すから、もう切るよ?ん、はーい。……ふぅ。翔、お待た、せっ────」
喉の乾きなんて忘れ、性衝動に突き動かされるまま、通話中の辟易とした顔と声色を一変させて、こちらへといつもの笑みを向けた渚の小さな手首を翔は掴み、強引に、しかし下手に体をぶつけて痛まないように、抱えるような形で、押し倒した。
握っていた渚の携帯がカラン、と床を滑っていく。
渚は状況を掴めていない、きょとんとした表情をしていたが、自分に向けられたそそり立つ怒張に気づくと、さっきまでのあどけない笑顔を淫靡に揺るませ、妖艶な女の笑みとなった。
普段の日常が、途端に非日常に変わる瞬間に、翔は昂りのあまり、身震いする。
そんな獣同然の様相を見せる男に、意地の悪い質問を女は投げ掛ける。
「……ごはん、食べてからじゃ駄目?」
「ごめん。……我慢、できそうにない」
「……いいよ。なら、……先に翔の精子で、俺のお腹、いっぱいに、して?」
そう言って渚は、股を開いた。
精液をとろりと、床に溢して。
「─────っ!!」
翔は欲情のままに剛直で陰唇をかき分けて、白濁液を漏らすそこへ、勢いよくぶち込んだ。
「ああぁん♥️んぅ♥️……力、強いよっ…………♥️」
垂れていた精液は元あった場所へと押し込まれ、セックスの準備が出来ていない膣への労りのように、抽挿の潤滑油として作用する。
突然訪れた快感に揺さぶられるが、体は直ぐに順応したようで、蕩けた顔になって口をだらしなく開いた渚へと翔は思わず強く己の唇を押し付けた。
唇を舌で割り、柔らかな口内を舐め回して蹂躙する。
──じゅる♥️ぶちゅ♥️ちゅうう♥️じゅう……♥️
先ほどまでの交わりが理性的に見えるほどの、衝動のまま肉棒を突き入れる突発的で強く荒々しい、獣の交尾と呼ぶに相応しいまぐわい。
夢中で腰を叩きつけて、膣肉を掻き分け奥へと擦り合わせる。
性的な映像作品でも流れないだろう、過度に誇張された性行為の音が、薄暗い部屋にこだまする。
──ぱんっぱんっぱんっぱんっ♥️
「んんっ♥️ん!♥️んぅぅっ……♥️」
相手の呼吸を塞ぐような口吸いによる圧迫感で、苦しくなってきた渚は手の平で翔の背中を何度も叩く。
しかしそんな懇願を、盛りのついた犬は、唇をより吸い上げることで返答した。
ガツガツと目の前の女を犯して、膣内で射精する。
翔の脳内には、今はそれしかない。
そんなしつこく付いてくる唇を押し返して、顔をそらすことで、渚はなんとか、長い接吻を止めることに成功した。
互いのが混ざった唾が渚の頬へと垂れる。
「ぷはぁっ♥️待って、待ってってばっ♥️……ひゃああ♥️ん、んっ♥️」
「ごめんっ!ごめっ、はあっはぁっ、う、ああっ!」
入り口まで引き戻した猛り狂う肉棒を一気に突きいれて、開いた鈴口を、最奥に押し付けた。
──どぴゅ♥️どぴゅっ♥️びゅう♥️
「──────ぉ♥️はっ♥️いっ♥️」
渚の想像よりも早く、翔の陰茎は精液を吐き出した。
自分の膣内で射精されることへの強烈な快楽を、この短時間で覚えさせられた体が、その機会が訪れたことで本人の意思とは関係無く、強制的に脳へと桃色の電撃を走らせ、ショートさせる。
そして、エクスタシーがもたらす痺れが、少女の体を痙攣させた。
「〜〜〜〜っく♥️っあ、は♥️はっ……あ」
恐ろしく獰猛な性交を終え、翔はごろんと渚の上から転がり落ちて、フローリングの床に倒れこんだ。
絶頂の波から降りてこられた渚も、四肢を投げ出して深呼吸をする。
ひんやりとしたそれで、荒い呼吸で落ち着きのない体に安らぎを与えようとしていた渚が、ボソリと呟いた。
「はあっ、はーっ。…………喉、乾いたっ」
寝室の冷房は稼働させているが、現在進行形で発生している、性交の熱を早々に冷ますことは、できそうにない。
汗で張り付いた髪をかきあげながら、同じく横で倒れ伏している翔に、期待の眼差しを向ける。
そんな意図を汲み取れないほど翔は鈍感ではないが、如何せん一呼吸欲しかった。
渚は、翔が動かないと見るや否や、ごろごろと転がり翔にぴったりとくっつく。
汗で肌と肌が張り付いて、暑苦しいと感じざるを得ない。
「喉が乾いたなー。取って欲しいなー、乱暴なダーリンっ?」
「……すまん、すぐ取る。よっ、と」
「あ、コップに注がなくていいよ。そのまま頂戴」
「ん?おう」
よろよろと体を起こし、翔は頼まれたそれを、手元へ寄せて、起き上がった渚へと手渡した。
渚は両手でペットボトルを掴むと、大きく傾けて、ごくりごくりと、大きな音をたてながら、小さな喉を懸命に動かす。
激しい運動で水分が失われた体に、冷えた甘露が染み込んで、胃へとたどり着くのを感じられるのが、とてもに心地良い。
「ぷはっ、おいし」
「俺にもくれ」
「…………おっけー」
何かしらを思案したのか、一瞬の間が空いてから、翔へとペットボトルを渡そうとする。
そこに不穏なものを感じながらも、翔は手を伸ばす。
だが、そんな翔の懸念は的中し、渚は突き出していた手を翻し、烏龍茶を手の内に戻すと、翔に見せつけるように、それをまた口に含んでいった。
翔は苦笑する。
「いじわるなや、っんぐ!?」
「んむっ、……ちゅうう」
突然触れあう唇。
唐突に行われたキスに戸惑うも、直ぐに意図を察した翔は、間近で見つめてくる渚に、大人しく唇を割った。
渚のすぼめられた口から、少し温くなった烏龍茶が流れ込んでくる。カラカラの口内が潤っていって、そして喉へと到達し、水分が補給できた。
「──んはっ。……はい、翔もどう?」
「……乗った」
そう言って、渚はゼリー飲料を手渡した。
蓋をねじ開け、渚と同じ要領で口に含み咀嚼すると、彼女の顎に指を置いて、翔は口移しをした。
流し込まれたゼリーを口の中で転がして、嚥下する喉の動きが、繋げた口から伝わってくる。
それを何度か攻守を入れ換え、烏龍茶を挟みながら、繰り返す。
「ちゅう〜〜……」
「んぐっ、んっ──ぷはぁっ!……量、多くないか?」
「そう?こんなもんだって」
「本当かよ……」
「ほんと、ほんと。ほら、俺喉乾いたなー」
「はいはい。行くぞ」
「ん」
ニヤニヤとした小悪魔のような笑みを渚は浮かべて、翔の口内を経由した烏龍茶を幸せそうに、飲み干した。
そうやって頻繁に口移しをすれば、腹は満ちるし、喉はすっかり潤う。
しかしその行為が楽しいのか、渚は用意したペットボトルが空になるまで、それを続けた。
腹を揺らせば、胃に溜まった茶も揺れて、鳴るのが分かるほどに。
「──あぁすごい。腹がちゃぷちゃぷ言ってるー」
「んー?どれどれ」
体を屈めて、翔の腹部へと耳を当てる。
びくっと、思わぬ渚の行動に逃げ出そうとした翔の体を腕で羽交い締めにすると、翔の腹を揺らしてその音に聞き入った。
「あ、ほん、と…………」
渚の胸が当たったことでむくりと、首をもたげる正直者が1人。
僅かな沈黙が広がって、渚は翔を見上げた。
「…………っ」
さっきまでのおどけた様子は消え去って、瞳を劣情で曇らせていて、顔を劣情で赤く染めている。
そんな渚の様子を認めた翔は、何を言うでもなく、渚を抱き抱え、共に床に倒れ込んだ。
「渚、……入れるぞ」
「……んっ、来て……♥️」
2人は背面側位の体勢でセックスを再開した。
激しく、熱烈なものではない、寝転がったまま行われるスローな性交。
「あっ……ん、んっんっ……♥️」
残留した精液が撹拌され潰れる濁った音と、ぱちゅ、ぱちゅ、と渚の尻が翔の腰で弱く叩かれる音の重奏。
互いに横に寝そべったまま行う側位では深く挿入することは叶わないが、奥ではない浅いところを多分に擦られることによる気持ちよさがあり、渚は短く喘ぐ。
翔は空いた手で、自分の愚息が抜けないように渚を引き寄せると共に、彼女の胸をまさぐる。
実った双胸を揉みしだきつつ、人差し指で乳輪を円を描くようにくすぐる、優しくある愛撫に、渚は感じざるを得ない。
「……かわいい、な」
「…………っ」
背中を丸めて悶えている渚へ、ポロリと落ちた翔の独り言が、彼女の乙女心をくすぐった。
もっと言ってほしいな、何ならえっちな褒め方をして欲しいな、と願うけれど、それ以降翔からは言葉は出なかった。
いつもは容姿を褒めてくれたり、体調やら気に掛けてくれたりと、ポンポン言葉が出る男なのに、セックスの時はあんまり喋らずに、積極的な行為で愛情を示してくる。
それに対して、今に至るまで不満なんて覚えたことがなかったし、自分にしか見せてくれない、そういう翔のギャップが渚は好きであったが、こうやって1度言われてしまうと、更に更に、と欲しがってしまう。
やけに物欲しげな今日の自分を嗜めようとするけれど、やはり我慢は出来ない物だった。
「ね、翔。何かえっちな、こと、っ、俺に言って、よ」
「えっ?……どうして、だっ」
「シてる時に、あんまり言って、あっ♥️ぅ、くれない、じゃんっ、や♥️うぁ♥️んんっ♥️……だか、ら、言って欲しくて、っ♥️」
「んん、っ…………」
「……でき、ないっ?」
情事の最中、喋らなくなるのを声はかけようとも思っているのだが、如何せん行為中は渚の体に夢中であるため、雲の彼方へ飛び去ってしまう。
それになにより、こうやって思考に気を向けると、性交が疎かになるのを恐れていた。
翔は一旦腰を動かすのを止めると、渚の頬に指を添えて頭を振り向かせると、無防備な口へと舌を伸ばした。
渚もベロを突き出して絡め合わせる。
ぴちゃぴちゃと涎を舌で酌み交わしあい、ねとつかせると、渚は淫蕩なキスによって生じる、甘い快楽にほだされて、生まれた欲求は霧散していた。
翔が舌を離すと、涎の糸が渚のそれと繋がって、透明な橋が架かる。
「これじゃ、……ダメか?」
「……ズルい」
「難しいんだ。ヤってる時に、咄嗟に考えるのが」
「思ったことを言ってくれて、いいのに。さっきみたいに、かわいい、とかさ」
「うーん。……今は、どうかこれで」
「もう、しょうがないな。……なら、さ」
もっとして、と渚の舌の力が強くなったのを、舌の交わりを激しくすることで応える。
渚は翔の太股に足をかけて、股をおおっぴろげに開き、さっきまでの側位より陰茎を突き入れやすく、そして密着できるようにした。
止まっていた下半身の往復運動は、それに呼応するようにより一層強くなって、子宮口の外周を突く。
「ひぁっ、あっあん♥️そこっ、もっとぉ♥️」
──外で残響する蝉時雨はとうの昔に淫音が掻き消して、ほんの僅かに聞こえる程度で。
隔絶された2人だけの、閉じ籠った淫らで暖かい世界で、交わり合うことの、どれ程満たされることか。
カーテン越しの夏めく外の世界は、渚にとって、今はどこまでも遠く、感じられた。
瞼を閉じて、キスと下腹部から広がる快楽に陶酔していた渚が、徐に目を開き、翔を見つめる。
「れりゅ……、もう、イき、そうっ?」
「そう、だなっ」
己の中で、ひくひくと痙攣し始めた怒張の様子を渚は察していた。
胸を揉む翔の手を取る。
「手、握って……」
昔は同じぐらいの大きさだったのに、自分のそれは、TS症によって小さくなってしまった。
一緒に成長してきたという証が無くなったみたいで、最初の頃は少し寂しさを覚えていたけれど、大きい彼の手に、おくるみのように包まれる感覚を知ってからは、もうそんな寂しさなんてどこかへと飛んでいった。
自分を握ってくれる手から、男らしさと、翔の包容力を感じられて、心と頭の中が幸せで満ち溢れる。
「……翔の手、大きくて温かいから、好きっ」
「……俺も、可愛くて綺麗で、細いから、大事にしたくなるお前の手が、好きだよ」
2人は微笑み合った。
手の内に収まる彼女の柔らかく、たおやかな手をさらさらと撫でながら、ラストスパートとして、渚へ腰を叩き付ける下半身の勢いは増していく。
幸せそうに綻んでいた渚のその笑顔は、波紋のように広がる甘い快感で、蕩けた笑みになっていった。
「渚、もう出すっ、ぞ」
「ふあっ♥️いい、よっ♥️いっぱい、出して♥️」
「お、うっ、……あっ────!」
──びゅるる♥️どぴゅ♥️どぴゅん♥️
「う、ああっ♥️っ、んん、ぁ……♥️」
どくり、どくりと精液が流し込まれる度に、渚は妊娠への期待で、体を震わす。
達したことによる肉体的な満足感もそうだが、精神的な満足感も多分に得られて、渚は表情筋を弛ませっぱなしだった。
でも、まだ欲しい。ずっと欲しい。
そう言う心の中の欲張りな自分が、また顔を出した。
「翔っ、まだ、足んない……」
「──っ、……俺もだ」
渚は翔にキスをせがんで、唇をくっ付け合うと、また卑猥な水音が、寝室に響き始めていった。
──そうして、幾度もの性交と射精の果てに、流石に翔のそれは、出して直ぐに勃ち上がることはできなくなっていた。
結合を解除した渚は、本人と同じように項垂れた肉棒を手で摘まむも、それは何の反応も示さない。
「出しまくってたから、痛くない?大丈夫?」
「……ああ、渚の飯のお陰で大丈夫だ。ちょっと休憩したら、すぐいける」
「そっか、うん」
床に寝転がっていた渚が、一頻りそれをいじくって遊んだ後に、何かを思い付いたように、顔を上げた。
「ね、翔。……俺の口で、休憩なんて、どう?」
渚は指で輪を作って、口元にそれを持っていくと、くいくいと手淫を匂わすように揺らした。
それと共に濡れた舌を、れろれろと淫靡に動かして、フェラチオをアピールする性的なジェスチャーに、翔の頑なな理性は、いとも容易く打ちのめされた。
「……マジで、エロすぎるって、渚」
「……翔がね、ずっと変わらず愛してくれるから、それに応えたくなるんだよ。だから、俺がエロいのは、翔のせいっ」
昔から、猥談を公然の場で嬉々として話すぐらいにはそうだった気がするが、この際に置いてはどうでもいいことだった。
突然に繰り出された強烈なアッパーカットで伸びていた理性が、渚の告白のような一言で粉々になっていたからだ。
「で、どうかな。……正直にいうと、翔のを舐めたい」
「……分かった。休憩、させてもらう」
「うんっ。じゃあ、跨がるね」
こうして、休憩というには休まらないが、疲労が垣間見え始めた体への労りを込めて、あまり動かないで愛し合える、翔が下で渚が上の、シックスナインの体勢でオーラルセックスを楽しむこととなった。
「俺のそこ見て、オカズにしていいよ?」
「……またそんな、エロいことを言う」
渚の秘部は、お互いの有り余った性欲を、何年間もぶつけ合ってきた割には、色素の定着による黒ずみや、肉びらの肥大化が見られない。
何度も男の欲望を受け入れている事実は、ぴったりと閉じた小陰唇で隠され、純情然とした桃色が差しているそこは、未だ荒らされたことのない花園を装っていた。
徐に指でその花びらを開くと、生々しい肉の色をした膣口がぽっかりと開いていて、そこから、栗の花のような淡い臭いが漂って、白濁とした液体が垂れていく。
まだ膣内から溢れる程に、己の子種汁が残留していて、黄ばんだ白でその桃園を汚し、征服している様をまじまじと見られるというのは、やはり劣情を催して止まなかった。
「あんなに剥いてあげてるのに、ずっとここは皮かむりだなっ、ふふ…………はむっ」
「やかまし、いっ、うっ」
渚はからかうように肉棒を指で弾くと、大きく口を開いて、それにしゃぶりついた。
萎んだことで、小さな口の中へすっぽり収まった竿を、渚は軽く吸い上げながら、亀頭を包んでいる包皮の内へとベロを入れられ、舌の形に皮が盛り上がる。
そうして汚れをこそぎおとすように亀頭全体からカリの裏側まで、蛞蝓のように舌を張り付けて、掃除するように丹念に舐め回される。
「……ちゅる、れろれろ〜」
「あっ、うっ、そこっは」
舌先で鈴口をほじくられて、翔は呻き声を上げた。
疲弊していた筈のイチモツが徐々に大きく太くなるのを感じて、あえて口に咥え込んだまま、渚は翔に感想を求める。
「ひょう、ひもひいい?」
「ああ、くっ、渚が上手いから、気持ちい、いっ!」
「んへへ。れろぉ……んん、じゅうう……んちゅっ……♥️」
もごもごと、くぐもった水音と声が陰茎に響いて、思わず翔は腰を跳ねさせた。
この体勢にわざわざなったのだから、目の前でふりふりと揺れる尻を掴んで、思う存分弄くることで鳴く渚が見たかったのだけれど、渚の手管に翻弄され、どうにもできない。
少女の口の中で、完全に勃起して剥けきった肉棒に、水音を部屋中に響かせながら渚が行うのは、下品に頬をすぼめてのバキュームフェラ。
「ぐぽっ♥️じゅっぽ♥️じゅぽ♥️じゅるるるる♥️」
翔は腰が持ち上がりそうになるのを床に手を押し付けることで、必死に耐える。
ねっとりとした口腔粘膜の艶かしさを、念入りに教え込ませるように、ゆっくり、ゆっくりと飲み込んだと思えば、亀頭とカリの間を上下する激しい動きに戻ったりと、一辺倒にならないように、緩急を用意する。
「んぶっ、んんっ♥️じゅううっ♥️」
押し寄せてくる快楽から、反射反応として渚の口から逃げようと、両足がじたばたと動こうとするが、彼女の手で押さえつけられてしまう。
快感から耐える拠り所を失って、ぐっと、睾丸が持ち上がるのを翔は感じた。
限界は近い。
「やば、いっ!もう、出る……っ!」
「……へーひ、らひていーよ♥️」
少女の発した蠱惑的な誘いに、彼女に心底惚れている男が耐えられる筈もなく。
「ぐっ、ああっ……!」
──びゅるるる♥️びゅー♥️びゅう♥️
それはこの日初めての、膣内外での射精となった。
そんな射精の最中でも、渚はただ終わるのを待つだけではなく、吸い上げるのを忘れない。
膣内への射精よりも多いのではないか、という精液の量を渚が献身的に受け止めて、ちゃぷちゃぷ、と口内で揺らせるぐらいに溜まった辺りで、長い長い生殖の脈動が、やっと止まった。
渚は口から陰茎を引き抜いて、体を反転させ翔の上半身を起こすと、そのちんまりとした口の中の、淫猥な現状を公開した。
「……あー………♥️」
口腔の中に出来上がった、淀んだ白い海を、真っ赤な舌がちろちろと動いて、浮かんでは沈んで、精子が掬い上げられては、海へと戻される。
いっぱい出したね、と称賛するようなその一連の行いは、翔のオスとしての自尊心をくすぐり、生唾を飲ませた。
「……飲んで、くれ」
「……うんっ♥️……んくっ……んぐ…………♥️」
こくり、こくりと何度も何度も嚥下していく度に、小さな喉が隆起して戻っていき、皮膚の薄いお腹が膨らんで、胃に落ちていく。
自分の体液が、愛する人の体の一部になろうとしている様は、あまりに扇情的であり、そしてそれを命じて、してもらえたという優越感は、計り知れないものがあった。
渚はその喉に引っ掛かる粘液を飲み終わると、口の端に人差し指を引っ掛けつつ、口を大きく開く。
そして人差し指を引っ張り、横にも広げることで、口腔の中には精子が一匹もいないことを証明してから、渚は可愛らしいげっぷをして、手を合わせた。
「けぷっ。……ごちそうさまっ」
情欲が翔の内でまたムラムラと立ち上るが、それよりも気になってしまうのが、首筋に覚える焦燥に似た不快感。
体のあちこちで燻る熱と、べたべたとした汗がもたらした火照りによる物だ。
少し前から覚えていたのを今に至るまで無視していたが、いよいよ我慢ならないものになっていた。
「……い、一旦汗を流さないか。流石にこう、汗やらなんやらかんやらでベタついてしょうがない」
「……うん。ま、そうだね。──洗いっこ、する?」
「……やろう、か」
渚は、自分の体から精液の匂いがするのが、翔にマーキングされてるようで好きだったが、乾いてカピカピとなって肌に張り付くそれと、べっとりとした汗が鬱陶しいのは事実である。
2人は疲労が出始めた体を引きずって、脱衣所へと向かいだした。
浴室に繋がる引戸を開くと、夕焼けの光が浴室に差し込んでいた。
夕日で浮かび上がり煌めく陽と、濃くある陰とのコントラストは、どこか物寂しくもある、ノスタルジックな様相を醸し出していた。
ぺたぺたと、2人は浴室のタイルを踏む。
「すまん。先に体流してもいいか」
「いいよー」
身体のあちこちで発生している不快感から一刻も早く逃れたくて、少し急いた動きで翔はシャワーの蔓の部分を掴み、冷水の栓を捻った。
手に受けた、勢いよく吹き出し始めた水の何と清涼なことか。
頭の上からさっとかけ流して、その冷ややかさを堪能してから、待っている渚へとシャワーヘッドを向ける。
「目、閉じてくれ」
「分かった。──ん」
翔によって、上から降り注ぐように向けられた、程よい冷たさの雨が、体液でまみれた渚の汚れを落とし、体の内外の熱を冷ましていく。
立ったまま、シャンプーとリンスによる、2人は髪と頭皮の洗浄を済ました後、互いの体を、石鹸を染み込ませたボディタオルで擦り、泡立て合う。
何度も互いを洗い合ってきた為、力加減も慣れたもので、そこにストレスはなく、ゆったりと片方に体を委ねられた。
「腕上げて」
「うん」
ごしごしと、毛一本も見えない渚の腋の下から首回りと背中の上部へと、腹部を往復していたタオルを駆け上がらせる。
そんな翔の背中へと、渚もタオルを滑らせ、垢を擦っていく。
相手を綺麗にするという共同作業は、2人にとっては、どうにも楽しくて仕方なかった。
特に渚は鼻歌を歌っていて、浴室に肌を擦る以外の音を増やして、賑やかにしていた。
2人の上半身が白く染まり始めた辺りで、渚は会話の為に、擦る手を少し緩めた。
「……こんな感じでさ、洗い合うのって、いつから始めたっけ。中学に上がってから、やらなくなったっていうのは、覚えてるんだけど」
「あー……あ、思い出した。小2の冬に、銭湯で一緒に入った時じゃないか」
「そうだったそうだった、懐かしいな。…………銭湯で思い出したんだけどさ、また翔と2人で温泉旅行、行きたいなぁ」
「──12月の暮れぐらいに行くか?妊娠してたら、安定期入ったぐらいだし、悪くないんじゃないか」
「いいの?じゃあ、それでっ。……あ。足開いて?」
「そっちも開いてくれ」
「んー」
ぱかり、と互いに躊躇いなく開いて、太腿の内側から臀部の全周、膝から足の指の間まで綺麗に擦って。
いよいよ、残ったのは股間だけとなった。
「……どっちが先に洗う?」
「いつも通り、じゃんけんだな」
「じゃあ俺、グー出すからね」
「あ?おお、じゃあチョキを出させてもらおうかな」
「へええ?じゃ、最初は────」
巧妙な心理戦の上に成り立ったじゃんけんの末、ストレートに敗北した翔は、先んじて渚の手で、股が磨かれることが確定した。
渚は滑らないように、足元だけをシャワーで濯いでから、浴室の壁を背にして立つように翔に指示をする。
翔はその通りにすると、渚は真っ正面に向き合い、肌が触れあう寸前の所まで接近し、目を上へと向けて、彼との目線を合わせた。
「はーい、じゃあお客さん動かないでくださいねー」
劇がかった言い様で、ボディタオルを揉み込み、両手に泡を大きく纏わせると、翔の股間を泡でまみれさせた。
蒸れやすい陰毛部から、汚れが溜まりやすい陰嚢の裏まで、丁寧に指で擦り終わると、お楽しみとして取っておいた竿へと、渚は手を進める。
萎んだことで、また皮の鞘へと収まっている、純情だったピンク色をすっかりくすませた亀頭を、引っ張り出して露にさせる。
そして、竿と亀頭の段差にこびりついていたぬめりをさっさと指で拭うと、両手を筒状にして、ゆっくりと前後に動かしていく。
時折力を加えて、きゅっと締めながら。
「痒いところはありませんか〜」
「うっ。今は特に、ないっ」
今己の身に起きているそれが、洗浄ではなく、手淫であることを理解した陰茎が、徐々に大きくなっていき、洗う面積が増えていく。
じんわりと広がる気持ちよさに怯えて、翔の腰が本人の意思と関係なく引こうとするが、壁にこつりとぶつかってしまい、逃げ場所を失った。
「ごしごし〜……ふふふっ」
翔の陰茎が完全に勃起したのを認めると、渚は筒の形を緩めた。
そして次は、両手とも人差し指と親指で輪を作って、カリ首に引っ掛けるようにして、シゴいてゆく。
一気に根元まで指が行ったかと思えば、亀頭とカリ首の間を浅く往復させたりと、単純だった動きのそれは、ねちっこく、いやらしい手つきへとなっていく。
白魚のような細く流麗な、汚れを知らないような指の1本1本が、赤黒くグロテスクであり、不浄の象徴である肉棒に這って、淫靡に動く様は、背徳的であった。
ふと、眼下の渚が雛鳥のように口を尖らせているのに気付いて、翔は餌を与えるために顔を近づけた。
「……ふっ……ぅ……ちゅ……じゅうう」
今日だけで一般的な恋人の1日の倍の回数はこなしたであろう、深い口吸い。
一定のペースで吸うそれに合わせて、竿に絡んでいる指を動かすのがどんどん激しく、早くなっていく。
そこに手の捻りも加えられたことで、放精する間近まで翔の中で快感が高まっていた矢先。
そこでパッと、何の予兆もなく指と唇が、翔の元から離れていった。
高まりつつあった熱が冷める、物寂しさが訪れようとした瞬間。
陰茎を何かが包んでいく感覚が、翔の脳を再び快楽の坩堝に叩き込んだ。
「うあっ、くっ!」
「…………っ♥️」
擦っていた泡を自分の股へと塗り合わせると、ひくひくと短く跳ねている勃起した陰茎を、閉じられた淫裂と、むっちりとした太腿の間へと、捩じ込んでいたのだった。
腰を前後させ、肉竿に肌がしっとりと吸い付く、膣とは異なる官能的な刺激。
肌に泡ではない別の粘りが付着して、それが作用することで、ぬるぬるを助長させる。
「くっ、あっ、うくっ」
「ふっ、ふっ……♥️」
翔は一切動けていない。壁に張り付けられたまま、もっちりとした渚の乳房が引っ付いて、固くなった乳頭を押し付けられていた。
素股を行う中で、屹立したクリトリスにカリが引っ掛かる度に渚は、んっ、と短い喘ぎと共に、腰を僅かに、ひくつかせていた。
翔は快楽の逃げ場所を求めて、渚の尻肉を鷲掴みにし、張りのあるそこを揉みしだく。
指を埋めようとすれば胸よりも反発しあう、たっぷりとついた色艶のいい脂肪は、出産への頼もしさがあり、そしてどうしようもなく性的であった。
口が寂しくなってきた渚は、何度目かも分からない翔の唇を求めて、彼もそれに応じる。
ぬりゅぬりゅ、と舌で涎を混ぜ合わせ、互いの口内へと流し込むのに夢中になった。
そしてその口づけを境に、素股の長かったストロークが短く激しい往復に変わり、亀頭を重点的に虐め抜く。
──ぐちゅ♥️ぶちゅ♥️ぐちゅ♥️にちゅ♥️
「んっ、んんんんっ!」
その苛烈な責めに耐えられず、射精感が込み上げてきた瞬間、ずるんっ、と竿の根元まで太腿がやって来た。
出して、と催促するように、ぎゅううと、潰すように太腿を閉じた。
「んぐっ、────っ!!」
──びゅうううー♥️ぴゅっ♥️ぴゅうう♥️
「じゅるるぅ……♥️んふ……ぷぁっ」
潤んだ瞳を瞑って、股の間にて剛直が何度も跳ねて、放精していくのを渚はただじっと、感じていた。
太腿に挟まれたままの怒張が跳ね終わり、項垂れる頃には、ボディソープの華やかな香りが満ちていた筈の密室に、淫猥な臭いが籠りつつあった。
未だ息を荒くしていて、上の空の翔へと、渚は感想を求める。
「気持ち、良かった?」
「……そりゃ、もう」
いつものように、ゴムを持ち込む手間がないのは、面倒がなくて良い。
またしたいけれど、次の機会は随分遠そうだ。
1人そんな感想を抱いていたら、渚はシャワーを掴んでいて、互いの泡にまみれた体を流してしまう。
次は自分の番だと翔は意気込んでいたが、洗い合いという体裁を失った今、もう終わりかと落胆しかけたが、しかしそれは、渚を一瞥したことで杞憂に終わる。
なぜなら、渚はもじもじと、太腿の付け根を擦り合わせていて、頬の紅潮は先程よりも強まっていたからだ。
「じゃあ次は、翔の、番」
「…………」
渚は翔へ背を向けると、浴槽の縁を握り、前屈みになって、翔へと臀部を突き出す。
形のいい安産型の尻肉に両指を掛けると、渚はぐいっと広げて、陰匿されるべき粘膜を外気に晒け出す。
「ここ、まだぬるぬるで汚れてる、からっ。……翔ので、綺麗にして……?」
ぽっかりと開いた淫穴から、白濁とした渚の粘液が、床のタイルへと滴り落ちていく。
それは、オスを食らう様を想像して、涎を溢れさせ、興奮を滾らせる獣のようであった。
翔の返事はなかった。
しかし、射精直後だというのに反り上がろうとして、固くなっているそれが、返答の代わりだった。
「早く、早くっ……♥️」
むちむちとした尻を掴み、待ちきれずに涎を垂らすそこに、お望みの物を一気に奥まで咥え入れた。
──じゅるんっ♥️こつっ♥️
「あっ♥️イっ、─────っ♥️っっ♥️」
自分から焦らしに焦らしたことで、敏感になっていたそこは、渚を即座に快楽の高みへと登り詰めさせた。
向き合っての体位とは違う、別の部分がごりごりと反りあげられる後ろからの攻めは、とても気持ちよくて、中々に好きな体位であった。
「うっ♥️あっ♥️ううっ♥️」
「締まり、すごい、なっ」
小菊のような尻穴が、ひくひくと、突かれる度に盛り上がっては引っ込んでいく。
幾度も腰を叩き付けられて波打つ尻肉を、手の内で感じながら、翔はカリで渚の奥を引っ掻いて、何度達しても取れそうにない彼女の甘い痒みを解消してやろうと、躍起になっていた。
──ばちゅん♥️ばちゅん♥️
「そこ、もっと♥️あっ、あっ♥️イくっ……♥️っ♥️」
亀頭で子宮口をこねたり、上を向いた肉棒で弱い部分を持ち上げ、存分に擦りあげる円運動で、度重なる甘い電流を体に流されて、渚はがくがくと足と腰を震わす。
達したことによる甲高い矯声と、肉と肉がぶつかる、いやらしい音が重なって、浴室にまた反響していく。
頭がふわふわとした心地になりつつある中、渚は翔の顔が見たくなって、首を後ろに向けた。
「はっ、あっ、うく……っ!」
そこには、ちょっと情けない顔をして、自分を必死で求めてくれている伴侶の姿がある。
きゅーんとした幸福感が入り交じった嬉しさが、渚の胸から溢れ出た。
平常時の、頼りがいがある、贔屓目に見てもかっこいいその姿が崩れて、誰も知らないそれを、自分だけが知っていることに、優越感を覚える。
──好き、好き。もっと、見せて。
そんな渚の心の動きに連動したように、膣の締め付けが強くなり、肉ヒダのうねりも、ねちゃねちゃと、しつこく竿に絡み付いてくすぐるような、あまりに淫靡で、えぐいものになっていた。
「うあっ!ぐっ……!」
その媚びた濃密な歓待を受け、翔は愛を撒き散らすように渚の弱いところを突き上げていると、噴火したかのように肉棒から精液が吹き出した。
──どくっ♥️どぴゅん♥️ぴゅうう♥️
「ひあっ──────♥️」
翔は、腰をぐりぐりと押し付けて、ほしいほしいと、とっくの前に許容量を越えているというのに、まだ赤ちゃんの素を貰おうとする、卑しい奥に、存分に吸わせてやった。
「────っ♥️……っん♥️」
絶頂で何度も跳ね上がる臀部を尻肉を掴んでいる手で制しながら、一匹残らず精子を出しきった。
種を根付かせたことに満足し抜こうとしたら、肉棒がしなって、膣内からきゅぽん、と飛び出す。
翔の愛を受け入れ、アクメを決めたことで、面を伏せていたままの渚は、己の顔を何とか翔へ振り向かせる。
「ふーっ、ふーっ……♥️翔、綺麗に、なった……?」
未だ液体ではなく固体に近い精液が、渚の股から重力に従って、垂れ落ちていく。
翔が返答しようとする直前、ぶぴゅ、と、空気が混ざった放屁のような下品な音と共に、膣口から射精したかのように、精液が排出された。
「あっ、…………っ」
快感にふやけた表情はどこへやら。
顔を羞恥で真っ赤にした、普段の彼女からは考えられない下品な様に、翔は頭蓋骨の中で脳みそが縦横無尽に揺らされるような、欲情が沸き立つ。
今日は何度この、渚をめちゃくちゃに犯したいという衝動に襲われるのだろうか。
己をそうさせる渚の蠱惑っぷりが恐ろしくもあるが、それ以上に、そんな姿を見せてくれるのは自分だけ、などと考えて、翔は1人嬉しくなった。
翔は零れていく精液を手で受け止めると、体液で汚れた渚の女性器全体に塗り込めて。
「……まだ、綺麗じゃ、ないな」
「……じゃあ、ぴかぴかになるまで、洗って?」
満足できていない己の分身を、再び渚の秘部に宛がうのであった。
──照明が必要になるほどに、暗くなるまで交わった後は、適当に体を洗い直して、髪を簡易に乾かし、バスタオルにて最低限水気を払い、裸のまま再び寝室へと向かった。
床へつくと、朝のように長く、濃密なスキンシップを行ってから、渚をうつ伏せに寝かしたままの状態で、翔は渚へと挿入した。
「んんっ……♥️ふっ、ふっ♥️んっ♥️」
翔の体重が加わった、1つ1つが重いピストンを受けて、枕へと顔を埋めている渚は小鳥の囀ずりに似た矯声を奏でていた。
「渚っ、気持ち、いいかっ?」
「う、んっ♥️なまだとっ、あたるかんしょくが、ぜんぜんっ、ちがくてっ♥️」
「……もっと、どこが良いのか、詳しく言ってみて、くれっ」
翔のぎこちない台詞に、渚は胸の高鳴りを覚えた。
自分が感じるところなんて、翔は知り尽くしているだろうから、こうやってわざわざ自分に言わせることで、羞恥心を煽ろうとするのは、意図的な物に他ならない。
昼頃に発した、自分の不満にもならない要求に、答えようとしてくれているのか。
少し思考に意識を割いたことで、静かになった渚を見て、翔は前後運動を止めた。
「…………いや、すまん。無理なら、言わなくてもいいからな」
──やっぱり翔は、底抜けに優しい。
垣間見せてくれた翔のサディズムに、ぞくぞくとしながら、さっきのお願いに、渚は応える。
「……っおまんこの、おくの♥️あかちゃんのへやを♥️しょうのちんこが、とんとんって♥️するたびにっ♥️きゅんきゅんってなって♥️いきそうに、なるのっ♥️」
「…………っ!」
──言わせた、言わせてしまった。
そう意識する度に、かーっと、翔の胸に上る、渚への欲情。
それに当てられた、本能という名の獣が叫ぶ。
メスを犯せ、屈服させろ、と。
渚本人よりも詳しい彼女の子宮口の横に位置する性感帯に、翔は己の欲望の化身を押し当てる。そして、腰に力を込めて、その弱いところにぶつけていった。
「……ここ、だろっ!」
「や、ああっ!♥️んんっ♥️そこ♥️もっと、してぇ♥️」
──とんっとんっ♥️とんっとんっ♥️
背中をひくつかせては、もむもむと、咥えられた陰茎を咀嚼するように、膣肉が蠢く。
広げられては締まってを胎内が繰り返して、言葉だけでなく体でも渚は応じていた。
そうやって悶えていると、不意に抜き差しが止まったかと思えば、翔に上から、背中へと覆い被さられた。
ずっしりとした重さを覚えて、渚は少し苦しいものの、肌を、体温を直に感じられることで、安心感の方がそれを上回る。
「……渚っ、一気に、行くからな」
「うんっ、……らんぼうに、して♥️」
「痛かったら、言ってくれよっ!」
渚の肩の辺りのシーツに手を置き、それを支えにして、全体重をかけた種付けピストンを開始した。
──ごちゅごちゅごちゅごちゅ♥️
子宮口に刺さっては念入りにGスポットの膨らみ辺りまで往復され、渚の弱点全部をほじくり返される。
ギシギシと、ベッドのスプリングを軋ませ、一切の抵抗が出来ないまま嬲られるこの体勢は、渚の被虐欲を満たしていく。
「〜〜〜〜っ♥️んーー!んぅっ♥️」
──イくっ、イっちゃう。
そんな言葉を漏らすけど、それは翔には届かない。
身動ぐことが一切出来ないが故に、押さえられた枕に全部吸われていく。
「ううっ、あぐっ──!」
一気に膣口まで己の肉棒を引き返すと、勢いよく、翔の腰に渚の尻肉は叩かれた。
それが、受け止めろ、と乱暴な射精の合図だった。
──ぱちんっ♥️どぷんっ♥️びゅびゅ〜〜♥️
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
声にならない淫らな悲鳴を、渚はあげた。
子宮が下になる体勢の都合上、吐き出された精液は全部飲み込まれていく筈だったが、こってりとした白濁液で満たされまくったその中には流石に全部入りきらず、結合部との間から大半の液体状のそれは、吹き出していく。
渚は勿体無いと一瞬感じるけれど、押し寄せるアクメの洪水に飲まれて、視界に星が瞬き始めて、それどころではなくなっていた。
そうして翔が己のそれを引き抜く頃には、ぴくぴくと、伸びた蛙のように、股を広げて、腰から先を痙攣させていた。
伸していた体を退けて、渚の顔を翔は覗き込む。
「……おい。大丈夫か、渚?」
「うん、へいき。……気持ち、よかっ、たぁ♥️」
幸せそうなぐずぐずの笑みと、下半身を精液まみれにしている相反した姿に、翔は情欲を掻き立てられずにはいられない。
だがもう、次が最後であるという暗黙の了解が、互いの間で共有されていた。
性欲が尽きたのではなく、時間の問題でもなく、いよいよ互いの体にへばりつく疲労が、快感で誤魔化せなくなっているからだ。
うつ伏せのままの渚が、夫の名を呼ぶ。
「翔……」
「ん、どうした」
「最後は、翔の顔、みながらしたい」
「オッケー。……こっち、来れるか」
「ん……」
翔は鉛のように重い体を壁に預け、渚を座りやすくするように、両足の間隔を広げる。
絶頂の痺れが残る体をどうにか稼動させて、渚は天井を仰ぐ、意地で勃ち上がった剛直を、膣内にずぶずふと埋めながら、翔の股に座り込んだ。
互いに向き合って、座って行う、対面座位。
見つめ合うことと、抱き締め合うことが出来るそれは、彼と彼女の、一番好きな体位だ。
「やっぱり、これが、いちばんいい……♥️」
この体勢では奥深くまで翔のそれが簡単に届く。
種を求めて降りてきている、何度も先端と触れ合う子宮口を突き上げて、ぐいぐいと元ある場所へと押し込む。
溜まっている古い精子を子宮から吐き出させ、そしてカリがそれを掻き出して、新鮮で動的な生殖液を、また胎内へと送り込む為に。
──ぱちゅん♥️ぱっちゅん♥️
抽挿する為に、寝台のバネを利用して、2人は淫らに弾み合う。
寝バックの時よりもスプリングは大きく軋んで、夫婦の陸事に音という盛り上がりを与えた。
「あっ♥️ふあっ♥️んんっ♥️……しょうっ、いっぱいここに、ちゅーしてっ……♥️」
「分かっ、たっ」
口を開いて、淫らに舌を突き出し、さっきの体位では出来なかった分、濃厚な口づけを欲するその様は、翔のオスを昂らせて止まない。
舌同士がねばりつくと、渚のベロの裏側へと己のそれを滑り込ませて、執拗に舐め上げる。
「んはっ……♥️んれぇ、あむっ……むちゅ♥️」
ぷるんぷるんと、無造作に上下する胸を少し乱雑に掴むと、その山の中央で固くなっているピンクの蕾へと、指を進めて、搾り上げるように指の腹で押し潰す。
びくんっ、と渚の体が反応を示したら、かりかりと、指先で乳首を引っ掻いていった。
渚は翔から唇を離して、だらしなく快楽で緩んだ、涎や涙やらで、ぐちゃぐちゃになった顔で、説得力のない抗議をした。
「ぷはっ♥️っちくび、だめぇっ♥️すぐ、いっちゃうからぁ♥️しょうっ♥️しょ、んぁ♥️─────っっ♥️」
体を弓なりに跳ねさせて、渚が離れてしまいそうなところを、翔が抱き締めることでそれを阻止する。
快楽の逃げ場を失って、強まる多幸感と絶頂の波。
渚も背中と腰に絡めた手と足の力を強くして、すがり付くように抱き締め返す。
呂律が回らなくなって、外聞も建て前も理性も全部失って、ただただ、翔の女として、与えられる快楽に渚は溺れる。
「〜〜〜〜っ♥️しょうっ♥️しゅき♥️しゅきっ♥️」
「俺、もっ、好き!好きだっ!」
そう言い放って、翔は渚の首筋へと吸い付いた。
キスマークという物理的な証を残すことで、お前は、俺の物だと、当に分かりきっていることを、もっと深く分からせるように。
1日中交わり続けたことによる疲労と快感とで、翔は明瞭な思考ができなくなっていて、渚の正直な好意をぶつけられたことで、心の底からの願いが、脳の変換を介さずに、口から漏れだす。
「渚っ!子供を産んでも、また俺との子供を、孕ませてやるからなっ!お前がもう2度と辛い目に合わないように、絶対に俺から、離れられないようにしてやるっ!」
「うん、うんっ♥️いっぱいこども、つくろっ♥️しあわせになろっ♥️……だから、しょうも♥️ずっとおれに、むちゅうでいて、ねっ♥️」
「ああっ!お前も、俺にずっと惚れててくれっ!」
──ぱんぱんぱんぱんっ♥️
恥骨同士がぶつかって、互いの振動がより伝わる。
2人は無我夢中で、互いに色々と限界が近く、余裕がなかった。
相手を気持ちよくさせようとか、愛を育もうといった気持ちは疲労で忘れられて、ただただ種を付ける交尾の為だけに、腰を振り続ける。
そんなひくつく陰茎を、下腹部で感じていたら、子孫を残そうとする本能がもたらす、精液を求める疼きが、渚のポルチオを支配する。
ずんっと、重く響くそれに、渚は耐えられない。耐える必要もない。
「──渚っ!もう、イきそう、だっ!」
渚は、その疼きを解消して欲しくて、メスとしてオスへと、甘えた声で浅ましく叫ぶ。
「せーしだしてぇ♥️おれを、おかあさんに、してっ♥️あなたぁ♥️」
「───っ!一番奥で、出してやるっ!だから、イけっ、渚!俺の精子でっ、妊娠しろっ!」
「ん♥️あ、あぅぅっ♥️」
今日1番の、強くて、熱いのが出されちゃう。
大きいのが、凄いのが来ちゃう。
訪れるであろうその瞬間に、胸と子宮をきゅんきゅんとさせて──
「うっ、くぁ、っ出すぞっ!」
「きてぇ、しょうっ───♥️」
──がつん、と、渚の女としての大事な部分の入り口に、愛しい肉塊を叩き込まれた。
──びゅく♥️びゅく♥️びゅるるるる♥️
「──────♥️♥️♥️」
子宮口を貫いて、その中で跳弾するような怒濤の勢いの吐精に、脳を焼ききらんばかりの、最高で最大のオーガズムを渚は体感する。
頭が真っ白になって、駄目になってしまいそうな程の女性としての悦びを、自分を見失いそうになりながら、再三脳に覚えさせられていく。
そんな深い絶頂の真っ只中にいる渚の卵巣へと、新しい精子を連れ込むべく、翔は射精中でも渚の奥を引っ掻き続ける。
「当たれっ……俺の子供を産んでくれっ……!」
「あ………っ♥️……………っうう♥️」
精液まみれの肉棒をぐりぐりと捩じ込み揺すられると、浅い絶頂の波に浚われて、意識を沖の方へと連れていかれそうになるけれど、その翔の必死の、いとおしい懇願をまだまだ聞きたくて、沈みそうになりながらも何とか水面へと顔を浮かべて、意識を保つ。
「お前は俺だけの物だ、渚っ……!」
「…………うんっ♥️」
翔の独占欲を丸出しにした言葉で分泌された、快楽物質が脳に回って、渚は頭がじーんと、痺れる。
下腹部を満たす翔の熱も合間って、今抱いているこの想いを、言葉に表すのが、陳腐になってしまいそうなぐらいに。
渚は今、愛する人と結ばれる幸せをこの世の誰よりも、享受していた。
──翔の陰茎からは、もう何も出なくなり、快感の波が引いてきたことで、2人の上下していた動きは、緩やかに停止した。ぜえぜえ、と息を荒げて、互いを必死に抱き締め合ったまま。
親友としての、夫婦としての、家族としての繋がりを、2人は強固に感じて、それに身を預けていた。
そんな最中──
「っう、…………?」
──胎内にて何かがチクリと突き刺さるような感覚が、渚に訪れる。
痛みとも呼べないその弱い刺激は、本当に一瞬現れて、消えていった。
まるで何かを知らせるような、体が脳へ伝達した信号のようだと、渚は感じた。
大きな快感の波の中でも、確かにはっきりと確認できたそれは、一体なんなのか。
彼女はやけにそれが気にかかった。
射精の余韻に浸っていた翔は、戸惑っている様子の渚に気付いた。
「はあっ、はっ、は……、どう、した?」
声をかけられたことで、困惑と混乱で纏まらなかった脳内が一旦リセットされ、明瞭な視界と頭脳を取り戻した渚は、思考を巡らせる、
そうして、ある1つの可能性へと至る。
穴はあるが、大体の辻褄はあう有力なものである。
けれどそれは渚にとってあまりに都合が良い可能性。
だが、それにすがりたい気持ちがあって、言わずにはいられなかった。
「翔、その、ね」
「……ああ」
「も、もしかしたら、──着床、した、かも……」
翔は数瞬置いて、その発言の意味を飲み込んだ。
そして、困惑する。
「……えっ。あ、え?マジ、か。……いや、いやいや。待ってくれ。何で、分かったんだ?」
「何か、その、子宮の奥がチクってして……ああでも、どうなんだろう……」
「もっと、詳しく頼む」
「う、うん。えっと、ね────」
さっきの不可解な現象について、渚が思い当たったのは、着床痛であった。子宮内膜に受精卵が潜り込み、着床した時に生じると言われている痛み。
1回目の膣内射精で注がれた精子が受精して、子宮内膜に到達するまでにかかった時間としては、現在の時刻は妥当なものだった。
そして、母体に腰痛や腹痛をもたらすそれを、TS娘はそういった痛みに鈍いが故に、さっきのような一瞬だけの痛みだと認識したのではないかと、推察した。
一見して、筋は通っているように見えるが、そもそも着床痛というのが、科学的に証明されていないものである為、どうしても不確定な説であった。
事実、2人ともそういう話は医者からも、御同輩からも聞いたことがなかった。
そんな渚が提唱する、ふわふわとした推察を一笑に付せずに、翔はある提案をした。
「──なるほど、……なら、試して、みるか?検査薬、取ってくるぞ」
「……じゃあ。ちょっと、そうしてみる」
対面の繋がったままの渚の腋を掴み、引き離して優しく寝かせると、棚に置かれた箱から妊娠検査薬を取り出した。
それを反応させるホルモンの分泌は、一般的な女性ならば着床より約4週目からなのだが、TS娘はその分泌が早く、着床直後から行われ始める為、即座の検査が可能であるのを、翔は渚より教えられていた。
渚は立つべく腰に力を入れようとして、へにゃりと、ベッドに弱々しく倒れ込んだ。
原因は腰に来ていた疲れである。
「あっ、腰やば、っ、立てない……」
「……分かった。洗面器とタオル、持ってくる」
「えっ」
翔は疲弊による理路整然とした思考ができなかったのと、渚を運ぶ程の力が出るとは思えなかったが為に、彼女を然るべき場所に持っていくのではなく、場所自体を持ってくることを選んだ。
ここでするんだ、と渚は戸惑いはしたが、ぎこちなく歩き出して、部屋を抜け出した翔を見て、疲れているというのに自分の我が儘に付き合ってもらう、罪悪感と感謝が生まれて、気にしないようにした。
渚が脇に置かれたティッシュで、股間の精液を拭っている内に、翔が戻ってきた。
「持ってきた。失礼」
「うん……」
渚の股の下にタオルを敷き詰めると、太腿の内側に手をいれて、彼女の股を割らせる。
洗面器の中央に、蓋を外し採尿部を露にさせた妊娠検査薬を配置して、すぐに検査薬を取り出せるように片手で洗面器の縁を掴んで、宙で固定した。
「ほい、これでいいか?」
「ありが、と。……あ、待って。あんま、見ないで」
「分かってる」
自分の汚いところをここでこうやって、大っぴらにさらけ出すのは、抵抗があった。
そういう部分を見られたことも、見せたこともあるが、トイレや浴室での話である。
寝室での排尿行為なんて、初めてだった。
渚は手を後ろにつけて、腰を突き出すような姿勢になってから、下腹部へ力を込めた。
「ふっ…………ぁ」
そうすると、しょろろろ、と勢いの強い音を立てて、色の濃い尿が弧を描いて飛び出した。
洗面器中央の検査薬に飛沫をあげながら、ぶつかっていく。
液体の重みを感じながら、検査の必須要項である2秒程を達成したのを確認すると、翔はそれを拾い上げ、濡れた採尿部の蓋を閉めた。
そうして少しの間待ってから開けば、判定の窓に、縦線が浮き上がっている筈である。
妊娠していればの話だが。
洗面器の中で、黄色い水溜まりが波打つ程の量を出し切って、渚は生理現象の身震いをした。
翔は手のそれを部屋の隅へと寄せて、渚の隣に座り、検査薬を手渡す。
彼女は受け取ったそれの結果が待ち遠しく、そして、不安であった。
「……案外、気のせいかもしんないし、ちょっと、焦りすぎた、かな」
「いやいや、そんなことはない。普通だろう」
「そうだと、良いんだけど……」
「…………」
こんな機会はこれからいくらでもある上に、いつでも行うことが可能だというのに、もし今子供が出来てなかったとしても、それが翔との関係の決裂になるという訳でもないのに、渚は急いていた。
家族という形への切実な羨望と思慕が、要因である。
それが分かっているからこそ、下手な慰めは渚を傷つけかねないとして、翔はそれ以上に、言葉をかけるのを止めた。
緊張による沈黙が暫くやって来て、新品故に寸分の狂いもない時計へ渚は何度も視線を送る。
そして、その時を、長針が刻んだ。
「もう、経ったよね」
「ああ、……開けて、みてくれ」
約束を交わしたあの日から幾星霜、望んでいた夢が、ようやく実るかという正念場。
澱のようになっていた子供と家族への感情を忍ばせて、渚は恐る恐る、蓋を開いた。
果たして、そこには──
「…………あ」
──月明かりに浮かぶのは、はっきりとした縦の線。
目を瞬かせて、何度も渚は手元の検査薬を見やる。
それは彼女にとって、まぎれもない祝福の証。
絞り出すような、か細い声で、渚は翔へと尋ねる。
「翔。ちょっと、見てくれない……?」
「…………出てる、ぞ」
「嘘じゃない?気のせいじゃ、ない?」
おろおろと、視線を翔と縦線の間で往復させて。
こちらを見つめる翔の表情で嘘じゃないと、ようやく現状を飲み込んで──
「俺、本当に、妊娠したんだ……」
──ポロポロと、渚の目から落ちていく喜雨。
ずっと守ってくれた、家族になってくれた1番の人へ、感謝の想いを伝えたいと思うけれど、沸き上がる、ごちゃ混ぜになった様々な感情を、脳が処理するので、いっぱいいっぱいで、それ以上言葉が紡げない。
翔は静かに己の頬へと滴っていく涙をそのままに、渚を抱きすくめた。宥めるのではなく、称えるべくして、彼女の背中に回した手でゆっくりと渚を擦る。
「渚、……おめでとうっ」
「うんっ、うん……っ」
そして、祝う。長々とした祝辞ではなく、たった一言に、これまでの全てを集約させて。
微かではあるが、間違いなく宿った小さな命の灯火を守るように、今は何の変わりもない下腹部に、渚は両手を沿わせた。
──自分の手と己を包む翔の体を通し、愛する男との遺伝子を分けた子供に、親の温もりが伝わることを、祈りながら。
*
「流石にもう、勃たないな……」
「うん……こっちも、もう一歩も動けない」
服を着る余力もなく、裸のままベッドに横たわって、シーツに2人くるまって、寝転がっていた。
翔の腕を枕にして、渚が枕元の棚に陳列されているリングケースから指輪を取り出した。
くすみなく綺麗に手入れされているそれを、カーテンの隙間から漏れた、月の光に晒す。
それは変わりなく、思い出のままに輝いていた。
満足して、渚はそれを元の場所へと戻す。
「渚。今日は、どうだった」
「──すっごく、良かったよ。1日中するっていうのも楽しかったし、妊娠できたから、嬉しい限り」
手持ち無沙汰になった渚は、翔の胸板を指でくるくるとなぞりあげていた。
くすぐったいが、わざわざ拒否するほどのものでもなく、そして、半日以上に及ぶ子作りによって、体力を限界まで消耗し、妊娠が確定したことによる安堵が加わって、制止の為の声を張るのも、四肢に力を込めるのも、億劫なほどに、翔は疲れ果てていた。
とはいえそれが、彼にとって渚との睦言と心配を止める理由にはならないが。
「……気分が悪いとかないか?つわりが早いんだろ、TS娘は」
「今のところは、うん。全然大丈夫。起きるとしても、そんな直ぐに出るわけじゃないから」
「前も聞いたけど、本当に仕事は大丈夫なのか?」
「そういう休みを取りやすい職場を選んだから、本当に大丈夫だよ。実際、取ってる先輩いるし。しかもTS娘」
渚は共働きで、家庭を支える道を選んだ。
だが、共働きと聞けば、脳内に過るのは、渚の両親の末路だろう。
とはいえ、彼らが離婚した大元の原因は、性格の不一致によるものであり、そもそも共働きでも幸せになっている夫婦はこの世にいくらでもいる。
そして上手く行かなかった失敗例を間近で見れたことで、渚は反省点と改善点を学ぶことが出来ており、充分にそれを活かすことが可能であった。
しかし、それに至るまでに支払った、家族の離別と、自身の出生の否定という代償は、彼女の心に深く傷を付け、怯えさせ続けていた。
遊園地以降の翔との幸せな日々がそれを癒し、埋めていったが、何時までたっても完全に消えることはなく、罅のように残り、半ばトラウマと化していた。
故に、当初は家事と子育てに専念できる専業主婦への道を渚は考えていた。
翔もそんな彼女の心情を考慮して、その道を推奨してくれていたのだが、金はあるに越したことはないのと、それ以上に、2人の稼ぎで生活を安定させることで、早く子供を作れる状況にしたかった。
無論、子供が生まれ成長していく中で、仕事によって我が子を優先できなくなった暁には、退職して専業主婦になるという意思を固めている。
そして何よりも、渚の両親のようにはさせないと断言してくれた、半生以上を共に生きてきた、片割れへの最大級の信頼によって、舵を切るに至ったのであった。
「そうか。……異常があったら、直ぐに言ってくれよ。俺がどうしてもいなかったり、いけそうにない時は、母さんに頼ってくれ」
「分かってる、ありがとうね。……翔の母さんにも、父さんにも、妊娠したって言わなきゃなぁ」
「ああ、絶対喜ぶぞ。お袋は感極まって、抱き付いてくるに違いないし、親父は静かに泣くだろうな」
「……ふふふっ」
その様子がありありと浮かんできて、渚は苦笑する。
自分達の門出を祝ってくれた、もう肉親といっていい2人に、もっと恩返しをしなければと、親愛の思いを強めた。
「──渚。病院、何時から行くんだっけか。妊娠5週目ぐらいだったか?」
「うん。それぐらいから赤ちゃんの姿が見え始める頃だから」
「了解。絶対着いていくから、土日のどっちかで頼む」
「分かった。お願い」
「おう。……ん、あ」
──ぐきゅるるるるる。
三大欲求の内の、性欲が消え去り、疲労がもたらした睡眠欲がここぞとばかりに主張するものだから、食欲は二の次となっていたが、今になってやっと顔を出して、間抜けな音でそれは警鐘を鳴らしてきた。
「あははっ、すっごい腹の音」
「ムードを大事にしてくれ、俺の腹」
「……明日さ。美味しい物食べに行くついでに、遊びに行かない?」
「お、どこに行く?」
「ボウリングとか、カラオケとかで遊び倒すってのは、どう?」
「いいな。……あ、水族館っていうのもどうだ?今日はこんなに激しかったし、落ち着いたとこでしっとり行くのも面白いと思うんだ」
「ああー。それもいいなぁ」
「渚が決めてくれて構わないぜ」
「……明日の朝、決めてもいい?」
「いいさ」
空きっ腹を抱えて寝るのは寂しいが、明日に渚と一緒に腹一杯食べて、慰めてやればいいと、翔は明日の自分に全てを託す。
腕枕の上で身動ぎ、天井を見ていた渚は顔を横に倒して、翔へと問いかける。
「もう、寝る?」
「そうするか。明日は早い」
「じゃあ翔。……ぎゅって、して欲しいな」
「ああ、ん」
腕枕から頭を降ろして、渚が翔の胸板に顔を収めるように移動すると、2人はシーツの中で抱き合った。
偶然で出来上がっている、ともすれば薄情であり、希薄ともとれる、生まれ落ちたこの世界で、奇跡の連続の末に、互いの存在を認知し、愛し合える幸福を、肉体の感触を持って、分かち合う。
「……なあ、遊園地の時、死が二人を分かつまでって、言ったけど、あれ、訂正させてくれないか」
「……え?」
「その、だな。……死んだ後も、来世でも、お前の隣にいたい」
「…………不安にさせるな、もうっ」
そう言って、渚は頭を翔の胸板へと、ぐりぐりと押し付けてきた。
当たる髪が微かに痛く、そしてこそばゆい。
疲労で震える右手で何とか彼女の頭を抑え宥めるべくして、その小さな頭をわしわしと撫でる。
しかし、どれほど撫でようとも止まりそうな気配はなく、翔は口頭でも謝罪と弁解をすることにした。
「ごめんって。渚が愛おしくって、どうしても言いたくなったんだよ」
「……嬉しいけどさ、ちょっと怖かったんだけど」
「俺がお前を離すわけないだろ。そもそも離れるなんて考えるだけで、俺はすぐさま死ぬ。死因は孤独死だ」
「俺はそうなるところだったんだけど?もうちょっと抱き締めてくれないと、大の大人が泣く所が見れるよ?」
「許してください。これでどうか」
「許そう。……ん」
安堵のため息を溢して、少女の可愛らしい掘削運動は収まった。
しばしの間、翔の胸に顔を埋めていた渚は、もぞもぞと体をくねらせると、その胸板より脱出して、翔と顔を見合わせた。
「ね。俺からも、言いたいことがあるんだ」
「いいぜ、聞かせてくれ」
「……んんっ。じゃあ、耳の穴かっぽじって、よーく、聞いてよ?」
いつもの様な冗談めかした口調。しかしその表情は、どこまでも真剣で、相手に対する慈愛を感じられた。
渚がこれから紡ぐのは、何の装飾もつけない、真っ直ぐで、純粋な愛の言葉。
これまでも、そしてこれからも、歩幅を合わせて歩み続ける、最愛なる片割れへ。
幾千もの感謝を、友愛を、恋情を乗せ、言葉を贈る。
「──大好き、翔。ずーっと一緒に、いよう?」
渚は、翔を真摯に見つめた。
幼き時分より、変わったこと、戻らないことはあまりに多くあるけれど、翔の根底にある渚への想いは、何にも変えられることなく、ただ其処にあり続けた。
「──ああ。ずっと一緒にいよう、渚。大好きだ」
──故に、男にとってその返事は、2人が出会った頃には既に、決まっていたのだった。
「……ふふっ」
「ははっ」
2人は瞳の中の己を見合わせる。
そこには、幸せで顔が緩んだ、少し間抜けな、自分達が写っていた。
*
『──しょう!こっちこっち!』
『まってなぎさ!さきにいくなよーっ!』
聞き覚えのある子供達の、わいわいとした歓声が辺りいっぱいに響いていく。
それは、微かに覚えている、近所にある廃校の裏手に広がる、向日葵畑を旅した記憶の一片だ。
どうも、明晰夢を見ているようで。
匂いはなく、空気の流れを感じ取れない、あの日のままで停滞した、滲んだ世界に一人、ぽつんと、回帰している。
『こっちになんかありそうなんだ!』
『ほんとうかよー?……ま、いっか!いこう!』
『うん!』
2人の少年は風で波打つ、一面に広がった黄色の花海を仲良く遊泳する。
離れないように手を繋ぎ、青々とした茎の林をかき分け、幾重に咲き誇る花弁に度々顔を撫でられながら、少年達は花海の中心へと突き進んでいく。
向日葵畑は結構に広く、そして悠々と生長し群集していることによる密度と高さにより、下手に子供が飛び込めば、身長の低さで花畑の外の風景を確認できず、方向が分からなくなるだろう。
遭難とまでは行かないだろうが、抜け出すのに時間がかかって、無駄に体力を消耗し、熱中症になる危険性があり、ひいては命の危機を迎えるかもしれない。
肩掛けの水筒を携えているとはいえ、少年達にそんな自分達の置かれている状況への、不安や懸念の気配は、微塵たりとも感じられなく、無鉄砲さが否めない。
『あ、こっちかもしれない!』
『えー?』
だが、子供の頃の冒険なんてそんなもので。
自分の知らない不思議があるかもしれないと、信じて止まず、無茶無理無謀を理解しないまま、一纏の夢を探す。この世の全てが謎で満ちていて、分からなかったからこそ、全身を持ってそれを知ろうとした。
その姿勢は蛮勇であり愚かであるけれど、どこまでも純粋で煌めいていて、尊くあった。
代わり映えのしない風景の変化を求めて向日葵を掻き分けていく少年達の片割れが、不意に立ち止まったかと思えば、目から大粒の涙を溢れさせて、泣きじゃくる。
『──ふっ、ぐっ。んぅ、ぐすっ……』
『どうしたなぎさ!?ほら、こっちきてっ!』
泣いている少年をもう片方が慣れた様子で抱き寄せると、頭頂部を擦り、背中をポンポンと軽く叩く。
その慰めの効能は確かなようで、早々に泣き止みそうにない様子だったのに、直ぐに嗚咽が収まった。
落涙が止まったのを察するけれど、背中と頭にて動かしている手は止めずに、理由を尋ねる。
『また、さみしくなった?』
『……ううん。たぶん、ちがう。わかんないけど、……しょうといっしょにあそべて、たのしいから、ないたのかな』
『──たのしいのに、ないたの?……へんなの』
困惑した顔を隠さずに、素直なそのままの気持ちを込めた、明け透けた言葉を投げかけた。
ともすればまた泣き出す原因にもなりそうなものだが、涙の滴を手で払った少年は、微笑んだ。
『うん。──へんなのっ!』
少年の、曇りのない透き通った、無垢で一途な笑顔。
それを見て、自分の胸に灯る熱を感じて、納得する。
──ああ、俺はこの時、渚を好きになったのか。
『ありがと、しょうっ!もっとさきに、いこうよ!』
『……ああ!ついてくから!』
2人は破顔一笑すると、手を繋ぎ合って、再び走り出した。
そうして、海へと沈んでいって、見えなくなった。
……この後は、どうなったっけか。
出られたのか。帰れたのか。
いや、どっちでもいいことだな。
何にせよ、思い出せて良かった。
気付きもしなかった幼年期の記憶の欠落を、夢で補うことが出来て、満ち足りた気分になった。
──翔。
不意に、誰かに名前を呼ばれた。
何となく後ろを振り返ると、そこには見知った存在がいた。
色褪せていた世界が、途端に色を取り戻す。
白い無地のシャツと短パンを見に纏って、いつもと変わらない笑みを浮かべているそいつは、俺を指差すと、その指でトントンと自分の短パンのポケットを叩いた。
そのジェスチャーは、俺のズボンのポケットの中に、何かが入っているのを指すのか。試しにポケットに手を入れると、固く小さい何かが指とすれ違った。
それを摘まみ、ポケットから手を抜きとると、指と指の腹の間で、向日葵の種が挟まっていた。
渚は向日葵畑に近づくと指で土を掘り、穴を作った。
そして俺は種をそこに沈めて、土を被せた。
するとその種は間もなく発芽した。土に根を張り子葉を出し、夏の鮮烈な風に、その葉っぱを揺らしていた。
俺は渚の方を見た。
渚は満足げに微笑んでいた。
俺も、気づけば顔が笑っていた。
──芽生えたこの種は、きっと、胎動を始める秋を過ごし、苦難が到来する雌伏の冬を越え、開花の春を迎えるだろう。
そしてまた、夏がやってくるんだ。
愛の花を抱いた俺達が、今までのように、笑う夏が。
渚の話はこの後編の1日中えっちする話だけで構成される予定でしたが、あれよあれよと書き進める内に、こんなにも大きくなりました。
次はもう少しコンパクトに収める予定です。
感想お待ちしております。