※この作品はR-18です。

在宅奴隷・諾子(なぎこ)II 鬼母篇   作:シン之助

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●いよいよ「鬼母篇」最終回です。感想&ご評価を宜しくお願い致します。
●加木充司の牝豚マゾ奴隷になり悪の手先と化した春日諾子はついに穢れた汚物まみれの食材を息子・悠人に食べさせ呪いをかけてしまう。だが、相反する心と肉體に翻弄されながらも、諾子は少量しかない枇杷の実を自身を顧みず全て悠人に飲ませ魔を退治することに成功した。しかし・・・放屁音が脳内に響き渡った途端、諾子は再び邪淫に染まって良心を失っていく。充司に命じられるままご神木だったお守りを祟り器に変え、邪悪な快感に溺れて自我を失っていく。そしてついに諾子は最後の一線を越え、まるで魔女に取り憑かれたように悠人に対するマゾ奴隷調教を嬉々として施してしまう。淫虐の限りを尽くされた悠人は祟り器を植え付けられ、内部から邪淫に染められつつあった。全てに絶望し命を断とうとした諾子の捨て身の行為が奇跡を呼び起こす。だが、諾子の肉體はまだ邪淫に堕ちたままだった・・・


最終回 第38話 清い心・淫らな肉體・美しい魂

---------登場人物---------

春日 悠人(はると):主人公

春日 諾子(なぎこ):悠人の母

春日 悠年(はるとし):悠人の父(M商事・開発部・課長)

加木 充司(じゅうじ):主人公の遠縁(悠年の母方の従祖母の孫娘(はとこ)の婿養子の夫)

加木 清充(きよみつ):充司の子

枇杷の仙人:謎の老人の残留思念

金賢姫:サタンの娘。AJK団総帥。

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「はっ・・・」

 

 翌朝・・・悠人は突然目を覚ました。

 何かとてつもなく奇妙な夢を見ていたような気がする。しかし、なぜか何も思い出せないでいた。あまりにも淫靡で、恐ろしく、もの悲しい夢を見たような気がする。まだ5月だというのに寝汗をびっしょりとかき、気が付くと恐怖で歯を食いしばっていた。だが何も思い出すことは出来なかった。

 

「確か夕食を食べながら・・・急に気持ち悪くなって・・・」

 

 そう独り言ちながら起き上がって周りを見渡すと、どうやらいつの間にか自分の部屋に戻ってベッドに入ったようだ。ふとベッドサイドを見ると、母が床に跪いた状態で悠人の手を握っまま寄り添うように寝入っていた。その顔は愁いを帯びていたものの穏やかな表情を浮かべていた。悠人が帰宅してからずっと浮かべていた不安そうな表情が消え、安らかな寝息を立てている。もう8時を回っているというのに、普段早起きの母はすっかり寝入って起きそうになかった。

 

(でも・・・いつもの母さんに戻っているみたい)

 

 その表情を見て安心しそうになったものの、母は半裸に近いあられもない格好だった。悠人は思わず赤面しながら、急いで自分の毛布を拾い上げ肩から掛けてあげていた。そして毛布を剥いで初めて、自分も全裸で寝ている事に気が付いた・・・。

 

(いったい何があったのだろう・・・)

 

 急いで下着を洋箪笥から取り出して履くと、机の上に自分の服が丁寧に畳まれている事に気が付いた。

 

(僕はこんなに丁寧に畳まない・・・母さんが畳んだのだろうか?・・・・・・)

 

 やはり何も思い出せなかった。急いで服を着た途端、強烈な便意を催していた。とりあえずトイレに急いで駆け込む・・・。

 

「げっ・・・・」

 

思わず叫び声を上げていた・・・。

 

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 便器を恐る恐る覗き込みながら、昨夜の記憶を辿り始める。

 

(僕・・・こんなに食べたんだっけ?まだ鰻丼を全部食べ終わる前に・・・母さんの作った料理を食べてお茶を飲んだ途端・・・まるで睡眠薬が盛られていたみたいに、スッと意識を失くしていた・・・)

 

 嫌な予感がして急いで自分の部屋に戻っていた。母はまだそこで寝ていた。そしてまじまじと寝入っている母を見つめてしまう。一瞬でも母を疑ってしまった自分に嫌悪しながら、しかし母の様子があまりにも変だった昨日の様子を思い出さざるを得なかった。そして今も母は半裸の格好のまま寝ているのだ・・・それはあの加木親子・・・特に充司と言う遠縁の男の影響だと直感していた。

 

(母さんはあの男に感化されている・・・いや・・・そんな生易しいものではない)

 

 恋愛経験があまり無い悠人でも、その事は痛いほど感じていた。しかし悲しいことに童貞の悠人では、母と充司とのただならぬ関係がどんな類のものなのか、どんなに邪淫に満ちたものなのか、気づくはずもなかった。それはひしひしと感じられる焦燥として悠人を不安に駆り立てるだけで、何の具体的な解決策も判断も出来ないままだった。

 

(父さんに知らせるべきじゃないのか?・・・・)

 

 そう自問しながらも、必死の形相で自分に懇願していた母の表情が思い出していた。

 

【それより・・・加木充司さんの事、父さんには知らせないで・・・お願い・・・】

 

 そう言った母の言葉が妙に心に引っ掛かっていた。その言葉が何より母さんらしくなかった。何事も秘密を作らない夫婦だったのに・・・。だが、そう言われた以上、父さんに知らせることは憚れてならなかった。

 

(こんな時・・・いったい誰に相談すればいいんだ?)

 

 誰も思いつかなかった・・・。綾乃の顔がふと脳裏をよぎったがそんな訳にはいかない。こんな事に彼女を関わらせたくない・・・何より自分の気持ちが追いつかず、良く分からなかった。途方に暮れて天井を仰ぎながら、どうしたものかと室内を見渡している時、それに気が付いた・・・。

 

(隠しカメラが仕掛けてある・・!・・)

 

 写真立てとブックエンドに挟まれた隙間に置かれた雑誌をくりぬいた中にそれは仕掛けられていた。

 

 

【清充君・・・ここは悠人兄ちゃんのお部屋だから・・・今日は入ってはダメよ】

 

「今日は・・・」か・・・。詳細に僕の室内を調べる必要がある・・・母さんはもしかするとワザとああ言ったのかもしれない。僕にこのことを警告するために・・・。母の言葉を反芻しながら、悠人は母親を起こさぬようにゆっくりと起き上がり、持参したノートPCをカメラに映らぬ方向に向けながら急いで起動させていた。もしSSHでの一連の事件が無ければ、悠人は隠しカメラに気づく事も、その対処方法も分からなかっただろう。

 

(あの事件の経験がこんな時に役に立つんだなんて・・・)

 

 そう思いながら、四谷が開発したWi-Fiの電波状況を調べるアプリを立ち上げる。驚いたことにこの家の中の10か所以上から何らかの不審なWi-Fi電波が発せられていることが分かった・・・。

 

(きっと隠しカメラからのWi-Fi電波だ・・・この家は盗撮されている・・・しかも・・・10か所以上も・・・)

 

 悠人の部屋から出ている不正な電波は3つ・・・。カメラに映らないよう最小限度の動きで、さりげなくそっと室内を見渡す。室内灯の笠の隙間やドアの後ろの壁・・・残りの2つの隠しカメラも何とか発見することが出来た。どれも巧妙に仕掛けられていて余程注意して見なければ分らない程だった。3つの電波にフォーカスしながら解析ソフトを立ち上げる。通常プロトコルではない・・・暗号化処理が厳重に施され、四谷の暗号解読キーでも見ることが出来ない。

 

(でも電波はかなり微弱だ・・・バッテリー駆動で極力消費電力抑えているんだな)

 

 そして盗撮している者の鼻を明かす名案が浮かんだ。

 

(一度この電波をコピーし、より強力な電波でループ再生すれば、盗撮しているモノの受像映像には同じ映像が繰り返し流れるだけでこちらの動きは掴めなくなるぞ)

 

 一旦ベッドに戻り3分間苦しそうにしながら寝たふりをすると再びPCに戻った。記録した電波の前後1分づつをカットし、それをループ再生させてノートPCからも発信させるようにした。微弱なカメラからの電波はかき消され、このノートPCの電波しか受信できなくなっているはずだ。後は何度もループし続ければ隠しカメラのWi-Fi電波をジャックしたことになる。そのプログラミングにほぼ1時間を要したが、四谷に教わった技術を使えばたいして難しい事ではなかった。母を振り返るとまだすやすやと寝息を立てている。

 これでこの部屋は大丈夫・・・。悠人はノートPCの電源を切らないようにしながら、こっそりと部屋から抜け出ると家の中の不正な電波を再度検索する。リビングは言うに及ばず、父と母の寝室や浴室、トイレにまで不正な電波が発信されている。どれも似たようなプロトコルを持っていることから、その何処もが同様の隠しカメラからの電波だと分かる。一度コツを掴むとあとは簡単だった。急いで全ての隠しカメラのWi-Fi電波をジャックし、ノートPCのWi-Fi出力を最強にして3分おきのループ再生像で上書きして送信していく。

 

(これでこちらの動きはつかめなくなったはずだ・・・)

 

 充司親子はリビングのソファアでぐっすりと寝ていた・・・。気づかれない様にリビングを通り過ぎると、父と母の寝室に置いてある金庫の回りを調べてみる。案の定、金庫周辺にレンズを向けているカメラが3台も置いてあった。暗証番号を盗むためだとすぐに直感出来た。

 

(もしこれを加木充司が仕掛けたとしたらとんでもない悪党だぞ・・・)

 

 悠人は5歳の時からこの金庫の事を熟知していた。母が大騒ぎして、父が開けられないように暗証番号を変えた後も、実は悠人は金庫を開けることが出来ていた。

 

(金庫を開ける事と中身を見ることは別問題だ)

 

 悠人は純粋に知的な興味で金庫開けを楽しんでいただけで、中身を見ることは子供心にもいけない事だと分かっていた。特に筆記体で書かれたフランス語の手紙は5歳児の悠人には解読不可能だった。だから、いつか原文で読みたいというのが悠人の夢になったのだが、それは母の許しが得られた時だと今でもしっかり考えていた。悠人は3つの手文庫のうち、権利書や実印を入れた手文庫だけを取り出して懐にしまうと、父と母の手文庫はそのまま金庫内に戻しておいた。

 

(とりあえずセキュリティをアップしておこう・・・)

 

 カメラは一応ジャックしていたが、何があるか分からない。悠人は金庫の暗証番号をカメラの死角で書き換えていく。すでにループ再生させているため、そんな必要もないはずだ。だが・・・

 

(あの悪辣な男は何を仕掛けているか分からない)

 

 そう考えて、カメラの視野範囲外で最小限の仕草で金庫の暗証番号を変え、物理錠の位置をこっそりと置き換えておく。

 

(金庫を持ち出さない限り開けることは出来ないはずだ・・・)

 

 悠人は何食わぬ顔で自分の部屋に戻ると、手文庫をこっそりとバックにしまった。自分の部屋以外の隠しカメラのループ再生を解除し、ゆっくりと母親の肩をゆすった。もう昼近くになっていた。

 

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「母さん朝だよ・・・起きて」

 

 すやすやと眠っていた諾子が、その声を聴いて起き上がったのは昼近く、11時をとっくに過ぎている頃だった。充司との爛れた生活を通じて、諾子の生活は不規則になり、昼近くまで寝てしまうことが当たり前のようになっていた。

 

「あら・・・悠人お早う・・・」

 

 久しぶりに爽やかな寝起きだった。自然といつもの言葉が出ていた。淫欲に溺れている時とは違う、清々しい感覚が蘇ってくる。貪欲さや肉の疼きとは無縁の世界・・・晴やかで心が洗われたような研ぎ澄まされた感覚・・・。諾子は久しぶりに五感を通じて空気の色や、光の匂いを感じていた。自然の息吹や気配がひしひしと肌に伝わってくる・・・

 

「どうしたの悠人?」

 

 悠人が、いぶかる様な、そしてもの問いたげな表情を浮かべて自分を見ている。その表情を見て諾子は初めて、自分がほとんど半裸の状態で毛布をかぶっている事に気が付いた。

 

「私・・・」

 

 諾子はそう言いながら、辺りをゆっくりと見渡し、自分が悠人の部屋の中で転寝をしてしまった事に気が付く・・・。

 

(この子は私が半裸の格好で毛布に包まっている事に気が付いたかしら?・・・)

 

 もう一度、問う様に悠人を見たが、その顔には不安と安堵が同居しているような不思議な表情が浮かんでいるだけで何も分からなかった。そして昨晩の事をゆっくりと思い出し始めていた。

 

「悠人ごめんなさい・・・」

 

諾子は思わずそう言っていた。

充司に唆され、悠人に酷い食事を食べさせてしまった。その上、言われるままに得体のしれない薬までお茶の中に盛って飲ませてしまったのだ・・・。到底許されるものではなかった。寝ているとはいえ、悠人の前で淫欲に溺れながら凶悪な親子とセックスして背徳の快感を貪ることまでした・・・。地獄のような快感を味わいながら意識を完全に飛ばしていた。母として、親として、決して許されることではなかった。そして、自分はもっとひどい事をしたという漠然とした記憶の断片が残っていた。だがそこからが思い出せない・・・。

 

(充司さんと清充君に嬲られながら・・・私は何をしたの?・・・どんな酷いことを悠人にしてしまったの?・・・)

 

 恐る恐る悠人の顔色を伺うが、悠人は元気そのもののように見えた。安堵がこみあげ再び悠人に謝ってしまっていた。

 

「本当にごめんなさい・・・」

「どうしたの母さん? なんで謝るの?・・・僕・・・昨日夕食を食べながら急に眠くなって・・・それから何も覚えていないんだ・・・どうやって自分の部屋に戻って来たかも」

 

 諾子はそれを聞いて思わずホッとしていた・・・。悠人に自分の淫らな姿を知られなくて良かったと心から安堵していた。そして、結局自分のことしか考えていない自分に思い至って、自分が許せなくなった・・・。

 

「加木さんが苦しがっているあなたをベッドまで運んでくれたのよ・・・」

 

 嘘をついている気分だった。事実を伝えているが真実は言っていない。これでは充司さんが善良に聞こえる・・・あんな酷いことをさせた男が・・・。実態を決して伝えていない。

 

(この説明では・・・きっとこの子も納得しない・・)

 

 しかも諾子にはもっと大それたことを悠人に対して行ったという記憶の断片がうっすらと残っている。

 

(私は何かとても酷い事を・・・やってはいけない事を・・・悠人にしてしまっている・・・)

 

 酷い食事を食べさせ、得体のしれない薬まで飲ませた以上の酷い事をしたはずだった・・・うっすらと残っている断片的な記憶から諾子はそう直感していた。しかしそれを伝える事など出来ようはずもなかった。思い出すのさえ恐ろしかった。

 

(私の無意識はワザと記憶を遮断しているのかもしれない・・・)

 

 だから思い出せない。充司に与えられる地獄のような快感の中で意識を飛ばしながらやってしまったことを・・・。諾子は自己嫌悪から思わず手首を見つめていた。透き通るような肌に浮き上がった血管が妙に目から離せなくなっていた。

 

「それより悠人・・・あの・・・体調はどお?・・・」

 

 なるべくさりげなく聞いたつもりだった。口移しで与えた枇杷の実のコンポートの香がまだ口の中に残っているような気分だった。清々とした爽やかな柑橘の香が思い出される。あんなことでこの子は本当に大丈夫なのだろうか?・・・あれは本当にただの睡眠薬だったのだろうか?・・・・

 

「うん・・・なんだかよく寝たはずなんだけど・・・身体はとても疲れている気分・・・。でも心の方はすっきりして清々しいんだ。爽やかに目が覚めた感じ・・・夕食の時あんなに気分が悪かったのが嘘みたいだ」

 

 そう言って悠人は胸を張っておどけて見せた。

 

「良かったわ・・・本当に良かった・・・・」

 

 諾子はその様子を見て心底安心していた。良かったと・・・安堵で思わず涙がこぼれてくるのを抑えることが出来なかった。

 

(この子は穢れていない・・・この子はまだ朗らかで、快活で、立派によく育っている)

 

 それは実感だった。なぜかそう感じられた。忘れてしまった記憶の中にそれは確かに残っていた。涙がとめどなく溢れてきていた・・・。どうしても止めることが出来なかった。

 

「あっ・・・ごめんなさい・・・」

 

 諾子は再び詫びていた・・・そして涙を隠すように目頭をそっと抑えると、包まっていた毛布に恥ずかしそうにうずくまった。

悠人は母親があまりにも過剰に反応している様子を見て、かえって不安が募っていた。一瞬、怪訝な表情を浮かべたが・・・一連の仕草はいつもらしい「母さん」に戻っているようだった。枇杷の実のコンポートを一緒に作った時の気分が再び戻って来ていた。

 

「母さん・・・ちょっと話しておきたいことがあるんだ。あの加木っていう人の事で・・・」

 

 悠人は勇気を出して切り出していた。

 

「かっ・・母さんパジャマのままだから・・・すぐに着替えて来るわね・・・」

 

 だが、加木の話をした途端に、母が動揺し、嘘をついてまでその場を離れていく・・・。悠人は唖然としながら拭われたばかりの不安がかえって深まっていくのを感じていた・・・。

 

(わたし・・・また嘘をついた・・・)

 

 諾子は自己嫌悪に陥りながらも、そう言わざるを得なかった自分が腹立たしかった。悠人に目を合わすことが出来ずに、逃げるように寝室に向かっていた。

 

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 諾子は悠人から逃げるように寝室に入ると、まともな下着と、地味目なロングスカートのワンピースに着替え、急いでリビングルームに向かっていた。

 

(充司さんはなんて言うかしら・・・)

 

 すっかり充司への依存が身についてしまった諾子は、加木親子が居るだろうリビングルームに入る前に、何の疑問も無くそう考えていた。そしてそんな自分に気づく様な事も無く、諾子はリビングに入る瞬間だけチラと考えるのだった。

 

(悠人の居る間は、もうあんな格好やあんな事はしたくない・・・)

 

 それは清い心を取り戻した諾子が、やっと母親としての自覚と責務を取り戻した証だった。この時諾子は確かに自分を取り戻そうとしていた。しかし、そう考えていたのはリビングに入って充司と清充の「牡の臭い」を嗅ぎつけるまでの短い間だけだった。ビキニパンツ一枚のだらしない姿でソファーに寝ている二人の股間からは、3日間セックスをし続けた濃厚な性臭がムンムンと漂い、リビング中に充満していた。牝の嗅覚がハッキリとそれを嗅ぎ取った瞬間、諾子は充司の股間から目が離せなくなっていた。

 

(私・・・何を考えているの・・・悠人がすぐ上にいるというのに・・・)

 

 だが諾子の股間は早くも湿り気を帯び、履いたばかりのショーツはクロッチの部分に船形の染みを作り始めていた。気が付くとフラフラとまるで夢遊病者のように、充司の寝るソファーの前に跪き、股間に鼻を近づけてクンクンとその麗しい匂いを嗅いでいた。

 

(ちょっとだけなら・・・)

 

 諾子は充司によって長い時間かけて変えられてしまった自分を嫌と言うほど思い知っていた・・・。いけないと思いつつも、やめることは出来なかった。

 

「けへへっ?・・・特等席で息子の苦しむ様子を一晩じゅう見続けた見た気分はどうだった?マゾ逝きを何回したんだ?」

 

 充司はいつの間にか目を覚ましていた。驚いて振り返った諾子はその声を聞いただけで肉體がピクンと跳ねるように反応してしまったのを意識する。そしてクロッチの染みがますます広がっていくのも・・・。充司はソファーから半身を起こすと、見透かしたように諾子をせせら笑い始めていた。股間を見せつける様に諾子の鼻先に突き出すと、舐めろと言わんばかりに腰をくねらせ始める。ツーンとする饐えた淫臭が諾子の鼻腔に溢れると、諾子は命じられた訳でもないのに、ビキニパンツを突き破らんばかりに朝勃起しているその一物を惚れ惚れと見つめ、布越しにゆっくりと舌を這わせ始めていた。

 

「ケケツ・・・これが恋しかったのか?・・・牝豚・・・」

 

 酷い事を言われているというのに、諾子はゾクゾクとする被虐の快感を早くも感じ始める。心でどんなに拒絶しようとも、あさましく変えられた雌の肉體はそれを求めてしまう。ビキニパンツの布越しに感じるその熱い剛直が、諾子からすべての逡巡を全て剥ぎ取っていく。諾子はなんの躊躇も無くクロッチ部分を横にずらすと、充司の巨大な一物がパンツを勢いよく飛び出し、勢い余って諾子の顔面を打った。

 

「あああっ・・・ん」

 

 その硬さと勢いを頼もしく感じながら、諾子は思わず愛おし気に、その隆々と勃起する一物に頬ずりすると、ゆっくりと亀頭の先を舐め始めた。

 

ズッチュッ・・・スズズッーッ・・・チュズボッ・・・・

 

 ひょっとこ顔を晒しながら口いっぱいにペニスを頬ぼる諾子に貞操な母親の面影は微塵も残っていなかった。今の諾子にとってこの行為はもはや当たり前の事だった。この親子と爛れた生活を1か月以上に亘って送り、非常識極まりない淫靡なセックスを繰り返している間に、諾子にとってこれはあいさつ程度の日常行為にすぎなくなっていた。SMプレーが日常の中に取り込まれる毎日に、諾子は何の違和感も羞恥心すら覚えずに無意識に牝豚の作法を行うよう躾けられていたのだ。この行為にどうしようもない嫌悪感を味わっていた自分が不思議でならなかった。

 ごく普通の家族の日常のように、まるで食事をしたり掃除をする様に、諾子は何の疑問も感じずに、とんでもなく変態的で淫靡な行為を自然に受け入れ、無意識のうちにこなすように調教されてしまっていた。実の息子がすぐそばにいるという事実すら、今の諾子の意識には登らない。この匂いを嗅いだ途端に、淫欲に呑まれ、悠人のことが頭の片隅にすら浮かばなくなっているのだ。清い心を取り戻したはずの諾子は、たったの数秒でそうなってしまっていた。

 そんな諾子をほくそ笑みながら、充司は調教がすっかり完成したことを実感していた。 

 

(後はこの牝豚を使って、悠人を破滅に追いやればいいだけだ。悪の手先となった母親の責めに、正義の少年の心はどこまで耐えられるかな・・・ケケツッ)

 

 充司は高笑いを上げながら、牝豚に堕ちた母親に命じた。

 

「そろそろ悠人も最後の射精タイムだ・・・。祟り器に腸(はらわた)を一晩中犯されて、今頃は金玉にタップリと若い精を熟成させている頃だ。俺様のが終わったら悠人にもやってやれ。最後の射精は手マンコじゃなく、フェラで抜かせてやるぜ・・・」

 

 そう言った充司の声が急に昨夜の妖艶な魔女の声に変わり、続けてこう言った。

 

「ただし今日はゴックンしてはだめよ。呑み込まずにお口の中に溜めて・・・搾り取ったモノはこの男の口に注ぎ入れるの。裏切りの熱烈なキスをしながら・・・。麗しい正義の僕ちゃんの最高のエキスを味合わせて頂戴・・・」

 

 充司はその声も内容も全く意識していないかのように、そう女言葉で言った後も諾子のフェラチオをオナホールのように機械的に促すだけだった。

 

(・・・・・・・・・)

 

 だが諾子は違っていた。その声がトリガーとなって次第に昨夜の記憶を少しずつ取り戻し始める・・・。そして突然、諾子の動きが止まった。

 

「・・・・・・・・」

 

 諾子は無意識のうちに咥えていた充司のペニスを汚いもののように吐き出し、挑むような目を充司の中の暗黒の光に向け、決然と言い放った。

 

「・・・・そうは・・・させないわ・・・」

 

----------

「なっ・・・何だと?!」

「私は悪の手先にはならないって言ったのよ!」

 

 この時になって、諾子は初めて我に返っていた・・・。記憶が混乱し・・・自分がここで何をしようとしていたか分からなくなる。リビングに入った瞬間、充司の臭いに当てられたように意識を無くしたことを直ぐに思い出していた。

 

「でも何で私・・・意識を回復できたの・・・・」

 

 諾子は目を大きくしばたたかせ、辺りをきょろきょろと見渡し始めた。充司が初めて狼狽の目を自分に向けている・・・。今までは自分はこの臭いの虜になって・・・この匂いを嗅が冴えると何も考えられなくなっていた。悠人の事も、悠年さんの事も、そして自分自身の事も全てを忘れ去って充司さんのなすが儘になっていたはずだった。今まではそれが最後まで続いていた・・・だがなぜか今は違う・・・。

 

(なんで私は充司さんに逆らったのかしら・・・いえ・・・今までなんで従っていたのかしら?!・・・)

 

 悠人が無事に目を覚ましていたことを直ぐに思い出す。悠人は元に戻っていた。あの子は奇跡のように普通に朝を迎えていた。

 

「まだ間に合うわ!悠人は何物にも侵されていないわ」

 

 諾子の意外な反抗に充司の戸惑いの様子がありありと浮かんでいた。充司は急いでスマホを取り出すと、隠しカメラの画像を確認する。その顔にニヤリと余裕の表情が浮かび上がる。

 

「へっ・・・悠人は苦しそうな表情なまま自分の部屋でオネンネさ・・・ほら見ろよ」

 

 そう言ってスマホを取り出すと、悠人の部屋に仕掛けられた隠しカメラの映像を諾子に見せつける。

 

「悠人!・・・・」

 

 だが何かがおかしい・・・。悠人はもうとっくに起きて着替えをしていたはず・・・。

 

「悠人はそんな子じゃないわ!誰がお前たちの手なんかに!」

「もう手遅れなんだよ・・・。射精してやらねえと可哀そうだぜ。正義と純情のエキスが濃縮された奴の精をタップリと出してやらねえと・・・一晩かけて溜め込まれて・・・このままじゃあ金玉が破裂するぜ!」

 

 驚愕の表情が諾子の顔面に浮かび上がる・・・。思わず吐き気を催していた。自分が行った記憶の断片が思い出され次第に結びつき始める。

 

「昨夜私は・・・悠人に酷い事を・・・私・・・私・・・とんでもない事を・・・」

 

 諾子は茫然とその場でひざをつき、頭を抱えていた。さっき見た悠人の健康そうな笑顔こそが私の幻覚・・・夢を見ていただけ・・・。

 

「私の都合のいい妄想だった!?・・・私はとんでもない酷い事を・・・邪淫に呑まれて!」

 

「今頃気づいたのか?・・・きひひひっ・・・お前が食事にもった薬も睡眠薬なんかじゃねえぜ。催淫剤さ。しかも、神経細胞を根本的に作り変え、セックス依存症のド淫乱に変えてします悪魔の薬さ。もう元には戻らねえんだよ・・・実の母親によってあんなに絶頂を極めたらな・・・お前さんと同じさ・・・もう「おサルさん」状態になっているんだよ」

 

「・・・・そっ・・・そんな・・・ただの睡眠薬だって・・・そんな・・・」

 

 そう言いながらも、諾子は自分がそう感じていたことを隠すことは出来なかった。きっと酷い事をしようとしていると分かっていながら、自分は邪悪な快感に溺れながら飲ませたのだ・・・。

 

「へへっ・・・お前も分っていただろ・・・あの薬がどんなものなのか・・・お前の肉體が一番分かっているはずだ」

 

 諾子は胸を抑えながら、淫らにに変えられてしまった肉體を振り返る・・・充司が来たあの日以来の・・・淫らな変化に・・・。

 

「まっ・・・まさか・・・あなたが初めて来た日に飲ませたお酒・・・あれにも・・・」

 

 充司は太々しい嘲笑を浮かべているだけだった。諾子は底知れぬ怒りの感情を爆発させていた。思わず怒りの拳を充司に向かって振り上げていた。

 

「はっ・・・初めから私も・・悠人も・・・なっ・・・なんて酷い!あなたそれでも人間なの!何て酷い事をするの!・・・」

「あん?・・・むしろ感謝してほしいな。お前が知らなかった女の悦びの極みを教えてやったのは誰だ?目くるめくマゾの快感やゾクゾクとする露出の快感を躾けてやったのは誰だ?」

 

「たっ・・・頼んだつもりはないわ!・・・あなたが無理やり!・・・あんな卑劣な方法で!」

「卑劣だと?・・・笑わせるぜ・・・お前も共犯者だって事を忘れたとは言わせねえぜ」

 

 ニヤニヤとしながら挑むような眼で睨みつけられた途端、諾子は振り上げた怒りの拳をそのまま降ろさざるを得なかった。

 

「そっ・・・それは・・・」

 

 その通りだった・・・諾子は確かに悠人のことを傷つける悪魔の快感を味わっていた・・・。そんな自分に諾子は耐えられず、底知れぬ恐怖がジワジワと這い上ってくるのを感じていた。

 

(充司に唆されれば、私は何をしでかすか分からない「悪の手先」になってしまうの?・・・現に私は悠人がすぐそばにいるというのに、充司さんの淫臭を嗅いだ途端に・・・あの放屁音を聞かされた途端に・・・何もかも忘れてペニスの虜になってしまう・・・)

 

 ショックだった・・・。あの忌まわしい音が響いた途端にそんな事を平気で受け入れてしまう自分に・・・そんな事が普通になってしまう自分に・・・底知れぬ恐怖が襲ってきていた。

 

(これ以上・・・こんな事をしていてはいけない・・・これ以上続けたら・・・本当に悠人への愛も悠年さんへの愛も失ってしまう・・・いえ・・・私は全ての愛を見失ってしまう・・・)

 

「悠人の未来を失わせるわけにはいかないわ!例え私が死んでも悠人は助け出して見せる!」

 

 そう言って諾子は、充司の手を振りほどこうと身を捩っていた。そんな諾子に充司は嘲笑を浴びせかける。

 

「へっ・・・だがな、もう手遅れなんだよ。悠人は今日、SSHに決して戻らねぇぜ。お前の手マンコの虜になっちまったんだからな・・・けけつ・・これで悠人のやつもお前と同じさ・・・片時もセックスが忘れられない淫乱症のマゾの変態に堕ちていくほかねえんだ。そう変えられちまったのさ。せっかくの才能もこれでパァ・・・せいぜい男妾として有閑マダムに可愛がってもらうのが関の山だぜ・・・ケケケッ」

「・・・・・・・・」

 

 絶対的な絶望が諾子を襲った・・・。

 

(やはり私は意識を失っている間に・・・悠人に手を掛けて・・・)

 

「そうさ・・・お前がやっちまったんだよ。あの音を聞かせれば、お前は何でもやってしまう魔女になっているんだからな・・・諾魔子になっているんだよ!」

「・・・・・・・・」

 

 しかし・・・今の諾子には唯魔子の声が聞こえなかった。暗示の声が響かないのだ・・・。まるで洗脳を脱しているように・・・。まだ自分は諾魔子になっていない・・・

 

「さあ!分かったか・・・これから最後の仕上げだ。一緒に来い!」

 

 充司は嫌がる諾子の腕を掴むと、無理やり立たせて悠人の部屋まで引き立てようと立ち上がらせた。

 

「誰があなたの言うことなんか!」

 

 だがそれでも諾子は充司に反抗していた。自分でもなんでそんなことが出来るか不思議でならなかった。充司の顔に狼狽の色が浮き上がる・・・。

 

「もう一度みっちりと調教し直さなければならんな」

 

 この期に及んでもなお、自分に食って掛かる諾子は驚き以外の何物でもなかった。こんな女は初めてだ・・・百合絵ですらこんな抵抗はしなかった。思わず畏敬の念で諾子を見つめていた。

 

【何を狼狽えているのよ・・・あれを使えば良いのよ・・・】

 

 充司の脳裏に魔女の声が響き渡る。その意図を素早く汲み取ると、充司は手持ちのスマホを諾子の目の前に意地悪くかざしてみせる。諾子の目がハッと見開かれる。

 

「まあいい。またあの音を聞かせてやるだけだ。もっと酷いことをさせてやる。その時はお前が悠人を殺すように命じても良いんだぜ」

 

 諾子の顔がみるみる青ざめていくのを充司はほくそ笑まずにはおれなかった。諾子の全身から力が失われていく・・・反抗する気力を失い、力なくうなだれる諾子の肩を掴むと、そのまま2階の悠人の部屋へ引き立てていった。

 

【さあ・・・サバトの続きをしましょう。正義の少年の断末魔の叫びをサタン様に捧げましょうね・・・。そして一晩かけて熟成したあの子の精をたっぷりと味わいましょうね・・・あははっ!】

 

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 死刑場に罪人を引き立てる執行人のように、充司は力なく項垂れる諾子を前に立たせながら悠人の部屋に向かわせていた。

 

「悠人・・・私どうしたら・・・あなたに何かあったら私・・・」

 

 顔面を蒼白にしながら狂気の譫言をつぶやく諾子には、毒婦となった諾魔子の面影は全くなかった。そこには悲嘆にくれる母親の姿しか現れてはいなかった。母親の顔を取り戻したその時、諾子は母親として最も残酷な仕打ちを受けることになるのだ。

 

「きっとこれは天罰・・・私が悪の誘惑に負けてしまった事に対する天罰・・・」

 

 力なく歩む諾子が二階への階段を上り切ろうとしたその時だった。凛とした少年の声が、階段の一番上から轟いた。

 

「母さんに触るな!」

 

 諾子の目の前に、不思議なオーラをまとった人影が仁王立ちしていた。その人物の背後からゆらゆらと陽炎のような空気が立ち上っている。その姿は悠人のようであり、全くの別人のようにも見えた。

 

「なっ?・・・何だ?・・・お前寝ていたんじゃ?!」

 

 悠人が階段の最上段で腕を組みながら待ち構えていたのだ。

 

「悠人!」

 

 元気を通り越し、頼もしくさえ見える悠人を目の前にした途端、諾子は全てを忘れて悠人に抱きつこうとしていた。諾子が悠人に抱きつこうと近寄るのと、虚をつかれた充司の力が弱まった瞬間を狙って、悠人は諾子の手をさっと力強く掴むと、階上に引き上げるように引っ張り上げていた。

 

「孫子の兵法曰く『天を知り、地を知れば、すなわち勝、窮まらず』」

「なっ・・何を言っている?・・・何を!?」

 

 予想外の事態に充司は階段途中で立ち止まり、唖然と悠人に問い掛ける。

 

「あなたとの体格差や技量差を考えるなら反撃のチャンスはこの場所しかありえない。上下に落差があり、逃げる場所が全くないこの狭い階段以外ないんです。そしてあなたが油断しているこの瞬間・・・戦に勝つには最も有利な場所に敵を誘き出し、そして一撃で撃破すべし!」

 

 悠人はそう叫びながら諾子を自分の背に隠すように庇い、階段を駆け下りながら重力を使って充司の胸に強烈なキックを浴びせていた!

 

「邪淫退散!・・・悠人キッ~~ク!」

「グェッ!」

 

 上位を取られた充司は逃げる間もなく、悠人のキックをまともに浴びていた。重力が味方した悠人のキックは波動エネルギーをも呼び覚ましながら、充司の胸を真正面から痛打する。驚いたことに悠人のキックは充司の胸をすり抜け、その内部に巣くっていたものを蹴り飛ばしていた。

 

「ヒィィィッ・・・・・ィッィッッ・・・・」

 

 充司の口から聞こえてきたのは魔女の断末魔の叫び声だった・・・。悠人は階段の途中で止まったものの、充司は崩れ落ちる様に階段を転がり落ちていく。

 

「悠人!・・・いくら何でもやり過ぎよ・・・充司さん!」

 

 唖然と事の成り行きを見ていた諾子は恐る恐る階段の途中まで駆け下りると、悠人を抱きあげながら階下の様子を不安そうに見つめる。

 

「フーッ・・フゥーッ・・・」

 

 だが、この時の悠人はオーラのようなものがやっと収まり始め、身体全体が強張っている。その時、直接諾子の脳裏に老人の声が突然響き渡る。

 

「唯子殿・・・充司にはこれでもやり足りないくらいじゃぞ・・・だがな今のキックは充司に向けたものではない。彼奴に取り憑いているモノに向かってわしが放ったものじゃ。お主たちの解決できることではないからの・・・。悠人の中にはまだご神木の霊験が宿っておる。その力を有効に使わせてもらったまでじゃ。悠人の奴見事に使い切ったわい。じゃが、充司の中に取り憑いた魔女は倒せても充司に対しては無力じゃ。きっと奴はまだ戦意を失っておらぬ・・・後はお主達次第じゃ・・・心残りじゃがわしの力もここまでじゃ。これで本当にさらばじゃ」

 

 失いかけていた記憶の断片が、また一つ回復していた・・・あの老人だ・・・私は夢の中でたしかにあの老人と会っていた・・・。そして・・・具体的な事は何も思い出せなかったが、悠人に私が贈ったご神木によって悠人はどうやら救われたのだと初めて知った。

階段の一番下まで蹴り飛ばされた充司は、老人の言う通りその巨躯を痛打しただけで、骨折一つせずに無事のようだった。憑依していた魔女が居なくなり、一瞬呆けたような表情に戻ったものの、状況が呑み込み始めると次第に怒りの表情に変わっていった。悠人も、オーラのような気が抜けるに従い、自分の咄嗟の行動に驚いているようだった。

 

「母さん?・・・僕・・・いつの間にかこんな凄い事をしてしまっていた・・・いったいどうなっちゃんだ?・・・」

 

 だが、悠人が言い終わらぬうちに怒り心頭に発した充司が、二人に襲い掛かろうとしていた。悠人は諾子を自分の背に隠すように庇いながら、階段を駆け昇る充司の胸に強烈なキックを再び浴びせようとしていた。だが、喧嘩慣れした充司はそんな悠人をせせら笑う。

 

「ケツッ・・・それで勝った気か?お前の背に居るのは、俺の手先に変えられた諾魔子なんだよ」

 

 そう言ってスマホを取り出すとあの忌まわしい音を再生させ始める。

 

ブリブリブーッ

 

「さあ諾魔子、後ろから悠人を突き堕とせ!」

「・・・・・・・・」

「悠人・・・残念だったな・・・これでお前も終わりだ・・・」

 

ブリブリブーッ

ブリブリブーッ

 

 しかし・・・諾子はその命令に全く反応しなかった。

 

「私・・・私は・・・いやだわ・・・」

「なつ・・・何だと?!」

 

 充司がスマホの音量を最大にしようと、ボタンを操作している時だった。

 

「邪淫退散!・・・ダブルキッ~~~~ク!!」

 

 諾子と悠人はそろって階段を駆け下りると、上り始めていた充司の胸に深々とキックを放っていた。それは先ほど以上に強力な正義のキックだった。

 

「人間の魂は決して操れない。ひとの魂は光り輝くエネルギーの塊なのだから!」

 

 充司は再び階段から転げ落ちながら、悠人がそう言うのを聞いていた。けっ・・・そう思いながら階下でもんどりうって気絶していた・・・。

 

----------------------

 

「充司さん・・・・」

 

 悠人の横をすり抜ける様に階段を降りると、諾子は気絶している充司に寄り添い、心配そうに顔を覗き込んだ。悠人は諾子のあまりにも親密な態度に心を痛めながらも、誰にでも優しくふるまう母親の姿をそこに見出していた。

 

「良かった・・・気を失っているだけだわ・・・」

 

 悠人は改めてこの巨魁の男の鋼のような肉体に感心しながらも、ホッと胸をなでおろす母の様子に優しさを超えた何かが有る事を敏感に察してしまう。

 

「僕はSSHに今日帰ろうと思うんだ。僕には僕の使命が有るから・・」

そう言って、未だに充司に寄り添う母をじっと見つめた。

「ええ・・・呼び出したりしてごめんなさい。あなたには謝っても謝り足りないわ」

 

 そう言って諾子はその場で項垂れ、顔を上げる事すら出来ないようだった。

 

「僕は、母さんとその男の間に何が有ったかあえて聞かない」

 

ハッと息をのむ母の顔を痛ましく思いながら、悠人はそう切り出していた。

 

「・・・・」

 

 敢えて否定しない母を悠人はいたたまれない気持ちで見つめていた。

 

「それに母さんの願い通り、この事は父さんには伝えないつもりだ・・・その代わり父さんの所に行ってもらいたいんだ。出来れば僕と一緒に今すぐにでも・・・」

「えっ?」

 

 そう言ったきり母は何も言わなかった。そして心配そうに充司の方を見る。悠人は最初諾子が充司のことを心配して言葉に詰まっているのかと考えていた。やがてそれは、諾子が充司に依存しているため・・・充司に許可をもらうため・・・やっとそう思い至っていた。

 

「母さんはその男に感化されている」

「そんなことは・・・」

 

 そう力なくうなだれる母はそれ以上何も言い返さなかった。

 

「今すぐその男と離れて・・・父さんの元に行って欲しいんだ」

「でも・・・このままこの人を置いておく訳には・・・それに清充君も居るのよ」

 

 清充と言う言葉を聞いた途端・・・悠人のいらだちが頂点に達していた。

 

「母さん・・・母さんは一体どうしちゃったの?かあさんは誰の妻で、誰の母親なの?」

「そっ・・・それは・・・」

 

「いい?・・今すぐだよ・・・その男が目を覚ます前に今すぐこのまま・・・」

「そっ・・・そんな・・・遠縁の人を家に置きっぱなしにするなんて。私はこのお家を守る義務が・・・」

 

「母さん!・・・」

「でっ・・・でも・・・」

 

 膠着状態が続く中、充司が目を覚ましてしまった。

 

「ううんっ・・・」

「充司さん・・・ごめんなさい・・・大丈夫?」

 

 母が心配そうに充司に語り掛けるのを悠人は複雑な見つめる他なかった。

 

「母さんはこれから父さんに会いに行く。今すぐ家から出ていってくれないか!」

「ほう・・・そう言う事かい・・・別に俺は構わないぜ」

 

「えっ?」

 

「行っても良いぜ・・・久しぶりで夫婦水入らずで過ごせばいいじゃねえか?」

 

 起き上がりながら充司がそう言った。

 

「えっ?良いのですか?」

「ああっ・・・こっちなら構わないぜ。それなら良いんだよな?正義のお坊ちゃんよ?」

 

「・・・・・・・・・」

「何を勘違いしているか知らねえが、こっちは長逗留させてもらっているだけなんだからな?」

 

「有難うございます・・・助かります」

「なんで母さんが謝る必要があるんだ!それよりも出て行ってもらえますか?この家から一刻も早く!」

 

「何を言うの・・・悠人。清充君を連れて充司さんは困っているのよ。私が悠年さんの所に行けるのだからそれで良いじゃないの」

「2,3日ゆっくりとしてくればいいじゃねえか?ご立派な亭主の元でよ」

 

 自分がまるで諾子の亭主のような口ぶりに、悠人が文句を言いかけた時、ふと母親の顔を見た。その顔は困惑し、狼狽えている様だった。

 

「はい・・・分かりました。仰る通りに致しますわ・・・」

 

 まるで奴隷が主人の命令に従うように答えている様子を見て悠人は背筋が凍り付くような気分になっていた。

 

「母さん?・・・」

 

 だが・・・次の瞬間・・・諾子は吹っ切れたようにいつもの母親の顔に戻っていた。

 

「悠人の言う通りね・・・私悠年さんの所に行くわ・・・でも・・・約束よ。充司さん親子が家に来ていたこと、お父さんには言わないでおいてね。悠年さんには心配かけたくないの・・・」

「ああっ・・・分かったよ・・・でもその言い方・・・なんだか・・・」

 

「何?」

(なんだか父さんことを気遣っていると言うより・・・この場さえ取り繕えばそれでいいみたいに聞こえるよ・・・)

 

 悠人はそう言いたいのぐっと飲み込んで、まだ不安げな母親をじっと見つめるだけだった。

 

「なんでもない・・・」

(きっと父さんに会えば・・・。父さんだったら何とかしてくれる・・・)

 

 未熟な悠人はそう考えていた・・・。これで母は元に戻ると、そう固く信じていた・・・。

 

(けへへっ・・・さすが悠年の野郎の子供だ・・・だが・・・お前は女を知らなすぎるんだよ。童貞にはわからねえ牝の本性をな・・・。もうお前の母ちゃんはお前の知っている母ちゃんじゃなくなっているってことをな・・・。もう手遅れなんだよ・・・けけつっ・・・諾子が悠年に会えば・・・ぞの残酷な真実を思い知るだけだってことをな・・・けけつっ・・・こりゃかえって楽しみじゃねえか・・・)

 

-----------------------

 意外な事に充司は私が身を清めるようにシャワーを浴び、悠年さんのために手料理を作り始めるのを全く邪魔しようとはしなかった。悠人が睨みつけるように充司さんを監視していたからかもしれない。でもやろうと思えば、悪辣な彼ならいくらでも私にディルドを埋め込むくらいのことは出来たに違いない。しかし・・・彼は何もしなかったのだ。私の作業を詰まらそうに見詰めながら、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべているだけだった。

 私は小一時間ばかりの時間を使って身支度を整え、夕方には何とか形ばかりの手料理を作り終えていた。まるで1カ月前に戻ったような気分だった。

 充司親子と悠人に手料理の残りを分けると、私は暁年さんが戦っているM商事の地方支社に向かっていた。充司親子とは玄関先で別れ、悠人は私を護衛するように駅の特急乗り場まで私についてきてくれていた。

 

「母さん・・・父さん宜しくね」

「ええっ・・悠人・・・色々とごめんなさい。もう母さんは大丈夫だから。吉川さんや四谷さんの事を救ってあげて」

「ああっ・・・あの悪辣な副校長を必ずとっちめてみせるよ!」

 

そう言って悠人は、快活に手を振りながら別のホームに向かって行った。

 

「悠人・・・本当にごめんなさい・・・」

 

私はS県方面に向かう特急電車に乗り込みながら、ここ半日に起こったことを悄然と振り返っていた。そして充司さんと出会ってからの一月半ばかりの出来事を・・・。

 

 車窓に流れる景色をぼっと眺めながら、私はフト自分の手元を見つめていた。その手には・・・充司さんから別れ際に手渡されたメモ用紙が握り締められていた。すぐに捨て去るつもりでいたのに・・・私はそのメモ用紙を大事に握りしめていたのだ。悠人と一緒に家を去り、駅で見送られている間も私はそのメモ用紙をずっと握りしめていたのだ。私は地元駅から充分に離れた頃になって初めて、周りを伺うように背を丸めながら、握りしめていたメモ用紙をそっと開いていた。

 

「サードステージ J-POP 明後日21時・・・」

 

 たったそれだけ・・・充司さんの乱暴な骨太の字でそう書かれていた。たったそれだけなのに・・・私の脳裏にはめくるめくSMショーの非常識極まりない光景が頭をよぎり、股間がジュンと濡れ始めていくのを感じていた・・・。

 

【牝の悦びを植え付けられた肉體は二度と元に戻すことはねえ・・・】

 

ぼそりと充司が耳元で言った言葉が頭から離れなかった。

 

 

 

<2022/09/30 鬼母篇完・・・煉獄篇に続く>




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